• もっと見る

四季折々の雑記

 30年以上在籍したメディアでは「公」の動きを、その後10年以上は「民」の活動を中心に世の中を見てきた。先行き不透明な縮小社会に中にも、時に「民の活力」という、かすかな光明が見えてきた気もする。そんな思いを記したく思います。


<< 2024年03月 >>
          1 2
3 4 5 6 7 8 9
10 11 12 13 14 15 16
17 18 19 20 21 22 23
24 25 26 27 28 29 30
31            
カテゴリアーカイブ
最新記事
最新コメント
buy website traffic
インド体験記(下) 美の基準 (12/09) TNF広報ファン
音禅法要 (05/31) D.G. Internacional, S.A.
インド体験記(下) 美の基準 (04/17) ヒメ
日本文化、色濃く残すパラオ  (01/27) Bios Agriculture
ニュースから(4) (01/20) ラックバック
「凌霜隊」の街を訪れて (12/29) 早川理恵子
日本文化、色濃く残すパラオ  (10/18) 麻生英明
映画「蟻の兵隊」の試写会に参加して (03/08) 麻生英明
インド体験記(下) 美の基準 (03/08) kemukemu
映画「蟻の兵隊」の試写会に参加して (09/14)
最新トラックバック
参院選と消費税増税 [2010年07月15日(Thu)]
消費税増税を打ち出す勇気
参院選敗北でも評価されるべき


参院選での民主党の敗因を菅首相の「消費税10%」発言に求める論調が多い。破たん寸前の国家財政を前に多くの有権者が消費税引き上げの必要性を認めているとはいえ、現実に増税となると話は違うのかもしれない。有権者の冷ややかな反応を前に慌てて低所得者対策として還付制度導入を持ち出すなど、何のための消費税増税なのか、首相の信念と決意を疑わせる局面もあった。

避けて通れぬ道

国の財政は債務残高だけで862兆円、危険水域をとっくに越え財政再建が“待ったなし”の状態であるのは言うまでもない。「無駄の排除」、「消費税増税」のどちらが得策か、といった悠長な議論をしている時期ではない。考えられる策を総動員して直ちに取り組むべきテーマなのだ。首相にどのような読みがあったのか知らないし、政治家として決して好きなタイプではない。しかし、選挙へのマイナスを承知でなお消費税増税―財政再建を打ち出したこの一点において菅首相の姿勢を評価する。


ワシントン記念塔


経済には不案内だが、日本の財政状況をなお楽観視する論拠の一つに、国債の大半を外国が引き受けるギリシャなどと違い、日本の場合は国内の金融機関が大半を引き受ける内国債である点にあるようだ。日本には一方で1400兆円に上る個人金融資産があり、個人金融資産が債務残高を大きく上回っている以上、国を挙げての“倒産”はあり得ないというわけだ。

しかし景気の落ち込みと少子高齢化が続く中、選挙のたびに与野党が有権者受けを狙ってバラマキを競う合うポピュリズムが続く限り、債務残高は雪だるま式に増える。景気回復・経済成長戦略に明確な展望がない以上、「出」を抑え「入」を増やさない限り、財政の再建は不可能だ。例え有権者の反発があろうと財政健全化に向け増税を提案するのが国のリーダー、政治家としての使命である。増税を避けて通れぬ道と知りながら、なお有権者に耳当たりのいい公約をばらまくのは、国の明日より自分の明日を優先する行為でしかない。

参院選ではバラマキ公約に固執しながら消費税導入を提案する矛盾や、唐突な消費税発言が普天間飛行場移設や政治とカネの問題から国民の目をそらすのが狙い、といった印象を与えたことが菅内閣に対する有権者の反発につながった、との指摘もあるが、それでもなお財政再建を直接国民に問い掛けた気概を評価したい。付言して言えば、消費税発言が民主党の支持率減少につながった面があるとしても、鳩山内閣が続投し参院選に臨んでいれば民主党の議席は間違いなく40議席を割っていた。首相交代は民主党にマイナスではなかったはずだ。

目に余る地盤沈下
そうでなくとも国際社会での日本の地盤沈下は目に余る。6月、日本の安全保障に関連して北京とワシントンで二つの“国際会議”を取材する機会があったが、中国では米中2極によるG2意識が強く出され、米国では日米同盟の言葉とは裏腹に日本に対する“関心”が急速に薄らいでいるのを実感した。

中国でも目を引いたのは、笹川日中友好基金が進める自衛隊と中国人民解放軍の佐官級交流10周年に関連して日本側訪問団が訪れた中央党校での馬小軍教授の講演。同校は中国共産党のシンクタンクとして知られる。この中で馬教授はEU(欧州連合)の財政危機で軍事面での米国依存度が一層高まるとした上、「その米国はロシアとの間に信頼関係はなく、結局、中国と組まざるを得ない」「中国と信頼関係を築くには西太平洋地域での協力と譲歩が必要だ」と指摘。台湾問題は米国とのみ交渉する、と語った。


中国・天壇公園 祈年殿

その上で将来のアジアの共通通貨についても、円を国際通貨としての地位を急速に失いつつある英国のポンドになぞらえた上、香港だけでなくマカオやシンガポールに人民元が広がりつつある現状を指摘し「人民元こそ将来の代表通貨になる」と語った。経済躍進を背景にした自信、大国意識の表明である。

一方、日米修好150周年、日米安全保障条約50周年を記念してワシントンで開かれた「日米パートナーシップの新たな政策課題」と題するシンポジウム。出席者からは「北朝鮮の核問題や中国の軍事費増大など国境を越えた問題に日米が同盟を通じて対処する必要がある」(ハーバード大 ジョセフ・ナイ教授)、「日米同盟こそ中国の台頭に伴う負の影響から世界を守り、中国に責任ある行動を促すことができる」(長島昭久・防衛政務官)など日米同盟強化の必要性を指摘する声が相次ぎ、アーミテージ米元国務副長官も小沢民主党前幹事長の言う日米中・正三角形論について「決して正三角形ではない。日米両国はもっと深い絆で結ばれている」と強調した。

論点に沿った政党再編こそ

日米同盟の強化、日米基軸の再確認がうたわれるのはシンポの趣旨からも予想通りで、むしろ気になったのは双方各30人の出席メンバー。日本からは長島政務官のほか細野豪志・民主党幹事長代理、小池百合子元防衛相ら4人の国会議員が出席したが、米側から上・下院議員の出席はなく、アーミテージ氏らに続く新しい日本専門家の姿もなかった。国と国の関係は人と人の関係でもある。日米同盟の言葉とは裏腹に日米をつなぐ人脈が急速に萎みつつある現実をうかがわせた。

中国の目線が日本を飛び越して米国に向けられ、当の米国との関係が希薄になれば、日本は国際社会を漂流する。そうなれば独自の武装論、さらには核武装論が台頭することになりかねない。好むと好まざるにかかわらず、日米同盟に軸足を置かない限り、国際社会の中での立脚点は確保できないことになる。

参院選による衆参のねじれで政治は一層、不安定な状態が続く。消費税増税に反対した小沢前幹事長が9月の民主党代表選に向けどう動くのかー。揺れ動く政局は報道を見ているだけでも小説よりはるかに面白い。しかし、ひとたび日本の現状に目を転ずれば、これ以上の混迷は許されない。アーミテージ氏もシンポジウムで鳩山前首相を「夢想家で、できないことにノーと言えない人だった」とした上で「(厳しい東アジア情勢を見ると)夢見がちなことを言っている暇などなかったはずだ」と厳しく批判した。

今、日本に必要なのは明確な国家戦略である。日本の明日に向けて与野党が建設的な話し合いをできないのなら、これ以上の混迷を避けるためにも、政党を再編し論点を整理すべきである。再編の軸は財政再建、あるいは安全保障といったところになろうが、それによって国民に政党の姿が見えやすくなり、国会での政策論争も今よりは活発になると期待する。(了)
トラックバック
※トラックバックの受付は終了しました
コメント
検索
検索語句
プロフィール

日本財団 宮崎さんの画像
日本財団 宮崎
プロフィール
ブログ
リンク集
https://blog.canpan.info/miyazaki/index1_0.rdf
https://blog.canpan.info/miyazaki/index2_0.xml