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【iPhone実験】練馬区立光が丘第六小学校 社会科見学 [2009年12月18日(Fri)]

【iPhone実験レポート】教育現場 vol.18
練馬区立光が丘第六小学校3年生 社会科見学
べじふるセンター練馬〜練馬区防災センター(練馬区役所)
2009年12月17日(火)


この実験を始めたとき、難聴の小学生をもつ親御さんたちから真っ先に出た希望は「社会科見学で使いたい」ということでした。移動が多い場所でのパソコン文字通訳(パソコン要約筆記)は、これまで実現が難しかった部分です。入力者は移動せず、しかも利用者がどこにでも行ける、というこのシステムが、そのメリットを最大限に生かすことのできるのが、このような校外見学であることは十分に予想されたことでした。

今回の利用者であるHちゃんは3年生。1年生のときから学校行事でのパソコン文字通訳導入を試みていますが、精神的成長に伴って、次第に「目立ちたくない」という気持ちが強くなってきました。iPhone実験には開始当初からお母様が参加希望を出されており、このたび満を持しての初実験となりました。

見学場所は練馬区内の2つの施設。青果市場である「べじふるセンター練馬」と、練馬区役所内の「防災センター」です。

まず「べじふるセンター練馬」の建物内で説明を聞きました。はじめのうちはiPhoneの扱いに慣れず、時々お母様のところに行って画面を直してもらったりしていました。途中、ビデオの上映あり、職員の方の話あり、質問コーナーあり、と盛りだくさんの内容でしたが、Hちゃんは、みんなと一緒に聞きながらメモを取っていました。Hちゃんが通級している難聴学級の先生は、その姿をご覧になって、「上手に利用している。書き手や打ち手が近くにいない今回のような形は今のHちゃんにとって良いのではないか」とおっしゃってくださったそうです。

その後、実際の市場内見学です。職員の方が拡声器を持って、一番先頭で説明をしていますが、後ろのほうのHちゃんの位置では、話している顔も見えない状況でした。お母様は「補聴器ではまったく聞こえなかった。iPhoneがあってよかった」とおっしゃっていました。


↑字幕を見ながらメモを取っています。

その後バスで移動して練馬区役所内防災センターへ。iPhoneの扱いもかなり慣れたらしく、お母様に助けを求めることなく、ずっとクラスの列の中で話を聞くことができました。その様子は、知らない人が見れば、一体どこにいるのか分からないほどに目立たないものでした。お母様からは「周りに子どもがたくさんいて、そこに大人が張り付いて筆談をしたら、学校のリズムを崩してしまいそうだった。iPhoneを見ながら同級生と見学する姿は自然だと感じた」という感想をいただきました。


↑利用者はどこに??


↑クラスの輪に自然に入っていました。

ご本人が使い慣れてくれば、大人の付き添いもなしで、一人で文字を読みながら見学することが可能になります。モバイル型文字通訳が本領を発揮した実験となりました。

ご協力いただきました皆様、どうもありがとうございました!

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Posted by MCC HubneT at 20:51 | 実験レポート | この記事のURL | コメント(0)
【iPhone実験】練馬区立開進第二中学校1、2年生「社会」 [2009年12月05日(Sat)]

【iPhone実験レポート】教育現場 vol.14
練馬区立開進第二中学校1・2年生  2・3・5時間目「社会」
2009年12月4日(金)


中学校に入ると、学校の授業は難易度が高くなり、先生の話のスピードも速くなります。小学校までとは状況が変わって、周囲は授業への情報保障導入を考え始める時期です。しかし一方で、大人の通訳者が教室内に入ることに本人が心理的抵抗を感じ始めるのも、自立への一歩を踏み出す思春期の特徴です。

今日の実験は、そんな思春期まっただ中の3人の生徒さんが通う練馬区立開進第二中学校。この学校には難聴教室があり、数年前から体育館行事でのスクリーン表示による情報保障を導入してきましたが、授業でのパソコン文字通訳は初めてです。

利用者さんたちの希望も聞きながら、初めてのiPhone文字通訳実施科目に選んだ科目は、3人とも「社会」。「面白い話が多いので、それを伝えてあげたいんです」と、難聴教室の先生はおっしゃっていましたが、始まってみたら本当にそのとおり。この授業、情報保障なしでどうやって参加していたのだろう? と思うほど、教科書には書いていないエピソードにあふれる授業がアップテンポで進んでいきます。


↑ @ 2限:中1男子「社会」


↑ A 3限:中1男子「社会」


↑ B5限:中2男子「社会」

3人の利用者さんのうち1名は今日が3回目の実験でしたが、他の2名は初めて。後ろで見ているお母様の心配をよそに、ご本人たちは意外なほどに冷静に字幕を使っていたようです。ある利用者のお母様は「今回のiPhoneについては、初めて自分から『やってみたい』と言ってきたんです」とおっしゃっていました。この生徒さんは授業時間中ずっと字幕を見ながら、「自分で」ノートを取り続けたそうです。

この「自分で」ということがどれだけ難しいことでしょうか。利用生徒さんたちからは、実験後、「使ってみたい状況」として「聞こえにくい授業」「難しい授業」「校外学習」などが挙げられました。裏を返せば、そういう環境で、この生徒さんたちは「聞きとる」だけで精一杯、あるいは、それすらも非常に難しい状況に置かれているということです。もしもこの小さい機械によって、「聞き取る」ための疲労から少しでも解放されて、自分でノートやメモを取ったり、自分で大事なところをチェックしたり、先生の冗談にクラスメイトと一緒に笑ったりする、という、ごく当たり前の「授業」の共有に近づくことができるなら、MCC HubneTはそのためのお手伝いをしたいと思っています。

ご協力いただきました皆様、どうもありがとうございました!

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Posted by MCC HubneT at 19:00 | 実験レポート | この記事のURL | コメント(0)
【iPhone実験】エイブル・アート・ジャパン主催 レクチャー「ジェニー・シーレイの演出を知る」 [2009年12月03日(Thu)]

【iPhone実験レポート】社会一般 vol.6
エイブル・アート・ジャパン主催
レクチャー「ジェニー・シーレイの演出を知る」
2009年12月2日(水)


美術館での実験の可能性について情報を集めていた折、障害のある人たちの芸術文化活動を支援するNPO、エイブル・アート・ジャパン様にお話を伺う機会がありました。今回はそのご縁で、イギリス人のろう演出家、ジェニー・シーレイさんのレクチャー会場にて、モバイル型文字通訳のデモンストレーション実験を行わせていただきました。

 ジェニーさんがイギリス手話と口話で話されるのを、英日通訳者が日本語にし、それをさらに手話通訳者が手話にする、という幾重もの通訳連鎖の中にあって、MCC HubneTは、英日通訳者が音声日本語に訳した部分について、遠隔から文字通訳を行いました。






↑iPhone表示+PCブラウザ表示

 会場では、iPhone2台による表示(1台は音声送信兼用)の他、データカードを用いたPCブラウザによる表示を用意しました。

行数の少ないiPhone(横置き)用と、行数を多くできるPC用の2つの回線を用意することによって、両方の表示設定を使い分けると同時に、どちらかの回線が切れても、もう片方でバックアップができる態勢を整えて行いました。このような方法によって、遠隔の弱点である通信切れへの対処ができるのではないかと考えています(ただし、通信受信側の電波が不良の場合はこの限りではありません)。当日は、現地側の通信状況に起因する字幕中断はありませんでした。

レクチャーの冒頭で、主催者の方からiPhone字幕についての説明が行われると、参加していた聴覚障害の方が2名、後方の座席からiPhoneを設置してある前のテーブルに移動され、その後終了まで、手話と字幕をご覧になっていました。

質疑応答では、話者交替の際のBluetoothマイク受け渡しをどうするかという問題がありましたが、主催者の方の機転で、スピーカーの近くにBluetoothマイクを設置していただくことで、質問者、回答者の両者の音声を明瞭に拾うことができました。この音声はセンターの入力者にとっても良好で、今後有効な方法になると期待されます。

当日会場でいきなりiPhoneによる遠隔情報保障をご覧になった聴覚障害の利用者様にも評判は良く、「演劇などの会場で応用できそう」というご意見をいただきました。また主催者の方からは「ほぼ100%文字になっている。演劇やワークショップなどでも有効活用できるのでは?」と、ご感想をいただきました。

今までパソコン文字通訳(要約筆記)が届けられなかった場面に、この小さいiPhoneが飛んでいけるようになると、もっともっと情報保障の可能性が広がっていくでしょう。

なお、当日の様子を、ブリティッシュ・カウンシルのTwitterから以下のリンクで見ることができます。
http://bit.ly/50lk4x(アルバムが開きます)

ご協力いただきました皆様、本当にありがとうございました!

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Posted by MCC HubneT at 22:55 | 実験レポート | この記事のURL | コメント(0)