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全国キャラバン in 和歌山 [2007年10月04日(Thu)]

報告者:尾角

 
 去る9月24日(月)、和歌山県立医科大学にて、「わかやま自殺対策シンポジウム」が開催されました。



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 シンポジウムは三部構成で、基調講演、当事者の体験発表、パネルディスカッションという内容でした。

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 第一部では、内閣府自殺対策推進室の森信二氏により、「自殺総合対策大綱から自死遺族支援を考える」をテーマに日本の自殺の現状説明、大綱の説明、自死遺族支援について講演されました。

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 第二部は、当事者の声に耳を傾けるということで、南部さんのお話をVTRで見たあと、自死遺児の立場から自分(尾角)と亡くなった母の物語を紡ぎました。自殺は複雑な要因、背景があって起こるということをまず話しました。夫の会社の倒産、借金、介護疲れ、母子家庭での子育て、生活苦。その末、長年うつ病を患っていた不安定な母との葛藤、最後の最後には母と共に死を選ばざるを得なかったことを伝えました。母の死後、自分自身もなくなりたいとまで想うこともありましたが、継続的な「つながり」の中で回復していきました。「つながりを絶やさない」。それが何よりも必要な自殺対策であると強調しました。



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 第三部は、パネルディスカッション。
シンポジストには、
山田和子さん(和歌山県立医科大学保険看護学部教授)、
森川勝さん(和歌山いのちの電話協会事務局長)、
山口和浩さん(自死遺族支援ネットワークRe代表)、
西田正弘さん(ライフリンク副代表)、
北端祐司さん(和歌山県精神保健福祉センター所長)、
そして、コーディネーターに
篠崎和弘さん(和歌山県立医科大学精神神経科教授)
が参加されました。



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 まず、大学で保健士の養成を行っている山田先生から、和歌山県の自殺に関する状況(近畿圏で自殺率トップ、老人の自殺が多いなど)と独自に行った調査について報告されました。
 調査を通して、日本の自殺者が3万人を越えることや、法律ができたことを知っている人は10%未満だったが、一方で9割以上の人が「自殺は防げる」と考えているということがわかったそうです。また7〜8割の人が「相談されたら親身にのる」とも答えていたようです。

 そして、いのちの電話の事務局長の森川さんからは近年のデータ、活動状況の報告がありました。現場で向き合っているメンバーの苦労、尊さを語られました。

 山口さんは、ご自身の体験、自死遺族支援の必要性について、Reの活動内容を話されて、参加された方の声を届けました。また「何のために相談機関があるのか、当事者本位への転換が必要」と訴え、「聴く」→「動く」へということを強調されていました。

 西田さんは、あしながの自死遺児たちと最初に向き合ったときのことを話されました。「私自身もわからなかった」。とにかく当事者、自死遺児たちの声を聴くことから始めて今まで歩んでこられたのがよく伝わるお話でした。「自殺は防げる死」というけれど、言い換えれば、「防げなかった死」が毎年3万人あったということ。3万人が亡くならないと1年が終わらない世の中になっている。この一言が一同の心に響いたのではないでしょうか。

 北端所長からは、連絡協議会を近く発足するということと、来月から「自死遺族の相談窓口」を第4月曜日の午後に設けることの報告がありました。

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 そしてパネルディスカッションの後、最後に「NPO法人 白浜レスキューネットワーク」の藤藪庸一さんが活動のお話をされました。白浜三段壁では自殺者があとを絶たず。25年以上前から「いのちの電話」の活動が始まり、電話だけではなく、実際に会って、相談を受けはじめました。保護件数は、年間20件を超え、町有アパートを行政から提供してもらい、自立支援活動も必要に応じて行っているそうです。

 以上が、シンポジウムの内容になります。

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 その後のアンケートには「これを機に自分に何ができるのかを考えたい」というようなコメントが多数あり、まずは知ることからスタートして一歩を踏み出した人がたくさんいることを実感できた実りあるシンポジウムだったとは言えるのではないでしょうか。あくまでも、シンポジウムはゴールでなく、「きっかけ」。

 和歌山県のキャラバンキーワードは、「つながりを絶やさない」となりました。

 北端所長の意向にもありましたが、来月以降の遺族相談窓口が発展して、遺族の分かち合いの会につながることを心より願います。