『★明石海峡衝突海難、最悪の事態を避けたつもりが?★』[2008年04月04日(金)]
3月5日、神戸市・垂水区沖の明石海峡で発生した、衝突海難から約一ヶ月が経過しました。この事故では、沈没したベリーズ船籍の貨物船“ゴールドリーダー(1,466総トン)の外国人船員二人が死亡、二人が行方不明のままです。
事故を改めて振り返って見ましょう。明石海峡の東側の入口付近で起きました。厳密に言えば、明石海峡航路の中で事故は起きたと考えられます。今後、海難審判などを通じ、詳細が明らかになるでしょうが、関係者などから聞いた情報をもとに記述します。今回の事故に関係した三隻は、いずれも東から西へ向っていました。
まずは、北東方向、すなわち、神戸港の方角から姫路の母港に向け、明石海峡航路に進入しようとしていた砂利運搬船“第五栄政丸”(496総トン)の船首が、ケミカルタンカー“オーシャンフェニックス(2,948総トン)”の船尾に衝突しました。
“第5栄政丸(496総トン)”には船長が不在で、船員一人が自動操舵で操船していました。船員法や船舶職員法に触れる行為で、弁解の余地はありません。しかも、椅子に腰掛けていたため、視野が制限され、“オーシャンフェニックス”の存在に気付くのが遅れたとの指摘がありますが、私は居眠り運転の可能性が高いと考えています。
一方、 “オーシャンフェニックス(2,948総トン)”ですが、操舵手が積荷のチェックのため船橋内に不在で、しかも、事故直前まで航海士一人が自動操舵で操船していました。しかも、間もなく狭水道である、明石海峡航路に到着しようというのに、船の責任者である船長が船橋内に不在でした。船員法上の違反行為であり、弁解の余地はありません。
“第5栄政丸”の船員は、事故発生までまったく“オーシャンフェニックス”の存在に気付いていなかった節が見られます。たとえ、椅子に腰掛けていたにしても、前方に見る見る迫ってくる船を、衝突の瞬間まで気付かないことはあり得ません。やはり、居眠りをしていた可能性が高いのです。
一方、“オーシャンフェニックス”の航海士は、衝突の三分ほど前に、右後方から次第に迫って来る、“第5栄政丸”の存在に気付いていたようです。
彼はこのように考えたようです。「もうすぐ明石海峡航路に入る。右後方から迫って来るあの船も、間もなく針路を右に変え、明石海峡航路内を航路に沿って平行に航行していくだろう。この船と同じ針路をとるであろう。」
明石海峡に限らず、航路の入り口付近では、各方面から航路内進入を目指す船が集中します。互いに交差する危険な見合い関係も起こりえます。しかし、通常、最終的には、全船が航路に沿った針路に変針するため、事なきを得るのです。
たとえてみると、高速道路の料金所の出口では、各ブースで支払いを済ませた車が、本線への進入を目指して“逆扇状”に展開しています。お互いに譲り合いながら、徐々に本線と平行な方向に進路を変えてゆきます。やがて、全車両が一定の安全な間隔を保ちながら、本線に対し平行となり本線に進入、走り去っていくのです。
一番右側のブースを抜け出した車が、本線進入位置に達しても左方向への斜行をやめずに、いつまでも左方向を目指し続けたらどうなるでしょうか。まわりの車に思いっきりクラクションを鳴らされ、最悪、接触事故に至るかもしれません。
今回の事故はこうした状況がきっかけだったようです。“オーシャンフェニックス”の航海士の意に反し、“第5栄政丸”はそのまま斜航を続け、“オーシャンフェニックス”の右船尾に迫ってきました。
後方から迫って来る、高速の船を避けることは非常に困難です。運の悪いことに、“オーシャンフェニック”は、スピードの遅い“ゴールドリーダー”を、右舷後方から追い越そうとしていました。つまり、“オーシャンフェニックス”の左舷至近には、“ゴールドリーダー”が並走していたのです。
たとえてみると、片側三車線の高速道路の真ん中のレーンを、あなたが通行していたとします。一番左のレーンにはノロノロ運転のオンボロ車が、たまたま並走しています。
そこに、あなたの後方から、スピードの速い車が見る間に迫ってきたとします。あなたはどうしますか。まずは、その車が一番右の追い越しレーンに進路を変え、行き去ってくれることを祈るでしょう。通常はこのパターンのはずです。
あるいは、あなたは懸命にアクセルを踏み込み増速、後ろの車に煽がれる形になるかもしれません。しかし、船では車のように、短時間での顕著な増速は困難です。ブレーキを踏みますか。それはないですよね。
“オーシャンフェニック”の航海士は、針路を変えずに迫り来る“第5栄政丸”に慌てふためき、どうしようもないまま、最後の瞬間を迎えました。
海上衝突予防法では、“第5栄政丸”が避航動作を取らず、衝突のおそれが迫った段階で、“オーシャンフェニックス”に対し、「お前の挙動に不安を感じているぞ!」などの意思表示のため、“疑問信号”を行なうことを義務付けています。“オーシャンフェニック”の航海士は行なっていないようです。航法違反です。
“オーシャンフェニック”の航海士は、ある意味優秀であったのです。衝突が避けられないと察した瞬間、あることを考えたのです。「コンプレッサーだけは絶対に守らなければならない!」
“オーシャンフェニック”は液化ガスの一種、エチレンを輸送していました。エチレンは常温下では、たちどころに気化してしまいます。液体の形で輸送するためには、コンプレッサーは必要不可欠な重要機器なのです。
万が一、コンプレッサーが機能しなくなると、タンク内のエチレンは液体の形で維持することができなります。つまり、タンクの内部のエチレンは、人間による制御が不能となり、最悪、引火性のエチレンガスのすべてを大気放出せざる得ない事態に至ってしまうのです。当然、火災・爆発などの二次災害も十分考えられます。
彼はコンプレッサーを衝突の被害から守るため、意を決してある行動に出ました。舵を思いっきり左に、、つまり、並走している“ゴールドリーダー”に向けて切ったのです。
結果、コンプレッサーへの被害は免れました。しかし、“オーシャンフェニックス”の船首が“ゴールドリーダー”の右舷に接触しました。
“オーシャンフェニックス”は、船首部分を“ゴールドリーダー”の右舷側に密着させたまま、その外板を擦過してゆきました。
そもそも船首部分は、球形の構造になっていて、最近では、衝突時の相手へのダメージを低減するため、わざとつぶれやすく、こわれやすく、衝撃を吸収する仕組みとなっています。自動車に喩えるならば、“バンパー”です。
事実、“オーシャンフェニックス”の船首の球状の突起は、まるで、黒板を無理やり擦ったチョークのように、ほぼ真横に折れ曲がってしまいました。
衝突が免れない以上、最悪の事態は回避する。彼の判断は一瞬、正しいかったかに思われました。彼もあるいは、そう感じたのかもしれません。
しかし、次の瞬間、信じられない光景が彼の目に飛び込んできました。“ゴールドリーダー“が大きく左に傾斜し、あっという間に転覆、やがて、沈没していったのです。

事故を改めて振り返って見ましょう。明石海峡の東側の入口付近で起きました。厳密に言えば、明石海峡航路の中で事故は起きたと考えられます。今後、海難審判などを通じ、詳細が明らかになるでしょうが、関係者などから聞いた情報をもとに記述します。今回の事故に関係した三隻は、いずれも東から西へ向っていました。
まずは、北東方向、すなわち、神戸港の方角から姫路の母港に向け、明石海峡航路に進入しようとしていた砂利運搬船“第五栄政丸”(496総トン)の船首が、ケミカルタンカー“オーシャンフェニックス(2,948総トン)”の船尾に衝突しました。
“第5栄政丸(496総トン)”には船長が不在で、船員一人が自動操舵で操船していました。船員法や船舶職員法に触れる行為で、弁解の余地はありません。しかも、椅子に腰掛けていたため、視野が制限され、“オーシャンフェニックス”の存在に気付くのが遅れたとの指摘がありますが、私は居眠り運転の可能性が高いと考えています。
一方、 “オーシャンフェニックス(2,948総トン)”ですが、操舵手が積荷のチェックのため船橋内に不在で、しかも、事故直前まで航海士一人が自動操舵で操船していました。しかも、間もなく狭水道である、明石海峡航路に到着しようというのに、船の責任者である船長が船橋内に不在でした。船員法上の違反行為であり、弁解の余地はありません。
“第5栄政丸”の船員は、事故発生までまったく“オーシャンフェニックス”の存在に気付いていなかった節が見られます。たとえ、椅子に腰掛けていたにしても、前方に見る見る迫ってくる船を、衝突の瞬間まで気付かないことはあり得ません。やはり、居眠りをしていた可能性が高いのです。
一方、“オーシャンフェニックス”の航海士は、衝突の三分ほど前に、右後方から次第に迫って来る、“第5栄政丸”の存在に気付いていたようです。
彼はこのように考えたようです。「もうすぐ明石海峡航路に入る。右後方から迫って来るあの船も、間もなく針路を右に変え、明石海峡航路内を航路に沿って平行に航行していくだろう。この船と同じ針路をとるであろう。」
明石海峡に限らず、航路の入り口付近では、各方面から航路内進入を目指す船が集中します。互いに交差する危険な見合い関係も起こりえます。しかし、通常、最終的には、全船が航路に沿った針路に変針するため、事なきを得るのです。
たとえてみると、高速道路の料金所の出口では、各ブースで支払いを済ませた車が、本線への進入を目指して“逆扇状”に展開しています。お互いに譲り合いながら、徐々に本線と平行な方向に進路を変えてゆきます。やがて、全車両が一定の安全な間隔を保ちながら、本線に対し平行となり本線に進入、走り去っていくのです。
一番右側のブースを抜け出した車が、本線進入位置に達しても左方向への斜行をやめずに、いつまでも左方向を目指し続けたらどうなるでしょうか。まわりの車に思いっきりクラクションを鳴らされ、最悪、接触事故に至るかもしれません。
今回の事故はこうした状況がきっかけだったようです。“オーシャンフェニックス”の航海士の意に反し、“第5栄政丸”はそのまま斜航を続け、“オーシャンフェニックス”の右船尾に迫ってきました。
後方から迫って来る、高速の船を避けることは非常に困難です。運の悪いことに、“オーシャンフェニック”は、スピードの遅い“ゴールドリーダー”を、右舷後方から追い越そうとしていました。つまり、“オーシャンフェニックス”の左舷至近には、“ゴールドリーダー”が並走していたのです。
たとえてみると、片側三車線の高速道路の真ん中のレーンを、あなたが通行していたとします。一番左のレーンにはノロノロ運転のオンボロ車が、たまたま並走しています。
そこに、あなたの後方から、スピードの速い車が見る間に迫ってきたとします。あなたはどうしますか。まずは、その車が一番右の追い越しレーンに進路を変え、行き去ってくれることを祈るでしょう。通常はこのパターンのはずです。
あるいは、あなたは懸命にアクセルを踏み込み増速、後ろの車に煽がれる形になるかもしれません。しかし、船では車のように、短時間での顕著な増速は困難です。ブレーキを踏みますか。それはないですよね。
“オーシャンフェニック”の航海士は、針路を変えずに迫り来る“第5栄政丸”に慌てふためき、どうしようもないまま、最後の瞬間を迎えました。
海上衝突予防法では、“第5栄政丸”が避航動作を取らず、衝突のおそれが迫った段階で、“オーシャンフェニックス”に対し、「お前の挙動に不安を感じているぞ!」などの意思表示のため、“疑問信号”を行なうことを義務付けています。“オーシャンフェニック”の航海士は行なっていないようです。航法違反です。
“オーシャンフェニック”の航海士は、ある意味優秀であったのです。衝突が避けられないと察した瞬間、あることを考えたのです。「コンプレッサーだけは絶対に守らなければならない!」
“オーシャンフェニック”は液化ガスの一種、エチレンを輸送していました。エチレンは常温下では、たちどころに気化してしまいます。液体の形で輸送するためには、コンプレッサーは必要不可欠な重要機器なのです。
万が一、コンプレッサーが機能しなくなると、タンク内のエチレンは液体の形で維持することができなります。つまり、タンクの内部のエチレンは、人間による制御が不能となり、最悪、引火性のエチレンガスのすべてを大気放出せざる得ない事態に至ってしまうのです。当然、火災・爆発などの二次災害も十分考えられます。
彼はコンプレッサーを衝突の被害から守るため、意を決してある行動に出ました。舵を思いっきり左に、、つまり、並走している“ゴールドリーダー”に向けて切ったのです。
結果、コンプレッサーへの被害は免れました。しかし、“オーシャンフェニックス”の船首が“ゴールドリーダー”の右舷に接触しました。
“オーシャンフェニックス”は、船首部分を“ゴールドリーダー”の右舷側に密着させたまま、その外板を擦過してゆきました。
そもそも船首部分は、球形の構造になっていて、最近では、衝突時の相手へのダメージを低減するため、わざとつぶれやすく、こわれやすく、衝撃を吸収する仕組みとなっています。自動車に喩えるならば、“バンパー”です。
事実、“オーシャンフェニックス”の船首の球状の突起は、まるで、黒板を無理やり擦ったチョークのように、ほぼ真横に折れ曲がってしまいました。
衝突が免れない以上、最悪の事態は回避する。彼の判断は一瞬、正しいかったかに思われました。彼もあるいは、そう感じたのかもしれません。
しかし、次の瞬間、信じられない光景が彼の目に飛び込んできました。“ゴールドリーダー“が大きく左に傾斜し、あっという間に転覆、やがて、沈没していったのです。




