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テヘランの米国大使館占拠事件から40年経過した今も敵意に満ち溢れた米・イラン関係[2019年11月05日(Tue)]
11月3日、1979年11月4日の学生たちによる在テヘラン米国大使館占拠(下記1.参照)から40周年を前に、ハメネイ最高指導者は学生たちとの会合に臨み、米国との対話に臨めば、ミサイル開発停止等の理不尽な要求をのまない限り、米国は一切譲歩するつもりはないとして、改めて米国との協議を拒絶する意向を再確認した(下記2.)。一方、学生たちは、元の米国大使館の壁に新しい壁画を発表した。中でも際立っているのは、1988年7月3日に290人が搭乗してペルシャ湾上空を飛行していた際にUSSヴァンセンヌによって撃墜されたイラン航空機655の絵画であった。その近くには、ペルシャ湾のイラン空域付近でイランのイスラム革命警備隊(IRGC)によって2019年6月20日に撃墜された米国グローバルホーク・ステルス・ドローンが描かれていた。これらは、イスラム革命と米国の覇権に対するイランの抵抗を表現するものであるとのこと。これに対して、米財務省は、11月4日、国軍参謀本部ならびにライースィー(Ebrahim Raisi)司法府長官、ハメネイ最高指導者の二男ムジュタバ・ハメネイ(Mojtaba Khamenei)を含む9名に対して、新たに外国資産管理局(OFAC)の制裁を発動した。

1.40年前のイランの学生による米国大使館占拠
●テヘランの米国大使館は、1979年11月4日に数百人の学生に占拠された。イスラム革命が米国の支援を受けたパーレヴィ体制を打倒したほぼ9か月後に起きた。学生たちは66人の大使館職員を拘束し、発足初期のイスラム共和国を転覆させようと陰謀を企てた証拠となる米国の機密文書を回収しようとしていた。学生たちは、イランとイスラム革命に対する米国の陰謀を示唆する様々な大使館内の文書の断片を回収し、復元した。イスラム革命の指導者ホメイニ師は、学生たちの行動を歓迎し、大使館の占拠を「第二の革命」と表現した。学生たちは、女性、アフリカ系米国人、および数日後に多発性硬化症と診断された男性を解放したが、残りの52人を444日間拘束し続けた。
●この出来事はイランと米国の間の主要な政治的対立に発展し、当時の米国大統領ジミー・カーターは、1980年の再選に向けて大使館職員を解放すべきとの大きな圧力を受けていた。ブレジンスキー国家安全保障顧問から軍事行動を求められたカーター大統領は、「鷲の爪(イーグル・クロー)」作戦を命じた。これは、米国の特殊部隊が8機のヘリコプターでイランに飛来し、拘束された大使館スタッフを米国に戻すという秘密軍事作戦であった。作戦は1980年4月に開始され、ヘリコプターがイラン領内に侵入し、テヘランへの計画飛行前にタバス市近くの中央砂漠に上陸した。しかし、その時点から、砂嵐が2機のヘリコプターの飛行を困難にし、翌朝、3機目が輸送機に衝突したため、作戦は大失敗に終わった。カーター大統領は悲惨な作戦を中止し、演説で責任を表明することを余儀なくされた。これが再選のチャンスに大きな打撃を与えた。
●イランが、アルジェリアが仲介する取り決めの下で被拘禁者の釈放に同意した後、大使館占拠は最終的に終了した。アルジェリアを通じて、米国はイラン・イスラム共和国に対して敵対的な行動を取らないことを約束した。しかし、長年にわたり、米国は合意を翻し、イランに害を及ぼし、イスラム共和国を転覆させるためにあらゆることを行ってきた。1981年1月20日、レーガン大統領が就任演説を行い、カーター大統領に対する勝利を祝ったのにあわせて、解放された大使館職員は最初にイランからアルジェリアに飛行し、その後独に向けて出発した。
https://www.presstv.com/Detail/2019/11/04/610337/Iran-US-embassy-takeover-40-anniversary-rallies

2.米大使館占拠40周年にあたってのテヘランでの学生との会合でのハメネイ師発言(11月3日)
●米国との交渉で問題が解決すると見なす人は100パーセント間違っている。米国人との交渉から何も出てこない。彼らは確かに、そして絶対に譲歩しないからだ。
●今日、神の恵みと私たちの若者たちの努力のおかげで、我々は、わずか1メートルの誤差の範囲で任意の目標を打ち抜くことができる2,000キロの範囲の精密ミサイルを保有している。交渉に行けば、米国人ミサイルも(協議の対象に)含まれることを期待していたであろう。例えば、イランのミサイルの最大射程は150キロメートルであるよう要求するであろう。我々がそれを受け入れたなら、国を破壊し、そうでなければ、(制裁の解除がない)現状が維持されることになる。
●米国と北朝鮮の当局者は非常に多くの心地よい言葉を相互に交換したが、結局、米国人はボイコットを1つも解除せず、一切譲歩しなかった
●米国との会談はイランと米国のすべての問題を終了させるだろうと言っている(マクロン)仏大統領は、米国にナイーブすぎるか、共謀しているかのどちらかである。
https://www.presstv.com/Detail/2019/11/03/610261/Iran-Leader
3.米財務省によるイラン追加制裁(11月4日)
●米国財務省の外国資産管理局(OFAC)は11月4日、イランの国軍参謀本部と、イラン政権の選挙で選ばれたのではない最高指導者であるアリ・ハメネイに任命され、ハメネイのために活動している9名の個人に対して措置をとった。その事務所はイランの過激なアジェンダを推進する責任を負っている。この措置は、数十年にわたってイランの人々を抑圧し、テロリズムを輸出し、世界中の不安定化政策を進めてきたアリ・ハメネイの軍事および外交顧問たちの影のネットワークへの資金流入を阻止しようとするものである。具体的には、この措置は、最高指導者事務所、緊急事態評議会、国軍参謀本部、司法機関のアリ・ハメネイに任命された者たちを対象としている。財務省の措置は、イランの過激派がテヘランの米国大使館を占領し、444日間で50人以上の米国人を人質にした40周年と一致する。
@エブラーヒーム・ライースィー(Ebrahim Raisi)司法府長官
Aムジュタバ・ハメネイ(Mojtaba Khamenei)ハメネイ最高指導者の二男
Bモハンマディ・ゴルパエガギ(Mohammadi Golpayegani)最高指導者事務所官房長
Cバヒード・ハガニアン(Vahid Haghanian)最高指導者の右腕
Dアリ・アクバル・ヴェラヤティ( Ali Akbar Velayati)最高指導者上級顧問、元外相
Eゴーラム・アリ・ハッダード・アーデル(Gholam-Ali Hadad-Adel)ムジュタバ・ハメネイの義理の父
Fモハンマド・バゲリー(Mohammad Bagheri)国軍参謀本部長
Gホセイン・デフガン(Hossein Dehghan)IRGC准将
Hゴーラム・アリ・ラシード(Gholam Ali Rashid)IRGC司令官
及び国軍参謀本部 Iran’s Armed Forces General Staff (AFGS)
https://home.treasury.gov/news/press-releases/sm824

Posted by 八木 at 16:20 | 情報共有 | この記事のURL | コメント(0) | トラックバック(0)

News Week Japanに転載された長沢栄治東大名誉教授の時事通信との現下の中東情勢に関するインタビュー記事[2019年11月05日(Tue)]
時事通信社による長沢栄治東大名誉教授のインタビュー記事が「シリア、イラン、イエメン... 中東から手を引くアメリカ、日本は湾岸非核化地帯提唱を」というタイトルで、News Week Japanに転載されました。現下の中東情勢を読み解く上で、非常に有意義な記事であり、長沢教授の承諾をうけて、記事のリンクを貼らせていただくことになりました。インタビューワーは、杉山文彦 時事通信社解説委員兼Janet編集長です。
https://www.newsweekjapan.jp/stories/world/2019/11/post-13315.php
(注目点骨子)*インタビュー記事の本文をお読みください。
1.シリアへの米・ロシアの介入:2013年シリアで化学兵器使用疑惑が出てきたときのオバマ政権の軍事介入を回避した対応がターニング・ポイント。トランプ大統領も2018年4月にシリアで化学兵器が使われたときに名目上、ミサイルを撃ちこんだが、深い入りしなかった。ここにきて、米国はついにシリアをロシアに任せた。シリアでリビアへの介入とレベルが違ったのは、ロシアが完全に介入してきたこと。
2.米国のクルドへの対応:シリア北部からの米軍の撤退に関連して、イラン・イラク戦争末期の1988年、サダム・フセインが化学兵器を使ってイラク北部のハラブジャという村でクルド人を大量虐殺した。それを非難する動きがアメリカをはじめ国際社会で全然出なかったことも、クルド人はよく覚えている。今回また裏切られたと感じている
3.米国のイラン・イスラム体制への対応:トランプ政権は、イランの体制を実力で倒すようなことはしないと言っているが、これは建前で、イスラム革命体制が崩壊してほしいというのが究極の望み。それに至る道として経済制裁をしている。
4.中東の危機への解決策:現在中東にいろんな危機的状況がある中で、もし最初に解決するべき問題があるとしたら、イエメン内戦である。イエメンでは、完全に制空権をサウジアラビア空軍が握り、やりたい放題にフーシ派を空爆できる状態の中で、「貧者の兵器」ドローンが(アラムコ石油基地を)やってしまった
5.イランの核問題への対応:基本的には「非核地帯構想」の形で解決する方法がある。中東全体を非核地帯構想にするのはイスラエルが核兵器を持っているので、非常にハードルが高いが、湾岸地域を非核地帯にする構想は追求の価値が大きい。

Posted by 八木 at 11:44 | 情報共有 | この記事のURL | コメント(0) | トラックバック(0)

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