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水部会で8年以上も活動してきた「水の神さま」を研究発表! [2017年02月23日(Thu)]
日 時:2017年2月11日(土)午前9時00分〜午後18時30分
場 所:東北大学大学院環境科学研究科棟2階大教室(青葉山キャンパス内)

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(写真)自然科学を中心に多彩なテーマで発表と討論が行われた当日の合同研究発表会。

 東日本大震災の月命日に当たる去る2月11日(土)に東北大学青葉山キャンパスを会場として、日本水環境学会東北支部と廃棄物資源循環学会東北支部による合同研究発表会が開催されました。今回、水部会員でMELONの理事を務められている山田一裕先生(東北工業大学教授)から推薦をいただいき、MELON水部会として初めて学会の場で研究発表を行いました。

 環境問題の中でも「ゴミ」と「水」に関連する2つの有力な学会が共同で主催するということもあって、合わせて24にものぼる発表が行われました。通常であれば発表者の多くが大学院生によって占められる中、例年と比べて発表者が大変多彩だったという点も特長的と言える学会だったようです。

 なかでもMELON水部会は環境NPO等を代表する唯一の発表例であり、自然科学系の研究テーマが並ぶ中で「水の神さま」というオリジナルな着眼点が非常に異彩を放ったようで、その独特の存在感が新鮮に受け取ってもらえたことは予期せぬ「収穫」でした。

 これまでMELON水部会では、2008年以降、「水の神さまプロジェクト」を部会活動の柱の一つに位置付け、仙台市周辺から沿岸部へと徐々に対象を広げながら地道に継続してまいりました。今回、山田先生からの推薦をきっかけとして発表を行うためにこの間の活動成果を高橋春男部会長を中心にあらためて整理しなおしたところです。

 単に口頭で発表する機会を与えられたというだけでなく、これまでの活動内容をアカデミックな視点から見直して原稿にまとめ、予稿集として開催日当日に配布する都合から事前に投稿する準備も欠かせません。複数回に渡って打ち合わせをし、内容を詰めるために推敲と熟慮を重ねながら、最終的に発表の題目を「『水の神さま』の調査と市民への発信」としました。ここでは詳細まで触れることはできませんが、おおよそ次のような構成(ストーリー)の下、発表を行うこととしました。
1.はじめに
2.水の神さまとは
3.調査の仮説と目的
4.調査の方法
5.活動の結果わかったこと
6.まとめ
7.その他活動の成果物
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(写真)予稿集(有料配布)に掲載された水部会発表原稿。

 事前に示されたプログラムによれば、水部会はお昼前の発表に区分され、先頭から11番目という順番。口頭発表の際、この間の活動成果をわかりやすく伝えられるよう、予稿集に掲載予定の原稿とは別に、PowerPointで当日発表資料を作成。高橋春男部会長が仕事の合間を縫って何度も推敲を重ね、事前準備を詰めた上で当日の口頭発表に臨みました。
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(写真)水部会による発表風景(左は発表者の高橋春男部会長、右は篠原富雄部会員)。

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(写真)3人が壇上に立って、PowerPointを使って説明を行っている時の様子。

 討議が途中白熱したこともあって多少時間がずれ込みながらも、高橋部会長は冷静にそして比較的ゆったりとした口調で「水の神さま」調査の目的、問題意識、この間の経過、現時点での到達点、今後に残された課題などについて説明。これまで続けてきた8年以上にも及ぶ調査の成果を踏まえ、主として次のような点(以下、要旨)を強調しました。
 @先の東日本大震災によって「水の神さま」も沿岸部を中心に被害を免れ得ず、社殿の躯体(くたい)そのものが破壊され、今もなお再建・復興の見通しがつかない場所が複数確認されていること。
 A「水の神さま」は古くから伝わる祭り・民俗芸能・年中行事と深く分かちがたく結びついており、地域・集落にとって大切な「拠り所」としての役割を有していること。
 B「水の神さま」の周囲には地域の伝承に誇りを持ち、それを丹念に調べ記録するとともに、孫子の代へ確実に継承しようと奮闘される方々が少なくなく、地域住民との関わりや結びつきの深さも確認されたこと。
 C地域の神社には多くの願い事が託されてきたという経緯があり、「水の神さま」にも家内安全、開運招福、延命長寿、商売繁盛などの地域の生業と関連した様々な願い事が持ち込まれ、神社側もそれに積極的に対応してきたこと。

 会場からの反応としては質問というよりも、むしろ調査研究を今後進めていく上での助言や感想などが複数寄せられました。とくに仙台市周辺から沿岸部へと調査対象を徐々に広げてきた経緯もあり、内陸部も含めて「水の神さま」の地域ごとの実態や特長をより詳細に整理していってほしいとの今後に向けた期待の声が挙がりました。又、河川水系ごとに現存している水神碑を丹念に調べて、その成果を一つひとつ地図に落とし込んでマップ化したら大変有意義ではないかという提案もあり、ちょうど所定の時間を消化する形で発表は終わりました。

 研究発表が終わった夕方からは、ポスターセッションが開催され、各々制作した展示物を掲示して、水生生物(アサリ)の餌環境、四ツ谷用水の復活、北上川河口のヨシ原の生育状況、和紙を用いた水浄化法など、それぞれに掲げた関心テーマで関係者に展示説明を行うというイベントもありました。用意された軽食をつまみながら、研究内容の一つひとつに耳を傾けたり、先生方との「水の神さま」を媒介とした楽しい情報交流もありました。
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(写真)ポスターセッションでは展示内容だけでなく、多くの研究交流がありました。

 今回、MELON水部会として初めて学会に参加し、しかも推薦を得て研究発表の機会まで与えていただきましたが、とりまとめに途中難渋しながらも結果的には大変意義のある取組みになりました。調査研究という観点からこれまでの活動内容を客観的に振り返ってみて、あらためて到達点や今後取り組むべき課題などが明確になったことは非常に実りある成果だったと言えます。
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(写真)研究の着眼点や質の高さが評価されて、多彩なメンバーが表彰されました。

 しかも最後に優秀発表賞という予想だにしていなかった評価を公の場で頂戴したことは、今後の活動の励みにもなると感じました。学会に参加した複数の先生たちからは、これまでの8年以上に及ぶ調査活動を基にした総括的な研究発表に続いて、「水の神さま」調査を継続していく中で今後も独創的な着眼点を活かした発表・出展を待っているとの温かい励ましもいただき、感慨を新たにしました。最後に山田先生をはじめ、学会の関係者の皆さま、大変お世話になりました。ありがとうございました。


(MELON事務局・玉澤)
Posted by MELON at 11:17
宮城県の河川整備計画(素案)へ意見を提出しました [2017年02月09日(Thu)]

2017年1月6日から2月3日にかけて、宮城県が作成した今後の河川整備に関する計画(素案)についての意見募集が行われました。

今回公表・募集されたのは、@七北田川水系、A砂押川水系、B高城川水系、C北上川圏域の4つの素案です。

この意見募集に対し、MELON水部会から意見を提出しました。

水部会で8年以上継続している「水の神さま」調査の知見も活かし、
七北田川水系については、中野堰の水辺空間としての再生、「蒲生干潟自然再生協議会」の活性化などの提案を行いました。
また、北上川圏域について、
河川整備計画の事後評価のあり方、地域活性化という視点を織り込んだ観光・交流による利活用などに言及しています。

今後も、地域に根差した活動を通し、
宮城県の水文化や水環境の調査・提言活動を行ってまいります。

参考:宮城県土木部河川課ウェブサイト

(事務局員 古林)
Posted by MELON at 17:49
北上川の河神とも言われる『水の神さま』を見学! [2017年01月26日(Thu)]
日 時:2017年1月21日(土)午前7時50分〜午後5時30分
内 容:@日高見神社(石巻市桃生町太田)
    Aヨシ刈り体験(石巻市北上町大須付近)
    B釣石神社(石巻市北上町十三浜)
参加者:29名(高校生、小学生を含む)

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(写真)今回、他団体との協働によって行われたヨシ刈り体験の様子(北上川河口にて)。

 1月21日(土)、MELON水部会では、環境市民講座「北上川の『水の神さま』の伝承と文化に触れるバスツアー」を開催しました。

 今回のバスツアーは、北上川の名称のもとになったと言われる日高見神社を見学し、その歴史と伝承を学ぶことで北上川への理解を深めるとともに、先にも触れたように東日本大震災に伴う津波で甚大な被害を受けた地域コミュニティやヨシ原の再生への取組みを、ヨシ刈り体験や釣石神社への見学を通して知ろうとするものであります。

 震災による被災状況がとくに甚大で今もなお復旧・復興に向けた基盤整備が続く沿岸部を見学することに加え、開催前に地元紙の河北新報(1月9日付け朝刊と1月6日付け夕刊)で取り上げられたこともあって、参加者の関心は非常に高く、大変な人気ぶりとなりました。
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(写真)バス中にて「水の神さま」を説明するガイド役の篠原富雄さん。

 前日からの雪の影響で天候が一時懸念されましたが、開催日は次第に晴れ間が見えだし、比較的穏やかな陽気となりました。当日はJR仙台駅東口乗降場に集合し、参加者全員が来たことを確認した後、予定通り朝8時過ぎに出発。車内では事務局からの挨拶の後、ガイド役となる篠原富雄さん(MELON水部会員)へバトンタッチ。仙台駅から石巻方面へと向かう道すがら、篠原さんからは「水の神さま」についての解説、見学先となる日高見神社の見どころなど、地域の水文化にまつわる興味深い説明がありました。

 バスは最初の目的地である日高見神社へ到着。杉並木に囲まれた趣きのある参道をしばらく登ってゆくと、高台に立派な社殿が眼前に現われてきます。参加者は社務所において大和昭彦宮司より神社そのものの起源と歴史的経過について説明を受けました。大まかには次のような話しがありました。
@日本古代史の中で度々取り上げられる皇子・日本武尊(やまとたけるのみこと)が、北上川流域にあったとされる日高見国を平定した際に、天照大神(あまてらすおおみかみ)を祀って、日高見神社が建立されたこと(西暦300年代前半?)。
A平安時代初期に記録された歴史書『日本三大実録』には、「日高見水神」としてその名が紹介されていること。
B神社の周辺には、平安時代後期に陸奥国の豪族・安倍貞任(さだとう)を討伐した源義家の名にちなんだ「太田九郎沢」という集落が今もなお存在していること。
C境内にはかつて源義家が自ら身を隠して、貞任勢の追撃を逃れたとされるケヤキ(除難の木)が所在すること。
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(写真)参道の途中には、平安時代から伝わる「除難の木」がそびえる。
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(写真)神社の生い立ちを参加者の前でお話しする大和昭彦宮司(日高見神社社務所にて)。

 又、地元に伝わる「はね娘踊り」についても説明がありました。そもそもは青年団の若者たちが神社で祭礼が行われる際にそれぞれの集落に伝わる踊りを披露しあったと言いますが、近年は「踊りでまちを創ろう!」という新しい機運もあって、石巻市桃生町内の小中学校を巻き込んで活動が徐々に活発化しているのだそうです。合併後も石巻市では学校教育に「はね娘踊り」を取り入れ、子ども同士で継承しあう試みをカリキュラムに組み込むなど、自治体としても力を入れているとおっしゃっていました。当日は大和宮司の計らいで社殿を見せていただき、参加者の皆さんとともに左右に祀られている日本武尊(やまとたけるのみこと)と武内宿禰尊(たけのうちのすくね)の像を直接拝観することができ、感慨を新たにしました。
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(写真)社殿内には、日本武尊と武内宿禰尊がそれぞれ祀られている。

 見学後、バスは道の駅「上品の郷」へ移動して、各自昼食をしっかり摂り、午後からは北上川河口に移動してのヨシ刈り体験です。車内ではガイド役の篠原富雄さんに代わって、当日参加されている山田一裕教授(東北工業大学)から被災後のヨシ原の植生状況について説明がありました。震災前にはゆうに200ヘクタール(※1ヘクタール=10,000平方メートル)を超えるヨシ原が自生していたと言いますが、津波が直撃したことにより、河口から8キロの流域では半分以上が根絶やしになったとのことです。山田教授からは、震災後に一部で回復が見られるヨシ原を再生させるために、MELON水部会を含めた市民活動の手による息の長い保全・再生への取組みが必要とされるとの訴えがありました。
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(写真)北上川河口部のヨシ原再生について、わかりやすくお話しする山田教授。

 MELON水部会では、昨年6月にも「Green Giftプロジェクト」の一環としてヨシの根茎を含む移植作業を多くの関係者の協力を得て実施しています。今回のヨシ狩り体験については、震災によって消失したヨシ原を再生しようと取り組むNPO法人りあすの森が主催するイベントにMELON水部会が参加するという流れで行われました。こうした趣旨の下に、当日はりあすの森などの呼びかけに応えて、私たち一行以外にも遠方より数多くの参加者が続々と駆け付け、河川敷はまさに車両の列でいっぱいとなりました。
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(写真)多くの参加者が当日駆け付けたヨシ刈り体験の全体風景。
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(写真)主催者を代表して挨拶する武山文衛さん(NPO法人りあすの森顧問)。

 冒頭、主催者から鎌の使用方法などについて注意事項の伝達を受けた後、長靴に履き替えた参加者は高さ3メートルにも及ぶヨシ原に分け入り、鎌を使いながらヨシを数本ずつ丁寧に刈り取っていきました。とくに昨年もヨシ刈り体験に参加したという高校生の元気いっぱいな活動ぶりが圧巻でした。前日からの冬型の天候が回復し陽の光がさんさんと降り注ぐ中、堅くて長いヨシに苦戦しながらも、刈り取りをしては1つの束にまとめる作業を黙々とこなし、あっという間に1時間が経過。刈り取った後のヨシをロープで束ねようと、日常生活では経験しない特異な結び方を主催スタッフから一つひとつ動作の手ほどきを受けながら、いつもと勝手が違うために悪戦苦闘する姿があちこち見られました。
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(写真)ヨシの刈り取りと格闘する仙台二華高校の生徒たち。
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(写真)ヨシの束ね方について、主催スタッフより丁寧に指導を受けている様子。

 作業を終えて、バスツアー一行は最後の目的地である釣石神社へと歩を進めました。途中、被災した住宅跡にヨシ原が自生するなど、震災から6年近くが経って、変貌する沿岸被災地の現状に目を奪われながら、バスは釣石神社へ到着。ここで現地ガイドとして対応に当たってくれたのが岸波均宮司です。厳密に言えば、釣石神社は落ちそうで落ちない「巨岩」に代表されるように「知恵の神さま」を祀る神社ではありますが、歴史的に見て信仰心の厚い地元の漁師たちが大漁祈願のお参りに来ていたという言い伝えがあるようです。震災後の大幅な人口減少に対応して、それを防ぐための一つの手段として人々が「集う」場所としての神社の役割に思いを致しつつ、昨年6月に祈祷(きとう)殿や社務所などの再建を果たしたとの説明がありました。岸波宮司は復興後の北上町について観光地として再生できればいいとし、「夢を見るだけでなくあきらめずに一つひとつ現実のものにしていきたい」と話しています。
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(写真)今にも落ちてきそうな「巨岩」がすぐに裏山に見える(釣石神社境内にて)。
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(写真)再建されたばかりの祈祷殿の前で震災後の経過を説明する岸波均宮司。

 ここでせっかく見学に来たのだから、巨岩そのものを遠くから眺めるだけでなく、天児屋根命(あめのこやねのみこと)を祭神とする裏山の本殿にもお参りしていただきたいとのアドバイスをいただき、この機会を活かして参加者の皆さんと登ることにしました。足を踏み外さないように十分気を付けながらではありましたが、それぞれ息も絶え絶えになりながら本殿を参拝。裏山から見下ろす長面浦(ながつらうら)や北上川最河口部の景色が実に見事でした。
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(写真)頂にある本殿を目標に急な階段を一同で登っている時の様子。

 今回のバスツアーは、石巻市内の北上川流域をメインに見学してきましたが、嵩上げ道路や防潮堤といった大規模な復興事業の陰に隠れながらも、「水の神さま」が地域社会に息づいていることが各所で確認できました。参加者の皆さんからは、「宮司さんのお話しが心に沁みました」、「神社への訪問などを通じて、…たくさんの知識を取り込むことができ、非常に有意義なツアーとなりました」など、非常に満足度の高い感想が寄せられました。MELON水部会では、今後とも沿岸被災地だけでなく県南内陸部も視野に入れながら、「水の神さま」の実態を引き続き調査研究してゆく所存です。そして最後に、それぞれの持ち場にて見学にご協力いただいた関係者の皆さまには大変お世話になりました。本当にありがとうございました!

※MELON水部会が主催いたしました「北上川の『水の神さま』伝承と文化に触れるバスツアー」は、一般財団法人まちづくり地球市民財団より採択いただいた「平成28年度まちづくり人応援助成金」を受けて行われたものであることを最後に銘記しておきます。


(MELON事務局・玉澤)
Posted by MELON at 17:03
震災の爪痕が残る仙台市沿岸部の『水の神さま』を見学! [2016年10月03日(Mon)]
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(写真)当日のバスツアーの様子(宮城野区蒲生地区にて)

開催日:9月25日(日)午前10時〜午後3時
見学先:浪分神社、五柱神社、八大龍王碑、高砂神社
見学者:19名(スタッフとガイドを除く)

 先ごろMELON水部会では、環境市民講座として「宮城野の水の伝承を探るバスツアー」を企画いたしました。今月で東日本大震災から5年6か月を迎える中、まだ復興後の状況が見えない沿岸部を見学することに加え、開催前に地元紙の河北新報朝刊に掲載されたこともあり、参加者数は定員いっぱいの人気ぶりとなりました。

 今回のバスツアーは、仙台藩が誕生する以前から広瀬川や名取川での度重なる氾濫に悩まされ、古より地震・大津波の被害を受けてきた沿岸部を訪ね、これまで庶民の信仰を集めてきた水の神さまたちを巡るとともに、復旧・復興をめぐる現状と課題についても探ろうとするものであります。
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(写真)参加者に向けて熱心に解説するガイド役の篠原富雄さん。

 台風や長雨の影響で天候が懸念されましたが、開催日は見事に晴れ、むしろ蒸し暑いほどの陽気となりました。当日はJR仙台駅東口バスプールに集合し、受付を済ませた後、予定通り朝10時に出発。車内では主催者を代表して高橋春男部会長から挨拶が行われた後、ガイド役となる篠原富雄さん(みやぎ生協OB、水部会員)へバトンタッチ。仙台駅から見学先へと向かう道すがら、篠原さんからは天下の名横綱として知られる谷風梶之助(1750年〜1795年)の生家跡や仙台市に編入される前の旧七郷村(名取郡)の歴史的系譜など、その地域にまつわる興味深い説明がありました。

 そうこうしているうちにバスは、最初の目的地である浪分神社(若林区霞目)へ到着。今回はバスをいったん留め置いたまま車内からの説明・見学となりましたが、先の東日本大震災の発災直後に沿岸部を襲った大津波を通じて、その存在があらためてクローズアップされた場所だけに参加者の関心度も非常に高いものがありました。これまでにも東日本大震災に匹敵する地震としては、歴史的に見て貞観大地震(869年)、慶長三陸地震(1611年)、天保大地震(1835年)などが代表例として挙げられますけれども、仙台湾に襲来した津波がこの地にまで及び、退いていったとの言い伝えが残る神社として有名です。

 次にバスで向かったのは五柱神社(若林区藤塚)です。途中、東部道路と南部道路の接続する付近にずばり「水神」という地名が残されていることを学びつつ、名取川最下流に位置する藤塚地区に到着。ここで現地ガイドとして対応に当たってくれたのは、五柱神社氏子総代を務める東海林義一さん(藤塚町内会長も兼務)です。仙台市への編入合併前は名取川で隔てられているとはいえ、同じ名取郡に属していた地域であったため、人の往来も活発で、対岸の名取市閖上地区から嫁入りに来たという人も少なくないと言います。
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(写真)名取川河口を前に地域・集落の成り立ちを説明する東海林義一さん。

 目の前を位置する貞山運河も含めて水運に恵まれる一方、古来より洪水の被害に悩まされてきた地域でもありました。台風や大雨ともなれば、排水機場に近い家屋では床下浸水に度々あうなど、水との格闘が続いてきた歴史があります。神社周辺を案内してくれた東海林さんの話しによれば、震災時は周囲を取り囲む家屋とともに、鳥居や社殿も全壊流失したとのこと。
 
 こうした甚大な被害を受け、建築基準法に基づく災害危険区域に指定されたことから、従来集落に居住していた住民の方々は意思に反して離散を余儀なくされたと言いますが、400年以上もの歴史を刻む集落の「拠りどころ」として神社の復活を粘り強く模索し、ようやく昨年再建を果たしたという経緯があります。地元では水田営農も再開され、震災前からあった一面に広がる農業景観が一部戻りつつありますが、他方で住民のいない藤塚地区周辺が今後どのようになるのか、依然として不透明なままだと東海林さんは仰っていました。防潮堤の整備や道路改良などが進む一方で、沿岸部の土地利用を含めた復興まちづくりが課題と言えそうです。
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(写真)名取川河口と接続する貞山運河の現況(若林区藤塚地区にて)。

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(写真)現地再建されたばかりの五柱神社の社殿。

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(写真)五柱神社の前で東海林さんから説明を受けるバスツアー参加者。

 バスでその次に向かったのは、八大龍王碑(若林区荒浜)です。現在は深沼海岸停留所前にひっそりと面影を残しています。現地を案内してくれた篠原さんによれば、高度成長期までは荒浜地区に漁協の市場も開設され、行商をする人たちが水揚げされたばかりの鮮魚を買い求めようとにぎわっていたとのこと。江戸時代後期の文政年間に建立されたという八大龍王碑は、長らく沿岸漁業に従事してきた荒浜地区の漁師たちから信仰を集めてきたと言います。
 
 震災時は鋼鉄製の鳥居こそ津波に耐えて残ったものの、大人の身長よりも高いと思われる八大龍王と刻まれた石碑は一時行方不明となり、地元関係者が辺り一帯をくまなく捜索した末にようやく「発見」に至ったという経緯があります。その後、再建を願う人々によって、割れてしまった石碑を元々の所在地に移設したところですが、現地再建の見通しは依然立っていないと仰っていました。
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(写真)現地にて被災の甚大さを参加者とともに確認。

 深沼海岸には潮騒の雰囲気は残るものの、防風林・防砂林として住民生活にも身近だった松林は姿を消し、国土交通省直轄による防潮堤(高さ7.2メートル)が整備されたことで、海岸部から「隔てられた」殺風景な環境に一変しました。防災集団移転を余儀なくされるなど、この5年半の間にめまぐるしい環境変化があった中で生業の復興・再生を目指して、荒浜再生を願う会が地道に活動を継続しています。この後、バスツアーでは昼食を兼ねて事務所を訪問しました。
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(写真)バスツアーで訪問した荒浜再生を願う会の事務所。

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(写真)窯の中にはもうすでに焼いている途中の手作りピザが!!

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(写真)元ホテルコック長による手作りピザが次々と運ばれてくる様子。

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(写真)慣れない手つきですが、一同でピザづくりに挑戦中!

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(写真)荒浜再生を願う会自慢の芋煮もご馳走に!

 事務所の前に設置されたピザ窯では、ホテルメトロポリタン仙台の元コック長による手作りピザが次々に運ばれ、焼き具合を確認しながら、皿に盛り付けるといった一連の作業が関係者のみなさんによって手際よく行われているところでした。単に出されたものを「食べる」のではなく、ご厚意でオリジナルのピザを作ったり、ピザ窯で焼いてみるといった体験をやらせていただきました。時期的に少し早いタイミングですが、大鍋で調理された仙台風の味噌仕立ての芋煮も振舞われ、きれいにおいしくいただきました。
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(写真)荒浜地区の歴史や震災当日の様子などを熱心に語る貴田喜一さん。

 昼食の後には、現地ガイドとして荒浜再生を願う会代表をされている貴田喜一さんにお話しを聞きました。震災当時、荒浜地区には720世帯、合計2,200名が居住していましたが、そのうち180名が犠牲になられたと言います。参加者の方から「当日は避難指示若しくは避難勧告が行われたのか?」という趣旨の質問が出たのに対して、@津波の襲来に現実感が持てない住民が多かったこと、A発災時に防災無線を通じて避難の呼びかけが一時行われたけれど、たちまち停電状態に陥ったため断ち切れてしまったことなど、大津波をくぐり抜けた経験者だから言える貴重なお話しが続きました。貴田さんによれば、災害危険区域に指定されたことで「自分たちのふるさとに住めない」という口惜しさが今に至る活動の発端だとのこと。深沼海岸での清掃活動と合わせて、毎月第二日曜日に今回お世話になったように手作りピザや芋煮などを振舞っているのだそうです。

 会の皆さんに別れを告げて、バスは最後の目的地である高砂神社(宮城野区蒲生町)へ向かいました。蒲生地区周辺では今、復興土地区画整理事業が進行途上にあり、貞山運河が一部埋め立てられるなど、復興後を見据えて大きく変貌を遂げようとしています。篠原さんの解説によれば、そもそもは三代目藩主・伊達綱宗公によって創建された由緒ある神社であるとのこと。平安時代から鎌倉時代にかけて松並木の整備が進められてきたという歴史的伝統もあり、藩主自らの着想の下、松の名所として知られる播州高砂浦(兵庫県高砂市)にちなんで、「高砂」と呼ぶようになったと言います。八大龍王碑と重なりますが、地元の漁師の神さまとして信仰されてきた歴史があるようです。景色を見ながら、再建された鳥居と仮社殿の行方が気にかかりました。
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(写真)復興土地区画整理事業によって周囲の環境が変わりつつある高砂神社。

 高砂神社から海辺へ向かっていくと、野鳥の貴重な生息地として国設鳥獣保護区に指定される蒲生干潟へと出ました。「日本一低い山」とされる日和山(標高3メートル)から仙台湾を眺望すると、度重なる台風などによって打ち上げられたと思われる大量の海岸漂着物があちこち確認されました。

 バスツアーに参加した山田一裕教授(東北工業大学)の話しでは、蒲生干潟は1980年代初頭から水辺環境保全の分野で調査研究の代表例に挙げられてきた場所だと言い、高度成長期に外来型地域開発が進められる中でいかに自然再生を果たしてゆくかという観点から水辺保全に向けた科学的な研究成果が東北大学関係者によって精力的に発表されてきたと言います。

 震災によって、ここもまた環境は一変しましたが、今後懸念されるのは比較的近接した場所に石炭火力発電所が建設されることです。先の震災によって自然植生が破壊された干潟のさらなる環境悪化を懸念する声も一部に挙がっており、復興後に向けて依然課題は残されたままと言えるでしょう。
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(写真)被災から徐々に蘇りつつある蒲生干潟。

 今回のバスツアーは、仙台市沿岸部に点在する水の神さまたちを見学してきましたが、これまで見てきたように震災の影響からなお脱しえない状況にあると言えます。震災復興が進んでいるとはいえ、点在する水の神さまたちを地域資源として活用するにはまだ至っておりません。MELON水部会では、引き続き沿岸部も含めて県内各地域に所在する水の神さまの調査研究を進める中で、地元での保存活動などの取組みをさらにフォローアップしてゆく所存です。そして最後になりますが、それぞれの持ち場にて見学会にご協力いただいた関係者の皆さまには大変お世話になりました。ありがとうございました!


※今般、MELON水部会が主催いたしました「宮城野の水の伝承を探るバスツアー」は、一般財団法人まちづくり地球市民財団より選考いただいた「平成28年度まちづくり人応援助成金」を受けて行われたものであることを最後に銘記しておきます。

(MELON事務局・玉澤)
Posted by MELON at 11:51
普段利用する「水」のことを知ろう、学ぼう!~水道フェア2016 [2016年08月16日(Tue)]
開催日:7月30日(土)午前11:00〜午後4:00
場 所:せんだいメディアテーク1階 オープンスクエア
主催者:仙台市水道局


 先日行われた「水道フェア2016」に、昨年に続きMELON水部会として出展しました(スタッフとして水部会員5名、ボランティア1名、インターン生1名、事務局員2名が参加)。
 当日の会場は、定禅寺通り沿いに立地する「せんだいメディアテーク」。普段利用している水道水にまつわる様々な事柄の紹介展示を通して、見たり体験したり、楽しみながら学んでもらおうというのがイベントの趣旨であります。
 当日は伊達武将隊による演武、地元女性アイドルグループが出演するサイエンスショー、水道局職員が自ら浄水場の役割と工程を紹介する模擬実演など、時間ごとに興味を引く多彩なコーナーが準備されていました。又、クイズに答えた来場者には、参加賞として水道水のボトルウォーターが提供されたこともあって、暑い中ではありましたが、多くの方々に足を運んでいただきました。
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(写真)来場者であふれる水道フェア2016

 今回、MELONで出展したのは「水と環境を学ぼう!」です。一つ目は軟水と硬水で作った麦茶をそれぞれ飲み比べてみて、喉ごしや口当たりなどを確認してもらうという内容です。今回は「南アルプスの天然水」と「エビアン」を使用しました。誤って入れ違いにならないように注意を払いつつ、軟水と硬水で区別した2つのステンレス製ポットにつぎ足して、来場者が来る度に順々に注ぎ、それぞれの特長を実感してもらいました。
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(写真)ブースで来場者を向かい入れる際の様子

 二つ目が軟水と硬水をそれぞれ準備しておいたペットボトル(500ml程度)に詰め、粉せっけんを混ぜ合わせた状態で来場者に振ってもらって、泡立ちの違いを理解してもらうという実験です。当日はすぐ隣りの水道局のブースで3種類の「きき水体験」をしていたため、その流れで自然と客足がブースの方へと詰め寄せるなど、「うれしい相乗効果」も。
 冷茶飲み比べや泡立ち実験と連動させながら、ブースを担当するスタッフが軟水と硬水の特長を次のようにそれぞれ説明していました。
@日本では大部分の地域で硬度の低い軟水が多いこと(沖縄県や千葉県など一部を除く)。Aその一方で、ヨーロッパでは硬水が一般的であること。
Bまったく同じ料理を作っても味が異なるというのは、水の硬度に原因があること。
C硬水の場合、ペットボトルをいくら振っても、泡立ちにほとんど変化がないけれど、軟水は繰り返し振ることで泡立ちが増してくること。
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(写真)泡立ちがどう違うのか、ペットボトルを見ながら説明を聞く来場者。

 足を止めてくださった来場者の方からは、軟水と硬水を飲み比べてみて、思い思いに「軟水の方が飲みやすく感じた」、「やっぱり比較しながら飲んでみると、はっきりした違いがあるということを実感した」といった声が聞かれました。
 単に説明を聞くだけでなく、泡立ち実験に自ら参加することを通じて、スタッフの説明に一つひとつ頷きながら、熱心に耳を傾けてくれる方も少なくありませんでした。ちょうど夏休みが始まった直後とあって、親子連れの来場者も数多くお見えになりましたが、同じ飲料水でもこんなに違いが生じるということを知って、さらに関心が湧いたようです。水の状態が色の濃淡で識別できる全硬度パックテストについても使い方などの説明を自ら質問してくるなど、自由研究にふさわしいイベントらしく賑わいを見せておりました。
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(写真)興味を持たれた来場者には、全硬度パックテストについても説明。

 これに加えて、MELON水部会でこの数年取り組んでいる「水の神さま」を探せプロジェクトも出展。2012年に作成した「江合川 水ものがたり」と題するDVDを上映しながら、スタッフ(水部会員)が報告書、リーフレット、パネルなどの掲示物を使って、古くより水の恩恵に感謝するため民衆によって祀られてきた「水神」や「不動尊」などの由来を紹介・宣伝するという内容です。とりわけ歴史に関心を持つ来場者の方が足を止める場面が多く見られ、「市内のどこへ行ったら、実在する水の神さまを確認できるのか?」、「かつての旧四谷用水に由来する水の神さまはあるのか?」、「以前、青下水源地内の遊歩道を歩いていて大きな石碑を見かけたが、あれは水の神さまと関連するものか?」など、多くの疑問・質問をいただきました。
 当然、話題が歴史に触れる内容であるため、熱心な来場者と話しが弾んで、30分以上やり取りすることも。もちろん、これを機会にMELON水部会を知ってもらおうと普及宣伝に取り組んだおかげで、用意してきたDVD、チラシ、リーフレットなども、水の神さまをきっかけとして来場者の方に多く手に取っていただくなど、大変好評を博しました。
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(写真)当日は水の神さまをめぐって、来場者と熱心なやり取りが続きました。

 今回、水部会のブースには、これ以外に環境にも家計にもやさしいアクリルたわし作りのコーナーを設置しています。アクリル毛糸を指に巻き付けるなど、一つひとつの作業が手数を要することから、スタッフが参加者の進捗を見ながら、指編みのサポートをするのはもちろんですが、こちらでは主婦の方、小学生の子どもたちで一日中賑わっていました。洗剤を使わずに汚れが洗い落とせるという利点がある一方で、手編みによる製作の場合、スピーディーという訳にはいかず、どうしても完成までに若干の時間を見なければなりません。それでもスタッフの手ほどきを受けつつ、あきらめずに作品を完成させて帰っていかれる姿が何回となく見られました。
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(写真)来場者が一日絶えなかった指編みのアクリルたわし作り!

 定禅寺通りという絶好の交通アクセス、しかも夏休みを迎えた週末の土曜日とあって、全体的に客足は午前・午後と順調に推移し、冷茶の飲み比べだけで当初の想定を大きく超える270名(当日調べ)もの方に体験していただけました。今回、普段飲んでいる飲料水の硬度の違い、河川やため池などに祀られる水の神さまの歴史、合成洗剤を使用しないことによって環境への負荷が生じにくいアクリルたわしなどを素材としながら、暮らしと深く結び付く「水」にまつわる様々な知恵や知識を多角的に理解してもらう「とっかかり」として有意義なイベントにつながったのではないかと思われます。
 最後になりましたが、ブースへたくさんの方に来ていただき、本当にありがとうございました!!


(MELON事務局・玉澤)
Posted by MELON at 10:01
「来て、見て、さわって、楽しめる」環境マルシェに初出展! [2016年07月07日(Thu)]
開催日:6月26日(日)11:00〜15:00
場 所:青葉区サンモール一番町商店街アーケード

 尚絅学院大学総合人間科学部が主催する「環境マルシェ」にMELON水部会も出展してまいりました。
 当日会場となったのはサンモール一番町商店街。環境活動の様々な取り組みに関わる紹介展示を通して、楽しく学びながら、理解を深めてもらおうというのが今回のイベントの趣旨です。アーケード内の通路に沿って、合計13ものブースが設置され、MELONを含めて大学の呼びかけに賛同した行政、企業、NPO法人、学生サークル、個人などがそれぞれ趣向をこらした独自の展示物などを準備していました。環境がテーマとして掲げられているだけに、「ごみ減量」、「繊維リサイクル」、「自然素材」、「木工芸」、「野生鳥獣」、「林業用種苗」等々、各ブースの企画も実に様々です。

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(写真)通行客でにぎわった環境マルシェの様子

 梅雨入りしたこともあり、週末は雨も懸念されたところですが、少し曇りがちながら当日の天候自体は良好。昼を過ぎたあたりからアーケードを見て回る客足も徐々に増え出し、MELONのブースにも多くの方々に来ていただきました。
 今回出展したのは「水のみ屋〜おいしい水を体感してみよう〜」です。一つ目の企画は、硬度の違う3種類の水を飲み比べ、味覚や喉ごしなどを確認しながら、アンケートに答えてもらう内容です。普段口にする水を軟水から硬水まで合計3種類(白神山地の水、仙台の水道水、エビアン)用意。一人ひとりに試飲してもらって、個々人で「おいしい」と感じられた水を選び、パネルに直接シールで貼り付けてもらいました。
 もちろん、水ごとの味覚の確認だけにとどまらず、@日本のほとんどの地域(沖縄県など一部を除く)で軟水が多いこと、Aヨーロッパではミネラル分が豊富な硬水が主流であること、B軟水の方が日本料理に適しており素材そのもののうま味が引き立ちやすいことなど、パネルを使って分かりやすく説明します。

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(写真)水部会担当者がパネルを使って通行客に説明する様子

 とくに午後からは、水の飲み比べに興味を持った通行客がコンスタントに足を止めてくださり、3種類ごとの味覚、喉ごし、飲みやすさを試していました。なかには「軟水と硬水でこんなに違いがあったなんて知らなかった」と衝撃を受ける方も。実際体験してみて軟水(白神山地の水)がおいしく感じると回答された方が圧倒的に多く、アンケートに回答した通行客の多くで軟水の方がなじみやすいということが分かりました。
 又、数こそ少なかったですが、「仙台市内に住んでいて、やっぱりなじみのある水道水が飲みやすい」、「ダイエットのために硬水を使用していた経験があるので、あまり苦にならない」という方もいて、水と生活との関わり様は個人の嗜好によって、それぞれ多様に存在することがあらためて分かりました。

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(写真)種類ごとに味比べしながら、説明に聞き入る通行客

 もう一つ目の企画は、軟水(白神山地の水)と硬水(エビアン)をそれぞれペットボトルに詰めた後、あらかじめ用意しておいた粉せっけんを混ぜ合わせ、通行客に振ってもらいながら、泡立ちの違いを理解してもらおうというものです。
 こちらも序盤こそ大きな賑わいはありませんでしたが、通行客への声がけとともに、立ち止まって体験してくれる方が増え始めました。軟水と硬水で泡立ち具合に何故違いがあるのかという点を中心に説明したところ、石けんや洗剤の泡立ちが良いのは軟水で、ミネラル分が豊富に含まれている硬水だとそれが泡立ちを妨げてしまうということに驚きの声も聴かれました。
 全体的に熱心に耳を傾けてくれる方、親子で泡立ち実験に参加してくれる方、硬水のミネラル成分についての説明に納得される方など、この企画自体に新鮮な印象を持たれていた様子でした。

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(写真)軟水と硬水の泡立ちの違いを通行客へ説明

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(写真)説明を聞きながら、親子で泡立ち実験に参加している時の様子

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(写真)軟水と硬水の相違点を展示パネルとして掲示

 当初、ブースへの入り込み客数は「100名程度」を想定していましたが、水の飲み比べだけで106名もの方に体験していただけました。普段飲んでいる水が実は生活に根差しているものだということを知ってもらう一つのきっかけになったのではないかと思われます。
 環境マルシェには、今回、MELON水部会としては初めて出展しましたが、主催者である尚絅学院大学には学生ボランティアを3名割り当てていただき、現場設営作業、通行客への声がけ、ブース内での説明などを助けていただきました。本当にありがとうございました!!

(MELON事務局 玉澤)
Posted by MELON at 17:18
広瀬川で水質調査をしました。 [2016年06月17日(Fri)]
 MELON水部会では、例年、「身近な水環境の全国一斉調査」に協力する形で広瀬川流域において水質調査を行っています。
 本年も6月11日(日)に参加者8名で、上流部から下流部まで合わせて5地点を対象に実施しました。

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(写真)広瀬川の源流域(関山トンネル手前付近)

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(写真)現地での記録作業の様子(関山トンネル手前付近)

 途中、これから山形方面へ向かおうとする車両で愛子バイパスは一時混雑していましたが、熊ヶ根橋を通過した辺りから、車両は比較的スムーズに流れるようになりました。
 調査は先ず関山トンネル手前の源流域に到着した後、道路沿いを流れる渓流にて水を採取。水量、水温、透視度、水辺の状態等、あらかじめ選定した項目について記録をとりながら、それぞれの地点で順次調査を行っていきました。
 COD(※化学的酸素要求量)と言われる値は、源流域で3〜4。中流域にかけて若干振れ幅が大きくなる傾向(牛越橋地点で2〜6)が見られ、下流域では3〜4という数値結果が確認されています。下流域に進めば進むほど、水の透視度は水中に存在する有機物が影響しているのか、少しばかり黄色みがかっているように見えました。

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(写真)広瀬川に生息する水生生物(牛越橋付近)

 山田一裕教授(東北工業大学工学部)によれば、広瀬川には水中に生息する水生生物が実に百種類以上も存在するそうです。この日も牛越橋付近で試しにバケツで採取したところ、カワゲラやトビゲラを確認。とくに河川における汚濁状況を調べる上で、これらは指標生物にも位置付けられているとのこと。仙台市民にとって身近な水辺において、休日のレクリエーションでにぎわう中、豊かな自然生態系の一部を垣間見る機会にもなりました。

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(写真)所々浅瀬が見られる広瀬川の中流域(牛越橋付近)

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(写真)水量の少ない広瀬川下流域(千代大橋付近)

 実際に調査をしていて驚いたのは、こうした水質状況や水辺環境もさることながら、水量の少なさです。広瀬川の中流域に位置する牛越橋付近でも流れは緩やかで、向こう岸まで渡れるのではないかと思われる浅い場所が目視で確認できました。同様の傾向は千代大橋付近でも見られ、水量が極端に少ないため、例年のようなゆったりした川の流れはありませんでした。
 山田教授からも広瀬川の自然特性を水質だけでなく、河岸段丘等に代表される地形、水量の変化といった点にも注意を払って観察していく必要があるとの振り返りのコメントがありました。
 年初から春先にかけて雪が比較的少なかったこと、あるいは梅雨入り前の季節にまとまった降雨が期待できなかったこと等、この間の気象環境の変化が水量にどの程度作用しているのかは一概に言えませんが、夏に向けてこれからの動向が一層気になるところです。

※COD:化学的酸素要求量。海域、湖沼等における有機物による水質汚濁の指標とされている。工場排水の指標としても用いられている。CODの数値が大きい場合は、水中に存在する有機物の量が多いことを意味し、有機物による水質汚濁の程度が大きいとされる(横浜市環境創造局ホームページ参照)。


(MELON事務局 玉澤)
Posted by MELON at 17:48
北上川の被災したヨシ原を学びに週末出かけました。 [2016年06月09日(Thu)]
東京海上日動Green Giftプロジェクト
「被災した北上川のヨシ原を再生!〜ヨシペン作ってハガキを書こう〜」
日  程 2016年6月5日(日)
参加者数 47名

 北上川河口の湿地帯に広がるヨシ原へ現地見学会を開催しました。
 先の震災では、流域全体で約100ヘクタールものヨシ原が失われたと言われていますが、今回はそれを復元するために現地での植栽作業に加え、ヨシを利用してのペンづくり等に挑戦しました。

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(写真1)石巻市北上川河口の湿地帯に広がるヨシ原

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(写真2)これから移植作業に取り組む参加者

 現地に到着した時間帯はちょうど潮が引いているタイミングとはいえ、水分を多く含んだ泥で足元がぬかるむ状態にあるため、水辺環境保全を専門とする山田一裕教授(東北工業大学工学部)の説明を受けながら、手分けをして作業を開始。
 自生しているヨシをいったん根元から掘り起こし、あらためてそれを植生が手薄な場所へ移植するという一連の作業に取り組みました。集中して打ち込む姿は皆真剣そのもの。山田教授の説明によれば、河口付近の海水と淡水が入り混じった汽水域に自生するヨシは硬くて、非常に丈夫な材質を備えているとのこと。ヨシがしっかりと育つことを皆で願いつつ、心地良い充実感を感じました。

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(写真3)山田一裕教授(東北工業大学)による説明

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(写真4)スコップを使って、ヨシを根元から掘り起こす作業

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(写真5)移植のためにヨシをバケツで運ぶ様子

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(写真6)掘り起こしたヨシを移植する作業

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(写真7)北上川河川敷での記念撮影

 この後、自生するヨシを住まいに活かそうと取り組んできた有限会社熊谷産業を訪問。人の手が入らなくなったヨシ原の再生に従来から取り組んできたようですが、主な加工用途としては神社仏閣や農家住宅等の屋根材に活用しているとのこと。歴史的に著名な名所旧跡での施工実績も多数あり、個別に受注があれば全国規模で対応していると言います。伝統的な茅葺き建築の復活に向けて並々ならぬ情熱を傾けていることを知りました。

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(写真8)有限会社熊谷産業の工場内での説明の様子

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(写真9)ヨシを壁材にも使用している熊谷産業の工場遠景

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(写真10)工場の屋外に出て説明を受けている時の様子

 午後からは石巻市北上小学校へ移動して、いよいよヨシペンづくりに挑戦です。特定非営利活動法人りあすの森さんに先ずはヨシペンづくりの見本を実演していだきました。ヨシペンづくりには、先ずカッターで長さを調整した後、先端を斜めに切り落として、ペン先の中央部に切れ込みを入れていくことが必要とのこと。
 参加者一同、ヨシの硬さには多少難儀しながらも、ちょうど持ちやすい長さに整え、各自納得のいくペン先に仕上げていました。墨汁を使って筆を走らせてみると、まるで万年筆のよう。ヨシペンを使いながら、あいさつ文を書いたり、絵を描いたり、楽しみ方は様々あり、あちこちでお互いの出来具合を確認しあう光景がとても印象的でした。

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(写真11)ヨシペンを製作するにあたっての実演

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(写真12)ヨシに切り込みを入れていく際の様子

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(写真13)ペンとして利用できるようにヨシの先端を削り込む

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(写真14)出来上ったヨシペン(割れてこないようにテープを巻く)

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(写真15)仕上がったばかりのヨシペンで書いている様子

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(写真16)ヨシのハガキに表現された見事な仕上がり具合

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(写真17)プログラムを締めくくるに当たっての記念撮影

 ささやかでもヨシ原の再生に直接関われたことで、参加者からは「とても大変な地味な作業ですが、これが地球をきれいにする自然を残すプロジェクトなのだなと感心しました」、「失われたものを回復させるには、時間・人の手が必要だということ(を知りました)」、「地域の環境にとても深く関わっており、思った以上に環境改善が期待できるような取り組みだった」といった前向きな感想をいただきました。
 ヨシを地元資源として見直しながら、「くらし」や「生業」に無駄なく活かしていこうとする機運に広がっていってほしいです。

主催:公益財団法人みやぎ・環境とくらし・ネットワーク(MELON)、特定非営利活動法人りあすの森、特定非営利活動法人環境生態工学研究所
共催:特定非営利活動法人日本NPOセンター
協力:有限会社熊谷産業、環境サークルたんぽぽ、東北環境パートナーシップオフィス(EPO東北)
協賛:東京海上日動火災保険株式会社
後援:環境省、宮城県

※「東京海上日動Green Giftプロジェクト」は、紙資源使用量の削減額の一部を環境保護活動を行う特定非営利活動法人等へ寄付することを通じ、国内外の環境保護活動をサポートするという趣旨のもとに行われています。

(MELON事務局・玉澤)
Posted by MELON at 15:47
来神(きたかみ)川? 〜水の神さまを訪ねて石巻へ〜 [2016年05月23日(Mon)]
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日高見神社。


水部会で実施している『水の神さま』調査。
県内12か所で調査を行い、報告書作成、交流会など実施してきました。

今後はこれまで調査していない流域に範囲を広げていこうということで、調査を再開しました。

5月22日(日)、訪問したのは県北の北上川流域3か所です。


1、日高見神社(石巻市桃生町)

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祭神は天照大神。両端は、日本武尊、武内宿祢の像が祀られています。


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宮司の大和さん(左)

水の神さまが来たという由来で「来神(きたかみ)川」とも言われたという説もあるそうです。
まさに、水の神さまにぴったりの名前ですね。


2、齋藤氏庭園(宝ヶ峯縄文記念館)(石巻市前谷地)

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大地主だった齋藤家九代当主、善右衛門が明治後期に造成した庭園。
国指定名勝、「江合川水ものがたり」に登場、井戸の神さま。


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庭園の奥には、湧き水が流れていました。

管理人の方がおっしゃるには、管理を初めて十年ほど、一度も水が途切れたことがないとのこと。震災の時は、この湧き水を近所の方に提供し、多くの方が助かったということです。


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湧き水の横にある洞窟のような部屋に、特別に入らせていただきました。

夏のような暑さだったこの日でも、中は寒いくらいにひんやりとしていました。
かつては天然の冷蔵庫として使われ、戦時中は防空壕の役割も果たしていたそうです。


3、釣石神社(石巻市北上町)

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今にも落ちそうな巨石が、御神体。

東日本大震災はじめ幾多の災害でもビクともしないことから、「落ちそうで落ちない受験の神さま」としても有名です。

石段の中央に、うっすらと水色の線があり、そこまで津波が到達したそうです。


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宮司の岸波さんに、震災時の様子やその後の取り組みについてお話しを伺いました。

津波で周囲が移転を余儀なくされている中で、神社の復興と地域再生に取り組んでいらっしゃいます。

普段お参りしたりお守りを買ったりと身近にある神社ですが、
このように宮司さんのお話しを伺うことで、その地域の歴史や伝承、水の神さまの奥深さを知ることができました。

現在、市民向け見学会を企画中です。
決まりましたら、MELONウェブサイトでご案内しますのでぜひチェックしてください。

(MELON事務局 古林)

Posted by MELON at 15:09
引き継ぐ「水への想い」〜地域文化の継承を考える交流会〜 [2015年12月28日(Mon)]

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12月12日(土)に開催した「引き継ぐ「水への想い」〜地域文化の継承を考える交流会〜」。
MELON水部会では、08年から「水の神さま」プロジェクトとして、地域の水にまつわる神社・石碑などを調査し、その地域の水と人との歴史を調べてきました。

昨年6月からは、宮城県内沿岸部の水の神様の復興の状況調査を進め、「沿岸地域の『水の神さま』が繋ぐ水と人の歴史文化伝承プロジェクト報告書」としてまとめました。

これまでの水の神さま調査において、水文化の地域での継承にうまく行っている地域とまもなく途絶えてしまうのではと危惧されるところがありました。

水の神さまも含めて地域の文化の継承に取り組んでいる方々に集まっていただき、お互いの情報交換をすることで、継承へのヒントを得る場として、交流会を開催しました。

ファシリテーターは山田一裕先生.jpgゲストの石川寿さんと後藤一磨さん.jpg
コーディネーター:山田 一裕氏(東北工業大学環境政策学科教授)
シンポジスト:石川 寿氏(仙台市泉区福岡在住 福岡大堰、北向堰管理組合)
       後藤 一磨氏(南三陸町戸倉在住 南三陸町文化財保護委員他)
       篠原 富雄 (仙台市宮城野区 MELON水部会員)

石川寿さんは、泉ヶ岳から流れる七北田川の水を利用するための堰守として、調査をするほか、
地元に昔から伝わる神楽を、地元の子供たちの教える保存会としても活動されています。

後藤一磨さんからは、震災を受けた南三陸の語り部として、文化財保護委員として、自然と人との関わりや思いについて伺いました。
祭事は、人が神さまを通して自然とつながるものであり、自然への畏怖の思いの現れ。
復興においても、祭りの復活が重要な役割をはたしていることもお話しされました。

少人数での開催となりましたが、地域の文化を伝えていくことの意味や、その難しさ、
そのために私たちが何をしていくことができるのか、
活発な意見が飛び交いました。

今回の交流会をもとに、水部会では今後なにができるのか、を考えていきます。

(事務局廣重)
Posted by MELON at 19:31