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四季折々の雑記

 30年以上在籍したメディアでは「公」の動きを、その後10年以上は「民」の活動を中心に世の中を見てきた。先行き不透明な縮小社会に中にも、時に「民の活力」という、かすかな光明が見えてきた気もする。そんな思いを記したく思います。


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トランプ政権への過度の期待は危険 [2017年06月21日(Wed)]

自分ファーストのパリ協定離脱
国内、国際社会での孤立進む



海をテーマにした初の国連海洋会議が6月初旬、米ニューヨークの国連本部で開催された。温暖化や酸性化、さらにはサンゴの白化現象が急速に進む海の現状に対する危機感がようやく国際的にも共有され始めた感じだ。

そうした中で米トランプ大統領は、地球温暖化対策の国際的枠組みを決めた「パリ協定」からの離脱を宣言、その後の先進7カ国(G7)環境相会合も米国を除く6カ国がパリ協定を実行する旨の共同声明を出したものの、米国に関しては「脚注」で独自に温暖化対策に取り組むと記すにとどめた。

国連本会議.jpg

国連総会本会議で政府間パネルの設置を提案する笹川陽平・日本財団会長

地球環境は現在、温暖化の原因となる世界の2酸化炭素(CO2)濃度が18世紀後半から19世紀にかけた産業革命前に比べ40%、平均気温も1度上昇し、母なる海の温暖化・酸性化が進み、北極、南極の海氷面積は減少、沖縄やオーストラリアのサンゴが死滅する恐れも出ている。

このためパリ協定では、地球の平均気温の上昇を産業革命前に比べ2度未満に抑える目標を設定、世界196ヶ国・地域が締結し2016年発効した。各国がCO2の削減目標を独自に定め、その実現に努力する内容で、目標が現実に達成された場合も、地球温度は産業革命前に比べ3度近く上昇すると言われている。

初の国連海洋会議はこうした危機感を受けて開催され、国連本部で6月9日に開催された国連総会本会議では、異例の措置として民間からの「提案」にも門戸を開放。長年、海に取り組んできた日本財団の笹川陽平会長はIMO(国際海事機関)やFAO(国連食糧農業機関)など、いくつもの組織が独自に問題に対処する縦割りの弊害を正すため、海洋の諸問題を横断的に管理する政府間パネルの設置や未だ80%以上が未解明となっている海底地形図の作成などを提案した。

トランプ大統領のパリ協定離脱表明は、こうした国際社会の流れに明らかに逆行する。パリ協定は先進国だけに排出規制を義務付けた京都議定書に代わって先進国、途上国を問わず全員参加方式で各国が排出規制を進める枠組みとなっており、その土台となる国連気候変動枠組条約を含め、主導したのは米国のオバマ前政権である。政権が変わったからと言って、国としての国際公約をいとも簡単に変更するのはあまりに無責任と言うしかない。

「中国、インドに比べ内容が不公平」、「米国経済に害を与える」を離脱の理由としており、トランプ大統領の支持基盤である中西部・ラストベルト(錆び付いた工業地帯)の石炭産業の活性化が狙いとも言われている。国連気候変動枠組条約には留まる見通しと言われるが、中西部の石炭産業が下火になった最大の原因はシュールガスの登場であり、一方で温暖化対策を念頭においた電気自動車や再生可能エネルギーの開発など新しい産業も成長、社会は温暖化対策と経済成長を両立させる方向に向かっている。

トランプ大統領の決断は中国に次ぐ温室効果ガスの発生国として責任を放棄した形で、時代錯誤的でさえある。離脱表明直後にABCテレビなどが実施した世論調査では離脱反対が59%と賛成の28%を大きく上回ったと報道されており、米国の世論を二分するどころか、トランプ大統領の支持率はさらに低下する可能性もある。

乱暴を承知で言えば、トランプ大統領は世界や米国の利益より自らの利益を優先したと言え、「米国ファースト」と言うより「自分ファースト」と言うしかない。この場合、気になるのは日米同盟との関係である。中華秩序の復興を軸に覇権を求める中国や北朝鮮・金正恩政権の冒険主義とも言える危うさを前にすると、日本の外交・安全保障は今後も日米同盟が基軸となる。

しかし、北朝鮮の核・ICBM開発ひとつとっても、トランプ流の自分ファーストに従えば、ICBMが米国に届くか否かが問題であって、そうでなければ問題はなく「日本の防衛は視界の外」となる可能性さえ出てくる。

日米同盟を軸に我国の安全保障を考えるのは、ある意味、当然として、両国関係を安倍首相とトランプ大統領の信頼・親密な関係に過度に依拠するのは危険ということになる。温暖化の原因に関しては諸説があるが、地球的規模で被害が広がる巨大台風やハリケーンなどを前にすると、人間の活動が原因の一つになっていることは否定できず、パリ協定からの離脱に対する批判はさらに増え、国際社会における米国の孤立も進む。

大統領選ではクリントン候補の“変わり身の早さ”が気になり、どちらが米国の指導者に相応しいのか、判断を迷う面があったが、その後の経過を見る限り、トランプ政権の今後はあまりに危うい。本来、首脳同士の信頼関係は国と国の相互信頼の要となるが、今度ばかりは、過度の期待をおくのは危険な気がする。(了)
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