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2017年08月03日(Thu)
「高齢者」「障害者」「子ども」対策への遠大な願い
(リベラルタイム2017年9月号掲載)
日本財団理事長 尾形 武寿


Liberal.png社会課題先進国と言われるわが国で日本財団は、誰もが普通に暮らせるインクルーシブな社会の建設を目指している。

モーターボート事業の売上の一部を交付金として受け取り、公益事業を行う日本財団の成り立ちから、あらゆる社会課題が活動対象となるが、近年は「子ども」、「高齢者」、「障害者」と「災害」対策を柱としている。

わが国は「東洋の奇跡」とまで言われた戦後の驚異的な経済発展の中で、高齢者向けの特別養護老人ホームや障害者の授産施設などを郊外に次々に建設、気が付けば街中は健常者だけが住む歪な社会となっていた。世代、性別を超えて皆がともに助け合って暮らすこの国の良き伝統も希薄になった。

高齢者、障害者、子ども対策を柱に据えているのは、少子高齢化が進む縮小社会の中で、それぞれが自分の存在を確認し、参加できる社会を改めて目指すのが狙いだ。

その一つに障害者の芸術活動がある。2010年2月から翌年1月まで、フランス・パリのアル・サン・ピエール美術館で日本の障害者らがつくった約800点の作品を展示して開催したアール・ブリュット・ジャポネ展。予想以上の評判を呼び、開催期間を当初予定より半年間延長し入場者も12万人を超えた。

アール・ブリュットは「生(き)の芸術」を意味するフランス語。正規の芸術教育を受けていない人による技巧や流行にとらわれない自由で無垢な表現をいう。スイス・ローザンヌで産声を上げ、ブームとなってヨーロッパ全域に広がった。

しかし、その後、急速に勢いが衰える中、ジャポネ展の成功が改めて障害者芸術を見直す契機となったと言われる。

日本財団もこれを契機に、障害者芸術に対する支援活動を強化した。高知市の「藁工ミュージアム」、広島県福山市の「鞆の津ミュージアム」、京都府亀岡市の「みずのき美術館」等、古い街並みや伝統的な建物を改修した美術館の整備や、展覧会を企画・立案する専門家の育成などに取り組んでいる。併せてジャポネ展に出展された作品のうち45人の622点を管理し、展覧会などへの貸し出し事業も行っている。

一方で、障害者の芸術活動には多様な考え方があり、呼称も「エイブル・アート」、「アウトサイダー・アート」「アール・ブリュット」「現代アート」などさまざま。日本財団ではアール・ブリュット以外の名称を使う事業者への支援にも積極的に取り組み、障害者アートの広がりを目指してきた。

そうした考えに立ち、新たなプロジェクト「日本財団DIVERSITY IN THE ARTS」を立ち上げることになった。試行錯誤を繰り返してきたこれまでの実績を踏まえ、新たなプロジェクトでは既成概念にとらわれない展覧会などを企画、積極的な情報発信を通じて、DIVERSITY(多様性)の意義と価値を広く伝えたいと考える。東京五輪、パラリンピックが開催される20年までに複数の企画を実施、新たな担い手や企画の開拓を目指す考えだ。

わが国の17年度当初予算は総額97兆円。歳入のうち34兆円を公債に依存し、家計に例えれば月収63万円の家庭が97万円の生活をしている形になる。結果、国の借金はGDP(国内総生産)の1.6倍、1060兆円と天文学的数字に上り、危険水域を超えている。

障害者の働き場所を確保し、社会参加の機会が増えれば自立が促進され、結果的に社会的費用の削減にもつながる。そんな遠大な願いも込め、高齢者や障害者、子ども対策を強化していきたいと考えている。







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