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海洋汚染情報 −海の事件簿−
海上で起きた重大な汚染事件・事故について、独自の視点から鋭くメスを入れ、分析・解説する”海の社会部デスク”、その名も”元海の男”、職業”(さすらい派)研究員”による海の事件簿。
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『真の原因は?』、知床海鳥漂着事件[2006年04月23日(日)]
先日来、知床海鳥漂着事件に関しては、“O号”を“犯人”とする主張に対し、専門的な立場から、それを疑問視する内容の検証を繰り返し行ってきました。また、海鳥の漂着時期、発端となる油流出が起こった現場海域の位置、油流出時期等についても、科学的な推測を行ってきました。

一方、「“O号”でないならば、原因は何なのか」についても、推測を進めてきました。特に、私が示唆してきたのは“沈没船”からの油流出の可能性です。曰く、以下の内容です。

「(私が油流出現場と推測した)海域にC重油の流出源となるような沈没船が存在しないか否か、日露両国が協力し、一刻も早く調査し油流出の蓋然性を検討することが必要である。
戦時下及び戦後昭和30年代半ばまでの沈没船については、当時の燃料事情等に鑑み、可能性はかなり低下する。先に調査すべきは、昭和30年代半ば以降の沈没船である。特に、旧ソ連邦時代の沈没船については、実態把握に相当てこずることが容易に予想される。」

ところで、昨日の“日本野鳥の会オホーツク支部”のブログを拝見したところ、同支部では、独自のルートによって、米国カリフォルニア州政府の研究機関に対し、海鳥に付着した油の分析を依頼し、当該作業が進行中であるとのことです。

http://blog.livedoor.jp/abura060303/archives/2006-04.html#20060422

同時に、同研究機関の話として「流出源が不明な油の流出は、もしかすると沈没船によるものかも知れない。アラスカ沖でもよくある」と記載しています。私の意見を支持する声が、思いもがけず海外、それも米国から寄せられたようです。

無論、今回の事件を二度と繰り返さないためにも、可能性の目を一つ一つつぶしていくことが肝要であり、沈没船の件は可能性の一つとして認識し、該当する沈没船が存在しないならば、この件はそれで終了のはずです。

沈没船以外にも、意外な盲点はあるかと思います。例えば、思いつくところでは、ロシアの密輸・密漁船の話です。近年、ロシア当局は、密輸・密漁船による収益がマフィアの資金源となっている事態を重視し、徹底的な取締りを繰り返し行ってきました。我が国に対しても協力を求めています。毎年何回かは、ロシア当局と密輸・密漁船との間で、壮絶な“捕物劇”が繰り返されていると聞き及んでいます。

今年に入ってからも、ロシア当局が航空機によって密輸・密漁船を追跡する過程において、誤って我が国領空を侵犯するという事件が発生し、一部の新聞等で報道されたことを覚えている方もいらっしゃるかと思います。

ところで、テレビのドキュメンタリー番組で、他の海域における、日本の海上保安庁と密漁船との追跡劇をご覧になった方もいらっしゃるでしょう。密輸・密漁船は、捕まらないために、船上にある色々な備品を、巡視船に対し障害物として投げつけてきます。魚網などが巡視船のスクリューに絡み、継続追跡できなくなることを期待しているのでしょう。相手も捕まらないために必死なのです。

障害物は何も固形物だけとは限りません。時に、油等の液体も立派な障害物となる可能性は否定できません。現に1990年代初頭、湾岸戦争の折、イラク軍はクゥエートを撤退する際、油田のバルブを故意に開放し、推定70万トン以上の原油をペルシャ湾内に流出させました。この事例などは、逃走用の障害物として油を利用した代表的な事例です。

密輸・密漁船が逃走時の障害物として、上甲板上にC重油が入ったドラム缶を用意し、実際にそれを利用した可能性も絶対に無いとは言えません。確かに、密輸・密漁船の燃料はA重油、時に軽油・ガソリンです。しかし、これらの油は高価で、かつ、海上に撒かれても外洋であるならば、さほどの環境ダメージを与えない可能性が高いのです。やはり、海上に撒かれ、環境に最大のダメージを与え、時に追跡船等が追跡継続を躊躇せざるを得ない可能性を導き出すのはC重油です。密輸・密漁船が、その目的のためにだけに、C重油を用意している可能性があっても不思議ではありません。

皆が次々と、“O号”を“犯人”とするサスペンスドラマの台本を無理やり書き上げるのではなく、このように、沈没船、密輸・密漁船など、考えられる範囲内でミステリーの主役と台本を次々に登場させ、科学的根拠に基づき消去していく方法が、はるかに合理的なのではないでしょうか。

世界遺産知床に、絶対にあってはならない環境災害を繰り返さないための教訓として、また、事前防止対策の立案のため、是非とも原因究明は必要ですから。

私は明日の朝から、別件出張のため、九州に出かけてきます。帰り次第、ブログを再開したいと思います。知床海鳥漂着事件に大きな進展が無い限り、あるいは、皆さんのご要望が無い限り、今度は八重山諸島の廃油ボール漂着問題にメスを入れてみたいと考えています。
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