『★第58寿和丸転覆海難、可能性を整理する!(その4)★』[2008年12月30日(火)]
本年6月23日午後1時半頃、千葉県・犬吠崎の沖合の太平洋上で、福島県・いわき市の巻き網網漁船“第58寿和丸”が転覆し後に沈没、死者4人、行方不明者13人(後に死亡認定)が出た海難の続報です。
年末の私のブログは “第58寿和丸”の事故原因について、「直接の原因は波の衝撃に伴う船体損傷による浸水である。しかし、当該損傷を受けた理由は、パラシュートアンカー(パラシュート状の抵抗体使用したシーアンカー)に伴う船首部運動の阻害である。」と述べた上で、そのように考えるに至った判断材料を取り上げてきました。
今まで述べてきた項目を列挙すると、以下のとおりです。
1.“三角波”や“フリーク波”ではない
2.右舷船首寄りに衝撃を受け損傷した
3.潜水艦等の衝突ではない
4.急激な浸水が船首で発生した
今日は若干の補足をしておきましょう。さて、12月26日のブログでは、事故の経過を時系列にまとめてみました。
その中で私は、「(衝撃発生から約10秒後、)生存者は不安を感じ、船尾居住区(後部甲板の一段下)からの避難を開始した。“第58寿和丸”は右舷側に傾斜した。ただし、その傾斜は緩やかなもので、手すりにつかまり体を支えながら通路を通過するほどではなかったという。しかし、同時に船体全体が沈下し始めた。」と述べました。
重要なのは、衝撃発生から10秒ほどで、右舷傾斜が緩やかであるにもかかわらず、“船体全体が沈下し始めた”という事実です。
また、「(衝撃発生から約40秒後、)生存者が後部甲板(網置き場)に出た際には、“第58寿和丸”の船体沈下はさらに進み、右舷側のサイドローラー(上甲板と舷側の角の部分に設置された操業設備)が、海面に浸る状況にまで達していた。」と述べました。
右舷サイドローラーは、“第58寿和丸”の姿勢が正常であるならば、海面から1.5メートル以上の場所に位置するはずです。それが、“海面に浸る状況にまで達していた”ということは、すでにある程度の右舷傾斜があったことを加味しても、船体全体が50〜80センチは沈下していた事実を物語っていると思われます。
“第58寿和丸”の船体をそれだけ沈下させるためには、おおよそ100トン以上の“重量物”が船上に乗っかり、又は船内に侵入しなければなりません。
船の甲板上に海水が大量に押し寄せ滞留、その後、開口部から船内に侵入したという推測もあるでしょう。しかし、私はそうではないと思っています。
まず、後部甲板への海水の来襲ですが、生存者はいずれも後部甲板下の居住区から脱出、該当する事象を目撃していません。したがって、その可能性はありません。あとは、前部甲板です。
私は以前のブログで、「生存者は操舵室から降りてきた甲板長(死亡)に遭遇した。彼は生存者に対し“エンジンをかけろ!”とだけ伝え、何かの作業に出向いた。」と述べました。
また、「甲板長が衝撃発生前に自室を抜け出していた可能性もある。しかし、少なくとも、海水が流れ込む中、一人だけ船首居住区内から抜け出してきたとは考えにくい。」と述べました。
さて、甲板長はその時、操舵室から降りてきたようです。操舵室は前部甲板を眼下に見下ろす場所に位置します。大量の海水が前部甲板に滞留し、船体が一気に沈下する状況であるならば、甲板長はそのことについて、何か一言でも触れるはずです。
衝撃を感じ、幹部船員は操舵室に即座に集まりました。おかしいとは思いつつ、まさか転覆の危機が間近に迫っているとは、誰もが考えていなかったものと察します。とりあえず、エンジンをかけることで考えが一致したものと思われます。
すなわち、緩やかな傾きを感じつつも、操舵室から見渡す限り、その正体が何であるかを把握していなかった可能性が高いと思われます。“第58寿和丸”を襲った何かは、操舵室からの視角の外で起こっていたとみるべきです。
ところで、“第58寿和丸”の船首右舷寄りで発生した“衝撃音”について、三人の生存者のうち二人は、10秒ほどの間隔で2回聞いたと証言しています。
残りの一人は「1回か2回かはわからない。」と述べているようですが、少なくとも「2回ではなかった。」とは言っていません。おそらく2回だったのでしょう。
また二人は、「(衝撃音は、)2回目の方が衝撃・音ともに、1回目より大きかった。」と述べているようです。
さらに、生存者の一人は2回目の音について、「“ドン”に引き続き“バキッ”という音」と表現していると伺いました。
“ドン”という音は、荒天下のパンチングなどの現象に伴い、私自身も何度も耳にしたことがあります。決して気持ちのいい音ではありませんが、この音の発生イコール海難ということにはつながりません。
しかし、“バキッ”は違います。船乗りが絶対に聞きたくない音なのです。言い換えれば、船体に何らかの損傷が起きた際の“金属音”です。
過去の船体損傷海難の際、当事者の言葉として必ず登場し、“バキッ”、“バキッバキッ”、“バリバリ”などと表現される金属音です。
こうしたことも、“第58寿和丸”が損傷・浸水したという判断材料の一つだと考えています。

年末の私のブログは “第58寿和丸”の事故原因について、「直接の原因は波の衝撃に伴う船体損傷による浸水である。しかし、当該損傷を受けた理由は、パラシュートアンカー(パラシュート状の抵抗体使用したシーアンカー)に伴う船首部運動の阻害である。」と述べた上で、そのように考えるに至った判断材料を取り上げてきました。
今まで述べてきた項目を列挙すると、以下のとおりです。
1.“三角波”や“フリーク波”ではない
2.右舷船首寄りに衝撃を受け損傷した
3.潜水艦等の衝突ではない
4.急激な浸水が船首で発生した
今日は若干の補足をしておきましょう。さて、12月26日のブログでは、事故の経過を時系列にまとめてみました。
その中で私は、「(衝撃発生から約10秒後、)生存者は不安を感じ、船尾居住区(後部甲板の一段下)からの避難を開始した。“第58寿和丸”は右舷側に傾斜した。ただし、その傾斜は緩やかなもので、手すりにつかまり体を支えながら通路を通過するほどではなかったという。しかし、同時に船体全体が沈下し始めた。」と述べました。
重要なのは、衝撃発生から10秒ほどで、右舷傾斜が緩やかであるにもかかわらず、“船体全体が沈下し始めた”という事実です。
また、「(衝撃発生から約40秒後、)生存者が後部甲板(網置き場)に出た際には、“第58寿和丸”の船体沈下はさらに進み、右舷側のサイドローラー(上甲板と舷側の角の部分に設置された操業設備)が、海面に浸る状況にまで達していた。」と述べました。
右舷サイドローラーは、“第58寿和丸”の姿勢が正常であるならば、海面から1.5メートル以上の場所に位置するはずです。それが、“海面に浸る状況にまで達していた”ということは、すでにある程度の右舷傾斜があったことを加味しても、船体全体が50〜80センチは沈下していた事実を物語っていると思われます。
“第58寿和丸”の船体をそれだけ沈下させるためには、おおよそ100トン以上の“重量物”が船上に乗っかり、又は船内に侵入しなければなりません。
船の甲板上に海水が大量に押し寄せ滞留、その後、開口部から船内に侵入したという推測もあるでしょう。しかし、私はそうではないと思っています。
まず、後部甲板への海水の来襲ですが、生存者はいずれも後部甲板下の居住区から脱出、該当する事象を目撃していません。したがって、その可能性はありません。あとは、前部甲板です。
私は以前のブログで、「生存者は操舵室から降りてきた甲板長(死亡)に遭遇した。彼は生存者に対し“エンジンをかけろ!”とだけ伝え、何かの作業に出向いた。」と述べました。
また、「甲板長が衝撃発生前に自室を抜け出していた可能性もある。しかし、少なくとも、海水が流れ込む中、一人だけ船首居住区内から抜け出してきたとは考えにくい。」と述べました。
さて、甲板長はその時、操舵室から降りてきたようです。操舵室は前部甲板を眼下に見下ろす場所に位置します。大量の海水が前部甲板に滞留し、船体が一気に沈下する状況であるならば、甲板長はそのことについて、何か一言でも触れるはずです。
衝撃を感じ、幹部船員は操舵室に即座に集まりました。おかしいとは思いつつ、まさか転覆の危機が間近に迫っているとは、誰もが考えていなかったものと察します。とりあえず、エンジンをかけることで考えが一致したものと思われます。
すなわち、緩やかな傾きを感じつつも、操舵室から見渡す限り、その正体が何であるかを把握していなかった可能性が高いと思われます。“第58寿和丸”を襲った何かは、操舵室からの視角の外で起こっていたとみるべきです。
ところで、“第58寿和丸”の船首右舷寄りで発生した“衝撃音”について、三人の生存者のうち二人は、10秒ほどの間隔で2回聞いたと証言しています。
残りの一人は「1回か2回かはわからない。」と述べているようですが、少なくとも「2回ではなかった。」とは言っていません。おそらく2回だったのでしょう。
また二人は、「(衝撃音は、)2回目の方が衝撃・音ともに、1回目より大きかった。」と述べているようです。
さらに、生存者の一人は2回目の音について、「“ドン”に引き続き“バキッ”という音」と表現していると伺いました。
“ドン”という音は、荒天下のパンチングなどの現象に伴い、私自身も何度も耳にしたことがあります。決して気持ちのいい音ではありませんが、この音の発生イコール海難ということにはつながりません。
しかし、“バキッ”は違います。船乗りが絶対に聞きたくない音なのです。言い換えれば、船体に何らかの損傷が起きた際の“金属音”です。
過去の船体損傷海難の際、当事者の言葉として必ず登場し、“バキッ”、“バキッバキッ”、“バリバリ”などと表現される金属音です。
こうしたことも、“第58寿和丸”が損傷・浸水したという判断材料の一つだと考えています。




