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海洋汚染情報 −海の事件簿−
海上で起きた重大な汚染事件・事故について、独自の視点から鋭くメスを入れ、分析・解説する”海の社会部デスク”、その名も”元海の男”、職業”(さすらい派)研究員”による海の事件簿。
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ドラム缶は海鳥とは無関係、知床海鳥漂着事件[2006年04月12日(水)]
ドラム缶は海鳥とは無関係、知床海鳥漂着事件

北海道のオホーツク海沿岸、小清水町などの海岸で、ハングル文字が書かれた油入りのドラム缶、21本が漂着しました。私はこの事件、今回の海鳥漂着事件とは無関係だと思っています。以下に解説します。

現地調査の際、既に私は関係者に対し、当該ドラム缶の写真を見て、「これは韓国製の潤滑油のドラム缶の空缶を利用して、別の油を入れておいたものが、何らかの原因で海上に流れ出した可能性が高い」と指摘していました。

また、「私は韓国語が詳しくわからないが、“船舶用”の潤滑油なのか、陸の建設機械等に使用する潤滑油なのか、それによって船舶起因か陸上起因かが判定できる」と指摘していました。

10日、道の調べで、書かれたハングル文字は、船舶用ディーゼルエンジンの潤滑油を意味することがわかったそうです。これならば、話は簡単です。まず、中身はC重油の可能性は“0”に近いでしょう。中身はずばり“廃油”です。

まず、C重油についてお話しておきましょう。C重油は少なくとも私の知る限り、ドラム缶の形態では一切取引されていません。C重油は最低でも100トン単位、多い場合数千トンレベルで取引されているため、僅か0.18トンしか入らないドラム缶では、極めて非効率な流通形態となるからです。すべてのC重油は、小型タンカーや油バージ等による“ばら積み貨物(船の貨物タンクに収納)”として取引されています。

時々、調査・研究機関などが、「C重油を使った実験をしたいので、ドラム缶やペール缶入りのC重油を扱っている石油卸業者ないのか」と相談を受けることがあります。その場合、融通のきく業者を紹介し、特別にお願いして、そうした入れ物にいれてもらうこととなります。

一方、潤滑油はドラム缶の形態で取引されています。漁船や小型船など、使用量自体が少ない場合、数缶をトラックで船に納品し、それをその都度小出しに使います。大型商船にあっては、時に100缶以上の単位で納品する場合があります。その場合にあっても、“ばら積み”のタンカー・バージから納品することは、まずありません。ドラム缶納品が基本です。“ばら積み”輸送した場合、貨物タンク内で他のもの(水・油)と接触し、品質が変わり、すべての潤滑油が使い物にならなくなるおそれがあるからです。

潤滑油が入った100缶以上のドラム缶を積んだ小型船が大型船に接岸し、空圧ポンプを使い、一缶ごとに大型船の専用タンクに中身だけを入れてゆきます。結構な時間がかかりますが、品質管理のためにはいたしかたありません。

荷役が終わると、空ドラムの山が小型船の甲板に残されます。通常はそのまま空缶を持って帰ってもらいます。ですが、そればかりではありません。空缶は船には必需品だからです。“廃油”を入れるための便利な容器にもなります。半分に切って“取っ手”を付ければ、なにかと便利な入れ物にもなります。“ごみ”の容器にも利用できます。手の器用な船員が、バーベキュー・コンロに改造することもあります。したがって、すべての空缶を持ち帰ってもらうのではなく、いくつかは必ず船に残してもらうのです。

特に、南方に向かう船にとって、ドラム缶は重宝です(私の現役時代ですから、重宝でしたが、より正確です)。ドラム缶は、現地の方々にとっては必需品だからです。時に“雨水ため容器”に、時に“風呂”にもなるのです。船が停泊していると、手漕ぎのカヌーが、たくさんのフルーツを満載して近づいてきます。船のドラム缶と自分達のフルーツを交換するためです。

ドラム缶1本の価値は、モンキーバナナ1房及びマンゴフルーツ5個に相当します。もっとも、ドラム缶も肉厚が価値の決め手となり、薄いものに関しては価値が半減します。

話が横道にそれました。今回のドラム缶漂着事件、その真相は、以下でしょう。

流氷が去り、大型商船の通航もはじまった大荒れのオホーツク海でのできごとです。当該船の後部甲板には、潤滑油の空缶や、すでに空缶を利用して中に廃油が入っていたものが、きれいにブルーシートに覆われラッシング(固縛)された状態でおかれていました。

しかしながら、大時化のため、後部甲板に“青波”が打ちあがり、ラッシングロープを切り、ドラム缶は根こそぎ海に持っていかれてしまったのです。現に、海岸に漂着したドラム缶の中には、ラッシングロープやブルーシートが巻きついていたものもある、と聞いています。これこそ、動かぬ証拠なのです。

流出時期は漂着の前日、または前々日、流出場所は雄武町沖20〜30kmと言ったところでしょうか。航路は北米バンクーバー(又はシアトル)を出て、北太平洋を航海中、荒天を避けるため一旦、ベーリング海に入り、千島列島を南下、オホーツク海に入り、北海道沿岸を航行、宗谷海峡経由で韓国に向かっていた船などが該当します。その場合、船種はコンテナ船あたりでしょうか。原因は故意ではないでしょう。荒天化の事故です。

ちなみに、荒天下、はずれたラッシングを結びなおすのは、自殺行為に等しい危険な作業です。危険を顧みず、この作業を行い、亡くなった船員を私は大勢知っています。私の推測が正しければ、原因は故意ではなく荒天化の事故、それも多分に不可抗力に近い状態だったと思われます。

私の解説に賛同した方、どのたか、道に知らせてあげてください。
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