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全国キャラバン in 埼玉 [2008年01月28日(Mon)]

報告者:藤澤 克己(ライフリンク事務局長)

1月20日(日)に埼玉自殺対策シンポジウムが開催されました。
会場となったのは桶川市民ホール響の森。


開演前にホールの席はほぼ埋め尽くされ、参加者は約380人でした。


まず、主催者を代表して岡島敦子埼玉県副知事から挨拶がありました。
「このシンポジウムを契機に、自殺対策が進んでいくことを願います。
 埼玉県では、昨年、自殺対策連絡協議会を立ち上げ、すでに提言を
 もらっていますので、それを受けて今後検討を重ねていきます。」と
述べられました。

続いて、「こころの健康と自殺対策」というテーマで講演がありました。
埼玉県自殺対策連絡協議会の会長である野村総一郎氏(防衛医科大学校精神科学講座教授)は、医師の立場から自殺問題について説明をして下さいました。

◇◇


自死遺族の体験談は、埼玉県に住む藤本佳史さん。


19歳のときにお母さまが自殺で亡くなったそうです。その想いの丈を
諄々と語ってくれました。
お母さまが亡くなった当日のこと、どん底を感じ自暴自虐になったこと、
やがて一緒に泣いてくれる仲間に出会えたこと、理解しようとしてくれる
人の存在のありがたいこと等を、ゆっくりと語ってくれました。
「我が家を襲ったような自殺を少なくしたい。また、もしも自死遺族に
 なってしまっても立て直っていけるような社会にしたい、そのことを
 みなさんにも是非考えてもらうきっかけにして欲しい」と、その想い
を会場に向けて投げかけてくれました。
とても心に響くメッセージで、会場には一体感が広がり、この話を聞いた
一人ひとりが自分の問題として受け止めたのではないかと思いました。

◇◇


休憩を挟んで、パネルディスカッションに移りました。
テーマは「いのちの尊さを考える〜今、私達にできること」。
登壇者は次の通りです。
<コーディネーター>
   清水 康之 氏 (NPO法人ライフリンク代表)
<パネリスト>
   大野 絵美 氏(分かちあいの会あんだんて)
   堀川 直史 氏(埼玉医科大学総合医療センター)
   裄V 秀明 氏(埼玉県保健医療部疾病対策課長)
   菊池 礼子 氏(埼玉県精神保健福祉センター主幹)
   山口 和浩 氏 (NPO法人自死遺族支援ネットワークRe代表)


コーディネーターの清水氏から、
「ご遺族の声を聴くたびに、お一人おひとりに人生があり、遺された
 者にとってもかけがいのない人生がある、という当たり前ことを
 思わずにはいられません。
 どこか遠くの特別な人の話ではないということ、当事者である遺族
 が声をあげてくれたことでやっと始まったということを、忘れては
 ならないと思います。
 聴くだけでなく、参加するという意識で、是非一緒に考えてほしい」
というメッセージが伝えられました。

分かちあいの会「あんだんて」代表の大野氏からは、
「勇気をもった体験談だったと思います。心に残りました」という感想
がまず述べられました。
「あんだんて」を立ち上げようと思ったきっかけを教えてくれました。
以前、病院やカウンセリングに通っていたときに「ここじゃ、分かって
くれないし、通じない」と感じたからだそうです。
「あんだんて」という会の様子や運営についての紹介がありました。
会への出席を重ねるごとに参加するご遺族の表情が変わっていくこと、
遺族といっても特別違う人じゃないということ、を教えてくれました。

埼玉医科大の堀川氏は、
ご遺族を支える一員として「自死遺族のケア:精神科医ができること」
というお話しをしてくださいました。
患者の立場に立つということは、違いを認めながらも主体的に関わって
いくことであり、遺族ケアは「喪の仕事」の支援だという主張は、現場
の経験に基づくものだけに、説得力がありました。

行政・政策担当者の立場として裄V氏からは、
総合的に自殺対策に取り組もうとする中で、自死遺族支援も柱の1つと
認識していること、埼玉県自殺対策連絡協議会から提言を受け取り、今後
その具体的な検討を進めていくこと、の説明がありました。

行政・現場担当として菊池氏からは、
分かち合いの会「あんだんて」の設立に関する経緯の紹介がありました。
自死遺族支援がご自身の仕事のテーマだとは考えていなかった当時、
現在「あんだんて」の代表を務めている大野さんの訪問を受け、
「正直、どうしていいか分からず混乱した」と振り返っていました。
その後、精保センターとしてできることから支援し始め、当事者の
声を聞いては気づかされることに対応してきているそうです。
「小さな声であってもそれを行政として受け止める」との思いから、
自死遺族の方向けの相談窓口をここで開設したそうです。
体験談の感想を最後におっしゃりました。
「心から声をあげれば、受け止めてくれる人がいることが分かった」
という藤本さんの言葉が印象的でした、と。

先進的な自死遺族支援を行っている「Re」代表の山口氏からは、
自死遺族支援に関するこれまでの経験に基づいた話がありました。
・どうやって分かち合いの集いを立ち上げて周知していくのか
・勝手に遺族像を作り上げることで語らせない雰囲気にしている
・遺族支援として分かち合いの集い以外にもやるべきことがある
などといった具体的で実践的な話がありました。

◇◇


そして、コーディネーターに促されてパネラー同士の意見交換。
自死遺族はいったん孤立してしまうと二度と繋がることができず、
いかに早いタイミングで情報を渡すことができるかが重要、という
問題提起がなされました。
埼玉県ではこれからということであっても、長崎県や北東北3県
では行政出先機関や警察の協力によって幅広く情報伝達がなされ
つつあることなどが紹介され、先進事例がとても参考になるとの
感想がパネラーからも発せられました。

最後に各パネラーが感じたことを述べ、パネルディスカッション
は終了しました。
・自死遺族の方から教えてもらったことが出発点
・使える情報が整理されて届けられることも重要な自死遺族支援
・関わる人それぞれが自分で出来ることを考える
・自死遺族と支援者とが、気持ちのキャッチボールをしながら
 続けられればいいなぁ
・誰にとっても生き心地の良い社会を作っていくために
など。

ステージの上だけで終始するのでなく、会場に足を運んだ人も一緒
になって考えることのできたシンポジウムになったと思いました。

なお、埼玉県におけるキャラバンキーワードは
「孤立を防ぐ、こころのキャッチボール」 に決まりました。

◇◇


埼玉キャラバンの会場にも「遺族語る」のメッセージパネルが展示され、
多くの方が立ち止まり、ゆっくりと見入っていました。

「遺族語る」のパネル展示の様子
全国キャラバン in 島根 [2008年01月21日(Mon)]

報告者:竹村


 遅くなりましたが、昨年12月22日(土)に行われました『自殺対策シンポジウムinしまね』の報告をさせていただきます。

 会場となったのは、島根県松江市にあるサンラポーむらくもでした。
 当日、私は大阪の自宅から会場に向かったのですが、濃霧のため飛行機が着陸できない可能性があり、開場までたどり着けるか不安でしたが、無事到着することができてよかったと思います。

◇◇


 当日、約100名の方が参加され、行政関係者の方が多く来場されていました。



 最初に島根県健康福祉部長の法正良一さんが開会の挨拶をされました。法正さんは、「島根県は自死遺族支援が遅れている。何ができるか今後の糸口をこのシンポジウムで得たい。」と述べられた後、「すべての県民が自死を自らの問題として考えてほしい。一人ひとりができることを考えていきたい。」と述べられていました。
 自死遺族支援に取り組む中で、取り組みたい気持ちがあっても、方法論が見つからなければ、前に進むことができない。だから、このシンポジウムをきっかけに方法論を見つけ、自死遺族支援を少しでも前に進めていきたいという想いが私には伝わってきました。

 次に島根県障害者福祉課長の小池律雄さんが、島根県の自殺の現状を説明してくださいました。島根県は過去からずっと自殺率が非常に高いということを話されました。自死で亡くなられた方しか数字では示されていませんでしたが、その背景には、自死遺族や自死の未遂者がいるということも強調されていました。
 これに関しては、私もそう思っています。この記事を執筆している私自身、自死遺族として苦しんでいました。父一人が自死で亡くなると遺された4人(母、妹、弟、私)が、自死遺族になります。だから、自死で亡くなられた方よりも多くの方が自死遺族として苦しんでおられるということを知っていただければと思っています。

 その後、島根県では自死で亡くなられる方が男性に多いということ、島根県内の地域別の現状、自死で亡くなられた理由などを話されました。それらの統計をまとめると、『相談相手のいる人が40歳代、50歳代の男性に特に少ない。』という見解を示されました。
私自身、何か辛いことがあったとき、相談する人がいるだけですごく助けになると日々感じています。相談できる人がいなければ、心に大きな負担を背負って生活しなければならないと感じています。

 シンポジウム前半の最後に、ライフリンク代表の清水康之さんから、平成18年6月の「自殺対策基本法」の成立には、自死遺族の学生が懸命に声をあげてきたという背景があることを語られました。
 
 そして、私の先輩である自死遺族の学生からのメッセージが収録されたDVDを上映されました。そのDVDには、私の先輩である山口さんが「仲間の存在が大切な人の自死から立ち直るきっかけになる。後輩たちに勇気を与えたい。後輩たちに辛い想いをさせたくない。」とおっしゃっていました。
 
 私は、その先輩のメッセージにすごく共感しました。私が現在、元気に大学生活を遅れているのは、私を支えてくれた仲間がいるからだと思っていますし、私が頑張って後輩たちに背中をみせることができれば、後輩たちが少しでも勇気を持ってくれるかもしれないと思っています。
 その後に、もう一本DVDを上映されました。そのDVDには、自死遺族の学生の頑張りを受け、「自死を少しでも止めたい」と遺族の方が自分の体験を語り始めたというものでした。その中で、「安心して自分の体験を語れる場は必要。」と遺族の方がおっしゃっていたのが印象に残っています。

 最後に、清水代表が「自殺の問題は他人事ではない。どれだけご遺族の言葉にリアリティを感じることができるのか、私たちの想像力が問われている」と述べられた後に、私が自分自身の体験を参加者の皆さんに話させていただきました。

◇◇




 私が話したことは、まず、私が中学校3年の時に父が自室で首つり自殺をしたことです。
父は自営業の経営に失敗して借金を抱えて思い悩んだ結果、自殺をしたと私は考えています。父が首を吊っていた現場で警察の方に調書をとられて辛かったこと、父親が首を吊っている姿が夢に出てくるフラッシュバックに思い悩んだこと、まわりの友達に父の自殺を言えず独りで思い悩んだことを話しました。
 次に、父が亡くなったことで経済的に苦しんだことを話しました。私は私立中学に通っていたが経済的な理由で公立高校に進学したこと、高校1年の秋に母が倒れ経済的な理由から退学を余儀なくされたこと、国立大学に進学するために1日10時間勉強したことを話しました。
 私は自分を振り返ってみると、父が亡くなってから他人にあまり相談をすることなく、苦しみに耐えていました。そうしたのは、相談しても誰も自分のことを分かってくれないと感じていたからです。
 大学2年生のときにボランティア活動がきっかけです、自死遺族の先輩に出会ったことを話しました。
 私はその先輩に自分の体験を話しました。そのときに、私はすごく泣いていました。私は、その時に初めて自分の話が受け止めてもらえたと感じました。

 この体験を踏まえて私は、『自死遺族には自分の体験を分かち合う場が必要です。』と訴えました。私自身も分かち合う場を求めていたし、自死遺族にとって、分かち合う場所は必要だと本気で思っているからです。どうかこの想いが届いてほしいと願いながら、私は体験を語らせていただきました。

◇◇


 シンポジウムの後半は、パネルディスカッション「自死遺族支援のあり方を考える」が行われました。



【コーディネーター】
青木眞策氏(島根県立 心と体の相談センター所長)
【パネラー】
藤井麻由美氏(島根県障害者福祉課保健師)
清水康之氏(NPO法人自殺対策支援センター ライフリンク代表)
西田正弘氏(わかちあいの会あんだんて顧問)

 はじめに藤井麻由美さんは「島根県における自殺対策の取り組みと課題」について話されました。「自殺対策はどういうところが大事か、何をすればいいか、悩んでいる。」という言葉から始まりました。
 島根県の現状は、うつ対策を中心とした自殺対策の重要性について関係機関の共通認識が図られていること、普及啓発を行ってきたことなどがあげられました。その一方で、必要な人に情報が届いているか、自死の未遂者対策の糸口がつかめない、遺族支援の取り組み方針が明確になっていないなどの課題が挙げられました。
 自殺対策の重要性が分かっていても、具体的な対策がでてこない島根県の現状を痛感いたしました。

 次に清水康之さんは「自死遺族支援策のフレームワーク」について話されました。
 はじめに、「遺族が安心して悲しむことのできる場を、地域で作っていく必要があります。」という言葉を述べられ、自死遺族の多くは「自殺のに対する社会の偏見」に怯えており、自分の体験を話すことができず苦しんでいるという共通点を持っていると話されました。その後、語れる場があれば回復できること、回復できる場(分かち合いの場)では自死遺族は誰からも批判されたりおしつけられたりせず自分の体験に向き合うことができること、だからこそ社会が分かち合い場所を作るべきであるということを話されました。

 最後に、西田正弘さんは「自死遺族のつどいの運営」について話されました。
西田さんは、まず、ご自身が12歳のころに父親を交通事故で亡くされた経験を話され、現在では、交通事故は社会問題として認識されているが、自死はそうではないということ、自死遺族への認識をかえる必要があること、行政がファシリテーター(分かち合いの場を適切に運営する人)の要請と場所の確保を行うことで、分かち合いの場を運営し続けること、ファシリテーターがどういったものなのかを話されました。

 その後の質疑応答では、「他地域では、わかちあいの場がどのようにしてできているか」という質問がされました。でき方は様々で、自死遺族のグループで形成されている団体、子どもを支えている団体、特定の人たちで形成されている団体などがあると西田さんは答えられていました。
 また、今年の1月に分かち合いの会の準備会がすでに予定されていたのですが、「当日は西田さんに予定を空けておいて頂いて分かち合いの会に参加してもらってはいかがでしょうか。」と提案されると、会場からは拍手が起こりました。西田さんも快く参加を承諾されていました。
 島根県の方々は分かち合いの会を求めていることが実感できました。

 なお、島根県でのキャラバン・キーワードは、「安心して思いを語れる環境を、声に耳を傾けることから」となりました。

◇◇


 私はこのシンポジウムに参加して、大切な人を自死で失った体験を話せない自死遺族がいるということ、その解決策を求めているがいるということを改めて心に刻みました。

全国キャラバン in 千葉 [2008年01月14日(Mon)]

報告者:ライフリンク事務局長 藤澤 克己


1月12日(土)に、「ちば自殺対策県民フォーラム 『いのちとこころを考えるちば』」が開催され、220名を超える参加者が集まりました。

◇◇

まず、堂本暁子千葉県知事が挨拶に立ちました。

このフォーラム開催に先立ち、自死遺児に関するノンフィクション本『ぼくの父さんは、自殺した』を読んだそうです。そしてこの本を読んでみて、自殺対策というと、これまで医療的見地からの取り組みだけだったけど、自死遺族支援という対策が必要だったことを改めて教えられたと仰いました。

自死遺児たちが勇気を出して顔も名前も隠さず自分の言葉で語ったことが自殺対策の運動の始まりだったと知ったとき、この運動が日本における差別感をなくしていく大きな力となるはずだと感じたそうです。「今日の時間を共有し大事にして”響きあい”につなげていきたい」と仰ってくださいました。

◇◇


フォーラムの前半は、講演。
大熊由紀子さん(千葉県参与)を座長に迎え、弘中照美さん(自死遺族)と陶山嘉代さん(弁護士)のお二人が講演をしてくださいました。

まず自死遺族としての体験談を、弘中照美さん(多重債務による自死をなくす会 代表幹事)が語ってくださいました。

弘中さんと言えばいつも笑顔を絶やさない明るい印象を持っているのですが、お母さまが自殺で亡くなった平成16年8月末のその日から時間がストップし、3ヶ月間は「飲まず食わず」という生活が続き、1年間は泣いて暮らして過ごしたそうです。当時は「幸せになったらいけない、幸せに思ったらいけない」と心に蓋をしていたようだと教えて下さいました。

立ち直るきっかけは、お母さまを追い込んだ貸金業者を相手に裁判を起こしたこと、そして、街頭募金をする自死遺児たちの勇気ある姿を知ったこと、だったそうです。
それからは周囲の人に支えられ、お母さまと同じような借金で追い詰められる人を救いたいと「多重債務による自死をなくす会」を設立し、今では「申し訳ないけど、とても幸せ」と感じられるようにまでなったと教えて下さいました。

最後に「私はお母さんの子どもに生まれてよかったと思っています」というメッセージが読み上げられ、胸にジーンときました。


続いて、多重債務問題に詳しい千葉県弁護士会の陶山嘉代さんからも「多重債務の解決に向けて」と題した講演がありました。「借金問題は必ず解決できる。悩んでいる人にそのことを伝えたい」という内容は、分かりやすく説得力のある話で、とても心強く思いました。

◇◇

フォーラム後半はパネルディスカッション。
テーマは「生きやすい社会へ向けて―今私たちにできること−」。

   [コーディネーター]
      亀井 雄一 氏 (国立精神・神経センター国府台病院)
   [パネラー]
      橋 広幸 氏 (内閣府自殺対策推進室参事官)
      清水 康之 氏 (NPO法人ライフリンク代表)
      西田 正弘 氏 (分かち合いの会あんだんて顧問)
      宮本 俊明 氏 (新日本製鐵(株)君津製鐵所産業医)
      陶山 嘉代 氏 (千葉県弁護士会)

橋広幸氏は、「自殺総合対策大綱」の概要を説明してくださいました。「多くの自殺は様々な要因が複雑に関係して追い込まれた末の死」であり「自殺は防ぐことができる」という基本認識を示し、「生きやすい社会の実現を目指す」ことが基本的な考え方であること等。
また、昨年11月に初めて「自殺対策白書」が発行され、各地の民間団体の取り組みが紹介されていることを教えてくださいました。

清水康之氏は、同日同時間に大阪で行われている山本孝史さんの告別式のことに言及し、「人には優しく仕事には厳しい山本さんだから、お前には(告別式に出るよりも)他に仕事があるだろうと言われている気がする」と、山本さんが寄せてくださった期待・信頼を裏切らないためにも、「(いのちを守る)自殺対策基本法」の理念を根付かせ実務につなげることに邁進したい、と改めて決意を表明しました。
自死遺族支援に関しては、NHKディレクター時代の取材を通し自死遺児たちから教えられた大切なポイントを2つ指摘しました。人はどれだけ辛い体験をしようとも、その体験について繰り返し語り人生という物語を紡ぎ直していくことで、やがて社会に対する信頼を回復することのできる「回復力」を誰もが持っているということ、そして、安心して語れる「場」がそれぞれの地域に必要だということ。

西田正弘氏は、安心して自死遺族が語ることのできる「場」としての「分かち合いのつどい」のことを分かり易く説明してくれました。「分かち合い」というのは、自死遺族を孤立させない力になること、あなたの声を聞きますよという安心・安定の「場」であること、ゴールはもうそこに来なくてもいい状態になること、などを教えてくれました。ただし、まだ「分かち合い」の場が不足しており、例えば千葉県でも千葉市だけでは不十分であり、いろいろな場所で開催されることが望まれるとの指摘がありました。

宮本俊明氏は、職域におけるメンタルヘルスの必要性と効用を説明してくださいました。

前半の講演をしてくれた陶山嘉代氏からは、パネラーの発言を聞いた上での感想が述べられ、「これまで自死遺族をどう支えればいいかを正直考えてこなかったが、当事者の苦しみや悲しみを知った今、決して他人事ではなく、弁護士としてもできることがあると気づいた」と纏められました。

その後、いろいろな意見交換のあと清水康之氏からは、「自殺対策がこれまでうつ対策の流れできているため、自死遺族支援も心のケアが中心だった。しかし、もっと実務的な支援、例えば、借金の相続にどう対処するのか、あるいは損害賠償を請求されたときに誰に相談するのか、といった実務も含めて総合的に支援する仕組みが必要ということが、全国キャラバンを通して分かってきた」と付け加えられました。
 ※1/14に『全国自死遺族総合支援センター』が設立されました。

最後に、コーディネーターの亀井雄一氏が、このフォーラムを機会に自分にできることを考え、取り組むことが肝要だと纏められました。

◇◇

フォーラムの最後まで一緒に参加された堂本暁子千葉県知事からは、千葉県のフォーラムが「山本孝史さんへの追悼フォーラム」となったことを大切に感じており、「重要なな課題を沢山教えてもらいました」との感想を聞かせてもらいました。

◇◇


千葉県の会場にも、「遺族語る」というメッセージパネルが展示され、多くの来場者が自死遺族の想いの書かれたメッセージに見入っていらっしゃいました。


なお、千葉県におけるキャラバンキーワードは「いのちとこころが響き合う社会をめざして」に決まりました。
全国キャラバン in 山形 [2008年01月07日(Mon)]

報告者:福山なおみ(NPO法人ライフリンク)


 平成19年12月15日(土)、山形市保健センター大会議室にて「全国キャラバン」22番目のシンポジウム【〜語れぬ思いを語ろう〜】が開催されました。

 はじめに、金内良一さん(山形県健康福祉部障がい福祉課長)から主催者挨拶がありました。
 次いで、山口和浩さん(NPO法人ライフリンク)が、全国キャラバンの趣旨について「遺族支援は、自殺対策基本法に明記され大綱に盛り込まれているが、対応に著しい遅れがある。山形県の自殺者数は年間300余人、遺された人たちに“私たちに何かできること”を、それぞれの地域の皆さんと一緒に考えていくこと」と伝えられました。

◇◇


 キャラバンは、3部構成で行われました。

 <第1部>自死遺族の語り

 まずは、自死遺族からのメッセージが収録されたDVDの上映がありました。上映後、山口さんは「絶対に分かってもらえないという一点で見られる、と思っていた。しかし、大学1年のときに参加したボランティア団体の合宿で仲間の存在を知り、過去に負けずに、一緒に生きていこう。≪勇気をもらった分、僕がもっている ちょっとの勇気をあげよう≫と思った」と話されました。こころに響きました。<勇気>はもらったと思ったときも、あげようと思ったときも、生きる≪力≫になると、山口さんのお話から学びました。

◇◇◇


 次に、ご遺族の立場から藤原匡宣さんが登壇されました。母親の自死から10年経った今、「遺族支援は、自殺という死に直面した当時者にしか感じることのできない気持ちを伝えることなのかもしれないと思う」と話されました。
 また、「自殺は防ぐことのできる死である。そのためには生きている人間同士の人間らしさが求められる。“人間らしい生活”をしていたら食い止められると思う。仕事で疲れ、ふと死にたいと思うことがあるが、遺されたものはまた悲しむことになる。だから死ねない。母親も同じ気持ちで生活してきたのだろうと、今思う」と話されました。
 そして、「今、私たちにできることは、“身近な人を気にかけること”。職場、家族、友人が、暗い声や顔をしていたら声をかけ、話を聴くことはできる。僕は支えてくれる仲間がいるので生きていこうと思う、元気に生きていこうと思う」と伝えられました。
 さまざまな社会経験を積み重ね、逞しく、頼もしく成長された藤原さんに再会できて、とても嬉しく思いました。

*ここで、山口さんより『自殺対策白書』が初めて刊行されたこと、ご自身の体験を今西乃子さんが著した書籍「ぼくの父さんは、自殺した」の紹介がありました。

◇◇◇


 <第2部>パネルディスカッション「自死遺族支援〜これから私たちにできること〜」



【パネラー】
佐久間正則 氏(山形県健康福祉部障がい福祉課課長補佐)
有海  清彦 氏(山形県精神保健福祉センター所長) 
東谷  慶昭 氏(山形産業保健推進センター 産業保健相談員)      
金子久美子 氏(自死遺族支援団体代表 れんげの会)

【コーディネータ】
山口 和浩 氏(NPO 法人自殺対策支援センター ライフリンク)
 
 佐久間さんは、まず県の自殺の現状について話されました。平成9年270人であった自殺者数が、翌平成10年に359人と増加した。これは全国的にも3万人を超えた時期と重なっており、原因として金融機関の貸し渋り問題が関っていることなどをあげられました。平成18年の山形県の自殺者数は、381人で全国ワースト3位。県の取り組みは、これまで保健所や精神保健福祉センターでの「うつ病対策」が主であったが、今後は@自殺の地域格差の実態調査、A見守りのシステム作り、B遺族支援(語り合いの場の立ち上げ支援)、C相談機関(窓口の設置)を目指し、行政・県民全体の課題として取り組んでいきたいと話されました。

 有海さんは、遺族のVTR、体験談、あしなが育英会の手記などを通して悲しみが伝わり、やっとここで語り合えた、と感想を述べたられた後、どのように周囲の人の理解を深めていくか、また“人間らしい生活”をいかに支援していくか、が重要課題である、と話されました。心の健康センターでは、専任の保健師が年間1300〜1400件の相談を受けており、その内自殺に関する当事者・遺族・関係者からの相談は、5〜10%である。今後取り組む課題は、@相談窓口体制の整備、A後追い自殺などの緊急対応の整備、B自助グループの組織作りと運営の促進をすること。そのために、場所の提供・リーダーシップの育成とネットワーク作り、である。そして、長く、先の見えないトンネルを短くすることが必要ではないか、と語られました。山口さんは、「これならいけるかな!」という思いは、遺族支援をする際の≪力≫になる、と結ばれました。

 東谷さんは、まず「社会の人のメンタルヘルス」について、臨床と産業保健の立場で事業所における自殺既遂事例や調査結果を述べられた後、自殺予防と対策をお話くださいました。うつ病で通院中の方が「首になった。働きたいが、働けない。もうここにも来ないよ」という言葉を最後に受診されず、自殺された事例を語られました。気がかりだと思ったときに医療につなげることの重要性を伝えられました。重症度にかかわらず「うつ病」と診断された人は92%。しかし、精神科クリニックの現状は、電話予約で2週間待ちであり、一日60〜80件。内科医と連携診療を行っているのが実情で、よりよい精神医療につなげるために内科医と勉強会を行っている。さらに、医療改革の影響を受け2ヶ所の病院では精神科病棟が閉鎖され、精神科医がいなくなり、精神診療を受けることができなくなった、と自殺対策の推進を阻むお話をされ、今後の地域自殺対策強化の必要性を痛感しました。

 金子さんは、まずDVDで語られたメッセージを行動に移し、継続していくことが大切である、と感想を述べられました。また、「身近な人を気にかけることの大切さ」「苦しいときに訴える場所があることの大切さ」を話されました。分かち合いのよさは、@思いを語れる場であること、A言葉に込められた相手からの思いやりは、社会の中で居心地のよさを体験する通過点であること、B仲間がいることで≪力≫を得、帰ることができる と伝えられました。さらに、行政に望むことは、「遺族は分かち合いに出てくるにもエネルギーがないと出てくることができない。相談機関を探すことにも多大なエネルギーを要するので行政の手助けが必要である。そのためには、必要な場所と支援が選択できるようサポートすること。そして、行政主導ではなく会の尊重・信頼が大事である」と、遺族支援を実践しておられる立場からの心強いご提言をいただきました。

◇◇◇


 <第3部>今後の自死遺族支援について

【全体討議】
 山口さんから「山形の事情に合った支援について、こういう支援があるとよいのではないかと思われることをお話ください」と、パネラーの方々に投げかけられました。
 有海さんは、「遺族の問い合わせ窓口として固定電話の窓口があるとよい」、東谷さんからは「守秘義務を踏まえた公の場での勉強会がもてるとよい」と話され、山口さんからは「行政だけで取り組むのではなく、秋田など隣県とのつながりを持つことも大切である」と話され、結ばれました。

【参加者の発言】
 会場からは、@会場を確保する場合は、遺族は雑居ビルなどの方が入りやすい、A広報活動は、市や県が行ってくれるとよい、の2点についてご提言がありました。
 また、精神障がい者の団体の方からは、県の保健所・市町村の役割の変化をあげ、「家族教室」(4回)の開催を行政や医療機関に持ちかけたが、35%しか協力を得られなかったことへの不満を話されました。精神障がい者に対する偏見を無くし、啓発活動の促進が必要。自殺をどのように捉えてきたのか、遺された人たちへの支援と併せて予算化をして欲しいと語られ、最後に“遺族も人間らしい生活ができるのです”と、話を終えられました。

◇◇


 「全国キャラバン」には、シンポジウムやご遺族の語りとともに『遺族語る』のパネルが展示されます。このパネルは、自殺で大切な人を亡くされたご遺族の皆様に「自死された方の生きた軌跡」や「死に追いつめられた状況と経緯」を語っていただいた“声なき声”を形に表したものです。山形の会場でも、多くの方たちがパネルと向き合い、その声に耳を傾けて下さっていました。



 山形のキャラバン・キーワードは、「語れぬ思いを語ろう わかりあいたい輪」となりました。