『★豪華客船の苦渋の判断★』[2008年05月19日(月)]
皆さんご存知のとおり、本年4月21日の朝、イエメンとソマリアに囲まれたアデン湾を航行していた、邦船N社の大型原油タンカー“高山”が、海賊と思われる小型不審船に追尾され、銃撃を受けました。
小型不審船による追尾・銃撃に対し“高山”は、サーチライトを連続照射した後、ジグザグ航走を繰り返し、ついに逃げとおすことに成功しました。結果、負傷者もなく、最小限の船体被害にとどめました。正に不幸中の幸いの出来事でした。
本日のS新聞朝刊は、“高山”が攻撃を受けた時期とほぼ同じころ、同じイエメン沖の海域を、日本の豪華客船三隻が相次いで航行していたことが明らかになったと報じています。
三隻の豪華客船とは、N客船(大阪)の“P号(2万6500総トン、乗客・乗員645人)”、S客船(東京)の”N丸(2万2000総トン、乗客・乗員464人)“、Uクルーズ(東京)の”A号(5万総トン、乗客・乗員1144人)“です。
三隻はいずれも、日本政府が注意喚起を行い、安全が確認されるまで入域を見合わせるよう要請したにもかかわらず、イエメン沖を相次いで航行したと報じられています。
三隻は「徹底した安全対策をを講じれば問題はない」と判断し、甲板上の見張り員や航海当直要員を増強し、通航中は乗客を甲板上に出さないなどの対策を講じ、全速力で無事通過して行ったそうです。
また、日本政府は外交ルートを通じ、現場周辺海域に展開する多国籍海軍に協力要請を行なうなど、三隻の無事通過のため、最大限のリスク管理を講じたとも伝えています。
現行法上、たとえ日本政府の要請といえども、航海自由の原則から言えば、航行の可否の判断は各船の船長に委ねられます。したがって、今回の三隻の行動に何ら法的な過ちはありません。
S新聞は、「そうは言っても、大勢の乗客のいる豪華客船によるイエメン沖の航行に関し、果たして現状で良いのか。今回は無事で何よりなのだが。」と、今後の問題提起をしているのでしょう。
一方、綿密に予定が汲まれた客商売の客船にとって、大幅な運航遅延を招く予定外の泊地での長期待機などは、あってはならない、とんでもない話なのです。これも大いに頷けます。私もおそらく同じ立場ならば、同じ行動を取っていたに違いありません。
しかし、一歩間違えれば、船長としての自身の進退のみならず、会社の存亡に関わる事態に発展する可能性も否定できません。関係者は相当迷ったことでしょう。
たしかに、ソマリアの海賊が大型客船をターゲットにしたことは過去にありません。しかし、最初のターゲットになる可能性を誰も否定できないはずです。
あるいは、見方を変えれば、“高山”の事件が発生し、多国籍海軍の警戒が強まったため、三隻は無事通過できたとも言えなくもありません。すなわち、“高山”のお陰かもしれません。
いずれにせよ、クルージングが開始された後の対策は極めて困難です。出港前、客を募集する段階での対策まで遡る必要があるのです。
なお、ソマリアの海賊事件が続発するアデン湾は、その先、バベル・マンデブ海峡を経て、南北方向に細長く伸びる紅海へ至る、エントランスにあたる海域です。
紅海沿岸には、ペルシア湾沿岸と同様、日本の化石エネルギー需要を賄う、原油・ガス田が所在しています。
さらに、紅海の北端はスエズ運河が所在し、その先は、地中海、すなわちヨーロッパです。アデン湾はアジアとヨーロッパとを結ぶ、海上物流の主要ルートでもあるのです。
豪華客船ばかりか、日本を含む極東アジアと、ヨーロッパを結ぶコンテナ船や自動車船にとっても、なくてはならない航路なのです。
このまま、この航路で危険な状態が続くとすれば、商船や客船はスエズ運河を利用できなくなり、アフリカ最南端の喜望峰ルートへの変更を余儀なくされます。とんでもない経済的混乱が生じます。

小型不審船による追尾・銃撃に対し“高山”は、サーチライトを連続照射した後、ジグザグ航走を繰り返し、ついに逃げとおすことに成功しました。結果、負傷者もなく、最小限の船体被害にとどめました。正に不幸中の幸いの出来事でした。
本日のS新聞朝刊は、“高山”が攻撃を受けた時期とほぼ同じころ、同じイエメン沖の海域を、日本の豪華客船三隻が相次いで航行していたことが明らかになったと報じています。
三隻の豪華客船とは、N客船(大阪)の“P号(2万6500総トン、乗客・乗員645人)”、S客船(東京)の”N丸(2万2000総トン、乗客・乗員464人)“、Uクルーズ(東京)の”A号(5万総トン、乗客・乗員1144人)“です。
三隻はいずれも、日本政府が注意喚起を行い、安全が確認されるまで入域を見合わせるよう要請したにもかかわらず、イエメン沖を相次いで航行したと報じられています。
三隻は「徹底した安全対策をを講じれば問題はない」と判断し、甲板上の見張り員や航海当直要員を増強し、通航中は乗客を甲板上に出さないなどの対策を講じ、全速力で無事通過して行ったそうです。
また、日本政府は外交ルートを通じ、現場周辺海域に展開する多国籍海軍に協力要請を行なうなど、三隻の無事通過のため、最大限のリスク管理を講じたとも伝えています。
現行法上、たとえ日本政府の要請といえども、航海自由の原則から言えば、航行の可否の判断は各船の船長に委ねられます。したがって、今回の三隻の行動に何ら法的な過ちはありません。
S新聞は、「そうは言っても、大勢の乗客のいる豪華客船によるイエメン沖の航行に関し、果たして現状で良いのか。今回は無事で何よりなのだが。」と、今後の問題提起をしているのでしょう。
一方、綿密に予定が汲まれた客商売の客船にとって、大幅な運航遅延を招く予定外の泊地での長期待機などは、あってはならない、とんでもない話なのです。これも大いに頷けます。私もおそらく同じ立場ならば、同じ行動を取っていたに違いありません。
しかし、一歩間違えれば、船長としての自身の進退のみならず、会社の存亡に関わる事態に発展する可能性も否定できません。関係者は相当迷ったことでしょう。
たしかに、ソマリアの海賊が大型客船をターゲットにしたことは過去にありません。しかし、最初のターゲットになる可能性を誰も否定できないはずです。
あるいは、見方を変えれば、“高山”の事件が発生し、多国籍海軍の警戒が強まったため、三隻は無事通過できたとも言えなくもありません。すなわち、“高山”のお陰かもしれません。
いずれにせよ、クルージングが開始された後の対策は極めて困難です。出港前、客を募集する段階での対策まで遡る必要があるのです。
なお、ソマリアの海賊事件が続発するアデン湾は、その先、バベル・マンデブ海峡を経て、南北方向に細長く伸びる紅海へ至る、エントランスにあたる海域です。
紅海沿岸には、ペルシア湾沿岸と同様、日本の化石エネルギー需要を賄う、原油・ガス田が所在しています。
さらに、紅海の北端はスエズ運河が所在し、その先は、地中海、すなわちヨーロッパです。アデン湾はアジアとヨーロッパとを結ぶ、海上物流の主要ルートでもあるのです。
豪華客船ばかりか、日本を含む極東アジアと、ヨーロッパを結ぶコンテナ船や自動車船にとっても、なくてはならない航路なのです。
このまま、この航路で危険な状態が続くとすれば、商船や客船はスエズ運河を利用できなくなり、アフリカ最南端の喜望峰ルートへの変更を余儀なくされます。とんでもない経済的混乱が生じます。




