高温・多湿下での活動(1) [2015年07月11日(Sat)]
7月に入り暑い日が続きますが、今回は森の安全を考える会が定例活動内で行っている安全活動の中から熱中症について取り上げてみます。
熱中症とは、高温・多湿の環境下で大量に汗をかくことによって、体内の水分やナトリウムバランスが崩れたり、体調の調節ができなくなることで起きる、さまざまな症状の総称を言います。 年代がばれてしまうかもしれませんが、私が小学生の頃は、熱中症という言葉はあまり聞いたことはなく、よく「日射病にならないように帽子を被りなさい!」とよく言われましたが、今回は熱射病が主題です。 熱中症が起こりやすい環境は次の4条件のいずれかが当てはまるところです。 ・気温が高い(30℃以上) ・湿度が高い(60%以上) ・日差しが強い ・風が弱い ここで、注目したいのが、必ずしも気温が高くなくても熱中症は罹ると言うことです。 今日は昨日一昨日にくらべて蒸すけど涼しいから熱中症は大丈夫だね。なんて油断していると罹ってしまいます。 要するに、汗が蒸散しない(体温が外に逃げない)環境では、高体温が維持され、その結果、からだが体温を下げようとして、より多くの汗をかくことによって上記のような結果になってしまいます。 予防するには 服装 衣服選びのポイントとして、外気からの熱の吸収を抑え、体内の熱を外に逃がし易いものを選びます。 素材では、綿や麻が適していますが、ポリエステル素材は綿よりも吸水性・速乾性が優れています。 色は、できるだけ熱吸収を抑えるために、黒や紺と行った熱を吸収するものは避けますが、黄色はブヨやヌカカを誘引してしまうため避けた方が良いでしょう。 上着…襟元は開け体にこもる熱を外に逃がす。丸首よりもVネックの方が通気性は高い。 全体的にゆったりとした体型にし、生地にも通気性の高い物を選択する。 また、下着を着けることにより、汗を吸収して体温調整を助ける働きがある。 ズボン…風通しのよい生地の物を選び、ベルトはやや緩めにし、下肢にこもった熱を上に逃がす。 飲食物 食事…普段から、規則正しく、バランスのよい食事を心がけましょう。できるたけ冷たい食べ物(飲み物は別)をさけ、胃腸に負担をかけないようにする。 糖質、たんぱく質、脂質、ビタミン、ミネラル、食物繊維をバランス良く摂取するようにし、この季節は糖質を多く接種しがちになるので気をつける。 飲料…糖分の他にナトリウム等の電解質を含んだスポーツ飲料がよい。 10℃前後がもっとも吸収のよい温度である。 その他、カフェインは利尿作用があるため、カフェインを含まない麦茶、そば茶、ミネラルウォーターが向いているが、その逆でカフェインを含む、コーヒー、紅茶、緑茶などはあまり向かない。 甘い炭酸飲料やジュースは、少量で満足してしまうため、水分摂取量が少なくなりがちとなり、向かない。 ビールなどのアルコール類はアルコール分解時に、接種アルコール量以上の水を必要とし、利尿作用があるため向いていない。 摂取方法 森林内作業時のオーバーヒート(過剰な体温上昇)を防ぐための目安としては、脱水量を体重の2%以下にとどめたほうが良いと言われています。 これは、体重60kgの場合、60×0.02=1.2kg≒1.2Lになります。 水分は飲んでから吸収されるまで一定時間必要です。喉が渇いてから飲むのでは無く、こまめに水分を補給しましょう(喉の渇きを覚えた段階で2%近くの水分が既に失われています)。 特に、女性は活動フィールドにトイレが無い等の理由から、飲むことを抑えてしまう方がいます。これは大変危険です。 一度に大量に飲むと吸収できなかった水分が尿となって排出されてしまいます。1回に飲む量をコップ一杯程度にして、それをこまめに取るようにすることで効率良く吸収することができます。 なお、水分は食事でも吸収されるため、食事は無理の無い時間帯にキチンと取るようにしましょう。 次回はもし熱射病が疑われたらをお送りします。 参考文献 熱中症対策マニュアル 稲葉 裕 株式会社エクスナレッジ 山の救急医療ハンドブック 日本山岳会医療委員会編 山と渓谷社 レスキューハンドブック 藤原 尚雄,羽根田 治 山と渓谷社 スポーツ活動中の熱中症予防ガイドブック (公財)日本体育協会 |