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四季折々の雑記

 30年以上在籍したメディアでは「公」の動きを、その後10年以上は「民」の活動を中心に世の中を見てきた。先行き不透明な縮小社会に中にも、時に「民の活力」という、かすかな光明が見えてきた気もする。そんな思いを記したく思います。


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防災に思う「常態化する想定外」 [2018年09月04日(Tue)]
基準、マニュアルの見直し急務
求められる柔軟な対応、判断力

災害大国・日本は今年、大阪北部地震、西日本豪雨に代表される「50年に一度の大雨」(気象庁)、「生命に危険を及ぼすレベルの猛暑」(同)が相次ぎ、完全な異常気象サイクルに入ったかに見える。相次いで上陸する台風の発生数も、過去、最高だった1967年の39個を上回る勢いだ。災害の多発、巨大化に対する備えはどこまで可能なのかー。

「想定外」や「50年に一度」が常態化すれば、「何時でも起き得る災害」となり想定外ではなくなる。となると「想定外」、「50年に一度」を前提にした災害対策やマニュアルは最早、通用せず見直しが必要となる。ただし、どのようなマニュアルを作ろうと、不測の事態は必ず起きる。行政など担当者には、事態に柔軟に対応する咄嗟の判断力、決断力が一層求められることになる。

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土砂災害に見舞われた広島県・坂町の被災地=日本財団災害対策チーム・黒澤司アドバイザー撮影

西日本豪雨災害でも理解しにくい対応が目に付いた。例えば行方不明者の氏名公表。報道によれば、岡山県は公表、広島県は県警の身元確認情報を基に死者名は公表したものの不明者は見送り、愛媛県は「個人情報保護」などを理由に死傷者、不明者とも公表を見送った。情報提供元の各市町の了解を得ていない、あるいは個人情報の保護が非公表の理由のようだが、多くの自治体の個人情報保護条例には緊急時の情報提供を認める規定もある。

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家屋の中まで土石で埋まった=同


現に、氏名公表が迅速な救助につながった、公表を受けて生存情報が寄せられ残る不明者の救助作業が効率的にできた、といった事例も報道されている。一刻を争う緊急事態の中で、人命救助と個人情報の保護を同列に論ずるのはどうみても的確な対応とは思えない。酷な言い方になるが、想定をはるかに上回る豪雨にマニュアルをどう適用すべきか、判断に迷ったということではないか。

次いで肱(ひじ)川の氾濫で、愛媛県西予市などで人命を含む甚大な被害が出たダムの放流。想定外の豪雨で上流にある野村ダムと鹿野川ダムの放流に踏み切った結果、肱川の氾濫につながった。ダムは基本的に河川の水量を調節する機能を持つが、容量を超えて満水となれば決壊の恐れも出るため放流措置がとられる。国土交通省四国地方整備局が「対応に問題はなかった」としているのも、このためだ。

今後、第3者委員会を設け、住民への周知方法、ダムの操作方法が適切だったか、考察されるようだが、放水量が安全基準の6倍にも達するような事態は想定されていなかった気がする。国内のダムの多くが年月を経て土砂が堆積し浚渫をしないと本来の水量調節機能を持たない、と指摘される点も含めて多角的な見直し・再検討が必要となる。

このほか被災者の生活再建に欠かせない罹災証明。豪雨災害での被害は浸水被害と土砂被害に大別される。西日本豪雨災害で見れば、倉敷市真備地区は河川氾濫や堤防決壊に伴う浸水被害、広島県・坂町などは急傾斜地の土石流被害が中心だった。罹災証明はどちらも水害として同じ物差しで判定されるが、土砂被害は家屋も土地も失われ浸水被害に比べ生活再建がより難しい。国土交通省によると国土の七割を山岳地帯が占めるわが国には、全国で約六十六万ヵ所に上る「土砂災害警戒区域」があり、50年に一度の雨が降れば土砂被害は増える。一律の扱いは見直す必要があろう。

以上、素人目に見ただけでも、異常気象時代の大災害や酷暑に備えるには誰もが、これまでの常識を捨て、発想を変え、対策・備えを強化する必要がある。専門家が見れば、さらに多くの問題点があるはずだ。

異常気象原因は諸説あるが、WMO(世界気象機関)は地球温暖化との関係を指摘している。個人としては海面温度の上昇や海の酸性化を見るまでもなく、人類の社会活動に伴って排出される二酸化炭素(CO2)が大きく影響しているのは間違いないと考える。その意味で異常気象に抜本的に備えるにはCO2の排出削減が何より急務である。

ちなみにトランプ米大統領は昨年6月に地球温暖化対策の推進を目指す国際的枠組み「パリ協定」からの離脱を表明したのに続き、先ごろ火力発電所からのCO2排出量を規制するグリーン・パワー・プランを撤廃する方針を打ち出した。パリ協定からの離脱手続きが、次の大統領選が行われる2020年11月までかかるのが原因と言われるが、温暖化に伴う地球の危機は陸も海も“待ったなし”である。この一点においてトランプ大統領は支持しない。
運用に幅を持たせるのは無理なのか! [2018年08月03日(Fri)]

自立意識阻害する生活保護費基礎控除
低迷する就労継続支援B型事業の工賃


20万人を超す全国の障害者が利用する「就労継続支援B型事業」。このほどまとまった事業者アンケートでは、月額1万5千円前後で低迷する「工賃」と生活保護費の基礎控除との相関が鮮明になった。工賃が基礎控除の下限である約1万5千円を超えると、その分、生活保護費が減額される仕組みになっており、これが自立意識の高揚を阻害する結果になっている。

打開策として厚生労働省は今年4月の報酬改定で、平均工賃がアップすればB型事業所を運営する事業者に対する基本報酬を上積みする方式(目標工賃達成加算)を導入した。平均工賃の引き上げを実現すれば事業者報酬を上乗せし事業所経営者の意欲を刺激するのが狙いとみられる。

筆者は以前、本ブログで平均1万5千円の工賃の低さを「理解に苦しむ」と書いた。今回は報酬改定に疑問を提示したい。第一に何よりも変えるべきは、事業者よりもB型事業所を利用する障害者の意識だと思う。そのためにも基礎控除額の運用に幅を持たせられないか、ということだ。

B型事業所の利用者の多くは障害年金と生活保護費の給付を受け、生活を成り立たせている。生活保護費は地域や家族構成などで決まるが、例えば大都市部の単身者の場合は約13万円。基礎控除を上回る額が生活保護費から減額される現在の方式では、工賃が1万5000円でも、頑張って3万5000円にしても、本人が手にできるのは、ともに14万5000円となる。

これでは就労意欲が高まりにくい。事業者の報酬加算と同様、B型事業所を利用する障害者に関しても、例えば基礎控除額を上回る工賃の半分を本人に還元するような工夫が必要ではないかと思う。自立意識が高まり大幅な工賃アップにつながれば、その先には生活保護費抑制の可能性も出てくる。

今回、3000を超す全国のB型事業所から回答が寄せられたアンケート結果でも、平均工賃は月1万〜1万5000円、平均就労時間は週20〜25時間が最も多く、工賃が基礎控除額前後にとどまるよう就労時間が調整されている現実がうかがえる。

次に、かねて感じていた疑問だが、現在、B型事業所は全国1万800ヶ所にあり、22万7000人が利用している。対象は、一般就労が難しい重度の障害者とされるが、障害の種別は「身体」、「知的」、「精神」、「難病」など多彩で、就労に向けた訓練の場と位置付ける人から、安心して日中を過ごせる「居場所」、「安らぎの場」として利用する人まで幅がある。

障害の程度、利用目的にこれだけ幅がある人たちを「就労支援B型事業所」の名で一つに束ねていくのは無理なような気がする。アンケートには「就労訓練と居場所を別の事業として行うべきだ」、「障害が重い人を受け入れている事業所は生活介護事業に変更すべきだ」といった“苛立ち”も寄せられている。

障害の程度によって「就労支援」と「生活介護」事業に分けるのが現実的だと思う。その上で就労支援に関しては、企業から仕事を受注する際、多くが下請け、孫請けからの受注となっている現状を見直し、工賃単価の高い事業を開拓する必要がある。現在の平均工賃「1時間当たり169円」はやはり低すぎると思う。

「1億総活躍」が叫ばれる中、B型事業所で働く人たちの“待遇”を改善することが、障害の程度がもっと軽いA型事業所や就労継続支援事業で働く障害者の賃金アップ、ひいては社会参加の拡大につながる。
グローバルな活動強化で存在感を! [2018年07月13日(Fri)]

世界的にも異色な民間奨学金Sylff
中国教育部の参加で新たな活路


Sylffと呼ばれる奨学金がある。1987年、米タフツ大学に初めて設置されて以来、世界44ヵ国69大学に設置され、この奨学金で卒業したフェローは世界で1万6000人に上る。フルブライトなど政府系の奨学金と違い、純然たる民間奨学金で、その規模からも、もっと知られていい存在と思うが知名度は意外なほど低い。

グローバルなネットワークを活用して社会貢献活動を強化すべきである。特にフェローの半数を占める中国では、新たに教育部と教育国際交流協会がプログラムに参加することで、従来、認められなかった全国的な組織活動に道が拓ける見通しとなった。活動を強化することで存在感は増し、回復基調にあるに日中関係改善にも貢献できる。

Sylffは日本財団が各大学に100万米ドルの基金を設置、姉妹財団の東京財団政策研究所が運営し、利子を活用して社会科学系の大学院生に奨学金を支給する。正式名称は「Ryoichi Sasakawa Young Ieaders Fellowship Fund」。中国では1992年と1994年に北京大など各5校、計10大学に設置され、「笹川良一優秀青年奨学金」と呼ばれる。

当時、中国は天安門事件(1989年)に対する西側諸国の経済制裁などで経済が低迷、「経済改革と対外開放」に舵を切ったものの状況は厳しく、1大学が100万米ドルもの基金を受け取った経験もなかった。個人名を付した奨学金や「リーダー」の言葉にも馴染がなく、最終的に楊尚昆国家主席=当時=の決断で奨学金が立ち上がった。「友達が困っているときに手を差し延べるのが真の友人」、「中国の発展を支える人材を育てたい」とする笹川良一日本財団元会長に対する信頼が決め手になったとされる。

欧米系の大学ではフェロー相互の連携も進み、設立30周年を迎えた昨年にはフェローの国際的ネットワーク「Sylff Association」も立ち上がっている。しかし中国では全国的な民間組織の立ち上げが規制されており、フェローの活動が活気を欠くきらいがあった。

こうした中、先行した5大学で1年遅れの設立25周年式典が行われた今月、新たに教育部がプログラムに参加することになった。政府の監視下に入ることで新たな活動を道を拓いたと言えなくもないが、学術界から産業界まで第一線で活動するフェローに広く参加を求めることで、大学院を卒業すればそれで終わりといった従来の姿から大きく脱皮する可能性を秘める。既に各種サポートプログラムも用意されている。

設置後4半世紀以上を経て、さすがに奨学金額は相対的に小さくなっているが、中国5大学の式典では「笹川奨学金は時宜を得た支援で突出した功績を挙げた」、「笹川奨学生であった事実は他の奨学金にはない特別の重みを持つ」といった高い評価が聞かれ、「習近平国家主席が言う人類運命共同体と笹川良一氏の“人類みな兄弟”は通じるところがある」との声も聞かれた。

中国関係ではこのほか、中国衛生部と日本医学協会などが行う「日中笹川医学奨学金」で日本の医療を学んだ中国人医学生ら約2300人の同窓会組織「同学会」が中国医学界の中枢に位置しているほか、各大学への370万冊に上る日本語図書の寄贈など幅広い事業を日本財団が主導、今年4月には尖閣諸島(中国名・釣魚島)の国有化に伴い中止されていた中国人民解放軍と自衛隊の佐官級交流も再開された。

北京大の式典では新華社や人民日報、雑誌・人民中国、中国青年報などが笹川陽平現会長をインタビューし、大きく報じた。改善しつつある日中関係が反映しているのは間違いないが、「日中間に井戸を掘った」との高い評価を聞くにつけ、外国、特に中国と日本の「ササカワ評」に大きな差があるのを改めて実感する。

筆者はメディア卒業後、日本財団の仕事を手伝っており“内輪の希望”と言われるかも知れないが、日本財団の多彩な公益活動や創業者でSylffの創設者でもある良一元会長国の足跡と貢献は、もう少し客観的に見直すされるべき時期に来ているのではないかと思う。

「看多機」に見る地域医療の可能性 [2018年06月19日(Tue)]

潜在看護師の復帰あってこそ!
高齢化 多様な医療・介護が不可欠

高齢化に伴う医療・介護需要の増加と40兆円を突破した医療費の膨張、少子化に伴う医療・介護人材の不足―。医療制度の危機が叫ばれる中、日本の医療はこれまでの病院中心から医療、ケア、生活が一体化した「地域包括ケアシステム」に軸足を移しつつある。

加えて核家族化の進行で老人夫婦世帯、一人暮らしの老人が増え、90%以上の高齢者が人生の締めくくりを「自宅で迎えたい」と望む現実もある。今後も多様なシステムが検討されると思うが、地域に密着・共生する医療こそ不可欠と思う。地域包括ケアシステムの一環として2015年度の介護報酬改定で新たに登場した「看護小規模多機能型居宅介護」(通称・看多機)が現時点では最もその可能性を秘めた制度と思われ、過日、その一つ「結の学校」を福島市南沢又に訪問ねた。
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「結に学校」と所長の沼崎美津子さん


「結の学校」の母体は2005年に開設された「訪問看護ステーション結」。所長の沼崎美津子さん(59)は南東北福島病院の元看護部長で、2014年、笹川記念保健協力財団が日本財団の支援でスタートした「在宅看護センター起業家育成事業」の研修に参加。8ヶ月間にわたり地域社会における保健医療の在り方から企業経営に必要な財務・税務・労務などを学び、翌年、「日本財団在宅看護センター結の学校」と「看多機」を併設した。

看多機は「訪問看護」と「小規模多機能型居宅介護」を合わせた複合型サービスで、「小規模」の名の通り、1事業所当たりの利用可能数は「登録」が29人以下、「宿泊」9人以下、「通い」18人以下となっている。現在、全国約350ヵ所に開設され、日本財団の育成事業に参加した研修生50人で見ると39人が全国に立ち上げた計45の事業所のうち2ヶ所が看多機(残りの大半は訪問看護ステーション)となっている。

福島市の郊外のブドウ畑の跡地に立つ「結の学校」には現在、助産師や社会福祉士、管理栄養士らを含め23人のスタッフが所属し、医師とも連絡を取りながら24時間365日、「通い」、「泊まり」、「訪問看護」、「訪問介護」といった多彩な方法で患者を見守っている。病院中心の医療に比べ選択肢が多く、本人だけでなく家族の心労や負担も間違いなく軽減すると思われる。

介護保険料、診療報酬、本人の自己負担が“収入”となるが、沼崎さんによると「経営的には何とか採算が取れ、看護師が患者と密接に接触し症状を把握することで余分な薬剤がカットされ、結果的に医療費の抑制効果も出ている」という。

新しい地域医療の形として注目されるが、問題は同種の施設をどこまで増やせるかー。母体となる訪問看護ステーションは現在、全国約9000ヶ所に整備されているが、65歳以上の高齢人口は2013年の4人に一人から2035年には3人に一人に膨張する。

看多機を支えるのは文字通り看護師・介護師となるが、当の看護師は団塊世代が75歳以上となる2025年に50万人、介護師は30万人不足すると見られている。政府は外国人労働者の受け入れ拡大を検討しているが、看護・介護人材の多くは途上国出身者で、経済発展に伴う各国の看護・介護人材の需要の高まりを前にすると、多くを期待するのは難しい。

結局、将来の医療・介護人材不足は国内で解決するしかなく、その場合に切り札となるのは約60万人に上る潜在看護師しかない。政府が目指す地域包括ケアシステムの構築もこの一点にかかり、潜在看護師の社会活動復帰を促す抜本策こそ必要との思いを一層強くする。(了)
何故か遅れる手話言語法の制定 [2018年05月08日(Tue)]

客観情勢は十分に熟している
多言語が共生する社会こそ


特段の知識はないが、ろう者が手話で対話する姿を見れば、手話が言語であることは容易に分かる。「手話言語法」の制定を求める意見書が全国1788の地方議会すべてで採択され、「手話を広める知事の会」には全47都道府県知事が参加、全国178の自治体が既に「手話言語条例」を制定している事実からしても、社会全体が「手話は言語」と認めていると言っていい。

4月末、東京都内で開催された「手話言語の認知と手話言語法早期制定を求めるフォーラム」など関連の催しに出席した政党関係者の発言を見ても、手話言語法の制定に与野党とも前向きに見える。世界を見ても既に計46ヶ国が憲法や法律などで手話を言語として正式に認知しており、こうした点を踏まえると日本でも手話言語法を制定する機は十分に熟している。

超党派による議員立法の動きもあるようだが、直ちに具体化する気配はなく、何故遅れているのか今一つ不明だ。手話には、ろう者が古くから使い日本語と異なる文法・体系を持つ日本手話と日本語の語順に合わせ手話単語を並べる日本語対応手話があり、どちらを手話言語法の対象にするか、といった問題もあると聞く。

しかし音声言語を見るまでもなく言葉は時代とともに変わる。素人の感想として言えば、外来語などについて音声言語でカタカナ表記が増えているのと同様、手話の世界でも、例えば難解な用語や新語について、日本手話の中に日本語対応手話を取り込むようなケースが増えるのではないかー。

全体で約36万人といわれる聴覚障害者も、全く聞こえない人から聞こえにくい人、高齢化に伴い難聴になった人、中途失聴者まで幅広い。口の形や補聴器などを活用し音声言語を身に付ける(聴覚口話法)人や補聴器、筆談を活用する人も多く、手話だけで生活する人は約6万人と聞く。多様な形で意思疎通、コミュニケーションが行われているということであろう。

フォーラムで講演した本名信行・青山学院大名誉教授は「人間は生物学的な特質として言葉を持って生まれてくる」とした上で、「聞こえの喪失は話し言葉の取得を困難にするが、そのかわりに手話の学習をうながす」と指摘、手話を「人間のもうひとつの言葉」と定義した。この場合、ろう児が言語獲得の臨界期である5歳ぐらいまでに手話を身に付けるには「家族が手話で接するなど少しでも手話が使われる環境で育つのが望ましい」とも指摘した。

手話言語法が制定されれば、健聴者が学校などで手話を学ぶ機会は増える。手話を言語とする世界は広がり、聞こえに問題がある子どもが手話を身に付ける環境の整備も進む。結果、多彩な受け皿が相互に補完し合う形で音声言語と手話言語、ろう社会と音声言語社会の共生も進むと思う。

手話は長い間、苦難の歴史が続いた。1880年、イタリア・ミラノで開催された第2回聴覚障害教育国際会議が口話教育推進を決定、わが国でも1933年、文部大臣が聴覚口話法による口話教育の徹底を訓示し、手話の言語性が否定された。

2010年、第21回聴覚障害教育国際会議が「ろう教育は全ての言語を受け入れる」と手話否定の歴史を全面撤回したが、耳が聞こえない、音声言語を話せないというだけで“差別”する社会の雰囲気は今なお残る。手話言語法を情報コミュニケーション法とともに早期に成立させることが、そうした社会を変え聴覚障害者の自立と社会参加を加速させることにつながる。(了)
特別養子縁組の普及に向けて [2018年04月12日(Thu)]

求められる司法の柔軟な判断
優先されるべきは子どもの幸せ


子どもが生みの親に育てられるのが一番幸せなのは言うまでもない。しかし何らかの理由で不可能な場合もある。こうした子どもに新しい家庭環境を提供する方法として1987年、育ての親(養親)が戸籍上の実親となる「特別養子縁組」制度が民法に追加された。養親となる者の請求により家庭裁判所が判断するが、2016年実績は495件、欧米諸国に比べ一桁あるいはそれ以上少なく、厚生労働省も昨年夏、2022年までに年間1000件まで倍増させる方針を打ち出している。

普及が進まない理由はいろいろあるが、一番の原因は実親の同意を得る難しさ。読売新聞が3月、紙面に掲載した調査結果でも全国69の児童相談所のうち65相談所がこの点を特別養子縁組が進まない理由に挙げた。民法が特別養子縁組の成立要件としている「父母の同意」と「子の利益」をどう調和させるかがポイントとなる。

民法は第817条の6(父母の同意)で「特別養子縁組の成立には、養子となる者の父母の同意がなければならない。ただし、父母がその意思を表示することができない場合又は父母による虐待、悪意の遺棄その他養子となる者の利益を著しく害する事由がある場合は、この限りでない」とし、第817条の7(特別養子縁組の成立基準)で「特別養子縁組は、父母による養子となる者の監護が著しく困難又は不適当であることその他特別の事情がある場合において、子の利益のため特に必要があると認めるときに、これを成立させるものとする」
としている。

条文上は6項の「虐待、悪意の遺棄その他養子となる者の利益を著しく害する事由がある場合」を除いて父母の同意が必要となるが、7項の「父母による監護が不適当である場合」や「子の利益のため特に必要があると認めるとき」を前向きに解釈すれば特別養子縁組が成立する余地はもっと増えると思われる。

現に子の利益を重視した司法判断も出ている。7年間にわたり女児を育てた夫婦が求めた特別養子縁組の審判で宇都宮家裁は2014年2月、実親からの経済的支援の申し出や交流がなかったことを理由に、虐待などの事実がなかったにもかかわらず「新たな親子関係を築くことが子の福祉のためになる」として特別養子縁組の成立を認めた。

翌年9月には大阪高裁が、未成年の女性が生んだ赤ちゃんを出産直後から育てた夫婦の特別養子縁組許可の申し立てを、実母による監護は困難とする一方、夫婦が監護することに問題があるとは言えないとして、申し立てを却下した家裁の審判を取り消し特別養子縁組の成立を認めた。いずれも虐待などの事実はなく、親の同意より子どもの利益に重きを置いた判断と言える。

厚生労働省の「施設で暮らす子どもと家族との交流状況調査」(2013年)によると、乳児院にいる子ども約3150人、養護施設の約3万にのうち19〜18%には生みの親との交流が全くない。面会にも来ない実親にどこまで監護を期待できるか。一定期間、面会のない実親の親権を制限する米国などの対応の方が、より理に適っている。

4月4日の「養子の日」に関連して各地で催しが開かれ、日本財団も4月7日、渋谷で座談会などイベントを開催した。文部科学省が3月公表した女子高生の妊娠に関する初の実態調査によると、公立高校が2015〜2016年度に把握した妊娠件数は2098件、うち3割が自主退学していた。「好まぬ妊娠」、「予期せぬ妊娠」はさらに増え、一方で特別養子縁組を望む夫婦も増えている。

実親と暮らせない子どもには特別養子縁組という別の家庭があることがもっと広く認識されるべきで、他の法律との兼ね合いなど検討事項もあろうが、司法の一層の柔軟な判断を期待する。昨年5月の本ブログでも触れたが、何よりも尊重されるべきは「子どもの幸せ」である。
一方的なミャンマー政府批判は拙速 [2018年03月23日(Fri)]

八方塞がりの「ロヒンギャ」問題
動きとれぬスー・チー国家顧問


ベンガル系のイスラム教徒「ロヒンギャ」問題で欧米各国を中心にした国際社会のミャンマー政府批判が激しさを増している。放火、殺人、略奪、強姦など激しい迫害で約80万人が国外に避難しているとされ難民救済が喫緊の課題であるのは言うまでもない。

しかし問題の背景には英国の植民地時代も含めた複雑な歴史、135もの少数民族が住み独立後70年を経た現在も一部少数民族武装勢力との内戦が続くこの国にとって、民族・宗教問題が複雑に絡むこの問題の解決はあまりに難しい。有効な解決策を示さないまま一方的に非難するのは事態をかえって混乱させる結果になりかねない。

批判の背景には、民主化運動で軍政からの政権交代を実現しノーベル平和賞も受賞したアウン・サン・スー・チー国家顧問に対する過大な期待があると思われるが、一人の決断で事態が好転するほど生易しい問題ではない。政権を取ったとはいえ与党の国民民主連盟(NLD)にこうした問題に対応できる人材は育っていないと思われ、軍と警察、国境問題は憲法上、軍のコントロール下にある。

加えて国際世論も割れている。例えばミャンマー政府に軍事力行使の停止や制限のない人道支援を認めるよう求めた国連総会の決議案。2017年11月、135カ国の賛成で採択されたが、中国、ロシアなど10カ国は反対、日本、インドなど26カ国は棄権した。難民の避難先となるタイやバングラデシュ、インドネシア、マレーシアなど周辺国に難民認定の動きはなく入国すれば不法滞在者の扱いとなる。

「ロヒンギャ」と名乗るイスラム系少数民族は全体で約200万人弱、約半数がバングラデシュと接するラカイン州に住む。しかし何時からミャンマーに住み、どうしてロヒンギャを名乗るようになったのか、その意味を含めはっきりしない点が多くミャンマー政府は土着の民族と認めていない。ミャンマーを訪れる度に政府やNGO関係者らにこの点を尋ねたが、誰もが「他の少数民族とは違う」と答え、日本政府も「ベンガル系イスラム教徒」、「ラカイン州のムスリム」といった表現を使っている。

ラカイン州には仏教徒であるアラカン人が多く住み、ミャンマー国民の7割を占める支配勢力ビルマ族と対立、2015年10月に武装勢力「アラカン解放党」(ALP)がミャンマー政府との停戦署名に応ずるまで内戦を続ける一方でイスラム教徒とも激しく対立してきた。ミャンマー国軍や警察、自警団によるイスラム教徒ムスリムへの殺人や放火、強姦など迫害が続く中、ムスリム過激派の「アラカン・ロヒンギャ救世軍」(ARSA)による駐在所攻撃なども発生、対立は激しさを増している。

こうした中、ミャンマー政府は国連人権理事会が派遣を決議した国際調査団の受け入れを拒否し外国メディアの取材も制限している。個人としては問題点を国際的に明らかにするためにも、調査団の受け入れを前向きに検討すべきと考えるが、国連とミャンマー政府の考えには大きな隔たりがある。

外電によると3月16日、オーストラリア人弁護士がスー・チー国家顧問を「人道に対する罪」で裁くようオーストラリアの地方裁判所に申し立てた。オーストラリアは国家や加害者の国籍に関係なく人道犯罪や戦争犯罪を自国で裁ける「普遍的管轄権」を採用しており、これに基づく申し立てというが、他の紛争地を見るまでもなく宗教・民族問題の解決は難しく時間が掛かる。一方的な申し立ては、ただでさえ身動きがとれぬスー・チー国家顧問をさらに難しい立場に追いやることになる。

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仏教徒、ムスリムの子どもたちが通うラカイン州の小学校=BAJ提供=


解決の糸口が見えない中、日本財団がNPO法人ブリッジエーシアジャパン(BAJ)とともにラカイン州で進めた学校建設事業が3月、100校完成の節目を迎え、その記念式に出席した。うち8校は仏教徒、ムスリム、ヒンドゥーなど宗教も民族も違う子供たちが通う学校となっており、訪問時は学年末の休暇中だったが特段の混乱は起きていないという。八方塞がりの状態にあるロヒンギャ問題の解決は、こんな息の長い取り組みの先にしか見えてこない気もする。
温暖化対策にらみ現実的な選択を [2018年02月22日(Thu)]

原発即時停止、再稼働禁止は疑問
化石燃料の削減こそ第一義



「原発ゼロ」を目指す動きが高まっている。小泉純一郎元首相らが顧問を務める原発ゼロ・自然エネルギー推進連盟が1月、稼働中の原発の即時停止や再稼動禁止などを盛り込んだ「原発ゼロ・自然エネルギー基本法案」を発表したのに続き、立憲民主党も「原発ゼロ基本法案」を3月、国会に提出する構えを見せている。将来の原発ゼロに異存はない。ただし即時停止や再稼動禁止には現時点では賛同できない。再生可能な自然エネルギーの開発になお時間が掛かる以上、温暖化防止の観点からも現存する原発の利用は避けられないと考えるからだ。

原発は発電時に温暖化の原因となる二酸化炭素(CO2)は発生しないものの放射性廃棄物の処理というほぼ解決不可能な難題が付きまとう。福島原発事故のように不測の事態が起きれば甚大な被害が広範囲に発生し廃炉にも膨大な時間とコストが掛かる。石油、石炭、LNG(液化天然ガス)などに比べ発電に要するトータルコストは高いと思われ、白紙の状態で建設の是非を問われれば「反対」と答えることになる。

しかし日本には現実に世界3位、40基を超す原発が存在する。自然エネルギーの開発が伴わないまま全面的に稼動をストップすれば、必要な電力の確保は石油、石炭やLNGなど化石燃料に頼らざるを得ず、もう一つの大きな課題である地球温暖化対策、即ち2015年のパリ協定で定めた二酸化炭素(CO2)の排出削減が難しくなる。

地球温暖化の原因に関しては専門家の意見も分かれているようだが、素人目にはCO2など温室効果ガスの排出が多分に影響しているのは間違いないように見える。国連の気候変動に関する政府間パネル(IPCC)も最近、地球温暖化が今のペースで進むと2040年代には世界の平均気温の上昇が1・5度に達し自然災害や生態系の破壊が深刻化し、今世紀半ばには温室効果ガスの排出をゼロにする必要があると警告する特別報告書の素案をまとめたと報じられている。

世界5位のCO2排出国である日本は、2030年までに温室効果ガスの排出量を2013年度比で26%、2050年には80%削減するとしている。2030年の電源構成は石炭・石油29%、天然ガス27%、原子力20~22%、再生可能エネルギー22~24%としており、原発ゼロとなればその分、再生可能エネルギーを増やすしかない。

小泉元首相らの原発ゼロ・自然エネルギー基本法案では自然エネルギーの電力比率を2030年までに50%、2050年までに100%に引き上げる、としており、実現できればそれに勝る策はないが、現実には再生可能エネルギーの開発が思うように進まないまま化石燃料の使用量が増えている。

2016年現在、水力を含めた自然エネルギーは全体の21%。水力以外の太陽光や風力、地熱などは8・5%に留まり、個人的には地熱に期待するが、10年後に50%を達成するのは難しいのではないか。結果、化石燃料への依存が高止まりの状態で続く事態を危惧する。温室効果ガスの排出を可能な限り抑えるためにも、当面は安全基準を満たした原発を活用していくのが現実的な選択と考える。

原発事故発生以来7年間、計20回にわたり福島の住民とのダイアログセミナーを重ねてきた国際放射線防護委員会(ICRP)のジャック・ロシャール副委員長が2月10、11両日、セミナー出席のため来日したのを機に感想を求めたところ「温暖化の関係は専門外」としながらも原発の利活用の必要性を語った。

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ジャック・ロシャールICRP副委員長

「福島事故、温暖化問題も加わり、世界の多くの国が再生可能エネルギーへの転換を迫られている。しかし原子力、石炭火力、石油、再生可能エネルギーのいずれにも問題がある。要はエネルギー確保に向け、どのようなベストミックスを考えるかが重要で、原子力だけを選択から外すのは得策と思えない」

原発を中心にした電力政策を進めてきたロシャール氏の母国フランスは、マクロン大統領が稼働中の原発58基のうち17基程度を閉鎖し原発依存度を現在の70%から50%以下に引き下げる方針を発表した。原発の見直しー再生可能エネルギーへの転換は世界的な傾向となりつつあるが、一方で中国やASEAN(東南アジア諸港連合)諸国には、電力確保に向け原発を強化する動きも見える。

再生可能エネルギーの開発を急ぐべきは言うまでもなく、自然エネルギーを尊ぶ最近のトレンドからも企業の投資が再生可能エネルギーの開発に向かい、その分、開発も加速されると期待する。

原発事故を体験した日本は、その経験を踏まえた安全な原子力技術、世界の最先端を行く廃炉技術を開発して行く立場にある。原発をめぐる議論はとかく賛否が鋭く対立し中間の議論が希薄な状態にある。温暖化対策を視野に置いた現実的な議論を望みたい。
重監房、特別法廷は何だったのか? [2018年01月22日(Mon)]

ハンセン病対策 後世に伝える必要
偏見・差別を助長した「負の遺産」


1月28日は「世界ハンセン病の日」。今年も1月30日にインド・ニューデリーで、ハンセン病患者・家族に対する偏見・差別の撤廃を訴えるグローバルアピールが日本財団と「障害者インターナショナル」(DPI)の連名で発表される。これを機会に我国の「重監房」(特別病室)と「特別法廷」(隔離法廷)について、あらためて記しておきたいと思う。特別法廷に関しては最高裁が16年、最高検が昨年、謝罪した経過があり、やや時期外れの感はあるが、あらゆる偏見・差別に関する歴史的な負の遺産として長く語り継ぐ必要があると考えるからだ。

重監房は1938年、群馬県草津町の国立療養所栗生楽泉園の敷地内に作られた。強制隔離や結婚する場合の優生手術(避妊手術)など“ハンセン病絶滅政策”がとられる中、全国13ヵ所の療養所に逃亡や反抗を罰する「監房」が整備され、重監房には、とりわけ反抗的な入監者が全国から集められた。

「療養所の秩序を保つ」を名目に「特別病室」の名を付しているが、現実には患者を重罰に処すための懲罰施設。標高1000メートルを超す草津の郊外に4畳半ほどの独房が8つあった。1947年に閉鎖されるまで9年間に93人が収監され23人が在監中、または出て間なく死亡している。

2014年に開所した重監房資料館内に原寸大の重監房2室が設けられ、昨年10月に訪問した際、小さな入り口から中をのぞくと、板敷きの間には小さな明り取り、逃亡防止のためか浅く掘られたトイレの穴しか見当たらず、収監者はここで薄い布団1枚で寝起きした。真冬の温度はマイナス20度にも達したといわれ、「患者懲戒検束規定」で「監禁期間は最長2ヵ月」とされたものの500日以上、留め置かれた収監者もいた。

国会でも問題となり、厚生省(当時)が使用中止にした後、解体され、跡地には1982年に建立された「重監房跡」の石碑がある。

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跡地に建つ「重監房」の石碑


後を追うように1948年から始まったのが特別法廷。下級裁判所からの臨時法廷使用の上申を最高裁が認可する形で1972年までに95件の裁判がハンセン病療養所や刑事収容施設で行われた。撤回が1件あるが、実質的な認可率は100%。1952年、熊本県内で発生した殺人事件(菊池事件)の裁判も国立ハンセン病療養所・菊池恵楓園などに設置された特別法廷で行われた。

九州弁護士連合会の「ハンセン病『特別法廷』と司法の責任に関する決議」は特別法廷の模様を「消毒液の臭いが立ち込め、裁判官、検察官、弁護人はいずれも予防衣と呼ばれる白衣を着用し、長靴を履き、手袋を付けた上で調書や証拠物を火箸等で取り扱った」と記している。

事件は翌年に死刑判決が確定、第3次再審の請求が棄却となった1962年に死刑が執行されており、どこまで厳正な証拠調べなどが行われたか疑問が残る。最初から「有罪ありき」の特殊な裁判だった気さえする。開廷の告示を掲示したとされているが、強制隔離政策に伴う偏見・差別の中、裁判の公正を図るための公開の原則(憲法82条)などが本当に担保されたのかも疑わしい。

ハンセン病患者の強制隔離政策は1996年の「らい予防法」廃止まで90年間続いた。2年後、熊本地裁に「らい予防法違憲国家賠償請求訴訟」が提起され2001年5月に原告側勝訴の判決が出され国と国会は謝罪した。最高裁は全国ハンセン病療養所入所者協議会(全療協)などが出した「特別法廷設置の検証要請」を受け事務総局に調査委員会を設置、その報告書に基づき2016年4月にようやく「偏見・差別を助長し、人格と尊厳を傷付けた」として謝罪した。

最高検察庁も翌年、特別法廷に関与した責任を認め謝罪したが、全療協が菊池事件について求めた再審請求は見送り、元患者(回復者)6人が昨年9月、検察が再審請求をしないことで精神的苦痛を受けたとして国家賠償請求訴訟を熊本地裁に起こしている。

以上が経過の概略で、本来の請求者である遺族が再審請求を行うのが難しい状況にあるとされ、起訴した検察が自ら行うよう求めている。困難な訴訟になると思われるが、特別法廷の特殊な経過からすれば、司法にも柔軟な対応を求めたい。

例えば最高裁は、治療薬の普及でハンセン病が治る病気となった1960年以降の特別法廷は裁判所法に反する、としているが、それではそれ以前の特別法廷の認可やその運用に問題がなかったのかー。特別法廷で審理された95件中26件は菊池医療刑務所で行われており、特別法廷の実態を後世に伝える意味でも、密度の濃い審理が期待される。

ハンセン病は1980年代初頭の治療薬の開発で「治る病気」となり、日本財団、次いでノバルティス財団の協力により世界で無料配布され、最盛期、世界で1000万人を超えるとされた患者は大幅に減少している。それでも2016年には世界で21万5000人の新たな患者が発生しているほか、患者・回復者に対する偏見・差別は依然、深刻。そうした実態を改善するためにも我国のハンセン病対策の歴史は詳細に残される必要がある。
障害者就労の枠組み強化を! [2017年12月22日(Fri)]

理解に苦しむ工賃「月1万5千円」
少子高齢化問題解決の試金石



1ヶ月 1万5千円。全国で約20万人の障害者が働く「就労継続支援B型事業」の「工賃」の低さが改めて問題となっている。これでは障害年金を加えても自立は難しい。身体障害者、知的障害者、精神障害者の数は約800万人、加齢に伴い障害を抱える高齢者も急増している。少子高齢化時代を迎え、こうした人達の社会参加・就労の場の拡大は不可欠。B型事業所の改革はその試金石となる。

障害者総合支援法に基づく就労系障害福祉サービスには、一般企業への就職を目指し訓練を行う「就労移行支援」と一般企業への就職が難しい障害者に就労の場を提供する「就労継続支援」の2タイプがある。後者は「A型」と「B型」に分かれ、A型は雇用契約を結び最低賃金制の適用も受け賃金の支払いを受ける。これに対しB型は重度の障害者が多く、雇用契約は結ばず、最低賃金制の適用も受けないため支払いも「工賃」と呼ばれる。

厚生労働省の資料などによると、A型は全国約3600の事業所で5万3000人が働き、2015年の平均賃金は月6万7795円。一方、B型は約10700ヵ所の事業所で20万3000人が働き、1カ月当たりの平均工賃は1万5033円。賃金、工賃とも、事業に伴う売り上げから必要経費を差し引いた残りを分配する形がとられ、B型の工賃はこの10年間で3000円弱の上昇がみられるが、一貫して低水準で推移しており、障害者の多くが障害年金のほか生活保護に頼らざるを得ない現実がある。

一方で事業所にはA型、B型とも、収益の多寡とは無関係に障害者一人を受け入れるごとに1日約6000円、1カ月で12〜18万円の給付金(支援報酬)が支給され、就労継続支援事業が活気を欠く原因と指摘されてきた。この夏、各地で障害者が働き場所を失う事態となったA型事業所の閉鎖も、こうした制度上の問題に起因している。

障害者の就労時間を圧縮すれば給付金で賃金を払っても事業所経営が成り立つ余地が生まれ、そうした事態の防止に向け、厚生労働省が運用基準を強化、給付金から賃金を支払うのを禁止した結果、事業所閉鎖につながったということのようだ。A型、B型とも、訓練を通じて一般企業での就労を目指す点は同じで、就労時間を意図的に圧縮したのでは制度の否定につながり、「悪しきA型」といった批判が出たのも無理からぬところだ。

日本財団が12月上旬、東京・新宿で開いた「就労支援フォーラムNIPPON2017」に出席した厚労省社会・援護局の障害福祉担当課長は、報酬体系を賃金や工賃の向上、一般就労への移行実績を反映できる体系に見直す方針を説明した。

来年4月には民間企業に義務付けられている障害者の法定雇用率が現行の2%から2・2%に引き上げられる。設置主体の過半を営利法人が占めるA型にしろ、社会福祉法人が半数近くを占めるB型にしろ、事業である以上、収益を上げる仕組みは欠かせず、個人的には企業の参入は就労の場を確保・拡大していく上でも不可欠と思う。

特にB型は、障害者によって就労時間が一定しないなど難しい要素があるのは否定しないが、日本財団が「工賃3倍増」を目指して支援に取り組む鳥取県の事業所などを見学すると、菓子の袋詰め作業などに障害者が黙々と取り組み、現実に3倍増の達成が目前に来ている。月20日も働いて1万5000円というのは、どう見ても納得し難い。

一部には「B型事業所はあくまで訓練の場で収益は無関係」、「障害者は軽作業しかできず低工賃は当然」といった声もあると聞くが、それでは今後、就労場所を必要とする他の障害者や今後、急増する高齢の障害者などの社会参加は進まない。少子高齢化で労働力不足などが言われているが、工夫すれば障害者が一般就労できる職場は少なくないはずだ。B型事業所における新たな就労モデルの確立こそ、その第一歩である。
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