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海洋汚染情報 −海の事件簿−
海上で起きた重大な汚染事件・事故について、独自の視点から鋭くメスを入れ、分析・解説する”海の社会部デスク”、その名も”元海の男”、職業”(さすらい派)研究員”による海の事件簿。
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『★河川交通の盲点、震災は渇水期に起きるのか?★』[2008年11月21日(金)]
私は今、茨城県に来ています。週初めに引き続き、再度、アウトドア調査、すなわち、河川におけるクレーン台船の廻航作業の安全確認調査を実施するためです。

すでに皆さんはご承知のとおり、私は一昨年(2006年)8月14日に発生し、首都圏を大規模停電のパニックに陥れた、クレーン台船による送電線損傷事故について、再発防止対策推進のお手伝いをさせて頂いています。

事故を起こしたM建設は、現在に至るも、クレーン台船の河川での廻航作業にあたり、たびたび、私のような外部の専門家を立ち合わせ、安全性の評価を求めているのです。

今日の廻航作業は、茨城県・那珂港漁港の係留地から那珂川を経由し、支流の個沼川に入り、大貫橋の係留地に至るまでの約2時間を予定しています。

航海時間は短いのですが、個沼川は右へ左へと“くねくね”と曲がり、かなり熟練の曳航操船技術を必要とします。

加えて、航路上には三か所の道路橋、一か所の鉄道橋、三か所の架空送電線など、次々と上空障害物が登場します。時間は短いものの、極めて神経を使う曳航作業が予想されます。

河川での廻航作業は通常、11月から3月までの比較的水位が少ない、いわゆる渇水期に限定されているのです。

たしかに、浅瀬への乗揚げ事故を防止するためには、水深に十分余裕が生じる増水期に曳航を行うほうがベターです。

しかし、増水期にあっては、多くの場合、クレーン台船は橋梁の下をくぐることはできないのです。橋の下と川面との間隔が十分ではないからです。

道路橋にせよ、鉄道橋にせよ、通常、当該橋を利用する自動車や鉄道の利便性を中心に設計され、建造されています。河川において橋の下を航行する船舶の利便性は、必要最低限程度しか考慮されていないのです。

したがって、両岸の道路やレールと、ほとんど高低差が生じないような、できる限り平坦な橋がベストとされ、結果、船舶の航行にとっての利便性は著しく低下しているのです。

「現状で橋の下と通れない船は工夫をして通るようにしろ! それでも通れないならば諦めろ!」ということなのです。

そもそも、河川は“お上”の持ち物で、“お上”が管理するものであり、国民はその管理のもとに、一定の条件のもとに利用できるとする発想が根底にあるような気がします。

ただし、河川の船舶交通は、その枠組みにすら今まで入れてもらっていなかったと言っても、言い過ぎではないと思います。

こうしたことから、水深は十分あるにもかかわらず、日本の場合、橋梁や水門がネックとなり、船舶輸送・交通が著しく制限され、結果、舟運活動を低迷させているケースが多々見られます。舟運活動は、交通渋滞に伴う地球温暖化ガス発生抑制の特効薬でもあるのですが。

また、前にも申し上げた通り、首都圏が震災に襲われた場合、最悪の状況下にあっても、それほど支障なく最後まで利用できる可能性が高い交通インフラは、河川といわれています。

たとえば、真夏の行楽帰りの首都高速道の両国ジャンクション付近、見事なまでの大渋滞を経験された方も多いことでしょう。

「早く自宅に戻り寛ぎたい!」、焦る気持ちを抑えているつもりでも、フルパワーのエアコン音と、ラジオから空しく流れる事務的な渋滞情報は、皆さんのストレスを増加させるばかりのはずです。

ふと、何気なく視線を眼下に落とすと、そこは隅田川です。一隻の船が、渋滞などまるで他人事のように、極めて優雅に濃紺の川面を滑るように下ってゆきます。

そうです。道路上で日々刻々と繰り広げられている喧騒をものともせず、河川こそ渋滞知らずの都内で残された唯一の交通ルートなのです。

交通渋滞に伴う地球温暖化ガス発生抑制の特効薬、それは、河川交通の活用なのです。しかも、震災時にあっては、被災者・負傷者の救済・救護、食料・水・医薬品など物資の供給、支援要員や機材の運搬、帰宅困難者の輸送など、ありとあらゆる場面での活用が期待されています。

ところが、水面からの高さがわずか5メートルほどのクレーン台船ですら、渇水期でなければ通れないという切実な実態を、どれだけの国民が知っているのでしょうか。

クレーン台船ならば、おそらく一度に200人以上の被災者を安全な場所まで輸送することも可能なのですが。世の中うまく機能していないのです。震災が渇水期に起きることを祈るばかりです。もちろん冗談です。震災は無いに越したことありません。

『★クレーン船が原因の首都圏大停電、社会貢献と安全!★』[2008年09月29日(月)]
一昨年8月14日、M建設(茨城県・神栖市)のクレーン台船がブームを立てた状態で旧江戸川を航行し、高圧送電線を損傷、首都圏を大規模停電のパニックに陥れた事故の続報をお伝えします。

昨日のブログでもお伝えしたとおり、先週末、東京・霞ヶ関の高等海難審判庁において、本海難に関する、二審の裁決が言い渡されました。

今回の裁決では、クレーン台船を所有・運航するM建設について、一審での勧告処分の裁決を覆し、勧告は行なわないこととしました。

M建設が事故を教訓とし再発防止策を講じていること、また、第三者による検証を続けていることなどについて、高等海難審判庁が一定の評価を下したのでした。

私は、本事故の発生を重く受け止め、クレーン台船の業界団体が設置した、「安全確保対策特別委員会」に外部委員として招かれ、再発防止のための指針を策定するお手伝いをさせて頂きました。

また、M建設に請われ、同社が講じた再発防止策について、その有効性を第三者機関の立場で検証し、海難審判の場で証言しました。

二年経った今でもM建設に請われ、再発防止策に不備がないか、現場で確実に実行されているか、第三者機関の立場で検証・指導を続けています。

その間、さまざまな助言を与えてきました。同社の再発防止策としての実施項目は、私の助言などから、二年間に雪ダルマ式に増えてゆきました。なかには、直接、今回の事故とは関係のない項目もありました。

たとえば、社会貢献活動への自発的な参加です。今回の事故でM建設は、電力会社との示談は成立させたものの、大停電を誘発したことにより、数多くの人々に、間接的な被害や迷惑を与えました。

再発防止のための諸対策を継続的、かつ、確実に実施するためには、こうした被害や迷惑を“記録”としてではなく、全社員の“記憶”として残していく必要があると私は考えました。

そこで、お願いしたのが、全社員の社会貢献活動への参加です。全社員が大停電事故に伴い国民に与えた被害や迷惑を“記憶”として残し、社会に役立つ日頃の活動を通じ、少しでも世間に還元して頂くという趣旨です。

M建設は事故を起こしたものの、本来、河川交通のことならば誰にも負けない知見を有した専門会社です。ところで、首都圏が震災に襲われた場合、それほど支障なく利用できる可能性が高い交通インフラは、河川といわれています。

そこでM建設は、震災などの災害発生時にあっては、商売としての作業を中断し、自社船による救援物資等の運搬や、帰宅困難者等の救助活動に自ら進んで従事する旨を宣言しました。

また、平素のボランティア活動にも、全社員が総力を挙げて、取り組むことを約束してくれました。ほとんどの社員が“海守”にも参加していると聞いています。

いうまでもなく、“海守”とは、海の事件・事故の防止などを目的とした情報提供ネットワーク型ボランティア団体のことです。

今回の裁決では、こうした一連の活動を含め、M建設の再発防止策が審判庁に評価され、勧告処分が免除されたのです。

無論、私は勧告を免れるため、社会貢献活動をお願いしたわけではありませんし、M建設にもそうした気持ちはありません。社会に貢献するという社員の並々ならぬ意欲が、安全に対する意識をも向上させ、再発防止にもつながるのです。私もM建設も同じ考えです。



『★クレーン船が原因の首都圏大停電、事実上の勝訴裁決!★』[2008年09月28日(日)]
一昨年8月14日、M建設(茨城県・神栖市)のクレーン台船がブームを立てた状態で旧江戸川を航行し、高圧送電線を損傷、首都圏を大規模停電のパニックに陥れた事故の続報をお伝えします。

一昨日(9月26日)午後、高等海難審判庁において、二審の裁決が言い渡されました。事前に関係者控室でM建設の幹部二名、そして、海事補佐人(刑事裁判の弁護人に相当)のT弁護士と合流、審判廷に入場しました。

やがて、正面の審判官席に、五名の審判官に加え、二名の参審員(ヒューマンエラー防止などの専門の立場で審判に参加する学識経験者)が現れました。

一方、その日集まったのは、私たち四名のほか、担当の理事官(刑事裁判の検察に相当)一名、ほか、理事官と思しき傍聴人一名の計六名のみ、裁決を言い渡す側の人間の方が一名多いのでした。

それもそのはず、高等海難審判の裁決言い渡しは関係者のみに通知され、公表はされないのが慣習とのことでした。私もこの商売は長いのですが、今まで知りませんでした。迂闊でした。

さて、裁決の内容です。事故当時、クレーン台船を曳航していた曳船のK船長、そして、台船の船尾に付いていた補助船のW船長に対しては、一審の横浜地方海難審判庁と同様、保有する海技免状を一定期間停止する裁決が言い渡されました。

一方、事故当時のAクレーン運転士については、一審での勧告処分の裁決に対し、再発防止策を講じていることに鑑み、勧告を行わないとする裁決が言い渡されました。

さらに、M建設についても、一審での勧告処分の裁決に対し、再発防止策を講じていること、第三者による検証を続けていることに鑑み、勧告を行わないとする“温情”裁決が言い渡されました。

私たちにとっては、再発防止策が審判庁に評価され、勧告処分が免除されたことから、事実上の“勝訴”に匹敵します。M建設に対する検証・指導を長年にわたり担当した私にとっては、今まで頑張ってきた甲斐があるというものです。本当にありがたいことです。

『★クレーン船が原因の首都圏大停電、高等海難審判の裁決!★』[2008年09月26日(金)]
2006年8月14日、クレーン台船がブームを立てた状態で旧江戸川を航行し、高圧送電線を損傷するという事故が発生しました。ご承知のとおり、首都圏が大規模停電のパニックに陥りました。あれから早くも二年以上の歳月が経過しました。

事故を起こしたM建設は、横浜地方海難審判庁の裁決を不服として、高等海難審判庁に提訴しました。本日(9月26日)午後、高等海難審判庁による裁決が言い渡される予定です。

本事故の発生当初から、私は大変興味を抱き、本ブログでも集中的に取り上げてきました。記事記載回数は、実に30回にも及びました。

そもそも私は、本事故の再発防止を目的に業界団体が設置した、「安全確保対策特別委員会」に外部委員として招かれ、対策指針を策定するお手伝いをさせて頂きました。

その後、横浜海難審判庁で行なわれた海難審判では、M建設側の証人として出廷し、事故後、直ちに講じられた同社の再発防止策について、その有効性を第三者機関の立場で検証した結果を証言しました。

本事故を深く反省したM建設は、私の知る限り、業界全体でもっとも厳しい再発防止策を打ち出し実行していました。

その再発防止策は二年が経過した今でも、改善すべき点が随時修正され続け、さらに優れた策として、ますます成長し続けています。私は今でもM建設に請われ、彼らの再発防止策に不備がないか、現場で確実に実行されているか、第三者機関の立場で検証を続けています。

また、本事件の教訓は、事故を起こしたM建設は無論のこと、関係行政機関やいわば被害者である電力会社、さらには、M建設以外の他のクレーン船運航会社などにも波及し、関係者が一丸となって、ともに再発防止に向けた対策に取り組んできました。

加害者はおろか被害者に至るまでの総括的な取り組みは、かつての海難事例では見られない、実に理想的な状況だと私は思います。

こうしたことから、一審の横浜海海難審判庁での結審にあたり、理事官(刑事裁判の検察側に相当)は、“理事官意見(刑事裁判の論告求刑に相当)”の中で、「(M建設は)同種事故の再発防止措置を講じた旨を認める。今後、継続的にこれが行なわれるよう、第三者による検証及び評価を受けることをM社に勧告すべきだ。」と言及しました。

理事官がM建設の再発防止策を評価したのでした。しかし、裁決はまったく予想外のものとなりました。単に「再発防止策を講じなさい。」と勧告したのです。

弁護人が「M建設は再発防止策に十分取り組んでいます。」と主張し、検察側も「再発防止措置を講じた旨を認める。」と言及しているのです。それに対し、裁判官が「再発防止策を講じなさい。」ではあまりにも話が噛み合いません。

たとえば、2006年11月21日、宮崎県沖の日向灘で、海上自衛隊の練習潜水艦“あさしお” が、パナマ船籍のケミカルタンカー“スプリング・オースター号”と接触した事故がありました。

門司地方海難審判庁の裁決では、「(防衛省が事故後に、)潜水艦の浮上中にソナーで船を探知した際は浮上を中止するなどの訓練指導要領を制定し、すでに実施されている。」などとし、“勧告”しない旨の裁決を言い渡しました。

理事官(刑事裁判の検察に相当)は、理事官意見(刑事裁判の論告求刑に相当)の中で、“勧告”するよう求めていたにもかかわらず、防衛省の再発防止策を評価した裁決を言い渡したのでした。

今日の高等海難審判庁での裁決は、M建設による再発防止策に対し、どこまで評価するかが大きなポイントなのです。「再発防止策を講じなさい。」だけでは不十分なのです。

仮に現在のM建設による再発防止策に不足があるとすれば、それは何なのか、具体的に指摘してこそ、海難審判のあるべき姿なのです。


    事故現場を航行するクレーン台船

『★女武者の活躍とクレーン台船★』[2008年04月28日(月)]
昨日(4月27日)の日曜日、私たちが居住する東京・石神井公園で、毎年恒例の“照姫まつり”が開催されました。朝方、小雨もぱらついた空模様は、午後からは完全に持ち直し、汗ばむほどの良い陽気となりました。

石神井の町には、これ以上詰め込みようがないと思うほど、大勢の観光客が訪れ、荘厳な時代行列に酔いしれていました。公称10万人は、まんざら大袈裟ではないようです。

さて、照姫役には落選したものの、女武者の役で復活当選と相成った“上等兵(中2の上の娘)”も、無事、大役を勤め上ることができ、本人もさぞかし安心したことでしょう。

朝07時頃から“下士官(私の妻)”と、集合場所である地元小学校の体育館にでかけ最終稽古。次いで、10時頃には化粧を塗りたくり、羽織・袴を身に着け、具足をまとい、立派な女武者の完成です。

さらに、腰には大小二本差し、手には槍に類した小道具まで持たされる完全装備です。いくら、模造品とはいいながらも、鎧は結構な重さです。

その後、午前中は写真撮影などの内部セレモニーが続きます。午後からは、石神井公園の野外舞台を皮切りに、公式行事が続きます。時代行列はただ練り歩くだけではなく、要所では“舞い”のパフォーマンスをこなさなければなりません。延々、午後4時まで続きました。

慣れぬ“わらじ履き”、足の指にグイグイと食い込みます。また、羽織・袴のいでたちは、一度着飾ってしまうと、終業時までトイレに行くこともかないません。中学生の体力では、さぞかし辛かったことでしょう。さすがに、ぐったりしていました。

そういう私は、昨日の日曜日、彼女の行列を午後3時まで見届け、上野駅に向いました。本日朝からのアウトドアの調査活動に備え、前泊するためです。

アウトドアの調査活動とは、先月に引き続き、例の河川におけるクレーン台船廻航時の安全確認調査です。

本ブログの愛読者の皆さんはご承知のとおり、私は一昨年(2006年)8月14日に発生し、首都圏を大規模停電のパニックに陥れた、クレーン台船による送電線損傷事故の、再発防止対策のお手伝いをさせて頂いています。

事故を起こしたM建設は、私の知る限り、業界全体でもっとも厳しい再発防止策を打ち出し、今でもそれを確実に実行しています。しかも、クレーン台船の廻航にあたり、たびたび、私のような外部の専門家を立ち合わせ、安全性の評価を求めているのです。今日の調査活動とは、これだったのです。

昨日夕方には茨城県・水戸市内に到着、軽く飲んだ後に床に付き、今日の調査に備えました。本日(4月28日)は、朝7時前にホテルを出発、那珂湊漁港に向いました。

本日の調査は、那珂湊漁港内の係留地から、那珂川をさかのぼり、湊大橋までのクレーン台船の廻航作業に対して行われました。たった今、茨城県から事務所に戻ってきたところです。


『★クレーン船が原因の首都圏大停電、因縁の送電線下を通過!★』[2008年03月27日(木)]
今日は朝4時に起床、始発電車に揺られ、仕事に出かけました。アウトドアの調査活動に従事するためです。朝10時過ぎにすべての予定を終え、眠い目を擦りながら、先ほど、事務所に出て来たばかりです。

アウトドアの調査活動とは、河川におけるクレーン台船廻航時の安全確認調査です。皆さんは、一昨年(2006年)8月14日に発生し、首都圏を大規模停電のパニックに陥れた、M建設のクレーン台船による旧江戸川での送電線の損傷事故を覚えているでしょうか。あれから、1年7ヶ月が経過しました。

本事故の発生当初から、私は大変興味を抱き、本ブログでも集中的に取り上げてきました。記事記載回数は、実に20回以上にも及びました。

また、本事故の再発防止を目的に業界団体が設置した、「安全確保対策特別委員会」にも外部委員として招かれ、対策指針を策定するお手伝いをさせて頂きました。

さらに、本事件に関する海難審判では、私自身がクレーン船の運航会社であるM建設側の証人として出廷し、同社の再発防止策について、その有効性などを第三者の立場で検証した結果を証言しました。

本事故を教訓として、M建設は私の知る限り、業界全体でもっとも厳しい再発防止策を打ち出し、今でもそれを確実に実行しています。しかも、クレーン台船の廻航にあたり、たびたび、私のような外部の専門家を立ち合わせ、安全性の評価を求めているのです。今日のアウトドアの調査活動とは、これだったのです。

朝6時過ぎに東京・新木場に集合、ミーティングや安全確認作業、準備作業などを経て、7時半、50トン吊りのクレーンを搭載した台船は、曳航船に引かれて作業船の“船溜まり”を出港しました。今日の廻航作業は、江戸川上流において、鉄橋の耐震補強工事を行なうためのものでした。

実はこの廻航ルート、M建設が旧江戸川で送電線の損傷事故を起こした際の廻航ルートそのものなのです。無論、例の送電線の下も通過する、因縁の廻航ルートなのです。

詳細については、言及しませんが、M建設の安全対策は、進展することはあっても衰えることはなく、おおむね良好でした。

でも、例の送電線の下を通過する際には、緊張すると共にとても感慨深かったです。通過時の写真を添付しておきます。


『★潜水艦長はお咎め無し! クレーン船が原因の首都圏大停電★』[2007年08月27日(月)]
昨年11月21日、宮崎県沖の日向灘で、海上自衛隊の練習潜水艦“あさしお” が、パナマ船籍のケミカルタンカー“スプリング・オースター号”と接触した事故で、先週末(8月24日)門司地方海難審判で裁決が言い渡されました。

自衛艦の場合、操船にあたって通常の海技免状を必要としないことから、この海難審判では、受審人(通常の裁判の被告人に相当)は存在しませんでした。

すなわち、指定海難関係人(海難の原因に関係があり、かつ、これに対し勧告をする必要があると認めた者)として、“あさしお”のS元艦長(46)が指定されていました。

審判長は裁決の中でS元艦長に対し、「“あさしお”の“スプリング・オースター号”に対する動静監視が不十分であったことが事故原因だ。」と指摘し、S元艦長に責任があることを認定しました。

ところで、理事官(刑事裁判の検察に相当)は、理事官意見(刑事裁判の論告求刑に相当)の中で、S元艦長に対し“勧告”するよう求めていました。

しかしながら、審判長は、「(防衛省が事故後に、)潜水艦の浮上中にソナーで船を探知した際は浮上を中止するなどの訓練指導要領を制定し、すでに実施されている。」ことなどを理由に、S元艦長に対しては“勧告”しない旨の裁決を言い渡しました。

すなわち、S元艦長は責任があるとしながらも、防衛省の事故後にとった安全対策に鑑み、“お咎め”無しの処分となったわけです。

どうも腑に落ちません。昨年8月14日に発生し、首都圏を大規模停電のパニックに陥れた、クレーン船による旧江戸川における送電線との接触事故の海難審判とのギャップが大きすぎるのです。

本ブログの愛読者の皆さんはご承知のとおり、私はこの海難に関し、クレーン船業界団体の再発防止のための専門委員として、あるいは事故を起こしたクレーン船を運航するM建設側の証人として、海難審判に深く関わってきました。

この事故の後、当事者であるM建設は無論のこと、いわば被害者である電力会社、さらには、クレーン船業界全体にも波及し、いずれもこの事故を一大教訓として捉え、再発防止に向けた様々な対策に取り組むと言う、願っても叶わない、最良の状況を生みだしました。

そればかりか、監督官庁である国土交通省や経済産業省も、同種事故の再発防止に向け、河川の新たな交通ルールの策定など、フォローアップ対策を講じたのでした。

こうしたことから、理事官(刑事裁判の検察に相当)は、第一審の理事官意見(刑事裁判の論告求刑に相当)の中で、「(M建設が)再発防止措置を講じたことを認める。今後、継続的にこれが行なわれるよう、第三者による検証及び評価を受けることを、(M建設に対し)勧告すべきが妥当である。」を述べました。

しかし、第一審の裁決は予想外のものでした。理事官の意見すらどっかに吹っ飛んでしまいました。

M建設の再発防止対策は、業界全体が取るべき対策の模範となる、我が国でもっとも厳しいとも言える内容にもかかわらず、このあたりのことはまったく評価の対象とすることなく、関係機関が再発防止やフォローアップに取り組んだこともまったく評価の対象とすることなく、M建設に対し単に勧告の処分を下したのです。

一方、今回の潜水艦海難は、事故後の防衛省による再発防止対策を評価の対象として、S元艦長の処分を見送ったのです。この差は一体何なのでしょうか。

国土交通省は来年度、海難審判庁を航空・鉄道事故調査委員会の中に統合し、鉄道事故及び航空機事故の原因究明に加え、船舶海難の原因追求までを対象とした運輸安全委員会を新設するとのことです。

どうやら、一審制に改められるものの、海難審判制度は残るようです。しかし、私に言わせれば、鉄道事故や航空機事故と同様、科学的な観点から本当に海難の原因究明ができるのであれば、わざわざ海難審判制度を残す必要はないような気がするのですが。

なお、最近の海難審判では、原因究明という本来の目的があるにもかかわらず、審判の席上、「あなたは、今回の事故の責任をどう感じているのか?」など、責任追及のようなやりとりが飛び出したのを傍聴したことがあります。

私は以前より、海難審判はむしろ刑事裁判の一部門に組み入れた方が、良いような気がしています。海難審判制度と事故調査委員会とは、本質的に馴染まないような気がするのは私だけなのでしょうか。


『★落胆・・・、送電線事故再発!★』[2007年07月20日(金)]
本ブログでも繰り返しお伝えしてきたとおり、私は首都圏を大規模停電のパニックに陥れた、クレーン船による旧江戸川における送電線の損傷事故(昨年8月発生)に深く関わってきました。

すなわち、本事故を受けた、クレーン船業界団体による安全確保特別委員会に参画し、再発防止のための業界指針の策定に全力を注ぎました。

また、事故を起こしたM建設が事故後に行なった再発防止対策を第三者の立場で検証・評価し、業界指針が求める内容をさらに上回る、厳格な基準に改編するお手伝いをし、また、海難審判の場で証言も行ないました。

業界指針にせよ、M建設の再発防止対策にせよ、遵守さえすれば、今後、同じような事故は必ず防ぐことができます。あとは、いかにルールを周知・徹底すれば良いのかと思っていた矢先、またもや、同種事故が起きてしまいました。

すなわち、昨日(7月19日)午前8時50分ごろ、長崎県・平戸市の平戸瀬戸を航行していた砂利運搬船“栄丸(692トン、Y船長ら5人乗り組み)が、同瀬戸を横断する平戸大橋に衝突する海難が発生しました。

平戸大橋は九州本土側と平戸島とを結ぶ、長さ約710メートル、海面上から橋桁までの高さは約30メートルです。

通常ならば、栄丸クラスの船であれば、楽々通過できるクリアランスです。しかし、あろうことか、栄丸は船体に装備された起重機のブームを、上げたまま航行していたのです。

旧江戸川でのM建設のクレーン台船が起こした事故とまったく同じ原因です。ブームさえ上げなければ、何のことはなかったのです。

衝突により、平戸大橋を約4メートルにわたって損傷され、また、同橋に平行して設置されていた架空送電線が切断されました。

結果、平戸市など周辺の3市1町の計約3万世帯が停電し、平戸大橋も一時全面通行止めになるなど、混乱は拡大しました。Y船長は調べに対し、「クレーンを格納するのを忘れてしまった。」と話しているそうです。

当時、平戸大橋を通行していた車両はあったのか、また、本事故に伴い交通事故等の二次災害は発生したのかなどは不明です。おそらく、発生しなかったのでしょう。

しかしながら、あえて言うまでも無く、一歩間違えれば停電どころではない、大災害に発展するおそれがありました。

さすが、昨日はこのニュースを聞き、私自身も相当に落ち込みました。今日は気を取り直し、関係者とも相談し、今後の話を協議したいと思います。


『★今から出廷します! クレーン船が原因の首都圏大停電(続報)★』[2007年07月13日(金)]
昨日は珍しく、平日でありながら、ブログ更新はできませんでした。あまりにもスケジュールがタイトだったためです。

昨日はいつもどおり、午前7時過ぎには会社に到着、就業前、溜まっていたメールの返事を書き上げ、さらにレポートを一つ完成させました。

その後、午前中は外部での委員会に、海事法規の専門家の立場で参加しました。テーマは「洋上OO船構想」、OOについては今のところ明かせませんが、誰が考え出したのか、今までに無いとてもユニークな発想で感心しています。8月半ばには秘密を明かすことができるかと思います。

午後一番に打ち合わせが一つ。その後、石油業界の皆様を対象に、海上におけるケミカル流出災害をテーマに講演をいたしました。

その後、石油業界の皆様との意見交換のための懇親会に参加。引き続きIT業界の方との意見交換会に参加。帰宅途上で馴染みの居酒屋で一杯。帰宅後、気が付くと愛犬を抱いたまま、居間に転がっていました。と言うことなのです。

本日は、いつもよりさらに早朝から会社に出て、本日の海難審判の準備に勤しんでいました。特に海難審判に関しては、以前の私の証言内容を、しっかりと”おさらい”しておかなければならないので、神経を使います。

そうです。首都圏を大規模停電のパニックに陥れた、クレーン船による旧江戸川における送電線の損傷事故から、来月(8月14日)で発生から丸一年を迎える中、本日(7月13日)、本事件の高等海難審判が、本日朝から開廷されるのです。

本ブログの愛読者の皆さんはご存知のとおり、本事件に関し私は、本年1月に開廷された横浜地方海難審判庁での第二回目の海難審判において、証人として出廷しました。

本事故を起こしたM建設(茨城県神栖市)による、その後の再発防止のための取り組みの妥当性などについて、第三者の目で正当に評価した私の報告書について証言したのでした。

本日はいよいよ高等海難審判庁での証言となったわけです。以前もお話しましたが、いつも慣れ親しんでいる講演会などでの自分流のスピーチとは違い、問われたことに対し的確に、かつ、手短に回答するのが基本とわかっていても、実際となると、なかなかこれが難しいものです。

全力を尽くし、しっかりと任務を果たすつもりです。結果については、本ブログで報告するつもりです。



『★第二審開廷! クレーン船が原因の首都圏大停電(続報)★』[2007年07月11日(水)]

首都圏を大規模停電のパニックに陥れた、クレーン船による旧江戸川における送電線の損傷事故は、来月(8月14日)、発生から丸一年を迎えます。

本事故の発生当初から、私は大変興味を抱き、本ブログでも集中的に取り上げてきました。記事記載回数は、実に20回以上にも及びました。

また、本事故の再発防止を目的に業界団体が設置した、「安全確保対策特別委員会」にも外部委員として招かれ、対策指針を策定するお手伝いをさせて頂きました。

さらに、本事件に関する海難審判では、私自身がクレーン船の運航会社であるM建設側の証人として出廷し、同社の再発防止策について、その有効性などを第三者の立場で検証した結果を証言しました。

こうしたことから、本事故は私にとって決して一生忘れることのできない、思い出深い事故なのです。

本事故を教訓として、M建設は私の知る限り、業界全体でもっとも厳しい再発防止策を打ち出し、今でもそれを確実に実行しています。

また、本事件の教訓は、事故を起こしたM建設は無論のこと、関係行政機関やいわば被害者である電力会社、さらには、M建設以外の他のクレーン船運航会社などにも波及し、ともに再発防止に向けた対策に取り組むと言う、かつての海難事例では見られない素晴らしい状況を生んでいます。

一審の海難審判で理事官(刑事裁判の検察側に相当)は、“理事官意見(刑事裁判の論告求刑に相当)”の中で、「(M建設は)同種事故の再発防止措置を講じた旨を認める。今後、継続的にこれが行なわれるよう、第三者による検証及び評価を受けることをM社に勧告すべきだ。」と言及しました。

しかし、一審の裁決(3月1日)はまったく予想外のものとなりました。特に驚いた点は、理事官・補佐人(刑事裁判の弁護側に相当)がともに、「(M建設は)同種事故の再発防止措置を講じた旨を認める。」と言及・主張しているにもかかわらず、肝心の審判官(刑事裁判の裁判官に相当)が裁決の中でそれを一言も触れなかったのです。


すなわち、裁決は一言で言えば、M建設に対しては「再発防止策を講じなさい。」と勧告したに過ぎないのです。

弁護側は「M建設は再発防止策に十分取り組んでいます。」と主張し、検察側も「再発防止措置を講じた旨を認める。」と言及しているのです。それに対し、裁判官が「再発防止策を講じなさい。」ではあまりにも話が噛み合いません。

M建設の現状の再発防止への取り組みについて評価した上で、「今後、再発防止に向け、さらにこうした取り組みを行ないなさい。」と勧告するならばば理解できます。しかし、そのような内容は述べられませんでした。

こうしたこともあって、この事件の海難審判は第二審、すなわち、東京・霞ヶ関の高等海難審判庁に審判の舞台を移しました。明後日(7月13日)、いよいよ注目の審判が開始されます。

私ももちろん参加します。傍聴席なのか証人席なのかは、後日お伝えすることといたします。


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