ロシアの政治機関紙スプートニクが、アメリカの政治学者の論文を掲載している。
一つはロシアがこのことを取り上げている意味は何か、ということ。
二つはアメリカの日本の安全保障の専門家が、アメリカの論文に掲載をしたということは何を意味するのかを考えることである。
その意味するところは、アメリカが国内への撤退することを視野に入れているところで、日本にそのあとの地域リーダーシップを期待しているということだろう。
しかし、中国が、ロシア、アメリカを経済的にも軍事的にも凌駕していくというプロセスの中にあることを注意深く見ておかねばならない。
以下引用
「日本が躍り出るチャンスあり」という見出しで、アメリカの出版物The Foreign Policyが、政治学者で日本の安全保障の専門家であるRANDコーポレーションのジェフェリー・V・ホーナング(Jeffrey Hornung)氏の記事を掲載した。
著者は、日本がグローバルリーダーの役割を担うことはできないだろうが、インド太平洋地域における国際秩序の維持という義務を負うチャンスはあるだろうと書いている。
スプートニク日本 2018・11・22
彼によれば、トランプ大統領のアメリカは、既存の世界秩序を維持するための軍事的、経済的、政治的関与を拒む傾向があるという。
しかし、世界秩序を維持する必要性は依然としてあり、「日本が、少なくともインド太平洋地域においては、その主要な役割を果たす可能性がある」という。
なぜなら、日本はそのための経済的、外交的、技術的、イデオロギー的な能力を備えており、憲法の制限があるとはいえ、軍事的な能力をも備えているからである。
ホーナング氏によると、もちろん、東南アジアの安全保障においてASEANは主要な役割を担っているが、この連合がアジア太平洋地域全体の国際秩序を管理することができるとは考えられないという。
彼によると、インドはまだ地域リーダーの役割が担えるほどには成熟しておらず、韓国は朝鮮半島の情勢にあまりにも飲み込まれすぎている。
経済規模から言えば、中国が地域リーダーに立候補することは可能だが、人権侵害、国際法違反、独自の地域構造を構築しようとする試みは、中国を自由秩序に対する大きな脅威に変えている。
つまり、残るは日本だけなのである。アメリカのTPP撤退後、自由と法の支配と地域市場経済の保護に対する責任の大部分を負い、自由貿易を維持するための積極的な支持者となったのが他でもない日本なのである。
また、日本は武力行使に関する憲法上の制限を撤廃することなく、国際秩序が直面する脅威を排除するために部隊を使用することもできる。このように著者は結論づけている。
アジア版NATOの創設は、トランプ氏による日韓訪問の目的の一つ?
ジェフェリー・V・ホーナング氏の考えはどれほど現実的なのだろうか?
日本は地域リーダーに「躍り出るチャンス」を利用するのだろうか?
それを妨げるものとは?
スプートニクのこうした質問に世界経済国際関係研究所アジア太平洋研究センターの専門家クリスティーナ・ヴォダ氏は、次のように回答した。
「日本は、現代の世界秩序にしっかりと組み込まれ、その世界秩序から、経済発展の面でも、安全保障の面でも、大きなメリットを得ているプレーヤーです。
安倍総理は、日本が国際的場裡でより積極的なポジションをとることを目指す方針をとっています。
これは、日本の政治エリートによく見られると考え方と一致しています。
それは、太平洋アジアにおける国際情勢の変化により、日本はより自立した外交決定と、防衛および外交政策におけるより大きな積極性を求められるだろうというものです。
新たな挑戦に応えるために、日本政府は常に国内法を改定し、第二次世界大戦の敗者として負うこととなった自制を外し、外交政策と防衛政策の可能性を拡大し、国際的にもより大きな義務を負うようにしています。
このプロセスは、日本社会の各方面での妥協が必要なためにゆっくりとしか進んでいないものの、不可逆的なものです。」