『★第58寿和丸転覆海難、海難原因を大胆推測(その10)!★』[2008年07月31日(木)]
6月23日午後、千葉県・犬吠崎の沖合の太平洋上で、福島県・いわき市の巻き網網漁船“第58寿和(すわ)丸(135トン)”が転覆し後に沈没、死者・行方不明者が出た海難の続報です。
事故原因に関しては、当初、3人の生存者が、「連続して二回、波の来襲を受けて右舷側に転覆し沈没した。」と証言したと報じられ、“三角波(複数の異なる方向からの波どうしがぶつかり、鋸の歯のような形状の、垂直方向に破壊力の大きな波ができる現象)”説や“フリーク波(外洋で突発的に現われる巨大波浪現象)”説が取り上げられました。
その後、M新聞などが報じた、横浜地方海難審判理事所(刑事裁判の検察に相当)が生存者から聞いたとする証言は、「体験したことのない衝撃を機関室の右舷(左舷と報じているメディアもある。)船底部から受け、急激に右舷側に傾き沈んだ。」に転換しています。
真偽の程はとこかく、“波”という言葉は一切登場しません。当初からこの証言が先行していたとしたら、原因究明に関しては、“波”とする説よりもむしろ、何らかの物体との衝突説が主流となっていたに違いありません。
私は、パラアンカーが正常に機能していたのか否かが、私は本海難の原因究明の最大のポイントだと思い、事故当初から指摘してきました。
しかし、パラアンカー原因説も、撤回せざるを得ない状況に追い込まれました。“第58寿和丸”が所属する漁業組合の組合長さん曰く、
「パラアンカー本体は今年3月、メーカーによる点検が行われたばかりである。また、アンカーロープ(55ミリ径×300メートル)は、近年(平成18年4月)購入したばかりである。」
「(海上に投げ出された生存者は、)“第58寿和丸”の船尾から伸ばされたロープにつながれていたレッコボート(作業船)に乗り移った。その際、レッコボートと係留ロープ、第58寿和丸”は一直線上にあった。」とのことでした。
転覆時、“第58寿和丸”の船体と、その船尾方向に伸ばされた係留ロープ、そして、レッコボートが一直線上にあったということは、船首から前方に伸ばされたパラシュートアンカーも、これらと同様、一直線上にあったことを意味します。
すなわち、パラシュートアンカーは正常に機能していたのです。パラシュートアンカーを先頭に、同アンカーロープ、“第58寿和丸”の船体、船尾係留ロープ、レッコボートの順番にずらりと一直線上に並び、それぞれが船首方向からの波風に正面を向け、立っていた状態を意味するのです。
“第58寿和丸”は少なくとも転覆する瞬間まで、船首を波風に立てた状態にあり、自然に対し、教科書通りの安定した姿勢を保ち続けていたのです。横波を船の側面から不用意に受けるような状況下ではなかったのです。
したがって、横波が原因とする説とパラアンカーの不具合が原因とする説は、同時に消えてしまう可能性が高いのです。
前回のブログでお伝えしたとおり、M新聞などが伝えた生存者の証言、すなわち「、体験したことのない、機関室船底部を突き上げるような衝撃があった。」は果たして真実なのか、見極める必要があります
さて、今日は横波原因説とパラアンカー不具合説を否定した上で、“機関室船底部を突き上げるような(波以外の)衝撃”の正体について考察を進めたいと思います。
まずは、漂流物との衝突の可能性についてです。私も現役時代、様々な漂流物を目撃してきました。
材木やコンテナなどの漂流物は珍しいことではありません。得体の知れない人口構造物の漂流も何度か経験があります。
中には、何かのプラントの一部と思しき、長径20メートルにも及ぶ人口構造物の漂流を目撃したこともあります。
“第58寿和丸”は漁船といえども、135総トンの鋼船です。外板の鉄板の厚みは、1センチはあるのではないでしょうか。
したがって、航走中ならまだしも、パラアンカーに身をゆだね、漂泊している状況下で、波風に漂う程度のスピードの木材やアルミ製のコンテナなどが接触した程度で、転覆・沈没に至るまでの壊滅的なダメージを受けるとは考えられません。
また、プラントなどの大型漂流物に関しては、確かに突起部分などが激突した場合、状況次第では壊滅的なダメージを受ける可能性も否定できません。
しかし、忘れてはならないのが、“第58寿和丸”は少なくとも転覆する瞬間まで、船首を波風に立てた状態にあり、自然に対し、教科書通りの安定した姿勢を保ち続けていたという点です。
プラントなどの大型漂流物も、波風に委ねられて漂流しています。一方、“第58寿和丸”も、波風に委ねられて漂流しています。すなわち、両者、同じ方向に移動しているわけです。
波風に対する抵抗となるパラアンカーが展開されている分、“第58寿和丸”の漂流速度のほうが遅い状況下にあります。
プラントなどの大型漂流物が“第58寿和丸”に襲いかかるとしたら、船首方向からということになります。
したがって、「機関室船底部を突き上げるような衝撃があった。」が正しいならば、漂流物が船首を通り越して、船尾の機関室に到達し、“第58寿和丸”に激突したと断じるのは、かなり苦しい理屈かと思われます。
次に生物との衝突可能性はいかがなものでしょうか。近年、日本でも、高速船とクジラとの衝突に伴う乗客の負傷例が続きました。
“第58寿和丸”はパラアンカーに身をゆだね、ほとんど止まった状態でした。高速船ならばまだしも、中・低速船や停泊中の船舶と、クジラとの衝突事例は聞いたことはありません。
しかし、実際にはクジラの乱獲が進む以前の古き良き時代、のろのろと進む低速船とクジラが衝突する事例も、決して珍しいことではなかったようです。
事実、私が入社した1980年頃、古手の船員の何人かから、低速船でクジラと衝突した体験談を聞いたことがありました。
クジラの乱獲が進む前の大昔の話と思っていましたが、最近、若手の船員からも同様の衝突事例を聞いいたことがあります。
公的機関に報告されないのは、高速船と違い船体損傷や負傷者などを伴わないためで、中・低速船とクジラとの衝突事例もあり得るのです。
特にクジラの個体数が豊富な海域では、障害物との回避動作が緩慢な、何らかの障害を持った個体が増え、それらが低速どころか、ほぼ停止状態の船舶との衝突に巻き込まれるケースも無いとは言えないでしょう。
北太平洋エリアにも、最大重量100〜150トンに達する大型鯨類が存在すると聞きます。しかし、大型と言えども生身の体を持った生物です。
ほぼ停泊状態にある、135総トンの鋼船に激突し、果たして、外板厚さ1センチの鋼板をぶち破り、転覆・沈没に至るまでの壊滅的なダメージを与えることができるのでしょうか。
体重数百キロの巨漢プロレスラーが、駐車中の軽自動車に対し、全速力で体当たりしても、ボディーがへこむことはあっても、穴を開けることはできない気がします。
したがって、生物衝突説もかなり苦しい気がします。

事故原因に関しては、当初、3人の生存者が、「連続して二回、波の来襲を受けて右舷側に転覆し沈没した。」と証言したと報じられ、“三角波(複数の異なる方向からの波どうしがぶつかり、鋸の歯のような形状の、垂直方向に破壊力の大きな波ができる現象)”説や“フリーク波(外洋で突発的に現われる巨大波浪現象)”説が取り上げられました。
その後、M新聞などが報じた、横浜地方海難審判理事所(刑事裁判の検察に相当)が生存者から聞いたとする証言は、「体験したことのない衝撃を機関室の右舷(左舷と報じているメディアもある。)船底部から受け、急激に右舷側に傾き沈んだ。」に転換しています。
真偽の程はとこかく、“波”という言葉は一切登場しません。当初からこの証言が先行していたとしたら、原因究明に関しては、“波”とする説よりもむしろ、何らかの物体との衝突説が主流となっていたに違いありません。
私は、パラアンカーが正常に機能していたのか否かが、私は本海難の原因究明の最大のポイントだと思い、事故当初から指摘してきました。
しかし、パラアンカー原因説も、撤回せざるを得ない状況に追い込まれました。“第58寿和丸”が所属する漁業組合の組合長さん曰く、
「パラアンカー本体は今年3月、メーカーによる点検が行われたばかりである。また、アンカーロープ(55ミリ径×300メートル)は、近年(平成18年4月)購入したばかりである。」
「(海上に投げ出された生存者は、)“第58寿和丸”の船尾から伸ばされたロープにつながれていたレッコボート(作業船)に乗り移った。その際、レッコボートと係留ロープ、第58寿和丸”は一直線上にあった。」とのことでした。
転覆時、“第58寿和丸”の船体と、その船尾方向に伸ばされた係留ロープ、そして、レッコボートが一直線上にあったということは、船首から前方に伸ばされたパラシュートアンカーも、これらと同様、一直線上にあったことを意味します。
すなわち、パラシュートアンカーは正常に機能していたのです。パラシュートアンカーを先頭に、同アンカーロープ、“第58寿和丸”の船体、船尾係留ロープ、レッコボートの順番にずらりと一直線上に並び、それぞれが船首方向からの波風に正面を向け、立っていた状態を意味するのです。
“第58寿和丸”は少なくとも転覆する瞬間まで、船首を波風に立てた状態にあり、自然に対し、教科書通りの安定した姿勢を保ち続けていたのです。横波を船の側面から不用意に受けるような状況下ではなかったのです。
したがって、横波が原因とする説とパラアンカーの不具合が原因とする説は、同時に消えてしまう可能性が高いのです。
前回のブログでお伝えしたとおり、M新聞などが伝えた生存者の証言、すなわち「、体験したことのない、機関室船底部を突き上げるような衝撃があった。」は果たして真実なのか、見極める必要があります
さて、今日は横波原因説とパラアンカー不具合説を否定した上で、“機関室船底部を突き上げるような(波以外の)衝撃”の正体について考察を進めたいと思います。
まずは、漂流物との衝突の可能性についてです。私も現役時代、様々な漂流物を目撃してきました。
材木やコンテナなどの漂流物は珍しいことではありません。得体の知れない人口構造物の漂流も何度か経験があります。
中には、何かのプラントの一部と思しき、長径20メートルにも及ぶ人口構造物の漂流を目撃したこともあります。
“第58寿和丸”は漁船といえども、135総トンの鋼船です。外板の鉄板の厚みは、1センチはあるのではないでしょうか。
したがって、航走中ならまだしも、パラアンカーに身をゆだね、漂泊している状況下で、波風に漂う程度のスピードの木材やアルミ製のコンテナなどが接触した程度で、転覆・沈没に至るまでの壊滅的なダメージを受けるとは考えられません。
また、プラントなどの大型漂流物に関しては、確かに突起部分などが激突した場合、状況次第では壊滅的なダメージを受ける可能性も否定できません。
しかし、忘れてはならないのが、“第58寿和丸”は少なくとも転覆する瞬間まで、船首を波風に立てた状態にあり、自然に対し、教科書通りの安定した姿勢を保ち続けていたという点です。
プラントなどの大型漂流物も、波風に委ねられて漂流しています。一方、“第58寿和丸”も、波風に委ねられて漂流しています。すなわち、両者、同じ方向に移動しているわけです。
波風に対する抵抗となるパラアンカーが展開されている分、“第58寿和丸”の漂流速度のほうが遅い状況下にあります。
プラントなどの大型漂流物が“第58寿和丸”に襲いかかるとしたら、船首方向からということになります。
したがって、「機関室船底部を突き上げるような衝撃があった。」が正しいならば、漂流物が船首を通り越して、船尾の機関室に到達し、“第58寿和丸”に激突したと断じるのは、かなり苦しい理屈かと思われます。
次に生物との衝突可能性はいかがなものでしょうか。近年、日本でも、高速船とクジラとの衝突に伴う乗客の負傷例が続きました。
“第58寿和丸”はパラアンカーに身をゆだね、ほとんど止まった状態でした。高速船ならばまだしも、中・低速船や停泊中の船舶と、クジラとの衝突事例は聞いたことはありません。
しかし、実際にはクジラの乱獲が進む以前の古き良き時代、のろのろと進む低速船とクジラが衝突する事例も、決して珍しいことではなかったようです。
事実、私が入社した1980年頃、古手の船員の何人かから、低速船でクジラと衝突した体験談を聞いたことがありました。
クジラの乱獲が進む前の大昔の話と思っていましたが、最近、若手の船員からも同様の衝突事例を聞いいたことがあります。
公的機関に報告されないのは、高速船と違い船体損傷や負傷者などを伴わないためで、中・低速船とクジラとの衝突事例もあり得るのです。
特にクジラの個体数が豊富な海域では、障害物との回避動作が緩慢な、何らかの障害を持った個体が増え、それらが低速どころか、ほぼ停止状態の船舶との衝突に巻き込まれるケースも無いとは言えないでしょう。
北太平洋エリアにも、最大重量100〜150トンに達する大型鯨類が存在すると聞きます。しかし、大型と言えども生身の体を持った生物です。
ほぼ停泊状態にある、135総トンの鋼船に激突し、果たして、外板厚さ1センチの鋼板をぶち破り、転覆・沈没に至るまでの壊滅的なダメージを与えることができるのでしょうか。
体重数百キロの巨漢プロレスラーが、駐車中の軽自動車に対し、全速力で体当たりしても、ボディーがへこむことはあっても、穴を開けることはできない気がします。
したがって、生物衝突説もかなり苦しい気がします。





「機関室船底からの突き上げ」は、やはり、信頼性に欠ける情報のようですね。
大いに参考になりました。