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海洋汚染情報 −海の事件簿−
海上で起きた重大な汚染事件・事故について、独自の視点から鋭くメスを入れ、分析・解説する”海の社会部デスク”、その名も”元海の男”、職業”(さすらい派)研究員”による海の事件簿。
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『★第58寿和丸転覆海難、海難原因を大胆推測(その13)!★』[2008年08月07日(木)]
6月23日午後、千葉県・犬吠崎の沖合の太平洋上で、福島県・いわき市の巻き網網漁船“第58寿和(すわ)丸(135トン)”が転覆し後に沈没、死者・行方不明者が出た海難の続報です。

本ブログでは連続して、“第58寿和丸”の海難原因についての考察を進めています。

事故発生時、“第58寿和丸”のパラシュートアンカーは正常に機能、波風に対しほぼ正面を向けた姿勢下にあり、横波を不用意に受けるような状況下ではありませんでした。

“第58寿和丸”は、船首右舷寄りの部分に、二度にわたって何らかの衝撃を受け、船内に“浸水”、わずか1〜2分の間に急激な右舷傾斜が起こり、ついには復元力を失い、転覆・沈没に至った可能性が高いこともわかってきました。

一部のマスコミは、機関室直下の二重底燃料タンクを潜水艦の衝突によって破壊され、転覆・沈没したのではないかと伝えました。

しかし、衝撃の発生場所は機関室ではなく船首右舷寄りです。また、仮に機関室直下の二重底タンクが打ち破られたとしても、わずか1〜2分間で転覆・沈没するほどの事態には至らないはずです。
 
無論、衝撃が凄まじく、二重底にとどまらず、機関室の床を打ち破ったとしましょう。浸水は機関室全域に行きわたり、ひょっとすると沈没するかもしれません。

しかし、その場合、“第58寿和丸”は、浸水した機関室を下にして沈むはずです。すなわち、船尾方向に向って沈没してゆくはずです。右舷側に転覆したとする生存者の証言と噛み合いません。

また、生存者は脱出時、居住区の通路で機関室の最高責任者である機関長に出くわしています。機関長はその後、機関室に降りて行ったそうです。機関室が急激に水没する状況下、機関長がその内部に降りて行くとは、極めて考えにくいことです。

したがって、浮上してきた潜水艦との衝突云々はさておき、少なくとも、機関室船底部の破損説は、かなり苦しい状況となってきたのではないでしょうか。

こうした中、“第58寿和丸”が所属する漁業組合の組合長さんから、再度、重要な情報が寄せられてきました。主な内容は以下のとおりです。

曰く、「(生存者が)レッコボートに乗り移った後、“第58寿和丸”は船尾部分を海面上に出して、船首から沈んでいった。」

生存者は、“第58寿和丸”がスクリュープロペラを露出させながら沈没してゆく状況を、レッコボートから目撃していたそうです。

やはり、 “第58寿和丸”は船首右舷寄りに発生した何らかの衝撃に伴い一気に“浸水”、わずか1〜2分の間の急激な右舷傾斜によりそのまま転覆、直後、浸水した船首部分を下にして沈没していったことで間違いないのではないでしょうか。

さて、“第58寿和丸”を“浸水”に至らしめた衝撃の原因は何でしょうか。言うまでもなく、船体内部からの衝撃と、船体外部からの衝撃の二つに分けられます。まず、右舷船首部分の船体内部からの衝撃の可能性について考えてみたいと思います。

船首部分に所在するのは、水密区画である空間スペースをそのまま有効活用した、ストア(倉庫)や魚倉、タンクなどのはずです。

機器類が設置されているとしても、漁労機器や係船装置などを駆動するための油圧ユニット、バウスラスター(船体を左右に移動させるための装置)、せいぜい冷凍機などでしょうか。

わずか1〜2分の間に“第58寿和丸”を大傾斜させ、転覆・沈没せしめるためには、外板に生じた数センチ程度の破口による浸水では小さすぎます。

おそらく、数十センチ以上、場合によってはメートルに達する大破口又は大損傷が生じ、二区画以上の水密区画を同時に、一気に浸水せしめた状況が予想されます。

“第58寿和丸”は漁船です。したがって、軍艦のように、ストア内などに強力な爆発物を保管しているとは思えません。また、設置された機器類による不測の事態によって、船体内部からこれだけのダメージを生じさせることは、不可能に近いと思われます。

したがって、船体内部からの衝撃については、可能性は低いように思います。やはり、船首右舷寄り部分に対し、船体外部から加わった衝撃に伴う破壊・浸水、または、その付近にある開口部等の破損に伴う浸水を疑うべきではないでしょうか。

興味ある情報が、やはり組合長さんから寄せられています。通路で避難中の生存者と遭遇した機関長は、「油圧を作動させろ!」の声を聞いて、機関室へ降りて行ったそうです。「油圧を作動させろ!」は、一体何を意味するのでしょうか。
(つづく)



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