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宮 直史ブログ−“信はたていと、愛はよこ糸”

岡崎嘉平太記念館(岡山・吉備高原)で出会ったメッセージに深い感銘を受けました。
『信はたていと、愛はよこ糸、織り成せ 人の世を美しく』(岡崎嘉平太氏)
・・・私も、皆様方とともに世の中を美しく織りあげていくことを目指して、このブログを立ち上げました。よろしくお願いします。


こんにちは!宮です

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JALの再生 [2010年03月19日(Fri)]
 会社更生手続き中の日本航空(JAL)は、稲盛会長と大西社長が2月1日の就任会見以来の記者会見を行いました(3/17)。 昨日(3/18)の朝刊各紙に報じられていましたが、JALの公式サイトには会長と社長のメッセージの全文が掲載されています。

以下、稲盛会長のメッセージから一部引用
 JALの全体像を掴む努力をしておりますが、正直申しましてJALの組織そのもの、責任体制が明確になっていないということ、それと同時に起業家精神に溢れた人、つまりJALをもっと良い会社にしようという熱い精神をもっている社員が少ないということに気が付いています。
 色々な局面で、起業家精神に溢れた人、ちょっと表現が雑ですがガッツがある人が出てくるように思って、一生懸命促がしているところでございます。 私の手伝いをしてくれる人が現れてくれることを期待しています。

 現在、全体像を掴もうとしていると同時に、どうすればJALが黒字化できるかという点について検討いたしております。
 起業家精神に満ちた人が大変少ないので、そのような人を育成すると同時に、採算意識、損益意識を持った人達をもっと作っていきたいと、ちょっと言葉が下品かもしれませんが、商売人という感覚を持った人があまりにも少ない。
 つまり大学の経営などで学ぶことは良く理解しておりますが、正直言って我々は商売をやっておりますので、商売人的な感覚、つまり損益をベースに考えていくことが少ないということに大変残念に思っております。 現場をまわっておりますと、若い社員が指摘するほどでございました。
 私は、企業というのは先ずなによりも損益がベースでなければならないと思っておりますので、それを今後盛り込んでいきたいと思っています。

 昨日の新聞各紙には、この稲盛会長のメッセージとともに、記者会見での稲盛会長のコメントが記されています。 たとえば、日経新聞では「路線別の月次採算情報が手元にくるまで2カ月もかかる」。 また、朝日新聞によると、日航にアメーバ経営を導入するかとの質問に対して「アメーバ以前に、普通の企業として採算がとれるようにしたい」とばっさり。

 相当にレベルが低いようです。

 もし、経営を飛行機の操縦に例えるならば、会計データは経営のコックピットにある計器盤にあらわれる数字に相当する。 計器は経営者たる機長に、刻々と変わる機体の高度、速度、姿勢、方向を正確かつ即時に示すことができなくてはならない。 そのような計器盤がなければ、今どこを飛んでいるのかわからないわけだから、まともな操縦などできるはずがない。
 だから、会計というものは、経営の結果をあとから追いかけるためだけのものであってはならない。 いかに正確な決算処理がなされたとしても、遅すぎては何の手も打てなくなる。 会計データは現在の経営状態をシンプルにまたリアルタイムで伝えるものでなければ、経営者にとって何の意味もないのである。

稲盛和夫著『稲盛和夫の実学』/日経ビジネス人文庫/P.40〜41)

 JALの経営者が、操縦する飛行機に正確な状況をリアルタイムに示す計器盤がないので、今どこを飛んでいるのかわからないまま飛行機を飛ばしていた、、、洒落になりません。

 何ともお粗末な話ですが、同じような話が10年前にもありました。日産自動車です。
 当時の日産自動車は2兆円の借金を抱えて倒産の危機に瀕していました。

 「日産をこんな状態にしてしまったのは何か? 私なりに考えた原因を5つ挙げてみましょう。 その第一は、まず日産が利益を大切にしていなかったこと。 これは明らかです。 経営陣は数字を知りませんでした。 また、業績も知りませんでした。 数値的な目標を掲げることもありませんでした。 その車が利益をあげるのか、それとも損失をもたらすのか、よく知らないままに車を売っていたのです。 経営陣のなかで数字を知っていたのはごく一部の人だけ。 その数字もきちんとしたものではなく、おおざっぱなデータに基づいたものでした。 そんな状態ですから、たとえ誰かが収益性の話をしたとしても、“会社の収益性をあげる”といったことではありませんでした。 もし“利益の追求”が会社の基本的な目的となっていないのであれば、利益がもたらされるというのは偶然の結果でしかありえません。 利益をあげようと努力しないで、どうやって利益を得ることができるのでしょう? 魔法でも使わないかぎり、そんなことはできません」

 後に正確なコスト分析を行った結果、99年に日産が売り出していた43車種のうち、わずか4車種しか黒字を計上していなかったことがわかったのだ!
 エントリー・レベルの車種として重要なシリーズを構成して、かなりの販売台数とシェアを誇るマーチについても15%以上の損失を出していた。

『カルロス・ゴーン 経営を語る』/日本経済新聞社/P.223〜224)

 んな、あほな???
 ならば、経営陣は何に基づいて経営をしていたのか? 監査法人は何に基づいて監査をし、アナリストは何に基づいて分析をし、そして金融機関は何に基づいて融資判断をしたのか???

 中小企業の経営者の方が、余ほどしっかりと経営に取り組んでおられます。大企業だから、このような甘い経営や融資判断が許されるとしたら妙な話です。

 それにしても、気がかりなのはJAL再生への取組みのスピードです。
 昨年9月の第3週、私は中小企業大学校の東京校に出かけていたのですが、その週の日経新聞は連日1面にJAL関連の見出しが載っていました。 5日間の研修のテーマが「キャッシュフロー経営と利益・資金計画の策定支援」だったこともあり、その日の日経の記事を毎日のように研修で取り上げたのでよく覚えています。

 あれから半年です。
 記者会見の稲盛会長や大西社長のメッセージやインタビューの応答を拝見する限りでは、収益性に対する意識は致命的に低いままのようですし、経営の意思決定をするために必要な数字も満足につかめない、そもそも危機的状況に対する切迫感や緊張感があるのか・・・
 結果としての数字を評価する以前の問題として、JALの再生は極めて深刻な状況と思われます。

 朝日新聞に掲載されていた稲盛さんのコメントです。「企業再生支援機構の計画を実行すれば再生は可能と思い引き受けたが、正直、容易でない。愚痴をこぼしてもしょうがないので頑張っている

 JALの公式サイトに掲載されている企業再生支援機構の計画を拝見しました。

 99年10月に発表された日産自動車のリバイバルプラン(NRP)は、50ページのパワーポイント資料でした。
 その考え方や取組みは、自社の経営力の改善強化に取り組む中小企業にも極めて有効で、日産自動車の公式サイトに掲載されていたPDFをダウンロードして、経営指導の現場や中小企業大学校などの研修やゼミ指導でもずいぶんと活用させていただきました。
 1.診断
  (1)過去の業績(統計資料をグラフ化して症状を明らかにする)
  (2)分析(過去の業績不振の原因を明らかにする)
  (3)可能性(再建可能性が大である根拠を明らかにする)
 2.リバイバルプラン
  (1)策定方法(どうやってプランを策定したか)
  (2)主な内容(業績を上げるためのテーマごとに「目標」と具体的な「活動」)
  (3)効果(それらによってどのような効果を期待しているのか)
 3.必達目標(コミットメント)

 確かに、企業再生支援機構の「日本航空に対する支援決定について」にも同様の項目が並んでいます。しかし、そのインパクトは明らかに違います。

 数値計画(概略しか記載されていませんが)は、3年後の数値目標しか示されていません。
 日産自動車のリバイバルプラン(NRP)も3カ年計画でしたが、「NRP初年度の黒字化」を第1のコミットメントとして掲げていました。 それがその後の計画や目標の実現の前提となるからです。
 また、再生計画において何より大事なのは「業績をあげるためにはどうすればいいのか」、数値目標を達成するための具体的な方策です。
 そして、トップ・マネジメントによる3つのコミットメント(必達目標)のいずれかでも達成できなかった場合には、経営陣は退任をも辞さないとの固い決意がステークホルダーに示されていました。 その3つのコミットメントのうち最初のコミットメントが、「計画初年度の黒字化」だったのです。

 上場を維持しながら再建に取り組んだ日産自動車に対して、JALは2月20日に上場廃止となりました。 その結果、株主、金融機関や取引先などの債権者、社員や退職者などに多大な迷惑をかけ、公的支援を通じて国民に無用な負担を強いています。
 厳しい経営環境が続いて何かと大変でしょうが、稲盛会長はじめJALの皆さんが一丸となって取り組まれることによって、再生計画が当初の予定より早期に達成されることを心より願います。
 
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