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海洋汚染情報 −海の事件簿−
海上で起きた重大な汚染事件・事故について、独自の視点から鋭くメスを入れ、分析・解説する”海の社会部デスク”、その名も”元海の男”、職業”(さすらい派)研究員”による海の事件簿。
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『★明石海峡衝突海難、勧告見送りの意見!★』[2008年09月22日(月)]
本年3月5日、神戸市・垂水区沖の明石海峡で3隻が関係する衝突海難が発生、ベリーズ船籍の貨物船“ゴールドリーダー(1,466総トン)”が沈没、外国人船員三人が死亡、一人が行方不明となった事故の続報です。

先週末(9月18日)、この海難の第二回目の海難審判が、神戸地方海難審判庁で開かれました。この海難審判はこれで結審となり、早ければ年内にも裁決(刑事裁判の判決)が言い渡される見通しです。

結審にあたり、理事官(刑事裁判の検察に相当)は、刑事裁判の論告求刑にあたる“理事官意見”を述べました。

理事官は、受審人(刑事裁判の被告に相当)である砂利運搬船“第5栄政丸(496総トン)”の船長に対し業務停止2カ月を、また、同じくケミカルタンカー“オーシャンフェニックス(2,948総トン)”の船長及び二等航海士に対し業務停止1カ月及び1カ月15日を求めました。

なお、理事官は指定海難関係人(同じく、刑事裁判の被告に相当)の“栄政丸”の所有会社“E海運(姫路市)”と、“オーシャンフェニックス”の所有会社“D社(東京都)”について、「速やかな(再発防止)対策を講じている。」として、“勧告”の必要がなくなった述べました。

たびたび申し上げたとおり、私は今回の海難審判における指定海難関係人、“オーシャンフェニックス”を運航するD社に請われ、同社が立ち上げた事故調査委員会に外部専門家として参加、事故原因の究明及び再発防止対策について指導・助言を行なってきました。

今回の海難審判の結審に際し、理事官から、「速やかな(再発防止)対策を講じている。」と評価され、“勧告”の対象外とする旨の意見を受けたことに対し、当事者として心から感謝しています。

しかし、安心はしていません。過去にも理事官が「再発防止対策を講じている。」と評価し、“勧告”の対象外とする旨の意見を述べたにもかかわらず、裁決でひっくり返された、苦い経験があるからです。

本ブログの愛読者の方はご存知のとおり、私は首都圏を大規模停電のパニックに陥れた、クレーン船による旧江戸川での送電線損傷事故(一昨年8月発生)に深く関わってきました。

すなわち、本事故を受けた、クレーン船業界団体による安全確保特別委員会に参画し、再発防止のための業界指針の策定に全力を注ぎました。

また、事故を起こしたM建設が事故後に行なった再発防止対策を第三者の立場で検証・評価し、業界指針が求める内容をさらに上回る、厳格な基準に改編するお手伝いをしました。こうした一連の状況を海難審判の場で証言しました。

結審にあたり、理事官からは「再発防止対策を講じている。」と評価され、“勧告”の対象外とする旨の意見を頂いたのでした。

いわば、刑事裁判で検察が裁判官に対し、「その後、この会社はよくやったので、会社としての責任は免除してやってください。」と述べたに等しいのです。画期的なことです。にもかかわらず、裁決ではひっくり返され、M建設は勧告処分を受けました。したがって、裁決まで安心はできません。

なお、今回の明石海峡の衝突事での海難により、油を船内に残したまま沈没した“ゴールドリーダー”に関し、一昨日(9月19日)、井戸兵庫県知事は、年内に予定していた油の抜き取り作業を来年に延期する旨を発表したそうです。

兵庫県は、“ゴールドリーダー”からの油抜き取りの事前調査をすでに終え、10月以降、作業に着手する予定でした。沈没現場は水深が深く、潮流が早いため、有人潜水作業は無理です。唯一、海上からの遠隔操作で船体に穴を開け、抜き取りを行う特殊なロボット(ROLS/フラモ社)による作業が選択肢となります。

しかし、実動可能なROLSは世界に1台しかありません。現在、台湾での作業に使用されているため、年内の抜き取りを断念したと伝えられています。

ありゃありゃ、思い出しました。台湾でのケミカルタンカーからのベンゼン抜き取り作業に関し、かなり前ですが、行政院からの助言要請を受け、ROLSを利用した抜き取りを、選択肢の一つとして提案したのは、何を隠そう私でした。

とっくに終わったと思っていたのに、意外と台湾での作業が長引いたのですね。



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