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四季折々の雑記

 05年夏まで在籍したマスコミの世界は極力、主観を排した客観報道を原則とした。しかし真の意味で「客観」を実現するのは報道の現場に限らず難しい。ブログと言うには程遠いが、忘れない程度に自分の想い、時に意見をささやかに書いていくつもりです。


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熊本城の石垣の痛み、白河小峰城の10倍超 [2016年07月25日(Mon)]

7割は国庫負担、新たな城作りより難作業
技術保存も視野に腰据えた修復工事を


 熊本のシンボル、県民の精神的支柱である熊本城の地震被害は、城の象徴である石垣に限っても表面積の3割に広がり、東日本大震災(2011年)で同様に石垣が崩落した白河小峰城(福島県白河市)の10倍を超す。ともに国の特別史跡に指定されており、修復作業は石を当時の手法で一つ一つ元の場所に積み直し、破損した石は新しい石材を調達して元の形に加工する必要があり、新たな石垣を作るより難しい。

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いたるところで石垣が崩落した熊本城

小峰城の場合は修復作業終了までに6年の期間が必要とされ、熊本城はこのほか櫓など建造物の痛みも激しく、詳しい内部の調査はまだ手つかずの状態。工事が始まれば急ピッチで修復が進むと期待するが、全国的な城ブームの中で匠やその技をどう保存・伝承していくかといった別の課題もある。腰を据えた修復作業こそ必要と考える。

熊本城の石垣の総表面積は7万9000平方メートル。計53ヵ所で崩落が発生し、うち約1割は完全に崩落、約2割は部分的な崩落や石と石の間の空き、膨らみが生じ、積み直しが必要な表面積は全体で2万3600平方メートルに上る。文化庁の試算による石垣の修復費用は1平方メートル当たり150万円、全体で354億円。災害復旧事業の上乗せで7割は国庫負担となる。

4月時点の現地調査を基にしており、その後の余震や激しい雨でさらに被害が拡大している可能性があるほか、国指定の重要文化財となっている13の櫓や門のうち慶長12年(1607年)に完成した東十八間櫓など5つの重要文化財が全壊、天守など昭和以降に再建・復元された20の建造物を含め、すべての建物に大きな被害が出ており、崩落した瓦の確保も大きな課題となる。

7月中旬、城の再建を支援する日本財団のメンバーと共に、熊本城総合事務所の河田日出男所長らに城内を案内していただいた。宇土櫓(重要文化財)前の通路や天守の入り口は崩れた石垣の巨石で埋まり、かろうじて倒壊を免れた建造物も壁の剥落など痛みがひどい。石垣が大きく崩れ、わずかに「隅石」と呼ばれる角の石に支えられ倒壊を免れている「飯田丸五階櫓」の前では、倒壊を防ぐためのアーム状の鉄骨の組み立て作業が行われていた。

修復作業は「各建造物内部の破損状況を調べ、危険な石垣の上にある建造物を移動、石垣を積み直した後、元の位置に戻す。その上で残された部材を最大限に活用して建造物を元の状態に復元させる」(河田所長)というのが大筋の手順。肝心の石垣に関しては、小峰城の修復作業の進捗状況にも注目している。

当の小峰城は東日本大震災で全長約2キロの石垣の10ヵ所、表面積で1600平方メートルが崩落、膨らみなどが出た4ヵ所も含め修復工事が進められている。修復対象は全体で2000平方メートル前後、熊本城の10分の1以下と見られるが、それでも2013年に始まった修復工事が終わるのは2018年の見通しだ。

地元の建設会社と共同企業体を組み工事に当たる鹿島建設がWebに掲載している「小峰城跡石垣復旧工事」によると、工事ではまず崩落した石をクレーンで移動して一つ一つ番号を振って写真撮影、破損した石は新しい石材を確保して元の形に加工し、崩落前の写真などと照合しながら施工図を作成。これを基に石を仮積みした後、大きな石のすき間に「飼石」を入れて固定し、裏側に水はけをよくするための「裏込石」を敷き詰め、さらに裏込石と壁面の間を盛土で突き固めるのだという。

専門的なことは分からないが、大変な作業で、大型重機など近代機器を活用するとしても、最後は専門技術、知識を持った石工の技が欠かせない。このあたりについて河田所長は「破損した石の代わりは地元で調達できるが、石を加工し積み直す専門的な職人さんを確保するのは容易ではない。全体の修復が終わるのは10年、20年、あるいはそれ以上先になるかもしれない」と語っている。

熊本市は文化庁とも協議の上、この夏にも、修復に向けた大筋のロードマップをまとめる考えという。まずは、その内容に注目したい。(了)
中国にどんな意図・思惑が? [2016年06月24日(Fri)]
南シナ海問題も議論の対象に
笹川平和財団に第2の日中対話


 日本財団の姉妹財団・笹川平和財団(SPF)に6月21日、新たな「日中対話:東アジアの海洋問題への協調的取り組みを目指して」がスタートした。SPFでは既に2013年から東シナ海の安全環境を海、空両面から議論する「日中東シナ海安全対話」が活動しており、2つの対話が並行して進められることになる。

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21日に初開催された日中対話=笹川平和財団会議室

 新対話は、SPFに対する程永華・駐日中国大使の“打診”がきっかけになったとされ、翌22日行われた記者発表では、フィリピンが中国を相手取って起こし、近く国際仲裁裁判所(オランダ・ハーグ)の裁定が出される予定の「南シナ海問題」も第一回対話で取り上げられた。

この問題で中国は「仲裁裁判所に管轄権はない」として無視する姿勢を打ち出しているが、日本は2000年にオーストラリアとニュージーランドの間で争われた「みなみマグロ事件」で中国と同様、仲裁裁判所の管轄権を否定しながらも、当事者として仲裁裁判所の審理には参加しており、こうした日中の対応の違いについて意見が交わされた模様だ。

南シナ海問題で中国はこれまで一貫して「当事国による解決」を主張し、頑なに第3国の干渉を拒否してきており、先行の日中東シナ海安全対話でも、南シナ海問題が議論の対象になることはなかった。民間レベルとは言え、中国側の今回の対応にどのような意図・思惑があるのか、今後の成り行きが注目される。

ちなみに新対話のパートナーは「中国南海研究院」。先行の「日中東シナ海安全対話」は「中国南海研究協同創新センター」。いずれも海に関する政府系のシンクタンクで、対話の中国側責任者は前者が呉士存・研究院院長、後者はセンターの朱鋒・センター執行主任。SPF側の受け皿も前者が「笹川平和財団海洋政策研究所」、後者が「笹川日中友好基金事業室」と異なり、事前に双方で調整の結果、2つの対話を並行して進めることになったと見られる。

メンバーは日本側7人、中国側6人の学者・研究者からなり、初の対話は「海洋への取り組み」、「海洋環境の保全」、「海洋資源の管理」、「海洋の安全保障と外交」、「協調的取り組みを目指して」の5つのセッションで意見を交換。寺島紘士・海洋政策研究所長は「双方が今後の協調的取り組みの方向を探ることで一致した」として、引き続き対話を継続する考えを明らかにした。

これに対し呉院長は「双方でナショナリズムが高揚しており、何かのきっかけで事故や衝突が発生すると深刻な状況を招きかねない。トラック2の学術交流を通じ危機をコントロールするメカニズム、ルールを構築する必要がある」、「そのためにも相互信頼の構築に向け信頼できる外部環境を作っていく必要がある」、「東海(東シナ海)は日本にとっても中国にとっても共通の海のふる里。双方の協力を強化する必要がある」などと語った。

ともに将来に向けた日中両国の協力を語っており違和感はない。ただし発表後、会場から出た仲裁手続きに対する質問に対し中国側は、仲裁裁判所に管轄権がないとする従来の姿勢を説明するにとどまり、新しい「何か」をうかがわせる言質はなかった。対話が今後、どう進むのか、期待を込めて見守りたい。(了)
5年後に向けどう動く「フジモリ家」 [2016年06月13日(Mon)]

「負の遺産」解消 対立関係の融和こそ
戦術面でケイコ、ケンジ姉弟に確執?


ペルー大統領選に挑んだアルベルト・フジモリ元大統領の長女ケイコ氏が、前回2011年の大統領選に続き再び決選投票で涙を飲んだ。7月に大統領に就任する元首相のペドロ・クチンスキー氏とは極めて僅差。定数130の国会(一院制)で73議席を占める「人民勢力党」の党首でもあり、41歳の年齢からいっても当然、5年後の大統領選で雪辱を期すことになるのではないか。

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「政治」を語るフジモリ・ケイコ氏、2011年6月リマの自宅で

そのためにも国を2分する「フジモリ」対「反フジモリ」の対立構造、フジモリ元大統領への抵抗感をどう解消していくかが、今後の課題となる。その中で一つ気になる点がある。一連の現地電によると、弟で国会議員でもあるケンジ氏は「ケイコが敗れた場合、2021年の次期大統領選には自分が立候補する」と語るとともに決選投票での投票を見送ったというのだ。

背景には、今回の選挙で「父の時代には誤りもあった」と、とかくマイナスイメージが強い父親と距離を置く戦術をとったケイコ氏との間に確執があったとも報じられている。少数与党のクチンスキー氏は当選確定後、「団結と対話」を訴え、2010年1月に最高裁刑事法廷で禁固25年の有罪が確定、服役中の元大統領について、議会の承認を条件に自宅軟禁に切り替えることも可能との考えを示している。

報道以上に姉弟の関係を知る材料はないが、既に77歳、舌部の腫瘍も抱える父親の処遇も含め二人がクチンスキー氏の提案や今後の国内融和をどう考えるのか、是非、聞きたい気がする。

元大統領は2000年末から約5年間、日本で亡命生活を送った。一時期、曽野綾子日本財団会長(当時)宅の食客となるなど日本財団と交流があり、2011年の大統領選直後、尾形武寿理事長がケイコ氏を自宅に、元大統領を服役先の軍警察施設に訪ねた際、同席したことがある。

この時、ケイコ氏は「(敗れたとはいえ)結果には誇りを持っている」、「過去、第2戦(決選投票)に進んだ政治家は全員、大統領になっている」と5年後の大統領選に並々ならぬ意欲を語った。

また元大統領は「政治的発言は禁じられている」としながらも、「(有罪を認める結果になる)恩赦は受けない」と言葉少なに語るとともに、「ケイコとケンジには誇りと期待を持っている」などと述べた。

あくまでその場の印象だが、元大統領の断片的な言葉の中に、ケンジ氏の将来により大きな期待を持っている感じも受けた。ケイコ氏は1994年の両親離婚後、母に代わってファーストレディ役を務め、国民から見れば、その分、元大統領のイメージが強い。負けたケイコ氏よりケンジ氏の方が次の大統領選を戦いやすい、という判断かと勝手に推測した記憶がある。

クチンスキー氏は前回大統領選の第1回投票で3位となり、決選投票ではケイコ氏を支持している。ともに自由貿易を推進する中道右派の立場にあり、決選投票では政策よりもフジモリ元大統領の功罪が争点となった。フジモリ派には元大統領が進めた強硬策も「あの時代はテロの撲滅を最優先しなければならなかった」と肯定的に見る向きが強い。

しかし今回の選挙では、フジモリ元大統領の評価を軸にした政局に対する若者の抵抗感も強かったと聞く。「負の遺産」を解消するには、対立構造の融和こそ欠かせない。クチンスキー新大統領の下、「フジモリ家」がどう動くのか、興味を持って見守りたいと思う。(了)
孤立主義への扉開いたトランプ発言 [2016年05月20日(Fri)]

避けられぬ新政権への影響
覇権国のプライドより自国利益


米大統領選の共和党候補に不動産王ドナルド・トランプ氏が事実上、決まった。前回、このコラムで米大統領選を取り上げた3月当時、「トランプ発言に共鳴している米国民は日本人の想像以上に多いのではないか」と記したが、最終的に同氏が共和党候補に決まるか半信半疑だった。11月の本選挙もデータ上、民主党候補になると予想されるヒラリー・クリントン氏の優勢は動かないと思うが、意外な結末になってもおかしくない気がする。

トランプ発言を素人解釈すれば、言わんとしているのは「米国は強い軍事力を持った裕福な国だったが、最早そうではない」という一点に尽きる。だからこれからは「米国の利益を最大限に尊重することで強い米国の復活を目指す」ということであろう。

米国弱体化の原因として、「世界の警察官」として国際社会の秩序維持のために米国が負ってきた負担や不法移民の増加に伴う社会経費の膨張を挙げ、前者に関してはNATO諸国や日韓両国の安全保障で米国が片務的な責任を負う現状はアンフェアであるとして、米軍の駐留費を全額負担しなければ米軍を撤退させる、としている。

後者に関しては「ムスリムの入国を規制する」、「メキシコとの国境に壁を作りメキシコに費用を負担させる」など荒唐無稽とも思える発言を重ねた。内政の行き詰まりに対する不満を外に転嫁する古典的な手法であり、世界が注目する大統領予備選にしては、あまりに乱暴な強弁に驚くことはあっても、手法自体は特段珍しいわけではない。

しかし現状認識の内容には問題がある。例えば日米同盟。現実がトランプ氏の指摘通りアンフェアであれば日米同盟はとっくに消滅している。日本財団の姉妹財団である笹川平和財団が米国の戦略国際問題研究所(CSIS)と立ち上げた研究会の最終報告発表会(3月)でジョン・ハムレCSIS所長が「米国こそ日米同盟を必要としている」と指摘したように、米国にも大きな利益があるが故に現在の姿がある。

驚くべきは、陰りが出てきたとはいえ今も軍事、経済両面で断トツの立場にある世界の覇権国・米国において、こうしたトランプ発言が手厚い支持を集め、共和党予備選のサバイバルレースを勝ち抜いた点だ。そこには覇権国としての責任感・プライドを捨てた内向き志向、自分主義があり、いったん封印を解かれれば際限なく広がる恐れもある。

個人としての懸念の域を出ないが、トランプ氏が大統領になった場合は言うまでもなく、クリントン氏が順当に大統領になった場合も無視できない流れとなるのではないか。失業や格差、財政赤字、人種問題などに対する広範な不満や憤りを前に、ひたすら米国の利益を追求することを余儀なくされれば、国際社会のリーダー、「世界の警察官」としての立場は弱まり、世界の不安定化が加速する。

社会が流動化、不安定化するとき、世論は二極化する傾向にある。国内では、対米自立のチャンスと見て自主防衛力の強化を求める声と、逆に非武装中立といった両極端の声が頭をもたげ、トランプ発言に刺激された核武装論が強まる可能性もある。

個人として言えば国のあり様は客観情勢を踏まえた理性的な現実論こそ望ましく、核武装には賛成できないが、潜在的な核開発能力は保持しておくべきだと思う。可能性を保持することが「核なき世界」を主張する力にもなるからだ。

その後の経過を見ると、過激なトランプ発言に対する反発が強まっているのは当然として、支持派の勢力も各種報道から受ける印象より、はるかに大きいのではないかということだ。多数の支持を得れば、いかなる主張も政治的な力を持つ。極端な例えになるが、ヒットラーのナチス、戦前の日本の軍国主義も、「多数の支持」があったが故に国を亡ぼすほどの力を持った。

今回のトランプ現象は「ドナルド・トランプ」という特殊な個性ではなく、戦後70年以上を経た国際社会の新たな転換点と見るのが妥当かもしれないが、どう見ても、それに備えるだけの社会の受け皿は用意されていない。トランプ氏はなおしばらく封印しておくべき孤立主義の扉を開けてしまったような気がしている。(了)
遺骨の半分、未だ未帰還! [2016年04月25日(Mon)]

改めて問われる国の本気度
戦没者遺骨収集推進法に思う


6月の決選投票に結論が持ち越されたペルー大統領選、朴槿恵大統領の与党が大敗した4月13日の韓国総選挙、そして翌14日から続く「熊本地震」と大きなニュースが続いているが、今回は3月末、成立した戦没者遺骨収集推進法をあえて取り上げることにした。

相次ぐ大ニュースにタイミングを逸した感もあるが、遺骨収集の遅れに我国の戦後処理の不徹底を感じ、この機会に厚生省(現厚生労働省)記者クラブを担当した30年前から持ち続けている素朴な疑問を書き記しておきたいと考えるからだ。

推進法は戦没者の遺骨収集を初めて「国の責務」と位置付け、今年度から9年間を「集中実施期間」と定め、計画的、効率的な遺骨収集を政府に求めているのが特徴だ。

厚生労働省によると、先の大戦で、海外で戦没した旧日本軍人、軍属、民間人は約240万人。うち収容済みの遺骨は127万柱、47%の113万柱は未収容となっている。113柱のうち約30万柱は海域、23万柱は国交のない北朝鮮や対日感情が厳しい中国に眠り、残る60万柱から少しでも多くの遺骨を収集するのが今後の目標となる。

収容済みの遺骨のうち93万柱は旧軍関係者が復員・引揚げ時に持ち帰っており、1952年に始まった国の遺骨収集で帰還したのは約34万柱、この10年間に限ると2万8千柱にとどまる。墓に空壷を埋めたままの遺族も多く、改めて国の「本気度」が問われる。

推進法は国に「基本計画」の策定を義務付け、海外の公文書館などに残る文献調査など新たな情報収集を求める一方、遺骨の収集・送還など実務に関し「適正かつ確実に行うことができると認められるものを、業務を行う者として指定することができる」としており、遺族関係団体などで構成する新法人が実働部隊に指定されるようだ。

フィリピン残留日系人2世の日本国籍取得問題などでも、しばしば指摘してきたが、戦争が国の名で行われた以上、それに伴う犠牲も国の責任で解決されなければならない。そうでなければ国の求心力は失われる。遺骨収集もその例外ではなく、戦後70年以上経た現在も半数近くが未収用に終わっている現実は国の対応のどこかに問題があったと言うしかない。

一言で戦後処理といってもテーマは広く、国が総力を挙げて取り組まない限り前に進まない。その中で遺骨収集や中国残留孤児、シベリア抑留、台湾日本兵、フィリピン残留2世など多くのテーマが厚生省、とりわけ厚生省援護局(現厚労省社会援護局)に集まっていたと記憶する。

筆者が厚生省記者クラブを担当した1984、85年当時、援護局の最大のテーマは、日中国交回復を受けて始まった中国残留孤児問題であり、両国政府が合意した訪日調査による肉親捜しが本格化的に始まろうとしていた。

30年も前の話であり、記憶に誤りがあるかもしれないが、国の予算に占める厚生省予算の割合は、社会福祉関連費が大幅に伸びた現在に比べ少なく、その中でも援護局は保健医療局や薬務局など他局に比べ目立たぬ存在だった。国の取り組み姿勢を幹部に尋ねたことがある。

「戦後の日本にとって最優先のテーマは戦争で疲弊したこの国の立て直しだった」、「戦後処理の多くは外交問題であり、遺骨収集ひとつとっても関係国の協力がどこまで得られるか手探りの状態で、国が前面に出るより民間主導で進めた方がうまくいく、という判断もあった」、「戦後しばらくは戦地からの引き揚げ、復員問題への対応が手一杯だった」といった弁明があったと記憶する。

戦争で国が疲弊した敗戦直後の状況として理解できる部分もある。しかし当時は戦後40年を経て高度経済成長期を迎えており、国力が回復する過程で見直す機会はいくらでもあったはずだ。個人としては、早い時期に「省」単位の本格的な組織を立ち上げ、必要な対策を総点検し、徹底を期すべきだったと思う。未だにこの問題を、国内的にも国際的にも引きずる結果になっているのは、そうした努力の徹底を欠いたのが原因ではないかー。

戦没者遺骨収集推進法の成立と前後して3月4日、旧日本軍のインパール作戦で戦死した日本兵の遺体10柱がミャンマー西北部のチン州から帰還、ミャンマー国民和解担当日本政府代表を務める日本財団の笹川陽平会長から塩崎恭久厚労相に引き渡された。

ミャンマーでは13万7千人の日本兵・軍属が命を落とし、終戦時に7万柱が帰還、1950年代にミャンマー政府の支配地域で2万柱以上が収容されたが、少数民族と政府軍が対立する周辺地域の調査は長い間、手付かずの状態にあった。

収容場所はインパール作戦で敗れた日本兵の敗走路に当たり、民族和解が進む中で39年振りにミャンマーからの遺骨帰還が実現した。今後、2千柱以上の収容が期待できると聞く。

近年、戦後処理問題は、中国・韓国の一方的な歴史認識批判も含め、戦争を全く知らない世代にも重く圧し掛かっている。久し振りに厚生労働省を訪れ拝礼式を見ながら、遺骨収集に限らず戦後処理問題の多くが未解決のまま残る現状をどう理解したらいいのか、改めてそんな思いがした。(了)
「米国こそ日米同盟を必要としている」 [2016年03月17日(Thu)]
米CSIS所長がトランプ発言批判
日米安全保障研究会の報告書発表会

 11月の米大統領選に向けた共和党の指名争いで、当初、泡沫候補と見られたドナルド・トランプ氏の勢いが止まらない。論戦というより“ののしり合い”に近い経過を見ると、米国流民主主義の「負の側面」を垣間見る思いもするが、驚くのは、日米関係に関しても、安全保障や貿易面で日本への不満をあおるトランプ発言に共鳴する米国民が、日本人の想像以上に多いのではないかと見られる点だ。

 2月29日、東京都内のホテルで開催された「日米安全保障研究会」の最終報告書発表会。日本財団の姉妹団体である笹川平和財団(SPF)が米国の「戦略国際問題研究所」(CSIS)などと立ち上げた研究会の共同議長を務めるジョン・ハムレCSIS所長は、「日米同盟は「(米国にとって)アンフェア」とするトランプ発言をわざわざ取り上げ、「米国こそ、この同盟を必要としている」と強調し、発言の裏に、トランプ支持が危険な領域まで広がっている現実への危機感があるように感じた。

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トランプ発言を批判するハムレCSIS所長(笹川平和財団提供)

 「メキシコ国境に壁を作って不法移民を締め出す」、「イスラム教徒の入国全面禁止」など暴言に近い一連のトランプ発言は、民主主義を掲げる米国民には馴染まないはずで、本来なら指名争いでも早々に脱落していたはずだ。予想外の展開の背景には、拡大する格差に対する白人低中所得者層の反発、かつての「強いアメリカ」への復帰願望、プロが主導するワシントン政治への不信など、さまざまな要因が指摘されているが、トランプ現象がここまで広がった以上、大統領選の結果がどうなろうと、今後の米国社会、ひいては日米関係にも大きな影響を与える。

 日米安全保障研究会は2013年、アジア太平洋地域が直面する諸問題を踏まえ2030年までの日米同盟の展望を示す目的で設立された。メンバーは米国側がハムレ所長のほかハーバード大のジョセフ・ナイ教授、第一期オバマ政権で国家情報長官を務めたデニス・ブレアSPF・USA会長ら6人、日本側が加藤良三・元在米特命全権大使、折木良一・前統合幕僚長、羽生次郎・SPF会長ら7人。29日は過去6回の議論を踏まえ、日米両政府に対する提言などを盛り込んだ最終報告書を発表した。

 日米同盟が「半世紀以上にわたり、アジア太平洋地域をはじめとする広範な国際社会の安全保障と繁栄に貢献してきた」とした上、軍事力を増強する中国に対応するため、日米両国が「ひとつに調整された対中戦略」を確立する必要性などを指摘、さらに同盟を持続し世論の支持を得る方策として「将来の日本における米軍基地は、日本の国旗を掲げた基地を借りるテナントとして自衛隊とともに駐留する形が望ましい」といった提案も盛り込んでいる。

 米国側メンバーは時に「ジャパン・ハンドラーズ」などとも表現され、日本政治にも影響力を持ってきた。「日米同盟はアジア全体の平和と繁栄に欠かせない」として日米同盟の一層の強化を目指す立場からもトランプ発言は、無視できないことになる。

トランプ氏は「誰かが日本を攻撃したら、われわれは救援に駆けつけなければならない。しかし、われわれが攻撃を受けても日本は助けに来ない」と日米安全保障条約の“片務性”を取り上げた上で、「日本はわずかなリスクとコストで自国を防衛するためアメリカとの軍事同盟に付け込んでいる」と日本を非難。通商関係でも、中国、メキシコと並べて日本を名指しした上で「これらの国から雇用を取り戻す」と主張している。

安保で言えば基地提供など日本の負担も大きく、貿易面では日本が米国の不動産などを買いあさった高度成長期ならともかく、現在は共存関係にある。ハムレ所長は「おかしな大統領選になっているかもしれない」とこれまでとは違う指名争いの現状に苦言を投げ掛けた上、英フィナンシャル・タイムズ紙記者の会場からの質問に対しても「日米同盟は何よりもわが国の安全保障に重要」と重ねてトランプ発言を否定した。

トランプ現象には、様々な分析や意見があり、いちいち「なるほど」と思う面もあるが、無謀とも思えるトランプ発言が何故ここまで米国民を引き付けるのか、実感できない面がある。民主党の指名争いを有利に展開するヒラリー・クリントン氏に関しても、別の意味で疑問を持つ。

クリントン氏はオバマ政権を引き継ぐと言明しながら、オバマ大統領が主導したTPP(環太平洋連携協定)は支持しない立場を表明している。労働組合を含めた民主党支持者が「国内製造業が打撃を受ける」と反対しているのが大きな理由のようだが、これでは米国に対する信用、指導力はどうなるのか。

難民問題をきっかけにした欧州各国の保守主義、排外主義の台頭や中東の民族・宗教紛争、歴史問題を軸にした中国、韓国の日本批判とこれに対するわが国の反発・・。突き詰めればどの現象にも、排外主義とナショナリズムの高揚が共通しているように思われ、不安定な時代を迎えたと憂慮する。(了)
  
両陛下の前で涙した比残留2世の無念 [2016年02月05日(Fri)]

国籍のない2世も「日系人」として出席
早期解決困難なら明確な理由説明を


 国交正常化60周年を記念してフィリピンを訪問された天皇・皇后両陛下は1月28日、「フィリピン残留2世」と懇談され、2世の多くが感激の涙を流した。代表として懇談したフィリピン日系人連合会のカルロス寺岡前会長(85)もその一人。「夢のような身に余る光栄」と語るとともに、懸案の日本国籍取得問題について、「これを機会に日本政府には1日も早く早期解決に動いてほしい」と求めている。

 日系人連合会は両陛下のフィリピン訪問に合わせ日系人全国大会を召集、「両陛下にひと目お会いしたい」と懇談を求めていた。当初、予定に入っていなかったが、天皇陛下の強い意向で宿舎のホテルでの懇談が実現、最初、寺岡氏やイネス・マリャリ会長ら連合会代表5人、次いで2世81人が両陛下にお会いした。

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日の丸の小旗を持って両陛下との懇談を待つフィリピン残留2世


 両陛下は出席者一人ひとりと言葉を交わされ、天皇陛下は最後に「戦争中はずいぶん苦労も多かったと思いますが、それぞれの社会において良い市民として活躍して今日に至っていることを大変うれしく、誇らしく思っています」と述べられた。

 日本財団は残留2世の国籍取得に取り組む「フィリピン日系人リーガルサポートセンター」(PNLSC)を支援している。この関係で寺岡氏とは何度かお会いする機会があり、懇談後、電話すると、天皇陛下は「戦争中は苦労をされましたね」、皇后陛下は「日系人のお世話をよろしくお願いします」と寺岡氏に声を掛けられ、「戦争中のことだから仕方がありません」とお答えしたという。

 さらに「夢にまで見た父にようやく会えたとでもいうのでしょうか。涙が出て止まりませんでした」、「日本人として生きてきたことに間違いはなかった。これからも日本人であることを誇りに生きて行きたい」などと感激を語った。

 残留2世は日本人の父親とフィリピン人の母親の間に生まれ、日本の敗戦後、母ともに現地に取り残され、フィリピン社会の激しい反日感情の中、ゲリラの攻撃にさらされてきた。多くは70歳代後半を迎え、PNLSCによると現在も1199人、懇談に出席した86人でみると、うち36人が日本国籍を取得できないまま無国籍状態にある。

 このため家庭裁判所で新たに戸籍を作り日本国籍を取得する就籍の申し立てを東京家庭裁判所にしているが、日本人の父親の身元が判明しない、あるいは父親の身元が分かっても戦後の逃走の中で写真や資料を捨て親子関係を裏付ける証拠がない、などの理由で難航しており、就籍による日本国籍の取得は168人にとどまっている。

 今回の両陛下懇談で特に思うのは、86人は日本国籍の有無に関係なく「日系人」として出席した。日本国籍のない36人も国籍所有者と同じ立場での出席が認められたわけで、そうであるならば、無国籍状態にある残留2世の国籍取得は加速される必要がある。これ以上、解決が長引けば、形の上で「国家意思の分裂」という問題も出てきかねないからだ。

 法律的な問題点や歴史的経過、残留2世が置かれた悲惨な状況に関しては本ブログを含め、いろんな機会に指摘してきた。今回は、これ以上繰り返さないが、残留2世は既に後期高齢者の域に達しており、両陛下の前で号泣した2世たちの気持ちは1日も早く汲み取られる必要がある。

フィリピン日系人協会は昨年7月、2万8千人の署名を添え安倍晋三首相に早期解決を求め、安倍首相も「政府としてしっかりと協力させていただきたい」と答えた。仮に早急な解決策が取れないのであれば、せめてその理由を残留2世たちに分かるように説明する必要がある。(了)

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最終合意、冷静で柔軟な対応を [2016年01月07日(Thu)]

共同文書見送りが招いた混乱
朴大統領の決断を見守るべきi


 昨年末の日韓外相会談で“最終合意”した慰安婦問題の先行きに不透明感が漂っている。合意は正式な共同文書にされておらず、内容の詳細も明らかにされていない。「口約束で拘束力は弱い」との懸念を裏付けるように、日本政府の10億円拠出についても日本の岸田文雄外相と韓国の尹炳世外相の解釈の違いが表面化している。

焦点の一つがソウル日本使館前に設置された少女像(慰安婦像)の撤去問題。岸田外相は「適切に移設されると認識している」としているが、共同会見で「努力する」とした尹外相は、その後、「民間が自発的に設置したもので、政府がどうこう指示できる事案ではない」と語っている。尹外相の説明でいけば“撤去はあくまで努力目標”にとどまり、「撤去が10億円拠出の前提」とする日本側との差は大きい。

合意内容の文書化を見送ったのに伴う“食い違い”ともいえるが、背景には韓国の歴代政権がともすれば国内世論に流され、政権が交代する度に慰安婦問題が再燃してきた経過に対する日本側の不信感がある。文書化は国内世論の動向を懸念する韓国側の要請で見送られたと報じられているが、このままでは双方の認識の差が埋まらぬまま「新たな火だね」として、「問題は最終的かつ不可逆的に解決される」とした歴史的合意を無にする恐れさえある。

 しかし共同文書がないとはいえ、共同会見の模様は世界に報道され、「合意内容の履行が日韓摩擦の緩和につながる」、「日米韓の協力に向けた障壁が取り除かれる」と歓迎した米政府の言葉を待つまでもなく、世界は日韓両政府、とりわけ韓国政府がどのように最終合意の実現に向け約束を守るか、注目している。

朴大統領は就任以来、慰安婦問題解決を政権の最大の外交テーマに掲げ、“告げ口外交”などと揶揄されながらも一貫して「被害者が受け入れ可能で、国民が納得できる解決策」を日本に求め、ともすれば韓国でタカ派の烙印を押されている安倍晋三首相と最終合意に踏み切った。

「あいまいで不完全な合意」、「被害者と国民を裏切った外交的談合」などとする野党や「韓国挺身隊問題対策協議会」(挺身協)の反発は当然、予想された結果であり、それを承知で「日韓関係改善と大局的見地から、被害者も国民も今回の合意を理解してほしい」と呼び掛ける朴大統領の姿勢に、従来とは違う「覚悟」をあえて読み取りたく思う。

今回の合意は慰安婦問題に終止符を打つ最後の機会となると思う。ここで破綻すれば、両国民の間に「反日」、「嫌韓」がさらに深く沈殿し、日韓関係の修復、未来志向の構築は遠い将来まで不可能となる。新年早々の北朝鮮による核開発を見るまでもなく、東アジアには日韓が手を携えて対応すべき喫緊の課題は多く、当の韓国にとっても、植民地統治に由来する「反日」に過度にこだわり続けるのは、この国の将来にとって好ましいとは思えない。

過去の歴史を見ると、歴代大統領の多くが就任に当たり「日本政府に物質的要求はしない」、「今後、過去の問題は出さない」などと言明したが、結局、国内世論に流され、態度を翻さざるを得なかった。これでは国と国の約束、外交は成り立たず、不毛な両国関係が続いてきた。

韓国の政権にとって、韓国司法や米国内の韓国人団体のハードルもある。2011年、韓国憲法裁判所は日韓請求権協定をめぐる訴訟で「慰安婦の個人請求権の有無の解釈に争いがあり、韓国政府が解決の努力をしないのは違憲」との趣旨の判断を示し、当時の李明博大統領が一転して対日強硬策に転じた。米国内の韓国人団体の動きも強硬で、国務省のマーク・トナー副報道官が合意をきっかけに少女像設置活動の自制を要請したが、かえって反発が強まっているとも報じられている。

 日本側に目を転ずれば、譲歩の繰り返しが問題を解決するどころか、かえって事態を悪化させてきた経過もある。こうした悪循環を断ち切るためにも、今回の合意で確認されたように、互いが非難、批判することを自制し、冷静かつ柔軟に対応することで事態を打開してほしく思う。

現状認識の甘さを指摘されるだろうが、信頼関係の構築は過去に対する過度のこだわりより前向き思考こそ必要である。そんな思いをこめ、慰安婦問題決着に向けた今後の双方の動きを見守りたく思う。(了)
将来にも有効な打開策 なし得るか? [2015年12月25日(Fri)]

日韓のトゲ 慰安婦問題
50年の節目の外相会談に期待


日韓両国の懸案である慰安婦問題で詰めの協議をするため岸田外相が安倍首相の指示を受け、年内にも訪韓するという。背景には、朴槿恵韓国大統領に対する名誉毀損罪に問われた産経新聞前ソウル支局長の無罪判決=確定=や韓国憲法裁判所が1965年の日韓請求権協定の違憲性の確認を求めた訴えを却下したことから、慰安婦問題を協議する環境が整いつつある、との判断があるようだ。

日韓友好のトゲとなってきた慰安婦問題の解決は誰もが望むところだ。しかし韓国の政権が変わるごとに、あるいは同じ政権でも任期半ばで対応が変わった過去の経過を見れば、どのような解決策も将来の不安は残る。日韓条約制定50年の節目に何とか抜本的な解決策が打ち出せないものか、交渉の行方に注目したい。

12月に出された2つの司法判断を前に気になる点がある。まず産経新聞前ソウル支局長を無罪としたソウル中央地裁判決。判決内容は詳細に報道されており省略するが、大統領は選挙で選ばれる公人中の公人である。しかも問題となったコラムは2014年4月に起きたセウォル号沈没事故当日の大統領の行動に関する記事である。

国の最高責任者である大統領に事故がどう報告され、どのような指示がなされたか、国民には知る権利があり、記事の公共性・公益性は当然、認められる。刑事責任を問うこと自体が無謀、無罪判決は当然だった。

不可解だったのは、裁判長が判決に先立って外務省から提出されたという「量刑参考資料」を読み上げた点だ。「日本側が両国関係の発展という見地から強力に善処を要請している」、「日本側の要請を真剣に考慮する必要がある」といった内容だったと報道されている。冷え切った日韓関係の打開に向け両政府の交渉が続けられており、背景には当然、そういう動きがあったであろう。

しかし行政から独立しているはずの司法が、判決に先立ち法廷で朗読する意味は何なのか。政府の要請があったが判決には何の影響もなかった、と強調するためなのか、それとも逆なのか。あるいは、この裁判の特殊性をあらためて国民に印象付けるのが狙いなのかー。疑問は尽きない。

韓国の名誉毀損は、被害者が処罰を望まない意思を示した場合、公訴自体が無効となる「反意思不罰罪」と規定されている。仮に朴大統領がその旨、表明すれば裁判は消滅し、国際社会が「韓国の報道の自由」を懸念・批判する事態も避けられた。しかも強大な権力を持つ大統領には、「記事の記述は虚偽」と公的に説明する機会はいくらでもある。

前述の政府提出文書に関しても、大統領府は当然、承知の上と思われる。にもかかわらず大統領が沈黙する背景には、傍からはうかがい知れない特殊な事情のあるのであろう。

一方、韓国憲法裁判所の却下判決。1965年の日韓条約とともに締結された日韓請求権協定では日本が韓国に有償、無償で計5億jの経済協力を約束、植民地支配で生じた被害や損失を請求する権利は「完全かつ最終的に解決された」と明記されている。

訴えを起こしたのは戦時中、日本政府に軍属として徴用された男性の遺族。韓国政府による支援金の増額を求める中で「協定は財産権の侵害に当たる」として違憲の確認を求めた。これに対し憲法裁は「協定が違憲か否かは原告の請求に影響しない」などとして事実上の門前払いにした。

意外だったのは、ここでも憲法裁が判決理由とは別に「報道機関向け資料」と称する文書を出し、「判決は協定の条項が『合憲』だと判断したわけではない」とわざわざ断った点だ。長年、日本の司法現場を取材したが、判決は裁判官が法廷で述べた内容がすべてであり、日本の裁判でこのような文書が出されることはない。

憲法裁の資料は、ソウル中央地裁が読み上げた外務省提出文書と同様、司法が政府とは別の立場に立ち、いつでも独自の判断を出す用意があることを宣言したと言えなくもない。

日韓請求権協定をめぐる流れを振り返ると、「完全かつ最終的に解決された」との双方の確認は2005年、当時の廬武鉉政権が「元慰安婦、原爆被害者、サハリン残留韓国人の請求権は失われていない」と判断、2012年には韓国の最高裁が戦時中に強制徴用された韓国人元労働者らの個人請求権も消滅していないとし、ソウル高裁や釜山高裁が日本企業に賠償を命ずる判決を出している。

協定に伴って支払われた莫大な経済協力費は、朴大統領の父親の朴正煕大統領がインフラ整備など社会投資に使い、「漢江の奇跡」と呼ばれる高度経済成長を実現した。国と国の間で「完全かつ最終的に解決された」と確認し合った以上、それをどう使い個人補償をどうするかは韓国の国内問題と解釈するのが普通で、「解決済み」とする日本政府の対応が間違っているとは思わない。

慰安婦問題でお詫びと反省を表明した河野談話などにより、事態が複雑化した面はあるが、新たな解決策を模索するとしても、この一線は守られる必要がある。そうでなければ国と国の約束事は成り立たない。

同時に新たな解決策がまとまった場合は、これを最終解決とする担保を双方で確保することだ。再び見直しが問題になるようであれば、「嫌韓」、「反日」ばかりが膨らみ、解決の道は一層遠のく。いささかの危うさも感じながら、日韓条約50年を機に、新たな日韓友好がスタートすることを望まずにはいられない。(了)
エネルギー資源 日ロ協力はどこまで可能か! [2015年11月24日(Tue)]
日本に「勇気ある決断」を促す
国際会議で訪日のプーチン大統領側近


過日、ロシア最大の国営石油会社「ロスネフチ」会長でプーチン大統領の側近中の側近、事実上のNO2ともいわれるイーゴリ・セーチン氏の講演を聞いた。この中でセーチン氏は「われわれは既に様々なプロジェクトを日本に投げ掛けている。日本は今こそ勇気ある決断をすべきだ」とシベリア開発などに対する日本への期待を強く表明。来年以降に延期されたプーチン大統領の訪日に関しても「日ロ間にはたくさんの問題があるが、実現すればロシアと日本は戦略的パートナーの基礎を築くことができる」と早期実現の必要性を語った。

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講演するイーゴリ・セーチン氏

 日本滞在中、誰と会見したのか、定かな情報はないが、セーチン氏がシベリアの石油や天然ガスなど天然資源の売り込み先、さらに開発のパートナーとして、日本に熱い視線を注いでいることは素人目にも十分、実感できた。

 セーチン氏は11月6日、日本財団の姉妹財団、笹川平和財団・海洋政策研究所が開催した「日露間のエネルギー協力に関する国際会議」で基調講演、その後のパネルディスカッションにも上田隆之・経済産業審議官らとともに出席した。会場となった平和財団国際会議場に駐日ロシア大使館関係者らと現れ、詰め掛けた日本の企業関係者らと握手した後、「日露エネルギー協力の将来」のテーマで約20分間講演した。メモを見ながら話す声は低く、 “豪放”なイメージを持っていただけに意外な感じも受けた。

 公演ではまず油価が暴落している現状について、価格が高いシュールガスの競争力が低下する結果を招いている、とするとともに、「油価は5、6年で元に戻る」との見通しを披露、エネルギー資源の90%を中東に頼る日本について「ロシアに対する関心は依然低い。もっと投資が増えてもいいのではないか」と疑問を呈した。

その上で日ロ間の距離的な近さやロシアの豊富な資源と日本のハイテクが結びついた場合の強みなどを強調、「現在、東シベリアのエネルギー資源の大半は中国に行っているが、今後、原油、天然ガスとも生産量が大きく拡大する。日本向けを大幅に増やしたい」、「日本の企業に資本参加してもらい、両国のエネルギーブリッジを軸に日ロ関係を強化したい」、「今、決断しても実現するのは5,6年先。急いでほしい」などと語った。

サハリン(樺太)に火力発電所を建設、海底ケーブルで北海道に輸出する“電力構想”に関し「法が未整備で現時点では無理だが、将来、実現すれば北海道の経済発展、環境負荷の削減につながる」といった発言も。

全体に日本の前向きで早急な対応を強く促す内容で、上田審議官もエネルギー資源の調達先を多様化するのが今後の日本の課題とした上で、「遅くなっても、しないよりまし」とのロシアの諺を引用、「エネルギー大国・ロシアは日本にとって欠くことのできないパートナー」と語った。

筆者はエネルギー問題や日ロ関係に不案内だが、何事も一極に集中する傾向が強い日本の安全保障にはかねて危機感を持っている。政治、経済など国のあらゆる中枢機能が首都圏に集中している現状はどう考えても危険である。狭い地域に人口の4分の1が集中する現状は、防衛上は言うまでもなく、ひとたび大地震による大津波や巨大台風に伴う大高波に襲われれば国の機能全体がマヒする。

エネルギーも然り。かつてこの国は、連合国側の対日包囲網によるエネルギー不足を打開するため戦争の道を選び国を崩壊させた。安定的に資源を確保する態勢の確立こそ敗戦から得た教訓であったはずだ。シベリアや北極海に眠る膨大な資源利用が現実性を増す中で、エネルギー安全保障も当然、見直されていい。

確かに日ロ間には北方4島返還などいくつかの難問がある。乱暴に言えば、戦後70年間、「4島一括返還」を求める日本と「領土問題は存在しない」というロシアの主張が噛み合わぬまま推移してきた。

国と国との交渉、特に領土問題のような、国の主権にかかわる問題を一挙に解決するのは難しい。個人としては、4島が日本の領土であるとの主張を堅持しつつ、まずは2島返還を実現、段階的に解決を図るのが現実的な選択肢と考える。一括返還にこだわり続ければ、その分、解決の道は遠のくと思う。

中東から輸入には距離だけでなく、マラッカ海峡を中心にした海賊問題、さらに最近は海洋覇権に向けた中国の動きなど新たな問題もある。再生可能エネルギーの開発などに積極的に取り組むは当然として、資源の確保先の分散・多様化は最早、避けて通れないテーマだ。

セーチン氏は講演で日本の資金、技術に対する期待をきわめて率直に語った。ウクライナ問題でのヨーロッパ諸国との対立、エネルギー価格の下落に加え、中国への売却でも買い叩かれている面があると聞く。そうした事情を抜きにしても、シベリアや北極海のエネルギー資源が日本にとって不可欠となる時代が遠からず来ると思う。しばし、政府の対応に注目したい。(了)
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