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海洋汚染情報 −海の事件簿−
海上で起きた重大な汚染事件・事故について、独自の視点から鋭くメスを入れ、分析・解説する”海の社会部デスク”、その名も”元海の男”、職業”(さすらい派)研究員”による海の事件簿。
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『★高度成長の代償、川崎で発生した大火災海難!★』[2008年11月17日(月)]
1964年(昭和39年)に開催された東京オリンピックは、日本が戦後の荒廃から見事に立ち上がり、先進国として生まれ変り、国際社会の桧舞台に復帰したことを世界に誇示する絶好の機会でした。

オリンピックを二年後に控えた1962年(昭和37年)当時は、新幹線や高速道路の建設など、オリンピックに備え、先進国としてふさわしい社会基盤の整備に全力を注がれていた時期でした。

日本中、至るところで何らかの工事が、毎日、朝から晩まで忙しく行なわれていたのを、当時、幼稚園児だった私も、おぼろげながら記憶しています。

戦後、日本における急速な経済成長は、世界的にも極めて稀な出来事であり、「東洋の奇跡」と称されていたのです。

一方 、日本は高度経済成長と引き換えに、豊かな自然や環境を犠牲にしました。公害です。「水俣病」、「イタイイタイ病」、「四日市ぜんそく」といった公害病にも発展しました。

京浜、阪神、北九州など、工業地帯における深刻な大気汚染問題が、公害の一つとして意識されはじめたのもこの時期です。

東京周辺では、特に川崎臨海部の大気汚染は最悪でした。その頃、日曜日に同じ園児の家族の車に便乗させてもらい、川崎からフェリーに乗り、千葉の牧場に日帰りドライブに出掛けたことがありました。

家を出発する際には晴天であったにもかかわらず、車中で一寝入りし、フェリー乗り場に着いたからと起こされると、空はどんよりとした“鉛色”、今にも雨が降り出しそうな光景に唖然としたことを、今でもはっきりと覚えています。

川崎臨海部では、周辺の工場の煙突が排出する煤煙が空を覆い、本当の空を見ることはできなかったのです。煤煙は時に運河や海の視界もせばめ、しばしば、船舶航行のさまたげともなっていました。

今から46年前の今日、突然、川崎工業地帯の前面海域、京浜運河が炎に包まれたのでした。 1962年(昭和37年)11月18日午前8時14分ごろ、神奈川県・川崎市の京浜運河内で、ガソリンタンカー“第一宗像丸(1,972総トン) ”が、油タンカー“タラルド・ブロビーグ(21,634総トン) ”と衝突しました。

第一宗像丸には大量のガソリン(3,642キロリットル)が積載されていたのです。タラルド・ブロビーグの船首部は、第一宗像丸の左舷中央部に大きく食い込みました。

第一宗像丸の損傷部から積荷のガソリンが海上に流出しました。現場海域には引火性のガスが充満し、あたかも季節外れの“陽炎(かげろう)”のような光景であったといいます。

不幸なことに、付近を航行していた“太平丸(89総トン)”が、吸い込まれるように陽炎(かげろう)の中に進入したのでした。あっという間に引火・爆発が起きました。

続いて第一宗像丸やタラルド・ブロビーグ、さらには、付近を航行していた“宝栄丸(62総トン)”にも瞬く間に火は燃え移り、4隻が同時に炎に包まれたのでした。

多数の消防艇、消防車などが消火活動にあたり、翌日、鎮火に成功しました。しかし、 第一宗像丸の36名、タラルド・ブロビーグの1名、太平丸の2名及び宝栄丸の2名、計41名の乗組員が死亡、太平丸の乗組員1名が火傷を負うという大惨事となりました。

京浜運河の両岸には、今も製油所、発電所、製鉄所、造船所など多数の工場や施設が立ち並んでいます。今この瞬間にも、大小多数のタンカーや危険物積載船などが通航し、交通輻輳海域となっています。

あれから約半世紀、川崎臨海部の慢性的な鉛色の空や、この海難のことを知る方も次第に少なくなってきています。



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