助成第22号事業のチームかなこの事業報告書を掲載致します。
◆助成第22号◆
チームかなこ(団体・大阪府)
◆申請事業◆
北村佳那子ライフヒストリー
映像化&ブックレット制作「伝える」プロジェクト
◆助成支給額◆
550,000円
◆事業担当者◆
山崎秀子さん
◆事業の目的・概要・効果等◆
北村佳那子(きたむらかなこ、35歳)は、脳障害による重度の心身障害があり、生活には全面的な介助が必要です。小学2年生から大阪市内で暮らし、地域の普通学校で育ってきました。中学卒業後は、大阪市内の公立高校へ進学。大学受験にもチャレンジしました。高校卒業後は、大学へ聴講生として通い、同年代の学生と学びあい・大いにあそび、キャンパスライフを謳歌しました。重度障害があっても、普通高校・大学へ通う風穴をあけ、地域で共に生きるパイオニア(先駆者)となっています。
現在、医療と連携しながら、グループホームで暮らしています。2013年より親(家庭)から独立して、24時間ヘルパーの介助を受け、「佳那子さんの暮らし」を送っています。重度の心身障害があり、医療と連携しながら、地域での暮らしを継続している例は他にはありません。
両親は、佳那子さんが子どもの頃からヘルパーの介助を受ける暮らしを日常化してこられました。そして、医師やPT、OTなど医療関係者との関わり、小学校から続く普通学校での様々な出会いの中で共に学び生きてきたこと。それら全ての経験が、今の佳那子さんの生活を作り上げています。
今回、日々の暮らしでのコミュニケーション、医療連携の様子、つながりのある暮らしを伝えるために、日常生活を撮影し、それらを3テーマで編集し映像化しました。
「障害者権利条約」日本審査の総括所見において、「脱施設」「インクルーシブ教育」が喫緊の課題だと勧告されました。また、障害者権利条約第12条では、支援付き自己決定(意思決定支援)の大事さが述べられています。佳那子さん本人が言葉を発することは難しいですが、家族・友人・ケアする人たち・様々に関わる人たちは言葉を投げかけ、佳那子さんのviews(声・意見)に耳を傾け、共に考え、思いを探る営みを続けています。日々の暮らしをどう紡いでいるのか、本人の「最善の利益」に照らしてどのようにやり取りしているのか。佳那子さんの生きてきた歩み、現在の暮らしを記録し伝えていくことで、障害者権利条約の理解が促進されることが期待されます。
また、このような暮らしを想像もしない、または諦めている障害児当事者や家族、教育・福祉・医療関係者へ届け、一人でも多くの障害児当事者がこのような生活を創る一助になればと願っています。また、一般の人たちへも啓発することで、どのような障害があっても地域で育ち学ぶ権利があることを伝え、国連の提唱する「インクルーシブ教育」「インクルーシブ社会」の実現に寄与できると考えます。
◆事業時期・内容◆
2023年2月〜:企画会議(随時開催)
2024年2月〜12月:日常生活の撮影
2024年7月〜3月:映像編集作業
2025年3月:映像データ完成
2025年3月22日:伝えるプロジェクト報告会の開催
◆事業成果◆
5.事業成果
【事業内容】
◯「かなこさんの暮らし」の映像化(約30分✕3テーマの制作)
@1日の暮らし編
A医療連携編
B地域・人とつながる編
※事業計画からの変更
撮影をプロに依頼予定でしたが、佳那子さんのヘルパーが撮影することに変更。イベント時に日時を指定して撮影を依頼することは可能ですが、日々の暮らし・医療との連携の場面を撮るには、依頼した時にだけ来て撮ってもらうことは難しいと判断。ヘルパーのみなさんには、通常の業務で多忙ななか撮影に協力いただきました。
◯伝えるプロジェクト報告会の開催
3月22日(土)
参加者47人
シンポジスト3人 北野勝也さん、椎名保友さん、山下幸子さん
司会 北村佳那子、山崎秀子
【事業成果】
・報告会では、映像を見ていただくことで暮らしが具体的にイメージでき、そこから地域生活の創造・意思決定支援など幅広くディスカッションすることができました。
また、近年キーワードとなっている「医療との連携」「意思決定」が、どのようにされているのか、映像や当日のやり取りから、見て感じられたという声が多く寄せられました。
・多職種、障害児の親、障害当事者と幅広い方たちに参加いただきました。その中で、医療関係の方は、グループホームでの日常。移動支援の方は、自分が送迎した先での様子。ヘルパーの方も、通院先での診察の様子など、自分が関わっていない場面を知ることができたという声が聞かれました。
・佳那子さんのように、医療ケアを伴う重度心身障害の方で、親元を離れ地域生活を送っている人は全国的には少ない。後に続く方へのロールモデルとして発信につながったと考えます。その暮らしが、生活の基盤を福祉・医療が連携し、そして地域や友人たちとの豊かなネットワークで構成されている様子が、映像を通して伝えられました。
〈シンポジストの発言から〉
・生活音、みんなの声に囲まれている暮らしが映像から見て取れました。「チーム」について、チームが強固になればなるほと、外から入りづらくなることも多い。関係をつくるなかで、いろんな人がつながっていけることが大切。かなこさんと関わる人が、一人ひとり主体、フラットな関係であることを感じます。
・介助は仕事であり、働く環境をよりよくする、「不安」があれば取り除くことを大切にしています。生活を活き活きと、暮らしの維持ができるようにと思っています。(ヘルパーのみんなに対して)ヘルパーの仕事をしている、そのことだけで満点だと思っています。
・佳那子さんの暮らしは、支援者複数と佳那子さんとの「集合的な」意思決定支援で営まれている。支援者同士がオーソドックスな日々のことを共有し、その日々の暮らしを大切にしていると感じます。関わる人が「みんなで」役割分担をしており、そのなかに佳那子さんの生活を本人と共に作るために音頭を取るような存在が複数いる。
そうした、24時間様々なケアが必要な生活を本人がつくっている様子を、記録に残すことの大切さがあります。
〈参加者の声(一部抜粋)〉
・集団的意思決定という名の下、いつも頭を突き合わせ「あーでもない、こーでもない、こう言ってると思うよ!」日常から寄り添い彼女の意思表示に耳を傾けてくれる関係性が本当に素敵やなと思いました。それも佳那子さんの人柄、魅力あってなのかなって感激しました。いろいろな切羽つまった状況もある中で、支援者の皆様も佳那子さんと一緒に育ち合い共に生きてきたんだろうな、それが今の生活につながっているんだろうな、と頷くばかりです。佳那子さんだからできた人生、佳那子さんだからこそ「伝える」ということの意味を問いかけてくれる、教えてくれる佳那子さんだからこそ世間に発信していく意味があると思います。
・3つのドキュメンタリーは、貴重な作品だと感じました。シンポジウムもそれぞれの立場からのご意見が出されてよかったです
・励まされて、力をいただけた会でした。ありがとうございました。チームかなこの楽しむ力が素晴らしい!会場の変更も、たいへんなことだったでしょうねと想像しつつも、それすらも乗り越え笑いに変えてはるように感じました。なにがあっても大丈夫!に結果なっていってるんだろうなと思いました。かなこさんの受け入れる力、お母さまのかなこさんに任せる力を思いました。それがなければ、チームはできなかっただろうなと思うし、受け入れること、人とつながることの大切さを実感しました。 ディズニーランドでの笑顔、カヤックの笑顔がステキでした。それに、神社での夜桜を観た時の、きらきらとした瞳が印象的でした。
・30分×3本は長いと最初聞いた時は思いましたが、見るとまったく退屈せず、引き込まれて観ました。かなこさんの周りの人たちが、仕事や支援するという立場を超えて、それぞれが1人の身近な人として楽しみながら知恵を出し合い、日々をいっしょに紡いでいる様子がうかがえて、とてもうれしく感じながら拝見しました。
・今回チームかなこが特別な存在のようにみえますがそうではなく、チーム◯◯は存在し皆が支え合うことで、その方の暮らしが成り立ちその人らしい生活があるんだと思いました。皆が自分らしく生きていける、進んでいける世の中になれば良いと感じました。
シンポジウムでは三者三様でみな視点や発言の内容も違い、その人らしさが出ており、あの場であの雰囲気の中あの空気感で話をしてくださり、聞いていて勉強になりました
・映像では、かなこさんの表情が、喜怒哀楽たっぷりに映し出されて笑顔ばかりじゃないところが「リアル」で貴重な瞬間ばかり。そんな中でも、チームかなこを構成する多様なメンバーたちとの絆が、入院中というハードな時間であってもユーモアたっぷりにほっこりした安心感を伝えてくれています。医療や福祉や教育・・・といった専門家たち、幼馴染の友達から大学時代の仲間たち、そして元気な「はなうた」の同居仲間・・・と限りなく開かれた「かなこネット」の豊かさが感じられました。
【事業実施に際しての反省点】
・事業計画では2月末に完了予定でしたが、事業の実施期間を1か月延長しました。プロジェクトの趣旨・人権の視点を兼ね備えた映像編集者を探すこと、また撮影・編集に時間を要したため。さらに、報告会の会場予約の関係から延長の申し出となりました。見通しが足りなかったことを反省しつつ、延長をできたことで十分な時間を確保し、事業完了することができました。
・報告会当日、急きょ会場を変更することになりました。当日、会場準備へ行ったところ、エレベーターが工事中のため使用できないことが判明。予約・支払い時に口頭説明はなく(ホームページに記載はあったとのことだが)、会場の3階までは階段しかアクセスなく、他の部屋も空きがないため、この施設での開催は不可能と判断。近隣の生野区社会福祉協議会のご協力を得て、予定通り開催することができました。公共の施設において、事前説明がなかったことを大変残念に感じています。
報告会の様子(こちらからPDFでダウンロードできます)
◆経費収支内訳◆
■収入
三澤基金助成金 550,000円
寄付金(事業報告会時募金箱) 21,399円
合計 571,399円
■支出:
〈映像化 計406,870円〉
編集委託 300,000円
謝礼 90,000円
交通費 9,610円
その他経費 7,260円
〈報告会 計149,854円〉
謝礼・交通費 80,170円
チラシ制作謝礼 20,000円
旅費 11,080円
印刷代 9,471円
その他経費 29,133円
合計 556,724円
◆今後に向けて◆
・映像の上映と講演をセットで全国各地に発信し、インクルーシブ社会の実現に向けて「伝える」活動に取り組んでいきます。(別添資料:映像発信の広報チラシ)
今回の報告会はオンライン配信を行わず、対面での開催に注力しました。そのため、遠方からは参加しにくく、映像を見たいという声を早速いただいています。第2回上映会、また、オンラインでの開催を検討したいと考えています。
・ブックレットの制作も、今度取り組んでいければと思います。
講師派遣チラシ(こちらからPDFでダウンロードできます)
◇助成報告書はこちらからご覧いただけます(PDF)◇
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三澤了基金では、多くの方々の賛同と支援をいただきながら、
新しい時代を担う次世代の障害者リーダーを育てるための事業を応援してきました。
皆様のご支援、そして積極的なご参加に感謝申し上げます。
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