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四季折々の雑記

 30年以上在籍したメディアでは「公」の動きを、その後10年以上は「民」の活動を中心に世の中を見てきた。先行き不透明な縮小社会に中にも、時に「民の活力」という、かすかな光明が見えてきた気もする。そんな思いを記したく思います。


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―少子化時代の教育に若者は何を望むかー [2024年03月06日(Wed)]

大学の定員削減には40%が反対
財源確保 年金・介護費の削減を
世代を越えて痛みを分かち合う時代


日本の出生数は昨年、75万8631人。8年連続で減少し、過去最少となった。出生数と密接に関係する婚姻数も48万9281組と戦後初めて50万組を割り、少子化は今後、一層、深刻化する。

これに伴い大学や短大への進学者数も減る。文部科学省の学校基本調査によると、2023年度の進学率は大学が57.7%、短期大学3.4%、専門学校21.9%。女性を中心に進学率が上昇しているが、文科省の試算では2040年度の大学進学者数は50万6000人。22年度の64万人から20%以上減る。

これを受け、生き残り競争も激しさを増している。1990年以降、39の女子大が共学化に踏み切り、複数の大学の統合あるいは学部を増やし総合大学化を目指す動きも目立つ。外国人留学生の受け入れも90年の約4万人から20万人近くまで増えた。

自治体が地元の私立大学を公立大学に衣替えし若者流出に歯止めを掛ける試みも顕著。この結果、90年に39校だった公立大学は昨年、100大学まで増えた。若者が地域に留まったまま学べるオンライン大学の設立許可申請も増える傾向にある。

こうした動きを若者はどう見ているか。日本財団が1月、全国の17〜19歳1000人を対象に行なった調査によると、通学不要のオンライン大学の増設、留学生の受け入れ増加、公立大学の増加にはほぼ半数、大学の総合大学化や女子大の共学化にも40%以上が賛成している。

6割が大学無償化に賛成する一方で、4割は大学定員削減に反対している。望ましい入試の形としては、男性が「学力検査を中心とした試験」、女性は「総合的な評価を中心とした評価」を求める声がいずれも4割を超えている。

▼世代間の意見の違い、どう調整するか?

教育強化に欠かせないのは公的支出の強化。初等、中等、高等教育に対する我が国の公的支出は一般支出の7・8%、OECD(経済協力開発機構)に加盟する38国平均の10・6%(19年)を下回っている。

調査では28%がOECD平均程度、13%が15%以上に増やすよう提案。そのための年金、国際協力、防衛、介護、医療の順で歳出を減らすほか、法人税や所得税増税、新税の創設による財源確保を求めている。ただし、消費税増税を適切とする声は7・1%に留まっている。

国の財政が逼迫する中、将来の人材を育てる教育費をどう確保していくかー。歳出削減策の上位に年金や介護費の減額が挙がっている点から見て、若年層が高齢層の”自己負担増”を求めているのは間違いない。受給年齢の引き下げや受給額の減少など年金サービスの低下が目立つ中、高齢者には難しい選択となるが、膨張する社会負担に耐えるには、世代を越えて痛みを分かち合うしか方法がない気がする。
―若者は将来をどう見ているか― [2024年02月06日(Tue)]

7割が国、6割が自分の将来に不安
GDP4位への転落は“国力の低下”



 若者の7割が国の将来、約6割が自分の将来に「不安がある」と回答ー。日本財団が昨年12月、全国の17〜19歳1000人を対象に行なった60回目の18歳意識調査の結果だ。
 
 調査は日本のGDP(国内総生産)について、IMF(国際通貨基金)が先に「近くドイツに抜かれ世界4位に後退する」との見通しを公表したのを受け、国の将来を中心に聞いている。次代を担う若者の6、7割もが国や自分の将来に不安を持つ姿は尋常ではない。

 少子高齢化に伴う社会の縮小、GDP(国内総生産)の2倍を超す国の借金、政治の停滞など、わが国を取り巻く環境はあまりに厳しい。世界が大きな転換期を迎える中、この国の将来はどうあるべきか、あらためて考えさせられる思いがする。

 名目GDPの国際比較は米ドル換算で行われ、GDPを人口で割って算出される1人当たりのGDPはその国の平均所得の指標にもなる。折からの円安が日本の落ち込みを加速している面はあるが、個人所得は「失われた30年」の中で一貫して低迷しており、4位後退の一番の原因は「国の力」そのものの低下にある。

これを受け、調査では3人に2人が日本のGDPランキングは「今後も下降する」と見ている。若者が将来を不安視する材料はあまりに多く深刻だ。急速な少子高齢化に伴い65歳以上の高齢者1人を支える生産年齢人口(15歳〜64歳)は、2020年の2.1人から70年には1.3人と若者の負担感は一段と厳しさを増す。

 国債や借入金など “国の借金”(政府の債務)も23年3月末でGDPの2倍、1270兆円余と先進国では例を見ない額に膨れ上がり重く圧し掛かる。財政の硬直化が柔軟な政策投資の大きな足かせともなっている。

 国の将来、目指す方向を示すべき政治も機能していない。19年に言論NPOが実施した調査では、「日本の政党や国会を信頼できない」と考える人は6割を超え、政治的無関心が膨れ上がっている。あえて否定的な面を列記したが、18歳調査の結果は、こうした厳しい現実がそのまま反映された形だ。

 一方で、1月から年間投資枠や非課税保有期間が拡充された新NISA制度に4割以上が「関心がある」と答えている。過半数は魅力的な投資先などについて「分からない」としているものの、自力による資産形成の必要を感じている若者が4割を超しているのは、予想以上に多い気もする。将来に対する若者の不安が反映された結果と理解し、社会の立て直しを急ぐ必要がある。

能登半島地震 [2024年01月22日(Mon)]
被災地支援の要は“初期対応”
役割大きい災害ボランティア
小回り効く小型重機活用を


 国際社会が大きく変動する中、「失われた30年」で沈滞した日本の「新たな30年」はどんな時代となるかー。そんな思いで新年を迎えた途端、能登半島地震が起きた。
 日本は世界で起きるマグニチュード6以上の地震の20%が発生する地震大国。常に大地震と隣り合わせとはいえ、家屋やインフラが壊滅し、確認された死者も地震発生から3週間を経て230人を超えた。
輪島市北西部などで地盤が4bも隆起し、海岸線が200b以上沖合に移動した地域もある。もともと海底が隆起して形成された能登半島で恐らく数千年に一度の現象と報じられ、想像を絶する自然の脅威に唖然とする。

▼ボランティア元年から30年

 全国から延べ100万人以上が被災地に駆け付けボランティア元年と呼ばれた阪神淡路大震災からほぼ30年、医療、家屋の清掃、炊き出し、心のケアなど様々な支援を行う多彩なボランティアも育ってきた。複数の自治体が被災自治体を1対1で支援する「対口(たいこう)支援」も広がってきた。
 ボランティア活動も含め被災地支援は、いかに迅速に被災地に入るか、換言すれば道路確保が初期対応の要となる。今回の地震は、大半を海抜三百b以下の低山地と丘陵地で占める能登半島の特殊な地形もああって、入り組んだ道路が至る所で崩落、陥没した。

折からの豪雪も加わって自衛隊や消防、警察の大型、中型車両や重機の被災地入りが困難を極めた。被災地に入れない限り復興支援は進まない。特に被災者救出は「災害が発生してから七十二時間が勝負」といわれるように時間との闘いだ。
 地震発生翌日、特に被害がひどかった珠洲市や輪島市に入った日本財団・災害対策事業部のメンバーによると、当初、多くの車両や重機が半島入り口の金沢市などで待機を余儀なくされ、災害ボランティアの助けで被災地入りする車両も目立った。
近年、ショベルカーやユンボ(油圧ショベル)など小形重機の扱いに慣れた災害ボランティアも多数育っている。普段から小型重機を使うメンバーも多く、ボランティアという名のプロ集団だ。
こうしたNGOと連携協定を結んで普段から災害発生に備える日本財団のような取り組みもある。自衛隊や警察、消防などと共に災害ボランティアを加えた初動態勢の強化、ネットワークの整備が急務と考える。

▼守りの強化こそ

政府が14年、30年以内の発生確率を「70%」とした首都直下型地震や、昨年、今後20年以内の発生確率が「50%〜60%から60%程度」に引き上げられた南海トラフ地震が何時、起きるか分からない。
ひたすら備えを強化することが「守り」につながる。能登半島地震の報道を見ながら、そんな思いを強くする。(了)

―生成AI にどう向き合うか?― [2023年09月06日(Wed)]

積極的評価から懸念まで反応は多彩
加速度的な進化にどう調和
「規制」の動きに注目


 「生成AI」を巡る議論が盛んだ。単純作業や大量のデータ処理をスピーディーにこなすAIの能力が少子化で労働力不足が進む我が国を救うといった積極的な評価から、個人情報など機密情報の漏洩から不正確な情報や偽情報の拡散を懸念する声まで内容も幅広く多彩だ。

 歴史を振り返れば、第一世代AIとも表現される電卓が登場した時、誰もがその計算力の速さと正確さに驚いた。AIの進歩は加速度的に進み、今後、どのように進化していくか、この世界に疎い身には予測がつかない。ただし、その発展形の一つとして登場したのが生成AIということであろう。

日本財団が8月、生成AIをテーマに行った18歳意識調査では、対象1000人のうち3人に1人強(36%)がテキスト生成AIを中心に使用経験がある、と答え、使用経験のない人の約60%も「使ってみたいと思う」としている。使用目的は40%近くが「学校の宿題や職場で使う資料の文書を手伝ってもらうため」、「暇つぶし」も60%を超えた。

「暇つぶし」は選択肢の表現として適格性を欠く気もするが、AIがどんなものか、試しに使ってみたということであろう。生成AIを知っている人の20%弱は、「生成AIの登場で自分の将来の夢・就きたい職業や興味のある科目・学問に影響・変化があった」とも答えている。具体的イメージが固まるのは、これからであろう。

生成AIは、文章、画像から動画、作曲まで何でも“本物らしく”こなす能力を持つといわれる。定型的な文書や簡単な報告文書を作成する便利なツールとして活用する動きは確実に広がると思われる。

米国では、全米脚本家協会(WGA)が5月から、ハリウッドの俳優労組「映画俳優組合 - アメリカ・テレビ・ラジオ芸術家連盟(SAG-AFTRA)」が7月から、労働環境の改善と併せAIの規制を求めてストライキに入ったと報じられている。

生成AIを使った映画・テレビ番組やChatGPTによる脚本制作が急速に進む中、執筆業自体が機械化される事態を懸念したストライキと理解し、一瞬、19世紀前半の産業革命期に、急速な機械工業の発展に抵抗してイギリスで起きたラダイツ運動を思い出した。

しかし、報道を見ると、最近は俳優本人がAIでコピーされ知らない間に映画やテレビ番組に登場するケースも増えているという。「AI俳優」と表現されるそうだが、これでは将来の危険性も深刻度も違う。肖像権など法的問題もあり、規制を求める声は当然と思う。

今後、AIは加速度的に進化しよう。多くの人の想像を上回る変化が生まれると思う。AIが人間をしのぐ力を発揮する分野は増々、増える。同時に人間にしかできない「分野」も鮮明になり、それを活かして行くことがAIを便利なツールとして使う道につながる。

欧州連合(EU)などでAIを規制する動きが報じられている。それらの動きを、しばし注目したいと思う。
迷走するマイナンバーカード [2023年08月06日(Sun)]
マイナ保険証一本化
若者の過半数「政府の対応は不適切」
まずは国民の不安を払拭すべき!


 マイナンバーカードを巡る政府の対応が迷走している。岸田文雄首相は8月4日の記者会見で、来年秋に予定していた健康保険証の廃止(マイナ保険証一本化)時期をどうするか、最終判断を今秋に持ち越すとともに、マイナ保険証未取得者に対し一律に交付する「資格確認書」の有効期間を当初の1年から5年に延長する考えを示した。

 岸田政権の看板である「こども政策」、「防衛費増額」の財源確保と同様、先送り感が否めず、国民の不安払拭につながるとはとても思えない。7月、報道各社が行った世論調査では、「岸田内閣を支持しない」が「支持する」を軒並み上回り、その原因としてマイナンバーカードトラブルへの政府の対応の拙さが指摘されている。

日本財団が7月、全国の17〜19歳1000人を対象に行なった「18歳意識調査」でも、マイナーバーカードを巡る一連のトラブルに対する政府の対応を「適切」とする若者は「どちらかといえば」を含めわずかに18%、3倍を超す57%が「不適切」と答えている。

行政手続きのデジタル化は煩雑で複雑な事務作業を効率的に進めるためにも必要と判断する。18歳調査でも3人に2人(64%)は「進めるべき」と答え、一定の理解は得られている。現に申請中も含めると8割(79.5%)がマイナンバーカードを取得している。

しかし、今回、資格確認書の有効期間が延長されたことで、マイナ保険証を持たなかった場合の不便・不利益感は大幅に緩和される。
マイナンバーカードには、ほかにも@国民全員への番号割り当てA自宅でも行政サービス手続きができる国民ID制度B自分が誰であるか、写真付きで証明する「身元証明制度」など多彩な機能が盛り込まれる。

その一方で、少子高齢化が急速に進み国の財政の大幅に悪化する中、マイナンバーで国民の資産情報を把握し、所得に応じて税や保険料を公平・公正に負担してもらう狙いも込められている。同様の狙いで2009年から住民基本台帳カード(住基カード)が試みられたが、取得率が上がらないまま新規発行が停止された経過もある。

マイナンバーカードを持つかどうかはあくまで任意。政府の拙速な取り組みが本来の狙いを希薄にしている面もあり、これ以上、迷走が続けば、返還者が増える事態さえ懸念される。ここは時間を掛けて十分な対策を講じ、国民の不安を払拭し理解と納得を得るのが先決と考える。(了)
日本の新たなフロンティア [2023年07月01日(Sat)]
中央アジア外交にどう向き合うか!
親日色強く「歴史的しがらみ」なし



 近年、中央アジア5ヵ国(ウズベキスタン、カザフスタン、キルギス、タジキスタン、トルクメニスタン)が日本外交のフロンティアとして注目を集めている。石油や天然ガスなど資源も豊富で、わが国にとってアジア諸国のような「歴史的しがらみ」もない。親日色が強いこの地域との外交をどう切り拓いていくかー。

5カ国は1991年まで旧ソ連邦に属し、連邦崩壊後、独立した。その後もロシア、中国の影響力が強く、トルクメニスタンを除く4カ国は、中ロ両国が主導する上海協力機構(SCO)に所属している。ウクライナ戦争でロシアの影響力が低下する中、5月には中国が5カ国との首脳会議(サミット)を開催、巨大経済圏構想「一帯一路」への協力を呼び掛けるなど新たな動きも出ている。

わが国は2004年、対話プラットフォーム「中央アジア+日本」を設立。ODA(政府開発援助)を柱に、近年は筑波大学を中心とした留学生受け入れなど関係強化に取り組んでいるが、ロシアや中国に比べれば存在感は薄い。

ウズベキの大学に初の日本語図書寄贈

そんな中、日本財団の姉妹団体である日本科学協会が6月、日本語図書寄贈事業の一環としてウズベキスタンの世界経済外交大学に日本語図書約700冊を贈った。1999年に始まった同事業で中央アジアの大学に日本語図書が贈られるのは初めて。

首都タシケントにある大学構内で同8日に行われた贈呈式で、アマノフ・ドゥルベック副学長は「多くの学生が日本文化に関心を持ち日本を目指している」と謝辞を述べ、日本財団の尾形武寿理事長は「若い人に日本を知ってもらうためにも寄贈図書を10倍、20倍に増やしたい」と語った。

 事業は中国の各大学への図書寄贈で始まり、既に中国の86大学に400万冊を超える図書が贈られている。昨年、インドのバナラス・ヒンドゥー大学など2大学、タイのタマサート大学への寄贈が決まったのに続き、今年はフィリピンのフィリピン大学ディリマン校にも初の寄贈が行われ、これで寄贈先大学は計5カ国に広がった。

一方、日本財団は2004年に設立された日本・トルコ・中央アジア友好協会(JATCAFA)を通じて、この地域の学生の奨学支援に取り組み、2016年までに300人を超す学生が卒業、各国政府や研究機関、金融などで要職に就いている。

16年7月にトルコで発生した大規模なクーデター未遂事件を機に翌年、事務局をドバイに移し、新たに日本・中央アジア友好協会(JACAFA)を設立。現在は中央アジア5ヵ国にアゼルバイジャンも加えた6カ国の学生を対象に奨学事業を進めている。

何よりもシルクロードのイメージが強い地域だが、昨年と今年、ウズベキスタンの首都タシケントと古都サマルカンドを訪れ、日本に対する興味の高さと親しみを強く実感した。この地域との新たな関係構築には、例えささやかであっても、まずは奨学生支援や図書寄贈のような地道な事業の積み重ねが不可欠との思いを強くする。
少子化の背景 [2023年05月25日(Thu)]
日本社会における「婚外子」とは!
全出生児の2・4% 仏の25分の1
欧米では出生率押し上げ効果も


 少子化に関連して欧米では近年、婚姻関係がない男女の間に生まれた婚外子が社会に広く認められ、合計特殊出生率(1人の女性が生涯に産む子どもの数)を押し上げる効果を生んでいる、と指摘されている。

 そんな中、日本財団が3月、全国の18〜69歳の女性1万人を対象に行なった調査で、婚外子の権利を認めることが出生率の上昇に繋がるか尋ねたところ、3割(30・9%)が「そう思う」、2割強(23・9%)が「そうは思わない」と答える一方で、「分からない」との回答も半数近く(45・2%)に上った。

 「年金広報」の昨年7月号に掲載された神奈川県立保健福祉大の山ア泰彦名誉教授のコラムなどによると、2020年、わが国で生まれた子どものうち婚外子が占める割合は2・4%。これに対し欧米各国の数字を19年で見ると、フランスが61.0%、スウェーデン54.5%、イギリス48.2%、アメリカ40.0%、イタ リア35.4%、ドイツ33.3%(イギリスは17年)と日本とは極めて大きな開きがある。

 キリスト教など宗教に基づく婚姻倫理の変化など様々な要因が考えられるが、欧米で近年、婚外子が増えてきた背景には、結婚していなくとも結婚した場合と同等の法的保護が受けられるよう諸制度が整備されてきた点があるようだ。

我が国でも、婚外子(非嫡出子)が受け取る法定相続分の遺産はかつて婚内子の半分(2分の1)と定められていた。しかし2013年、最高裁大法廷が婚外子と婚内子で相続分に差を設ける民法の規定は「違憲」と判断し、現在、相続に関し婚外子と嫡出子の間に法律上の差はない。

ただし、欧米とアジアを比較した場合、とりわけ東アジアは儒教文化の影響というか、結婚に対する考えの違いが大きく、婚外子の増加には繋がっていない。その結果、合計特殊出生率にも歴然とした差が出ている。1993年に1.66まで落ち込んだフランスは2020年1・83にまで回復、スウェーデンも1・66の数字を維持している。

1・83は人口が静止状態となる置き換え水準(2・06前後)より低く人口は減少するが、穏やかな人口減少の実現に向け日本が20年に初めて設定した希望出生率1・8より高い。ちなみに日本の合計特殊出生率は21年1・30。コロナ禍の影響もあって22年は1・27前後まで落ち込むと見られ、昨年、0・78と世界で最も低い数字を記録した韓国は婚外子の割合も1・9%と日本以上に低い。

フランスやスウェーデンでは1970年代以降、カップルの形の多様化が進み、結婚しないカップルが増加。それに伴って婚外子が増え、合計特殊出生率の低下に一定の歯止めが掛かる形となっている。

内閣府男女共同参画局の資料によると、100年以上前の1903(明治36)の我が国の婚外子の比率は9・4%と現在の約4倍の数字だった。社会の変化に伴って男女の関係、子供の誕生の形を変わるということであろう。

今後、わが国でも事実婚や同棲など法律婚以外のカップルが増えるのは確実。婚外子が権利に基づき遺産を相続し養育費を払ってもらうには、「認知」手続によって父親との親子関係が法律的に裏付けられる必要がある。

1万人女性調査では、婚外子の権利を「もっと認められるべきだ」とする意見が過半の51・9%を占め、「認めるべきではない」(8・6%)を大きく上回った(残る39・6%は「分からない」)。

遺言による「認知」も含め難航するケースが多い現実もある。嫡出子と非嫡出子の間には今もなお差があるというべきであり、少なくとも婚外子の権利は婚内子と同等でなければならない。最高裁判決の言葉をそのまま引用すれば、「父母の婚姻関係の有無という、子どもにとって選択・修正する余地のない事柄を理由に、その子どもに不利益を及ぼすことは許されない」。(了)
低迷する地方議会 [2023年04月05日(Wed)]
道府県議選 25%が無投票当選
低い若者の関心と信頼
ネット投票導入など見直しを!

  
2023年統一地方選の前半戦となる9知事選と41道府県議選、17政令市議選の投票が4月9日に行われる。近年、目立つのが地方議会の“定員割れ”。今回も計41道府県議選の約4割に当たる348選挙区の立候補届出が定数に満たず、総定数2260の25%に当たる565人が無投票当選となった。

前回2019年統一地方選の道府県議選で計371選挙区612人(26・9%)が無投票当選となったのに次ぐ数字で、4月18日に告示される政令指定市以外の市区町村議選でも、かなりの定員割れが出るのは必至の情勢だ。

「なり手不足」に伴う地方議会選挙での定員割れや、次代を担う若者の低投票率を前にすると、急速な人口減少で、ただでさえ活気が失われつつある地方の再生は一段と難しくなる。論戦も投票もない選挙とは一体、何なのか。選挙制度の見直しが急務な気がする。
 
2月、日本財団が「地方議会」をテーマに全国の17〜19歳1000人を対象に行なったインターネット調査では、住民票がある出身地で選挙があることを認識している若者はわずかに15・4%。うち81・5%が「投票する」、「多分投票する」と答えているものの、全員が投票しても投票者は12・5%、8人に1人に留まる計算だ。

地方議会に対する信頼度も26・8%と首長(知事や市区町村長)の32・9%、地方自治体の同31・5%に比べ低く、「信頼していない」(31・1%)の方が4%以上多い。3人に2人(67・7%)が「統一地方選の実施自体を知らない」と答えている点を合わせると、地方議会に対する関心・信頼の低さは尋常ではない。

対策の一つとして2002年には電子投票法が施行され、自治体が条例で定めれば地方選挙でタッチパネルなどを使う電子投票が可能になり、全国の10自治体の首長選挙や議員選挙で導入された。しかし、岐阜県可児市の市会議員選挙で機器の不具合が発生、選挙をやり直すなどトラブルも発生し2016年以降、行われていない。

選挙コストを抑える点でメリットがあり、総務省は今後も自治体の要望があれば支援する構えだが、投票所に足を運ばなければならない点に変わりはない。古里を離れて都会の大学に進学、住民票を移さないまま都会で暮らす若者の投票率を上げるのに、さほどの効果があるとは思えない。

その意味で注目されるのはネット投票。パソコンやスマホを使った投票も可能で投票率アップが期待され、2019年には東京都や福岡県で実証実験も行われた。しかし、本人確認など課題も多く、政府は当面、海外に住む有権者の在外投票での導入を目指す構えだ。

SNSを通じた政策発信などインターネットを使った選挙運動は既に2013年の参院選から解禁されている。選挙に対する若者の関心を高める一定の効果はあろう。民主主義が機能するには、選挙でそれなりの投票率が確保される必要がある。ネット投票を含め新たな選挙の仕組みが急務と考える。
若者は政治の現状をどう見ているか? [2023年03月07日(Tue)]
「期待できる」は5人に1人
過半が「国会は政策論議の場となっていない」
“時宜に応じた必要な決断”にも疑問符


国会の現状について2人に1人(52・3%)が「有意義な政策論議の場になっていない」、さらに3人に2人(64・6%)は「若者の意見が取り入れやすい場となっていない」と指摘。「不測の事態に適切な対応をしている」、「必要な決断が適時できている」といった日常活動に関する評価も30〜22%と低く、政治・国会を「期待できる」と回答した若者は5人に1人(20・1%)に留まっている。

日本財団が「国会と政治家」をテーマに年明けに行った18歳意識調査の結果だ。林芳正外相が3月1日にインドで開催された主要20ヵ国・地域(G20)外相会合への出席を見合わせ、批判を浴びた異例の事態も、こんな日本の政治・国会の“弱さ”に起因している。

国会には予算案を衆参両院で審議する際、冒頭の基本的質疑に首相と全閣僚が出席する与野党の申し合わせ(慣例)がある。報道によると、政府がG20への外相の出張を認めるよう求めたのに対し、自民、立憲民主両党が「国会ルールの優先」を主張し、外相会合への出席が見送られた。

外交より国会の慣例が優先された形。参議院予算委員会への外相出席時間は計7時間。この間、質問は1問のみ。答弁時間はわずかに53秒。世論の批判も強く、外相会合2日後に開催された日米豪印4カ国の「クアッド」外相会談には林外相が出席したが、議長国インドの関係者やメディアからも日本の対応に疑問が出た。

我が国は今年1年間、主要7カ国(G7)の議長国として5月には広島でG7サミットを開催する。G20外相会合は、ロシア、中国をはじめメンバー各国に、ウクライナ戦争などで混迷する国際社会の新たな秩序構築に向けた我が国の決意を伝え、G7サミットへの流れを作る格好の場であった。

増して我が国は、昨年12月に閣議決定した新たな国家安全保障戦略で「総合的な国力の主な要素」として外交力、防衛力、経済力、技術力、情報力の5項目を挙げ、その筆頭に外交力を位置付けたばかり。とかく外交の弱さが指摘されてきた日本にとって、外交力は激動する国際社会を生き抜くための要でもあり、G20への対応はあまりに緊張感を欠く。

若者の政治不信を生む一つに、年を追うごとに膨らむ財政赤字がある。ちなみに23年度予算の一般会計は過去最大の114兆3812億円。過去最高の69兆4400億円の税収を見込む一方で、不足分を35兆6230億円の新規国債発行で賄う。ただし、国債の償還や利払いに充てる国債費も25兆2503億円に上る。かくてGDP(国内総生産)の2倍超、約1200兆円に上る国債と地方債の発行残高(借金)はさらに増え、次代を担う若者の双肩に圧し掛かる。

急速な少子高齢化の進行で、かつて10人を超えた65歳以上の高齢者1人を支える現役世代(15〜64歳)の数は現在2・1人、やがて1・3人まで減る。そこに巨額の国の借金が加わる現状を前に若者が明るい将来像を描くのは難しい。

政治家である以上、「票」の行方が最大の関心事であろう。しかし、
耳にやさしい公約ばかりをばらまくのは悪しきポピュリズムが現在の閉塞状況を生んだ。若者の信頼度は内閣が24・3%、国会24・4%、政権を担う与党22・3%、野党21・2%―。厳しい数字を見るにつけ、改めて政治家に覚悟と決断力を求めたく思う。

若者は今後5年の日本の安全保障をどう見る! [2023年02月14日(Tue)]

約半数が「日本への武力攻撃」挙げる
脅威感じる国 北朝鮮、ロシア、中国の順
防衛予算の増額 30% 台で賛否割れる



現在の日本を取り巻く状況を3人に2人(64・2%)が「平和」と認識している。しかし今後5年間で見ると、「日本周辺で他国が行う戦闘や多国間での紛争の影響」や「他国による日本への武力攻撃」を脅威ととらえる声がそれぞれ51・7%、47・2%に上り、3人に1人(32・4%)は「日本が今後5年間に他国と武力衝突する可能性が50%以上ある」と答えている。

日本財団が今年1月、「国家安全保障」をテーマに全国の17〜19歳1000人を対象に行なったインターネット調査の結果だ。軍事的脅威を感じている国として66・8%が北朝鮮、54・6%がロシア、48・8%が中国(複数選択)を挙げ、ロシアのウクライナ侵攻、中国による台湾武力統一、北朝鮮のミサイル開発など一連の動きが若者の危機意識を高めていると思われる。

半面、岸田政権が打ち出した防衛関係予算の増額に関しては「賛成」38・9%、「反対」32・2%と意見が分かれ、平和を維持するための方策でも「日本経済の安定」(26・2%)がトップ。「日米同盟関係の強化」や「自衛隊の増強」はいずれも10%台にとどまっている。質問形式が違い一概に言えないが、各種世論調査で防衛費増額に対する賛成が60%を超えている点と比較すると、若者世代の意見は、より多様に広がっているように見える。

徴兵制度の導入に対しても「反対」が80%を超え、特に女性の反対は85%に上っている。その上で、徴兵制度が導入され自身が戦闘員として戦地で戦う可能性について、18・3%が「ない」とする一方で19・5%は「50%以上の確率である」とするなど、将来に対する不安感もうかがわせている。

関連して、敵国の攻撃を受け国民に危害が及ぶ可能性が発生した場合の対応では、全体の9・7%、特に男性の15・2%が「戦闘員として志願し戦う」としているほか、29・2%が寄付やボランティアとして戦闘員を支援すると答える一方で、4人に1人(26%)は「何もしない」と回答。ここでも意見が割れている。

安全保障問題は尽きるところ、戦争や紛争に巻き込まれる危険性をどう回避し、そのための有効な策は何かが一番のテーマ。古来、多くの議論が積み重ねられているが、時代の流れ・状況によって左右される要素が多く、「解」のない難問とも言われている。とは言え、次代を担う若者の意見が一層、重視されるべきは言うまでもなく、改めて同種調査の積み重ねが必要な気がする。(了)
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