東京新聞(1月5日)に掲載されていた情報を伝えます。
【熊谷市で二〇〇七年八月、四〇・九度の日本最高気温を記録したのは記憶に新しい。地球温暖化が進む中、全国有数の植木・造園の特産地、川口市安行地区で、県と共同開発された屋上緑化に活用できる軽量の植栽マットが、不況下で売り上げを伸ばしている。
川口市安行慈林の「安行造園」の作業所で、従業員の野口俊文さん(55)から、高さ二メートルほどの木が植えられたマットを指さされ「持ち上げてみてください」と言われた。
腕に力を込め幹を持ち上げてみて、拍子抜けした。「軽い」。せいぜい十キロ程度の重さ。これが地元の造園業者でつくる「川口市都市緑化植木生産組合」(松本孔志組合長、加盟十七社)が販売する「安行四季彩マット」だ。
マットは、一辺が五十センチのポリプロピレン製。厚さは芝生や植栽する木などの種類によって五〜十五センチ。屋上緑化の課題である一平方メートル当たりの木などを含めた総重量六十キロ以下を実現した軽量化への挑戦は、二十年前にさかのぼる。
一九八九年、埼玉や東京など首都圏の自治体が共同で都市緑化の研究を始めた。埼玉県はまず屋上緑化に適した樹木の軽量化を実現するため「樹木の根を短くして、いかに生育させるか」の研究、実験に六年間かけて取り組んだ。
さらに、深谷市の県花植木センター専門調査員だった石井芳夫さん(62)は九七年ごろ、従来の重い盛り土を使わない植栽方法に頭を悩ましていた。ある日、土木資材のカタログに目が留まった。
土地造成で泥から水を抜くフィルターに使う繊維状の縦一メートル、横二メートルのマット。繊維のすき間に土を入れ、植木を上に載せて土をかぶせ、ワイヤなどを張り、倒れないようにした。だが根が張れば倒木は防げるが、大きすぎてマットはたわみ、持ち運びが大変で実用化を断念した。
「マットそのものを地面にすればいい」と発想を転換。五十センチ角に小さくしたマットにゴルフカップほどの円筒形の穴を開けて植木を入れた。繊維のすき間に根が張り、飛躍的に軽量化した。植栽マットの誕生だ。
石井さんは二〇〇三年、川口市安行にある県花と緑の振興センターに異動。地元の造園業者にマットの実用化を働き掛け、野口さんらと実験を重ねた。当初の円筒形の穴は植木が倒れやすく、根を張るのに時間がかかるため、下が広い巾着(きんちゃく)に似た形に改良。倒木せず、安定した。県の風洞実験で風速三〇メートルにも倒れなかったという。
〇四年に川口市都市緑化植木生産組合が設立され、マットの実用新案の特許を取得して販売をスタート。初年度の〇六年度は約八百万円だった年間売り上げが、毎年倍々で伸び、〇九年度は十一月末現在、約四千五百万円と不況知らず。首都圏のマンションのベランダやビル屋上、一戸建て住宅の庭などの注文を受けている。
樹木医でもある野口さんは「屋上緑化は、二酸化炭素吸収やヒートアイランド抑制だけでなく、目を楽しませ、多様な効果がある」と胸を張る。現在は同センター非常勤職員の石井さんは「実用化まで二十年かかったが、景気の悪い時に売り上げに貢献できてうれしい。将来もこの技術が緑化に役立ち、歴史の一ページになってくれれば」と遠くを見つめた。】
★「安行四季彩マット」は、以前に川口そごうの屋上で見たことがあります。今でもあると思うのですが・・・。