あなたは、星の役には立っていない
[2017年12月04日(Mon)]
サン=テグジュペリ『星の王子さま』(河野万里子・訳)の第13章より――
四番目の星は、実業家の星だった。
実業家は仕事中で、王子さまがやってきても顔さえ上げなかった。
「こんにちは」王子さまは言った。
(…)
「5億って、なにが?」
(…)
「ああ!星だね?」
(…)
「それで、その星をどうするの?」
(…)
「星の持ち主なの?」
(…)
「じゃあ、星を持っていると、なんの役に立つの?」
(…)
「金持ちでいられると、なんの役に立つの?」
(…)
「どうやったら星の持ち主になれるの?」
(…)
「それだけでいいの?」
(…)
「それでその星をどうするの?」
「管理する。数をかぞえ、またかぞえなおす」と実業家。
「むずかしい仕事だ。でも、私は有能な人間だからな!」
王子さまは、まだ納得していなかった。
「ぼくなら、スカーフを持っていれば、首に巻いてでかける。
花を持っていたら、摘んで持ち歩く。でも、星は摘めないよ」
「だが銀行に預けられる」
「どういうこと?」
「私の星の数を、紙切れに書くってことだ。
で、その紙切れをひきだしにしまって、鍵をかけておく」
「それでおしまい?」
「それでじゅうぶん!」
<おもしろいな>と王子さまは思った。
<なかなか詩的だな。でもあまり有能って感じはしないや>
王子さまは、有能であること、大事なことについて、
大人とはとてもちがった考えを持っているのだ。
「ぼくは」ふたたび王子さまは言った。
「花の持ち主だったから、毎日水をやっていた。
三つの火山の持ち主だったから、毎週煤(すす)のそうじをしていた。
火の消えたのも、そうじしていた。用心にこしたことはないものね。
だから火山にとっても花にとっても、ぼくが持ち主で、役に立っていた。
でも、あなたは、星の役には立っていない……」
実業家は口を開いたが、返すことばが見つからなかった。
そこで王子さまは、その星をあとにした。
<おとなってやっぱり、まったくどうにかしてるな>
王子さまは、旅を続けながら、すなおにそう思った。
実業家は仕事中で、王子さまがやってきても顔さえ上げなかった。
「こんにちは」王子さまは言った。
(…)
「5億って、なにが?」
(…)
「ああ!星だね?」
(…)
「それで、その星をどうするの?」
(…)
「星の持ち主なの?」
(…)
「じゃあ、星を持っていると、なんの役に立つの?」
(…)
「金持ちでいられると、なんの役に立つの?」
(…)
「どうやったら星の持ち主になれるの?」
(…)
「それだけでいいの?」
(…)
「それでその星をどうするの?」
「管理する。数をかぞえ、またかぞえなおす」と実業家。
「むずかしい仕事だ。でも、私は有能な人間だからな!」
王子さまは、まだ納得していなかった。
「ぼくなら、スカーフを持っていれば、首に巻いてでかける。
花を持っていたら、摘んで持ち歩く。でも、星は摘めないよ」
「だが銀行に預けられる」
「どういうこと?」
「私の星の数を、紙切れに書くってことだ。
で、その紙切れをひきだしにしまって、鍵をかけておく」
「それでおしまい?」
「それでじゅうぶん!」
<おもしろいな>と王子さまは思った。
<なかなか詩的だな。でもあまり有能って感じはしないや>
王子さまは、有能であること、大事なことについて、
大人とはとてもちがった考えを持っているのだ。
「ぼくは」ふたたび王子さまは言った。
「花の持ち主だったから、毎日水をやっていた。
三つの火山の持ち主だったから、毎週煤(すす)のそうじをしていた。
火の消えたのも、そうじしていた。用心にこしたことはないものね。
だから火山にとっても花にとっても、ぼくが持ち主で、役に立っていた。
でも、あなたは、星の役には立っていない……」
実業家は口を開いたが、返すことばが見つからなかった。
そこで王子さまは、その星をあとにした。
<おとなってやっぱり、まったくどうにかしてるな>
王子さまは、旅を続けながら、すなおにそう思った。
実(まこと)の商人は、
先も立ち、我も立つことを思うなり
(石田梅岩)
先も立ち、我も立つことを思うなり
(石田梅岩)
この続きはまた明日
会計は算術ではなく、思想である
会計情報という数字を介して、経営との対話がはじまる。
会計は算術ではなく、思想である
会計情報という数字を介して、経営との対話がはじまる。