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海洋汚染情報 −海の事件簿−
海上で起きた重大な汚染事件・事故について、独自の視点から鋭くメスを入れ、分析・解説する”海の社会部デスク”、その名も”元海の男”、職業”(さすらい派)研究員”による海の事件簿。
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『★野生動物の油汚染被害、実態把握の難しさ!★』[2008年10月20日(月)]
眼下に関東平野を望む多摩丘陵の頂(いただき)に、流出油事故関連の専用施設があることを、多くの人々はご存じないはずです。2000年、環境省が東京都・日野市の協力を得て建設した“水鳥救護センター”です。

今から約12年前の1997年1月2日の未明、悪天候の日本海を航行中のロシア船籍のタンカー“ナホトカ号”が折損、船尾部はその場で沈没、船首部は半没状態で漂流を始めました。

船首部は積荷の重油を撒き散らしながら、5日後に福井県三国町の海岸に漂着しました。その結果、約6千キロリッターのC重油が海上に流出、島根県から秋田県に及ぶ日本海沿岸の1府8県の海岸が激しく汚染されました。また、1,300羽にのぼる多くの海鳥も汚染被害を蒙りました。

油に汚染された野生動物の救護に関し、当時、日本の対応体制や知見・技能は十分ではありませんでした。“急ごしらえ”の体制が整えられ、米国から招聘された専門家のアドバイスを参考とし、“にわか仕込み”の救護作業が行われたのでした。

油などに汚染された野生動物の救護には、さまざまな経験によって培われた特別な知見や技能を必要とします。たとえ、獣医師の資格を持っている人間でも、こうした知見や技能無くしては、迅速かつ的確な対応をとることは不可能なのです。

環境省はナホトカ号事故を教訓として、平素からこうした知見や技能を養うための研修施設を設置したのです。

この施設では、地方公共団体の野生動物保護を担当する職員や獣医師などを対象に、流出油事故などの環境災害によって汚染された、または負傷した野生動物、特に水鳥の救護方法などについて研修が行なわれます。そのための様々な特別な設備が設置されています。

毎年恒例ではありますが、本日午後、私は同研修センターにでかけてきます。野生動物保護を担当する地方公共団体職員の皆さんを対象に、講義を行なうためです。

私は流出油事故時の野生動物の救護に関し、地元NGOと地方自治体との平素からの連携体制の構築の必要性について講義を行なうこととなっています。

さて、日本では過去に1,000羽以上の被害を伴う海鳥の汚染事例は、私の知る限り4例ありました。

1.知床事件(2006年発生、ウミスズメ・ウミガラス/5,600〜8,000羽死亡)・・・原因は不明

2.島根事件(1986年発生、ウトウ他/1,800羽死亡)・・・廃油不法投棄とされるも詳細不明

3.稚内事件(1961年発生、ウミガラス/1,400羽死亡)・・・原因不明

4.ナホトカ号重油流出事故(1997年発生、ウミスズメ他/1,300羽)・・・タンカー海難に伴う重油の海上流出

おわかりのとおり、4番目のナホトカ号重油流出災害を除き、ほかの三例とも原因不明又は原因がはっきりしていないのです。

しかも、海鳥の被害のみに限定され、油の沿岸域への漂着はありませんでした。すなわち、防除活動は行われていないどころか、油流出事故や事件として、公式な記録すら残っていないはずです。

こうしたことから、防除活動が行われている事故・事件のみに着目しては、海鳥等の汚染被害があるのかないのか、実態の把握すらできないことを意味しています。

野生動物の油汚染というテーマ、意外と奥が深いのです。


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