コラム:不安先行のジョンソン英首相、「トランプ相場」再来か=田中理氏
田中理 第一生命経済研究所 主席エコノミスト [2019年07月28日(Sun)]
イギリスのトランプ氏・ジョンソン氏が首相に就任した。
今年10月にはEUから離脱するのが濃厚となってきたが、合意なき離脱は世界経済環境に良い影響を与えるか否かである。 しかし、今年10月までの期間はジョンソン人気で株価は上昇するかもしれない。 データ ロイター 2019.7.28 [東京 25日] - 「合意があろうとなかろうと、10月31日に欧州連合(EU)から離脱する」と言ってはばからない英国のボリス・ジョンソン氏が24日、首相に就任した。 ジョンソン新政権は近くEUとの協議を再開する見通しで、北アイルランドの国境管理問題を巡る「安全策(バックストップ)」条項を撤廃し、テクノロジーの活用でこれを解決すること、さらに離脱精算金の支払い保留すること、サービス分野を含む包括的な自由貿易協定の締結を望んでいることなどを伝えるとみられる。 EU側がこうした英国側の提案に応じる可能性は、限りなくゼロに等しい。こう着状態のまま10月末の離脱期限が近づき、合意なき離脱への不安が再び高まりそうだ。 英議会は合意なき離脱の阻止に動くとみられるが、政府の暴走を止める手立ては限られる。 ジョンソン氏は、合意なき離脱の可能性を排除しないことが、議会やEUとの協議で強力な交渉カードになると考えている。 与野党の穏健派議員の動きを封じ込めるため、投票機会を極力与えないだろう。 10月末の離脱期限を再延長するには、英国からの要請を受けたEU全加盟国の賛成が必要となる。 そもそも期限延長を要請するかは政府の判断によるもので、議会が法的に政府の方針を妨げることは難しい。 合意なき離脱の阻止に向けた議会の最終兵器は、内閣不信任案によるジョンソン政権の退陣要求だ。 現在、与党・保守党と閣外協力する地域政党の投票総数は、野党勢力をわずか2議席しか上回っていない。ほんの一握りの穏健与党議員が造反すれば不信任案は可決する。 ただ、これも合意なき離脱を回避する決定打とまでは言えない。ジョンソン氏の党首就任で保守党の支持率は回復傾向にある。 野党が議会の解散・総選挙に持ち込んだとしても、保守党が議席を伸ばし、同氏の政権基盤を強化するだけに終わる可能性もある。 |