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2009年01月06日

一国家の危機のみならず世界の危機だ

金融安定化法の成立にこぎつけたものの・・・
             政治評論家 唐沢 忠雄

 今回の世界恐慌の引き金を引くに至った。
 世界恐慌のきっかけになるのではないか、或いはすでに世界恐慌に入っていると見るかは、それぞれの人の視点の置き方によって違ってくるので、当てもののような感覚や情報の収集をするのではなく、アメリカという大国がこれまでやって来たこと、とにかく金融帝国として世界に君臨して来たが、同時に資本主義の限界に達していることに気付かず、多くの欠陥を内包しており、その抜本的改革など云うは易く、誰もなし得ないだろうという、軍産複合国家と、それによって国家の意思が決定し事実上アメリカ国民を自由に使いこなして来た悪しき伝統や習性、構造をにわかに改革するなどということは不可能に近いと云わざるを得ない。
 これは実際に世界一の自動車王国の位置をいつの間にか食われていたり、今回のような不動と思われていた投資銀行の破綻を経験し、ウォール街の狼狽ぶりを見せられたりして、アメリカの世界における支配力の低下を見せつけられたりして初めてわかって来る事柄なのである。

 十月六日、いよいよ権威のある経済専門誌に「世界大恐慌はこれからだ」といった、超特大の見出しでおびえている日本人を更に絶望のふちに叩きつけかねない勢いであおっている。内容を一寸めくって見ると、ブッシュ政権がクライシスを避けるために金融安定化法を上院下院の幹部を説得して曲がりなりにも議会を通過させたが、これとて世界同時株安や、銀行の決算内容や不要債権どの程度買い上げるのか、英独仏伊などEUリーダーが会議を開き金融市場の危機を避けるための意思統一はしたものの、救済計画はまとまらなかったように、プライムローンの内容に対する不信感はとても容易には拭えるものではない。
 ドルの暴落、その結果そのことがドル建てでやって来た世界中に損害を与え更にアメリカのリセッションによる貿易の不振等からこれに依存していた国々の中小企業は軒並み経営難に追い込まれ、それがまた世界経済の足を引っ張るという具合に悪循環を繰り返す。
 小さな会社にしろ、個人にしろ経営の失敗を国家が救済するかと云えばそれはしない。なぜウォール街のあぶく銭を稼いでいた連中に税を投入するのかという庶民感情はどこの国の国民も考えることであって、政府は金融システムを維持するためには必要な手段であると説明に努めるだろうが、ここまで真相がわかって来てしまえば、そんなことは通用しなくなる。、

2009年01月15日

一国家の危機のみならず世界の危機だ

経済は中心だが、大衆は文句を言わず随いて来いは時代錯誤
                政治評論家 唐沢 忠雄

 FRBパーナンキ議長は金利の引き下げを発表したが最初は少し市場が反応したが、その後下げに転じた。j十月十日(金)にはニューヨーク市場、八五〇〇ドルに下げ続け、自動車産業等の実体経済にまで信用不安が広まり始めた。
 
  これは正しく世界恐慌である。
 
 日本株の暴落は外資が三千五百億以上の株を売り逃げたことに原因があると言われている。ドルを持たされたまま売ることも出来ず、ただ茫然としている日本人や然るべき組織はこれからどうなって行くのか、見守っているばかりだ。
 日本はアメリカ国債を多数持っている。日本と中国がその代表的国家である。そのアメリカ国債の元本や利息を保証しているのがCDSである。
 米政府は国内外の不良債権を買い取るため七千億ドルを限度として上・下両院の幹部に説得してもらい、議会を通過させた。一兆八千億ドル(約百九十一兆円)を投入することになる。

 日米欧の主要七ヶ国は十日、公的資金を使っての金融機関への注入制を合意するための調整に入っているが、ここまでやらなければ事態は防げないということだ。ただ公的資金の注入は、日本や英国ではすでに実施しているが、日本の例などによると、余り株などに手を染めたくない一般市民が、僅かな銀行や郵便局の金利を望みこつこつと貯蓄を励んで来た人々の得べかりし利益をゼロ金利という強引な方式で奪い、金融機関に移動するという結果を招き、評判は頗る悪かった。

 金融システムの崩壊を防ぐためとか何とか言って結果的に大衆をタンス預金や、リスクの多い株式などに追い込んでいった金融のエゴには多くの非難の声が沸き起こった。銀行が証券会社の真似などせずに本来の業務に徹して行くことが重要なので、これを認めた時点で今日の混乱の元をつくったのである。

 金融機関を存続させるために人々が存在するわけではない。人々が生きていくために必要な機関であるに過ぎない。破綻しそうになればすぐ公的資金が注ぎ込まれるというのでは、人々は納得しない。主役はあくまで人々である。

 「統治」のことがしばしば政治家などの口を突いて出ているが、これとて古い王制の理論だけでは今日通用しない。経済を成り立たせるためには企業の自由な活動を助長することは勿論必要であると同時に、これまで長い間実践されて来て必ずしも理想の主義主張とも、貫徹されない社会主義の平和や労働者の権利や、義務の自由、平等の範囲を拡大して行かなければならない。
 
 新しい秩序と原理原則を打ち立てることが先決なのである。G7による日米欧の行動計画のスピードを上げることと、具体的方策について話し合われてはいるが、ポールソン財務長官等政府首脳は昼夜を分かたず努力をしているということだが、的を射てるとはいえないだろう。