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2018年09月22日

「たすけあいからのネットワーキング」の現在地(1)

現在、当会は来春に発行予定の『関西社会福祉研究』への投稿論文の執筆依頼をお受けしている。この文章 「たすけあいからのネットワーキング」の現在地 は、その草稿にあたるものである。
 「たすけあいからのネットワーキング」は、以下にもあるように10周年の記念誌のタイトルである。10年から40年というのは飛躍しているようにも思われるかもしれないが、20年が1998年。特定非営利活動促進法施行年。かつ、社会福祉制度が措置制度から契約制度にかわりはじめた年。30年は2008年。障害者自立支援法がはじまり、制度が本格的に動き始めていた時期。今回、被災した日中活動の場を現在のような内装に映像06「ぼちぼちはうす〜障害者自立支援法の波紋〜」の寄付金、損保ジャパンの助成金、年賀状助成金で改装していった時期です。
 そして、今年が40年。会は大きな岐路に立っています。


「たすけあいからのネットワーキング」の現在地

 寝屋川市民たすけあいの会は、1978年5月に発足なので、今年2018年5月で40周年を迎えることになりました。「たすけあいからのネットワーキング」は寝屋川市民たすけあいの会が10周年を記念して出版した書籍のタイトルになります。その「はじめに」にこんな一文があります
 現在、医療。保健・福祉のネットワークとかインフォーマル・サポート・アプローチであるとかが専門職の間で議論されている。
 「参加する福祉」「創造する福祉」など、言葉だけが一人歩きをし、なかなか実態が伴わない。「たすけあいの会」が産み出している活動は、その土壌づくりの活動であるとも言える。素人の、市民のエネルギーが、重層的なネットワーキングによって、ボランタリーに発揮されたとき、どれだけの創造的な取り組みが出来るのかの実験的・開拓的事業でもある。また、会の実践は一つのロマンでもある。(『たすけあいからのネットワーキング』1989年 松籟社
 1990年代までの萌芽的な活動の取り組みは、多くの発信とともに問題提起を行ったように思っています。地域福祉の教科書的な書籍に「草の根の」とか「民家改修型福祉の先駆け」と紹介されたこともあります。昔から活動を続けている会員さんや当会の代表は自虐的に発足当時の故柴田善守氏・当時 大阪ボランティア協会理事長が当会の発足総会の場をして、「『20世紀の社会福祉は倉庫からはじまった(ハルハウス)』といわれたけどいまだに倉庫や」、と言います。
 1990年代に「ボランティア元年」と言われたボランティアブームが来、ボランティアという言葉が市民権を得ます。また、社会福祉基礎構造改革の中で社会福祉のあり様が大きく変革しはじめていきます。活動の隆盛はどの団体でもあることですが、10周年を機にいったんしぼんだ活動は、90年代後半に時代の流れに相応しく再び盛り上がりを見せてきます。
 00年代になり、NPOの時代・特定非営利活動促進法ができ、NPOが市民権を得ていきます 。そして、社会福祉は福祉サービスになり、介護保険法の施行、障害者の支援費制度→障害者自立支援法施行と進んでいきます。「参加する」は共助ということばでくくられ、「創造する」は起業ということばでくくられる、はっきりその傾向が見て取れるようになるのは、10年代になりますが、その傾向はすでに00年代に見て取れます。
 当会は、2001年に特定非営利活動法人を会を一部分離する形で設立。2010年には一体化をします。時代の流れにアンテナを高くしつつ、地域の事情そして会を組織づくってきた会員さんたちの動きの中で、当会は「活動」「事業」そして「組織」のあり様を変えてきました。「福祉が専門職化して市民はその下請けとなっている」と現状を嘆くわけでもなく、「素人こそ住民、市民こそがその主役である」と声高に唱えるわけでもなく、いろいろな人のかかわりがエネルギーを生み出し、『「矛盾」×「矛盾」×「矛盾」=【なんとかなる】』の計算式の「矛盾」という要素がドンドンと増えていきながら、創造的取り組みをいかに続けてできるのか、というスタンスがこの40年の取り組みに貫通しているように感じています。
 しかし、10年代に入っての「制度化」の波はどんどん大きくなっています。また、当会が発足当時からお借りしていた土地が道路拡幅により、当会自体の存続が危うい事態になっています。その時期であるからこそ、今回、40周年を機会として、活動の取り組みを書き残すことの意義を感じています。
 この小稿では、すでにさまざまな形でまとめられてきているものはそちらに委ね、「たすけあいからのネットワーキング現在地」として、「一人」のかかわりから生まれてきた当会の実践をいくつかと、「ネットワーキング」と称される活動の実践のいくつかを触れていきたい、そして、その中で組織運営の困難さと重要さについてふれていきたいと思います。