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四季折々の雑記

 05年夏まで在籍したマスコミの世界は極力、主観を排した客観報道を原則とした。しかし真の意味で「客観」を実現するのは報道の現場に限らず難しい。ブログと言うには程遠いが、忘れない程度に自分の想い、時に意見をささやかに書いていくつもりです。


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もはや“待ったなし”の国会改革 [2017年11月20日(Mon)]

総理、100日以上国会に張り付け
“喫緊の課題”、小泉議員決意語る


新しい国際秩序の構築に向け国際社会の動きが激しさを増している。そんな中、自民党筆頭副幹事長の小泉進次郎衆院議員が11月17日、「日本の行方を総理に誤ることなく決断してもらうためにも年間100日以上も国会に張り付けることが日本国民にとって最善の形なのか」と疑問を提示、「与野党の枠を越えて国会改革を成し遂げるべきだ」と決意を語り注目を集めた。

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国会改革の必要性を語る小泉議員


国会改革を求める動きは、与野党有志による改革提言や2014年4月の4党(自民、公明、民主、日本維新の会)合意による改革案、経営者や有識者でつくる「日本アカデメイア」による改革提言などが繰り返されてきたが、目立った成果は見られない。社会が転換期を迎え迅速な対応が求められる中、国会改革はどの政党が政権に就こうと、最早、避けて通れない喫緊の課題である。早急な改革が国権の最高機関としての信頼を取り戻す道でもある。

小泉議員の発言は17日、東京都千代田区で日本財団が開催した「日本財団ソーシャルイノベーションフォーラム」の基調講演で行われた。この中で小泉議員は「世界は今、新しい秩序に向けて、どの国がどれだけ自国利益を獲得していくか、むき出しの権力闘争の中にある」とした上で、「総理が国会に出ることが説明責任を果たしている、あるいは出ること自体が目的化している、といった現状が日本の国益になるとはどうしても思えない」、「世界の中の日本を考えた時、強い危機感を持つ」と述べた。

日本アカデメイアが2012年に行った緊急提言によると、日本の総理大臣が2011年に本会議や予算委員会など国会に出席した日数は127日、英首相は36日、独仏両国首相は11〜12日となっており、財務大臣は207日、外務大臣は165日とさらに多い。現在も出席日数に大きな変化はなく、小泉議員は「このような国は世界にない」と言い切った。

中でも衆参両院の予算委員会。本来、内閣が作成した予算案を審議する場で、総理を含め閣僚全員が朝から夕方まで出席するが、実態はあらゆる政治課題を審議する「何でもあり」の場となっており、質問内容を事前に通告する原則があるものの通告以外の内容を質問してはいけないルールもない。結局、総理以下、多くの閣僚が張り付く形となっている。

小泉議員は、総理大臣にしか答えることができないテーマに関しては総理にいくらでも答えてもらえばいい、とする一方で、全質問に総理が対応する現状には疑問を呈した。現実にも質問内容の「事前通告」を徹底して、内容によっては他の委員会に回し、総理以外でも答えられるテーマに関しては関係閣僚や副大臣、政務官が答えるようにすれば、総理や閣僚がいたずらに委員会に縛られる事態は大幅に緩和できるはずだ。

改革が進まない原因について小泉議員は「(国会を)より良い姿にしたいというベクトルより、今までやってきたようにやりたい、という前例踏襲主義がある」と指摘した。政治の世界に権謀術数や駆け引きがあるのは当然として、外交が国の将来を左右するこの時代に総理や関係閣僚を必要以上に縛る国会の姿が国民に理解されているとは考えにくく、政治不信を助長する結果を招いているように思う。

憲法63条は「内閣総理大臣やその他の国務大臣は、・・答弁又は説明のため出席を求められたときは、出席しなければならない」と定めており、本格的な国会改革には憲法改正が必要と思う。しかし小泉議員は特別国会初日の11月1日、首班指名、衆院議長、副議長選出の記名投票で1時間50分掛かった、とした上で、参議院が評決に当たり導入している「押しボタン式投票」が衆議院には導入されていない点にも触れた。

慣例で議長は与党第一党、副議長は野党第一党から選ぶと決まっており、記名投票にする必要はない、との趣旨と理解したが、国会には満場一致、異議なし採決、起立採決などもあり、そうした方法を採ることで審理を迅速化する改革はいくらでもあるはずだ。小泉議員らの改革の動きが少しでも加速するよう望みたい。
異例の展開の総選挙に思う [2017年10月27日(Fri)]

「排除」は当然、理念・政策の一致こそ
「高齢化」対策が語られない不思議



臨時国会の冒頭解散に始まった今回の総選挙は、希望の党の立ち上げと民進党の合流、立憲民主党の結党、大型台風が列島を直撃する中での投票日、自民党の予想を越える大勝と、目まぐるしく事態が展開し “極めて興味深い選挙”となった。特に印象の強い2点に絞り感想を記したい。

▼“落としどころ”が希薄な危うさ

まずは小池百合子・希望の党代表の「排除」発言。「排除します」の一言には傲慢な印象が付きまとい、小池代表は明らかに言葉の選択を誤った。希望の党に対する期待は一挙にしぼみ、小池代表も25日開催された同党の両院議員懇談会で謝罪した。しかし新党を立ち上げる以上、理念・政策を同じくする人物を糾合するのは当然で、希望の党に変わって躍進した立憲民主党の枝野幸夫代表が選挙後に示した「我々の旗の下、同じ考え方の皆さんと勢力を広げたい」との考えも、表現こそ違え意味は同じである。

無原則に受け入れたのでは左右両派が同居し迷走した民進党の二の舞になり、それこそ有権者にとって迷惑な話である。民進党は希望の党、立憲民主党、無所属の3つに分れて選挙に臨み、報道によれば計108人が当選、衆院解散時に比べ11議席増えたとされている。離党者が相次いだ民進党のままで選挙に臨んでいれば、これだけの数が当選することは、まず有り得なかった。

その意味でも「排除の論理」は正しく、それを持って小池氏が党代表を退く必要はない。ただし都政を見るまでもなく、小池代表には、いろいろな問題を提起して衆目を集める一方で、 当然、用意されるべき“落としどころ”が希薄な危うさがある。「都民ファースト」を唱えるだけでは事態は進まず、都政にしろ、国政にしろ、早晩行き詰まる。当面は国民の関心が高い2020年の東京五輪・パラリンピックの無事開催に向け、都政に邁進すべきと思う。

▼見えない社会保障の将来

次いで、安倍信三首相が「国難」と表現する「少子高齢化」。乱暴に言えば、65歳以上の高齢人口に関わる年金、医療、介護など社会保障費をどう確保し、現役世代や次世代の子どもの負担をどこまで軽減するか、さらに高齢者に偏った社会保障をどのように全世代型に変えていくかが、この問題の焦点である。70歳を超えた自らの立場からも注目したが、教育や保育の無償化など「少子」対策には各党が活発に言及したものの、「高齢化」対策は不思議なほど語られなかった気がする。

最終的な解決策としては、「入り」を増やすか、「出」を減らすしかない。しかし社会保障費の財源の多くを赤字国債に頼ってきた結果、国の借金は1070兆円と危険水域にあり、このままでは破綻しかねない。さりとて景気回復による大幅な税収増が当面、期待薄である以上、「入り」を増やすには消費税の引き上げしかない。既に医療費の本人負担の引き上げなど見直しが進められている「出」の削減も、今後の急速な高齢化を前にすれば、余程大胆な策を採らない限り帳尻は合わない。

一方で、今回の総選挙を見るまでもなく、投票率は60歳代以上が他世代より高く、票への影響を考えると各党が大胆な提案に二の足を踏むのも分らない訳ではない。しかし昨年9月時点で3494万人、人口の27・3%に達した高齢人口は今後も増加が続き、14歳〜64歳の生産年齢人口2・2人で高齢者一人を支える社会構造はさらに厳しさを増す。社会保障制度の将来が見えない状況は今後も続き、家計金融資産が過去最高の1800兆円になっても、こうした不安を抱えたままでは国内消費の伸びも期待できない。

それでは打つ手は全くないのか。きめ細かな対策を採ることで事態を緩和する策はいろいろあると思う。毎年1兆円以上拡大し2015年で41・5兆円に達した国民総医療費ひとつとっても、医療費の伸びを抑制する多彩な手段がもっと工夫されていいのではないか。

例えば、健康上の問題がない状態で日常生活を送れる期間を指す「健康寿命」と「平均寿命」の間には男性で約9年、女性は12年を超す差があり、この期間をどう過ごすかが、高齢者の最大の不安となっている。厚生労働省の資料によると、日本人が生涯に費やす医療費は2566万円(2013年度)。男性はうち46%、女性は53%を70歳以上に使い、健康寿命が終了すると医療費も激増する。となると健康寿命を引き上げることができれば、医療費も減る理屈。高齢者が利用できる運動プログラムや施設の整備が、もっと積極的に提案されていいように思う。

一方で元気な老人は増え、2017年現在、4・5人に1人、770万人が何らかの形で働いている。高度の技術、知識を持った人も多い。就業の機会を含め社会参加する受け皿を増やし、何らかの形で多少の収入が得られる制度を整備すれば、年金や介護費用の圧縮も期待できる。

少子高齢化の最先端を走る日本の試みには世界も注目している。どのような社会を創るにせよ政治の決断は欠かせず、与野党から責任ある提案が積極的になされる必要がある。そのためにも「数合わせ」の再編より、各党が自らの理念・政策を競い合う政界の姿の方が時代に合っている気がする。

ジビエ活用で災いを福となす [2017年09月26日(Tue)]

鳥獣による農作物被害で
「食のみやこ」目指す鳥取県



人口最少の鳥取県が「とっとりジビエ」の全国ブランド化を目指している。シカやイノシシなどによる農作物の被害が全国的に拡大する中、侵入防止柵の設置など守りの姿勢から一転して、捕獲した野生鳥獣の肉(ジビエ)を地域資源として活用するのが狙い。人口減少時代を迎え、中山間地を中心にした地域社会の崩壊・消滅が懸念される中、近年、大きな社会問題となっている「所有者不明の土地の増加」を見るまでもなく、事態打開には発想の転換こそ欠かせない。その意味でも「とっとりジビエ」の今後に注目したい。

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鳥取県では昨年、7千頭を超すシカが捕獲された=鳥取県提供=


昨年3月、環境庁が発表した資料によると、2013年度末現在、北海道を除く本州以南に生息するイノシシは推定98万頭、シカは305万頭、農作物の被害額は約200億円。イノシシは2年前に比べほぼ横ばいだが、シカは1989年の調査開始以来、約30年で10倍に増えた。現在の捕獲率で行くと23年度のシカの生息数は453万頭まで増え、目標の半分に抑えるには捕獲数を現在の2倍以上にする必要があると報告されている。

当の鳥取県の昨年の捕獲数はイノシシが1万1970頭、シカが7274頭。前年に比べ20〜45%増え、被害も55%増の8990万円に上っている。解体処理によるジビエなどの利用率は15%。北海道の17%に次いで高く、一昨年2月には「地方創生への道 迷惑ものが資源に変わる」をテーマに第一回日本ジビエサミットも鳥取市で開かれた。

鳥取市やその周辺を中心にした同県東部には昔からジビエを食材に使う伝統があり、“ジビエ活用の先進の地”でもある。鳥取市や隣の八頭町、若桜町などでジビエを提供する24店舗や食肉処理の営業許可を持つ7施設が中心となって5年前に「いなばのジビエ推進協議会」を設立、「森の厄介者を地域のお宝に!」、「鳥取の森の贅沢」などの宣伝文句でジビエの消費拡大に取り組んでいる。

県内には公設、民間合わせ計12ヶ所(全国では172ヵ所)の解体処理施設があり、利用率もこの5年間で2・5倍に増えた。中でも八頭、若桜両町のシカやイノシシを引き受ける「わかさ29(にく)工房」は高い解体処理技術で全国に知られ、たまたま訪問した9月初旬、30分ほどの間にシカ2頭が相次いで軽トラックで持ち込まれ、ワイヤーでつり下げバーナーで表面の毛を焼いた後、瞬く間に解体処理され、河戸健代表は「県外からの見学者も多いが、一様に技術の高さに驚いて帰られます」と語った。

同県は、かつて「スタバはないがスナバ(砂場)はある」の“名言”で県の知名度をアップさせた平井伸治知事を先頭に「食のみやこ鳥取県」を目指しており、ジビエを使った和食料理の普及や地域おこしに向けた日本財団との共同プロジェクトのひとつとして小中学校の給食に実験的にジビエを取り入れるなど全県的な普及を目指している。

とっとりジビエは処理技術とともに「肉質が良い」と首都圏のイタリアンレストランなどにも好評。ただしシカを例にとると、ジビエとしての利用は血抜きをした後、2時間程度が限界。それ以上はペットフード用に回すか埋設や焼却処分されている。捕獲した以上、やはり有効利用されるべきで、今後、処理加工施設や保冷車を備えた移動式処理車などの整備が課題となる。

ジビエを活用する動きは高知市や富山市、長野県下諏訪町、兵庫県佐用町、山梨県早川町など全国各地に広まっており、鳥獣被害防止特別措置法により各自治体の被害防止計画を支援している農水省も鳥獣利活用推進支援事業を立ち上げ、今年1月には東京都内で第1回のジビエ料理コンテストを開催した。

フランスやイタリアなどジビエ料理の本場では、運動量が豊富で自然の恵みを餌として育ったジビエが牛や羊など飼育された動物以上の高級食材、貴族の伝統料理として定着しているという。わが国でもジビエを提供する店は首都圏だけで既に800店を超え、今後も確実に増える勢いにある。

少子高齢化が進む縮小社会の新しい未来を開くには、マイナス要因をプラスに転化する工夫こそ必要。前述した土地問題にしても何の手も打たなければ所有者不明の土地はさらに増え国土は荒廃する。しかし、公益的な活用に道を拓く受け皿づくり、法整備が進めれば、新たな地域おこしの資源として活用できる可能性も増える。

ジビエのさらなる可能性を切り拓くためには若手ハンターの育成や捕獲・処理、加工・調理、販売まで衛生管理面の強化、販路の整備・拡大まで幅広い取り組みが必要になるが、鳥取県の試みが少しでも全国に広がるよう期待する。

臓器移植法施行20年―低迷する日本の移植医療  [2017年08月09日(Wed)]

5年後、現在の10倍・年間1000件目指す
世界最低水準 欧米では既に一般医療に



脳死を中心とした臓器移植が一般医療として各国で広く定着する中、日本だけが大きく取り残されているー。日本財団がこの度、日本臓器移植ネットワーク(JOT)の運営支援に乗り出すのを受け、日本医学会会長でもある門田守人JOT理事長らから話しを聞くうち、かつて厚生省(現厚生労働省)クラブ詰めとして我国の脳死判定基準を取材した1985年当時に比べ、各国との差が著しく拡大しているのを改めて実感する。

脳死ドナー数の推移.png

日本移植学会・ファクトブック2016より

1968年に札幌医科大で行われた我国初の「和田心臓移植」に対する疑念や心停止をもって人の死とする傾向が強い日本人の死生観など、いくつかの原因が考えられるが、少なくとも和田心臓移植が行われた50年前、日本の移植医療は世界のほぼ最先端にあった。

人工臓器の開発やがん治療における先進医療の発展など医学の世界は大きく進歩しているが、小児の心臓疾患など臓器移植でしか治療の見込みのない疾患は多く、超高齢化社会の到来で臓器移植を必要とする高齢者も確実に増えつつある。

▼日本人お断り

JOTによると臓器移植法の施行(1997年)から20年経った現在の我国の臓器提供数は人口100万人当たり0・7人、“移植大国”と呼ばれる米国の37分の1、隣国・韓国の12分の1と世界でも最も低い水準にあり、2016年の臓器提供数は脳死後64件、心停止後32件に留まる。

この結果、これまでに1341人がJOTに登録した心臓移植で見ると、実際に移植を受けられた人は338人、ほぼ同数の313人は移植を受けることなく死亡している。こうした事情もあって1984年から2013年までに156人が海外で心臓移植を受けている(日本移植学会資料)が、2008年、国際移植学会はイスタンブール宣言で「自国民の臓器移植は自国で行うよう」各国に求め、欧州各国や豪州は日本人の受け入れを禁止する措置を取っている。

臓器提供数の少なさを反映して我国では、親族など生存中のドナーが肝臓や腎臓を提供する生体移植が多いが、健康な生体にメスを入れるのは医療の在り方としても問題がある。そうした認識に立ち、ドナーと移植希望者(レシピエント)をつなぐ国内唯一の機関であるJOTと日本財団が脳死や心停止後の臓器移植の拡大を目指すことになった。当面、5年後の脳死移植を現在の10倍、1000件まで増やすのを目標に、脳死に対する啓蒙活動や臓器提供(摘出手術)が可能な約900の大学附属病院など医療施設のネットワーク化、臓器移植コーディネーターの増員などを急ぐことになった。

2010年の改正臓器移植法で本人の意思が不明な場合も家族の承諾があれば脳死後の臓器提供が可能となり、脳死移植に対する国民の理解も改善傾向にある。JOTによると「臓器提供をしたい」とする人は、この15年間で10%以上増加、2013年現在43・1%と「提供したくない」(23・8%)を上回っており、今後の取り組み次第で我国の臓器移植が大きく前進する可能性もある。

▼高齢者の社会参画促すためにも

高齢化時代を迎え大きな課題となっている腎不全を見ても、今年4月現在の人工透析患者は32万人に上り、腎臓移植は生体、献腎を合わせ1670件、0・5%に過ぎない。人工透析は週に3回程度、1回5時間も掛かり、患者は行動を大きく制約されるが、腎臓移植の場合は健康な人とほぼ同様の日常生活が可能。費用も人工透析が年間600万円前後掛かるのに対し、臓器移植の場合は初年度こそほぼ同額が必要だが、2年目以降は3分の1程度で済むとされる。一人でも多くの高齢者の社会参加を求める高齢化社会の要請に応えるためにも臓器移植の普及が望ましいのは言うまでもない。

現在、心臓移植で日本人を受け入れているのは米国とカナダに限られる。関係者によると、米国が外国人の受け入れを認めているのは米国籍を持たない人からの臓器提供が全体の10%以上を占める現実があるからであり、カナダは外国人の受け入れを移植施設ごとに前年実績の5%以下に限定している。いずれにしても日本のように経済的に豊かで医療技術も発達している国が、何時までも外国での臓器提供に頼るのは許されないということだ。

JOTが目指す年間1000件は、イスラエル、韓国、ニュージーランドのレベルを指す。好むと好まざるにかかわらず移植医療を拡大させない限り、国民の健康、ひいては保健医療制度を健全に維持していくことが難しい時代となっていることを広く認識される必要がある。
九州北部豪雨災害 間伐不足が被害拡大 [2017年07月18日(Tue)]

森林、人工林の復活に間伐材の活用を
多くが伐採の適期 経済性をどう取り戻す


九州北部を襲った豪雨災害では限られた地域に猛烈な雨が降り、福岡県朝倉市や東峰村山間部のいたるところで表層崩壊が発生、大量の流木が中小河川を塞き止め被害が拡大した。記録された雨量は24時間で500_を超え、「30年に一度」、「50年に一度」といった豪雨を前にすると、人間の社会活動が地球温暖化―異常気象の大きな原因となっているのは最早、疑いようがない。

同時に今回は、これまでの災害で見られなかった圧倒的な流木が被害を一層、大きくした。報道などによると、この地域の山間部は風化しやすい火山性の地質で、猛烈な雨により、いたるところで表層崩落が起きたのが原因とされ、間伐など手入れの行き届かない人工林の問題も改めて浮き彫りになった。

わが国は国土の67%が森林、うち約40%は人工林と言われる。温暖化の進行で豪雨は今後も起き、人工林の手入れが行き届かない現状では、特殊な地質でなくとも、同様の災害は避けられない。間伐材のバイオマスエネルギーへの活用など森林を復活させる取り組みが改めて急務となる。

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根が付いたまま流れ着いたスギの大木

九州山林管理局などの調査によると、土砂崩れは朝倉市と東峰村の山間部約300ヵ所で発生、大量の土砂と流木が10の河川に殺到。橋に引っかかる形で川をせき止め、あふれた濁流が地域を襲った。福岡県は流木の量を36万立法b、20万dとしているが、土砂に埋まったままの流木や海に流された分は含まれず、実際の量はもっと多いと推測されている。

朝倉市杷木地区で支援活動に取り組む日本財団メンバーによると、近く流れる寒水(そうず)川の長さ7〜8bの若鳩橋周辺にも大量の流木が重なり、流されるうちに表皮がはがれ、根が付いたままの流木も多く、中には直径70a、長さ15bにも成長した巨木も目に付くという。この地域は林業もさかん、人工林からも大量のスギやヒノキが流出したと見られている。

▼建材として出荷までに70年

 全国森林組合連合会のWebサイトなどによると、人工林は戦後、全国的な造林運動として造成され、成長が早く、密集して植えることでまっすぐに育つ特性を持つスギやヒノキ、マツなど針葉樹が植えられた。最も多いスギの場合だと、最初に1f当たり3000本前後の苗木を植え、木の生長に合わせ数年ごとに間伐を繰り返しながら適正数を保ち、最終的に500〜600本まで間伐する。

最初の5〜7年はつる草の除去など下刈り作業。8〜10年頃から育ちの悪い木や邪魔になる広葉樹などを伐採し、10年過ぎから木を真っすぐに成長させるための枝打ち作業を進め、高級建材として最終的に出荷できるまでに70年近く掛かる。この間、15年目ぐらいから間伐材でも一定の商品価値が出るが、当初は何の価値もなく、ひたすら気の遠くなるような作業が続く。

▼80%以上が間伐実施せず

森林の70%以上は個人が所有する私有林。多くが植林後60〜70年、伐採の適期を迎えているが、安価な外材に押されて値崩れし、建設ラッシュにもかかわらず、2000年の立木価格は20年前の34%まで落ち込んでいるという。かつて薪や木炭として使われた間伐材は石油やガスに代わり、一方で伐採に掛かる費用や苗木価格が上昇。人手不足もあって、同年の調査では、3ヘクタール以上の森林経営者のうち82・3%が間伐を実施していない、と答えているという。

森林は手入れを怠れば、葉が茂っている樹冠部分が重なって地面に光が射さず下草が生えない。結果、栄養を含んだ土は雨に流され、根が十分張らないため幹が太らない線香林が増え、風雪害で折れ、大雨で根こそぎ流される。針葉樹は広葉樹に比べ根が浅く、九州北部の豪雨災害では、崩れやすいこの地特有の地質も加わって、圧倒的な豪雨に耐えられなかったようだ。

現状のままでは、森林、特に人工林の経済性は成り立たない。しかし森林の保水力や水質浄化力、さらには今回のような表層崩壊の防止力を見込めば、抜本的な森林対策、人口林対策を進めることで得られる価値は限りなく大きい。しかも「〇〇年に一度」といった豪雨は、今後も間違いなく頻繁に起きる。

間伐材をバイオエネルギーとして活用する試みも進んでいると聞く。東日本大震災での東電原発事故を受け、原子力エネルギーの活用が難しい情勢にある。間伐材を有効に活用する道は十分あるのではないか。そうすれば森林や人工林の手入れを復活させる道も開け、災害対策だけでなく地域おこしにもつながる。未曽有の豪雨被害を前にそんな思いを強くする。(了)
トランプ政権への過度の期待は危険 [2017年06月21日(Wed)]

自分ファーストのパリ協定離脱
国内、国際社会での孤立進む



海をテーマにした初の国連海洋会議が6月初旬、米ニューヨークの国連本部で開催された。温暖化や酸性化、さらにはサンゴの白化現象が急速に進む海の現状に対する危機感がようやく国際的にも共有され始めた感じだ。

そうした中で米トランプ大統領は、地球温暖化対策の国際的枠組みを決めた「パリ協定」からの離脱を宣言、その後の先進7カ国(G7)環境相会合も米国を除く6カ国がパリ協定を実行する旨の共同声明を出したものの、米国に関しては「脚注」で独自に温暖化対策に取り組むと記すにとどめた。

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国連総会本会議で政府間パネルの設置を提案する笹川陽平・日本財団会長

地球環境は現在、温暖化の原因となる世界の2酸化炭素(CO2)濃度が18世紀後半から19世紀にかけた産業革命前に比べ40%、平均気温も1度上昇し、母なる海の温暖化・酸性化が進み、北極、南極の海氷面積は減少、沖縄やオーストラリアのサンゴが死滅する恐れも出ている。

このためパリ協定では、地球の平均気温の上昇を産業革命前に比べ2度未満に抑える目標を設定、世界196ヶ国・地域が締結し2016年発効した。各国がCO2の削減目標を独自に定め、その実現に努力する内容で、目標が現実に達成された場合も、地球温度は産業革命前に比べ3度近く上昇すると言われている。

初の国連海洋会議はこうした危機感を受けて開催され、国連本部で6月9日に開催された国連総会本会議では、異例の措置として民間からの「提案」にも門戸を開放。長年、海に取り組んできた日本財団の笹川陽平会長はIMO(国際海事機関)やFAO(国連食糧農業機関)など、いくつもの組織が独自に問題に対処する縦割りの弊害を正すため、海洋の諸問題を横断的に管理する政府間パネルの設置や未だ80%以上が未解明となっている海底地形図の作成などを提案した。

トランプ大統領のパリ協定離脱表明は、こうした国際社会の流れに明らかに逆行する。パリ協定は先進国だけに排出規制を義務付けた京都議定書に代わって先進国、途上国を問わず全員参加方式で各国が排出規制を進める枠組みとなっており、その土台となる国連気候変動枠組条約を含め、主導したのは米国のオバマ前政権である。政権が変わったからと言って、国としての国際公約をいとも簡単に変更するのはあまりに無責任と言うしかない。

「中国、インドに比べ内容が不公平」、「米国経済に害を与える」を離脱の理由としており、トランプ大統領の支持基盤である中西部・ラストベルト(錆び付いた工業地帯)の石炭産業の活性化が狙いとも言われている。国連気候変動枠組条約には留まる見通しと言われるが、中西部の石炭産業が下火になった最大の原因はシュールガスの登場であり、一方で温暖化対策を念頭においた電気自動車や再生可能エネルギーの開発など新しい産業も成長、社会は温暖化対策と経済成長を両立させる方向に向かっている。

トランプ大統領の決断は中国に次ぐ温室効果ガスの発生国として責任を放棄した形で、時代錯誤的でさえある。離脱表明直後にABCテレビなどが実施した世論調査では離脱反対が59%と賛成の28%を大きく上回ったと報道されており、米国の世論を二分するどころか、トランプ大統領の支持率はさらに低下する可能性もある。

乱暴を承知で言えば、トランプ大統領は世界や米国の利益より自らの利益を優先したと言え、「米国ファースト」と言うより「自分ファースト」と言うしかない。この場合、気になるのは日米同盟との関係である。中華秩序の復興を軸に覇権を求める中国や北朝鮮・金正恩政権の冒険主義とも言える危うさを前にすると、日本の外交・安全保障は今後も日米同盟が基軸となる。

しかし、北朝鮮の核・ICBM開発ひとつとっても、トランプ流の自分ファーストに従えば、ICBMが米国に届くか否かが問題であって、そうでなければ問題はなく「日本の防衛は視界の外」となる可能性さえ出てくる。

日米同盟を軸に我国の安全保障を考えるのは、ある意味、当然として、両国関係を安倍首相とトランプ大統領の信頼・親密な関係に過度に依拠するのは危険ということになる。温暖化の原因に関しては諸説があるが、地球的規模で被害が広がる巨大台風やハリケーンなどを前にすると、人間の活動が原因の一つになっていることは否定できず、パリ協定からの離脱に対する批判はさらに増え、国際社会における米国の孤立も進む。

大統領選ではクリントン候補の“変わり身の早さ”が気になり、どちらが米国の指導者に相応しいのか、判断を迷う面があったが、その後の経過を見る限り、トランプ政権の今後はあまりに危うい。本来、首脳同士の信頼関係は国と国の相互信頼の要となるが、今度ばかりは、過度の期待をおくのは危険な気がする。(了)
生みの親の同意要件を緩和すべき [2017年05月08日(Mon)]

特別養子縁組 親権より子供の幸せ
日本財団調査 養親、養子に高い満足感


何らかの理由で生みの親が育てられない子どもに家庭的環境を提供する特別養子縁組。2009年に国連で採択された「子どもの代替養育に関するガイドライン」でも、子どもの健全な発育に相応しい取り組みとして推奨されている。しかし、日本での成立件数は年間500件前後と海外に比べ極めて少ない。法律的に実親との親子関係が消滅し、親権も養父母に移るため実親の同意が得にくいという事情がある。

そんな中、15歳以上の子がいる特別養子縁組家庭を対象に日本財団が行った調査では、養親の95・6%が「子ども(養子)を育ててよかった」、養子の90%が「養父母に育てられてよかった」と回答、新しい“親子関係”に満足している実態が明らかになった。

欧米では子どもを施設に預け、一定期間、面会に来ないなど適切な養護を怠った場合、親権が消失する制度が導入されている。わが国でも、乳児院で暮らす子ども約3000人のうち20%には親の面会が一切ない現実もある。大切なのは子どもの幸せである。親が責任を果たす見込みのないケースに関しては、生みの親の権利制約など、方策が検討されるべきである。それが特別養子縁組の普及にもつながる。

調査は民間団体の協力で昨年末から年明けに15歳以上の養子がいる家庭878世帯を対象にアンケート方式で行われ、養親から294件、養子から211件の回答を得た。これによると、子ども(養子)の96%は「親(養父母)から愛されていると思っている」と答え、真実(実親の存在)告知に関しても、養親の84・5%がこれを行い、養子の83%が「よかった」と受け止めている。

生みの親が養育できなかった理由は「養育拒否・困難」が30・4%、「若年での妊娠」23・5%、「行方不明17・4%」、「両親の離婚」15・4%など。子どもの26%が養子であることで嫌な思いをしたことがあるとしている半面、74%は嫌な思いをしたことがない、と答えている。

養親の年間収入は平均641万円、養育費も平均13・6万円と全国平均より高く、結果、専門学校や短大、大学への進学率も高く、養親が養子の教育に熱心に取り組む姿が数字で示されている。

日本では社会的養護を必要とする子ども約4万5000人のうち85%は乳児院や社会養護施設で暮らす。施設中心の養護の現状や戦前の家父長的な家制度による親権へのこだわりが、実親が養子縁組に消極的な一因と思われ、厚生労働省の「特別養子縁組制度の利用促進の在り方に関する検討会」の資料でも、特別養子縁組を検討すべきと考えられる事案のうち7割近くが実親の同意要件が障壁となっている、と指摘している。

民法817条は「特別養子縁組の成立には、養子となる者の父母の同意がなければならない」とする一方、「養子となる者の利益を著しく害する事由がある場合」や「父母による養子となる者の監護が著しく困難又は不適当である場合」は親の同意を義務付けていない。

しかし、現実に特別養子縁組の審判を申し立てるのは養親であり、実親の同意がなければ、養子縁組成立後の心的負担も大きい。不同意の理由も「自分では育てられないが養子には出したくない」、「何時かは引き取る」といった自分本位の内容が目立つ。昨年の児童福祉法の改正では、養子縁組に対する相談・支援が児童相談所の主要業務に位置付けられた。しかし児童相談所は近年、虐待対応などに追われ、特別養子縁組に関しても、実親とのトラブルを恐れるあまり判断をためらう傾向もみられる。

少子高齢化や1060兆円にも上る国の借金など国を取り巻く環境が厳しさを増す中、今後の社会政策は、当事者にとって意味があり、社会的費用の合理的な活用につながるといった二つの側面を満たさない限り支持は得にくい。

特別養子縁組の普及は子供に健全な養育環境を提供するだけでなく、全国で40万組もの夫婦が子供を求めて不妊治療に取り組み、一方で中絶件数が新生児の20%近くに当たる18万件にも上る現実を前にすると、条件が整えば広く普及し、助かる命が増える可能性も秘める。

公立の乳児院―社会養護施設で18歳まで育った場合、1人当たりに要する費用は人件費も含め約1億円、民間の場合は5000万円とされる中、施設より里親や養子縁組の方が公的負担は少なく、子どもたちが必要な教育を身に付けることで将来の社会貢献も期待でき、余力を子ども対策の強化に活用できる。

調査では、生みの親の病歴や養子縁組に至った背景など「生みの親に関する情報が十分でなかった」とする養親の声も39・4%に上っている。そうした部分の見直しも含め、社会全体が特別養子縁組の強化に取り組む必要がある。(了)
中国の著名ブロガーが日本に問い掛け [2017年04月13日(Thu)]

「たたくべき時には、たたくべきだ」
北朝鮮核開発で緊張感欠く知識人に


「もし米国が北朝鮮を軍事攻撃するというなら、多くの日本の学者は『戦争はしない方がいい』と反対するが、私はたたくべき時には、たたくべきだと思う。北朝鮮がこれ以上、核兵器を発展させるのなら何故に遠慮する必要があるのでしょうか」―。笹川平和財団・笹川日中友好基金が4月4日、中国の著名ブロガーを招いて開催した出版記念報告会で、元共識メディアグループ総裁・周志興氏(現・米中新視角基金会会長)は会場に向かって、こんな問い掛けをした。

北朝鮮の核・ミサイル開発を巡っては、直後の4月6、7両日に行われた米中首脳会談で「非常に深刻な段階に来ている」との認識は共有されたものの、トランプ米大統領が「中国が協力しない場合、独自の計画を立てる用意がある」と単独行動も辞さない姿勢を打ち出したのに対し、中国の習近平国家主席はあくまで対話を通じた平和的解決を主張し、具体的な合意がないまま終わった、と報じられている。

中国指導部の方針とは違う周氏の発言に会場は一瞬、静まり返ったが、周氏の発言はむしろ、弾道ミサイルの発射など挑発行為を続ける北朝鮮に対し、トランプ政権が「戦略的忍耐は終わった」とするなど危険なまでに緊張が高まる中、なお「戦争はない方がいい」と理念的に唱える日本の知識人の現状認識、緊張感の欠如に疑問を投げ掛ける点に狙いがあった気がする。中国では朝鮮半島情勢を、それほどの緊迫感を持って受け止めている、ということでもある。

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記念報告会は中国の人気ブロガーの招聘プロジェクトを進めてきた笹川日中友好基金が、これに参加した中国人ブロガー22人の体験記を「来た!見た!感じた!! ナゾの国 おどろきの国 でも気になる国 日本」(日本僑報社)にまとめ、3月末に日本語版が出版されたのを記念して東京・虎ノ門の笹川平和財団ビルで開催され、うち10人のブロガーが報告会に出席、それぞれが日本の印象などを語った。

この中で周氏は、日本が中国の改革開放を最初に支持、天安門事件(1989年)でも日本が最初に中国支援を再開した点などを取り上げ、「こうした点は中国でもまだしっかり話されていない」と指摘した上で、「日本に一つだけ不満がある」と前置きして冒頭の発言をした。

会場からの質問に対しても、「ミサイルの発射実験は日本海に向けて行われ日本の現実的な脅威となっている」、「核開発がこれ以上続けば中国も韓国も日本も大きな影響を受ける」と述べた上で、「米国と一緒になって日本も兵を出すということなら日中関係、日ロ関係に問題が生ずる」としながらも、「アメリカが北朝鮮をたたくことに、ただ賛成しないという(日本の学者の)姿勢には疑問を持つ」と重ねて指摘、「(賛成しないというなら)どうすべきか、日本としての態度を表明すべきだ」とも述べた。

周氏ら出席者によると、北朝鮮をめぐり中国では現在、「血と汗を流した友好的な隣国」として引き続き関係維持を求める意見から、「マイナスの資産」と見て、一定の境界線を引くべきだとする意見まで幅広い意見が交わされ、「中国外交は北朝鮮に譲りすぎ」との批判がある半面、「北朝鮮を失えば(中国)東北地域のセキュリティーが侵される」と懸念する声もあるという。

「多くのエリート層が北朝鮮に対する不満を高め、嫌いになっている」、「住民の統治や国際社会への対応など問題も多く金王朝を好きな人はいない」といった現状認識のほか、「中国が何もしないとの批判があるが、北朝鮮の姿は1970年代の中国に極めて似ており中国として言いにくい面もある」(中国中央電視台コメンテーター章弘氏)、「王毅外相は『平和の希望があれば中国は(北朝鮮を)放棄しない』と言っている」(北京外国語大学教授の馬暁霖氏)といった指摘も出され、北朝鮮情勢を巡り中国国内で沸騰した議論が戦わされている現状をうかがわせている。

中国著名ブロガーの招聘事業は2011年から5年間行われ、SNS(ソーシャル・ネットワーキング・サービス)大国と言われる中国で数万から数百万人のフォロワーを持つ人気ブロガー35人が来日、東日本大震災から広島や日中関係、食の安全から伝統文化、日本の祭りや選挙など幅広いテーマを取材、うち22人が「ありのままの日本」として発信し、昨年6月には中国語版が、今年3月には日本語版が出版された。(了)
ハンセン病制圧 いまだ“道半ば” [2017年03月15日(Wed)]

新規患者、なお年間20万人
特筆されるべき治療薬の無料配布


いささか時間が経ったが、今年も1月末の世界ハンセン病の日に、ハンセン病の制圧と偏見・差別の撤廃を訴えるグローバルアピールがインド・ニューデリーで発表された。ハンセン病は1981年に開発されたMDT(多剤併用療法)により「治る病気」となり、患者も順調に減少、天然痘と同様、人類が撲滅に成功するのは時間の問題とも見られたが、ここにきてやや足踏み状態にある。

世界の新規患者は年間約20万人。2000年を目途とした「人口1万人当たり患者1人未満」の国レベルでの制圧目標も、ブラジルがなお未達成の状態にあり、ハンセン病と戦う関係者に失礼を承知であえて言えば、ハンセン病の制圧は“なお道半ば”である。

MDTは3つの薬(リファンピシン、ダプソン、クロファジミン)を成人、子供などタイプに応じて半年から1年間、服用することで症状は治癒する。高校時代に見た米映画「ベン・ハ―」には、ハンセン病を患い洞窟で隔離生活をしていた主人公の母と妹が、十字架を背負いゴルゴダの刑場に向かうイエス・キリストに縋ると皮膚に残った障害が消えるシーンがあった。ハンセン病の患者にとってMDTこそ“神の手”である。

これを受け1991年には、WHO(世界保健機関)の全加盟国が出席した世界保健総会で制圧目標が打ち出され、「公衆衛生上の問題としてのハンセン病の制圧」を2000年末までに達成すると定めた。1994年には、ベトナム・ハノイで開催された初のハンセン病制圧国際会議で日本財団がMDTの購入費として1995年から5年間、毎年1000万ドルをWHOに拠出する方針を表明、世界でMDTの無料提供態勢が整備された。

2000年以降もノバルティス財団(スイス・バーゼル)がこれを継承し、これまでに世界で1600万人の患者が治癒、1985年当時、制圧目標を上回った122カ国中121ヶ国が2013年までに目標を達成した。

有史以来、ハンセン病が「天刑」、「業病」などと恐れられてきたは理由のひとつが、進行すると皮膚などに深刻な障害を残す点にある。回復した1600万人のうち400万人は何ら身体障害を残すことなく治癒しており、世界のどこでも無料で入手できる態勢を築き上げた日本財団などの貢献は、人類の病との闘いの中で特筆されていい。

しかし視野に入るかに見えたハンセン病の制圧も、ここにきて一つの壁に突き当たっている。制圧目標を未達成の最後の1カ国となったブラジルは、いまだ達成の目途はなく、国レベルで制圧目標を達成した国も、目が届きにくい山岳地域や離島など未開発地域、都市のスラムなどで依然、新たな患者の発生がみられ、インド、ブラジル、インドネシアを中心に毎年20万人前後の新しい患者の発生がWHOに報告されている。

こうした中、2013年、新規登録患者が年間1000人を超える世界17カ国の保健大臣らがタイ・バンコクに集まりハンセン病サミットを開催、新たな目標として「2020年までに“目に見える障害を伴う新規患者”を100万人に1人以下にする」とのバンコク宣言を発表した。

数字の遊びになるが、現在、世界の人口約73億人。1万人に1人に換算すると73万人となり、それだけの患者がいても数の上では制圧目標は達成できる計算になる。100万人に1人となると7300人。「目に見える障害を持つ患者」とは、外見からも障害が進行している状態がはっきりしている患者を指すようだが、毎年20万人の新規患者が見つかっている現状からも、残された後3年で達成するのは至難の業のように思う。

もっとも半年から1年間、治療すれば治癒するMDTの特質から、未把握の患者や新たな患者が順調に見つかり、迅速にMDT治療を開始すれば、達成の道も開けてくる。要は調査が行き届いていない地域で、各国が患者をいかに早期発見していくかがポイントとなる。

この点についてWHOのハンセン病制圧大使として世界を駈け回る笹川陽平・日本財団会長は自らのブログで「1万人に1人未満という制圧目標に向け患者を減らすという至上命令がトラウマとなり、新規患者の発見数が増えることを必ずしも歓迎しない、といったことが起こってきたのではないか」と指摘している。

隠れた患者がどんどん見つかれば数字上は一時的に達成目標をオーバーする事態も起きかねない。そうした事態を恐れるということであろう。1万人に1人未満を達成したことで「あとは自然に減る」といった安心感、「ハンセン病より深刻な疾病がいくつもある」といった事情もあろう。

ハンセン病は治療が遅れると皮膚などに障害を発し、差別を生む。患者は差別を恐れるあまり治療が遅れ、さらに進行した症状が新たな差別を生んできた。ハンセン病との闘いは病気の制圧と患者・回復者、家族に対する偏見・差別の撤廃の両面から進められ、ともに目を見張るほどの成果が出ているが、その意味では、患者の発生がゼロにならない限り、この悪循環は断ち切れない。(了)
ミャンマー・カレン州の首相に聞く [2017年02月13日(Mon)]
半世紀超す内戦で豊富な自然残った
民主化の果実、拙速より長い目線で


先月末、ミャンマーのカレン州を訪れ、ドー・ナン・キン州首相(62)に話を聞く機会があった。キン首相は昨春、政権を獲得したNLD(国民民主連盟)の活動家として軍政時代の1997年から2年間、刑務所生活も体験し、アウン・サン・スー・チー国家最高顧問兼外相とも並ぶNLDの重鎮として党の中央委員も務める。

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カレン州の将来を語るドー・ナン・キン州首相


キン首相は州の開発について「カレン州には薬草など自然資源も鉱物資源も豊富にある」とする一方、「早急にやらなければならないことがいっぱいあるが、国民の反対が強く思うように進まない」、「当面、石炭を使った火力発電所の建設を目指したい」などと語った。

カレン州はミャンマー南東部、タイ国境に位置し、1947年の独立後、2012年まで「世界でも最も長い内戦」が続いた。その結果、開発が遅れたが、豊富な自然や資源が残された。開発に向けた州トップとしての決意は理解するが、民意を尊重すればその分、手続きに時間とコストが伴う。拙速を避け、残された自然を生かす長い目線の開発こそ、州の将来に相応しい気がする。

カレン州は人口約160万人。ヤンゴンから車で約6時間の距離にあり大半が中山間地。80%が稲作やトウモロコシ、ゴムなど農業で生計を立てる。英国は植民地時代、カレン族など少数民族を多く重用して人口の7割近くを占めるビルマ族を統治したといわれ、そうした歴史が中央政府軍とカレン民族同盟(KNU)の戦いを長引かせた。

タイの難民収容所に10万人を超す住民が避難しているほか国内難民も多く、彼らが故郷に戻れるような産業基盤、インフラの整備が新政権、州政府の課題となっている。州の大半を占める中山間地には豊富な薬草がそのまま残され、州都パアン郊外では、日本財団が2012年から州政府が用意した40エーカー(約16ヘクタール)に上る広大な用地に薬草園を整備し薬草プロジェクトを進めている。

「薬草の宝庫」に相応しく既に150種に上る薬草・薬木が集められ、近く東京農業大学も保存技術の指導などに乗り出す予定。海外の製薬メーカーも注目し、指導に当たる日本財団の間遠登志郎氏のもとには沖縄の保健食品開発協同組合から、地元で古くから伝統医療に使われてきたウコンに関する問い合わせも寄せられている。

薬草園で開発した保存・加工技術を周辺農家に移転、薬草園が収穫物を買い取って内外のメーカーに出荷し、農家の自立を促すモデル事業とするのが目標で、実現すれば、かなりの数の農家の参加が可能になる。キン首相も「地元の人は石油など鉱物資源ばかりに目が行く。薬草が金になることを日本財団は教えてくれた意味は大きい」とプロジェクトの将来に大きな期待を寄せている。

同時にカレン州にはゼガビン山など観光資源も多く、キン首相は観光産業の育成にも力を入れたいという。そのためには道路や空港、ホテルなどインフラ整備が欠かせない。限られた時間で子細は確認できなかったが、北隣のカヤー州、南に隣接するモン州では、火力や水力発電所の建設計画が、「火力は大気を汚染する」、「洪水が起きたら大被害が出る」といった住民の反対で宙に浮いており、カレン州の火力発電所もこれに関連して構想されているようだ。

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朝もやに霞むゼガビン山


ミャンマーの電力不足は深刻で、その必要性は誰もが認める。ただし発電所建設のようなプロジェクトにはODA(政府開発援助)など大きな資金が必要となる。それ以上に地球温暖化が世界の深刻な課題となる中、CO2(二酸化炭素)発生量の多い石炭火力の発電所建設には疑問も残る。そうした点を研究する専門家の育成も遅れているようだ。

テイン・セイン前大統領による2011年の民主化、2015年総選挙でのNLDの大勝を通じてミャンマー経済は大きく発展し、最大都市ヤンゴンなど都市部と少数民族が多く住む周辺の中山間地の格差は一段と拡大している。

国民には「民主政権ができたのだから生活はよくなるはずだ」といった根強い信仰があるようだが、半世紀以上続いた内戦で少数民族が多く住む周辺地域の開発の遅れは教育、医療なども含め尋常ではない。ミャンマーの新しい国づくりは、ある意味で緒に就いたばかり。今後、外国資本の進出も加速しそうだが、方向を決めるのはあくまで国民である。長期の内戦という不幸の産物とはいえ、豊富に残った薬草など自然資源を精いっぱい活用する、長い目線こそ「民主化の果実」につながると思う。(了)
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