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全国キャラバン in 山梨 [2008年06月05日(Thu)]
 3月22日(土)13:30-16:00まで、「自死遺族支援全国キャラバンシンポジウムin山梨」が開催されました。



 今回は、「自死遺族支援全国キャラバン実行委員会」による、自主開催によるキャラバンシンポジウムになりました。

 会場近くからは、富士山を見ることが出来ました。

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主催者挨拶



 はじめに、藤澤克己さん(NPO法人ライフリンク事務局長)より、「自死遺族支援全国キャラバン」についての説明がありました。

 まず、DVDで流されたのは、東京マラソンの映像。

 3万人の方が走った「東京マラソン」の映像を目の当たりにすることで、3万人の「数」を、みなさん体感されていらっしゃいました。

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パネルディスカッション
 いま、私たちにできること

パネリスト
 藤澤克己さん(NPO法人ライフリンク事務局長)
 福山なおみさん(共立女子短期大学看護学科精神看護学)
 西原由記子さん(NPO法人東京自殺防止センター創設者)
 森山花鈴さん(NPO法人ライフリンク)



藤澤克己さん(NPO法人ライフリンク事務局長)

 藤澤さんからは、これまでのキャラバン開催におけるお話がありました。

 「全国キャラバン」は、「自殺対策大綱」を全国に根付かせて、立ち遅れている自死遺族支援を進めるためのものであること。

 そして、自殺対策基本法は自殺者を減らすためだけのものではなく、生きやすい世の中をどう作るかというものだということをお話されました。

 また、これまで、各地でおこなってきた「全国キャラバン」は、基本的に各都道府県庁が主催で行ってきましたが、今回山梨県は残念ながらそれがならず、自死遺族支援全国キャラバン実行委員会が主催になったとお話されました。 
 
 そして、山梨県でも、行政と民間とで力を合わせていってほしいとお話になられました。



福山なおみさん(共立女子短期大学看護学科精神看護学)
 
 はじめに、福山さんは、看護師時代、多重債務を抱えた元管理者がうつ病の回復期に自死された体験をお話されました。

 その中で、うつの治療に併せて、病院と地域医療の連携、多重債務に関する専門的な介入窓口の紹介の必要性、経済問題が家族関係に及ぼす影響への見守り・調整の必要性を課題に挙げられました。

 そして、「<体験時の思いや感情を十分に語ること>で抑圧感情が解放されること。

 また、<患者さんのケアを語り合うこと>によって、患者さんが死に追いつめられたプロセスを知り、ケアについての新たな気づきを与えてもらうことができる」とお話されました。

 次に、【わかち合い】の重要性、ファシリテーターの役割・資質についてお話しされました。
 
 遺族が大切な人を思い、「安心して悲しみ、泣くことができる場」、「安心・安全に語ることができる場」の提供と時間の保障をすることが大切であること。

 また、その人が求める「社会的・人的資源」の選択肢を提供し、適時活用できることが必要であるとお伝えされました。

 さらに、遺族一人ひとりのもつ回復力を信じ、自尊感情が支えられ、ペースを守りながら気持ちの整理ができ、新たな生き方を見出すきっかけがつかめるような場作りが重要であるとお話されました。

 そして、つながりを大事にしながら「【つどい】(「わかちあい」)を卒業する」ことが、遺族の目標であることを理解したうえで見守り、支えることが大切です」と結ばれました。



西原由記子さん(NPO法人東京自殺防止センター創設者)

 東京自殺防止センターの創設者である西原さんは、ご自身の30年以上にわたる自殺防止活動の経験を踏まえたお話をしてくださいました。

 もともと関西のご出身で、今から約30年ほど前に大阪自殺防止センターを立ち上げたこと。

 「自殺」という文字を団体の名称に入れた先駆けで、当時から目的をはっきりとさせて活動に取り組んできたこと。
 
 大阪センターの創立20年を節目として、東京にも自殺防止センターを作らなければとご夫婦で東京へ移住。たまたま空き部屋を貸してくれるキリスト教の教会が見つかり、即決で事を進めたことをお話してくださいました。

 当時は中央線への飛び込み自殺が多発し、年間自殺者数が一気に3万人を超えた年でした。(1998年)

 電話相談を中心にした活動ですが、電話の向こうでご自身のお子さんを自殺で亡くしたと泣き崩れるお母さんの声を相次いで聞くことになり、一度お逢いしましょうと直接会うようにしたとお話しになられました。

 そうして、娘や息子を自殺で亡くした母親たちに一人ひとり会っているうちに、自殺で身近な人を亡くした遺族同士で直接話をしてもらった方が、気持ちをより分かりあえるのではないかと感じたそうです。
 
 1999年2月、初めての分かち合い「エバーグリーンの集い」を開催し、翌2000年からは、毎月に開催されてきたとのこと。

 経験に裏付けされた話は、どれも説得力のあるものでした。



森山花鈴さん(NPO法人ライフリンク)

 森山さんは、事務局にいて感じてこられた、自殺対策に対する実際の各地域での温度差や現状についてお話になられました。

 秋田県や長崎県での取り組みについて例にあげられ、民間と行政との連携がうまくいっている県では、自殺対策が進んでいるとお話になられました。
 
 また、ご自身が多くのご遺族と接し、経験されてきたことから、日常においてもご遺族が、ささいなことでも苦しめられる場面があるということを伝えられました。

 私たちが普段気付かなくても、子供向けの遊園地にさえ、「自死」を連想させるアトラクションがあること。

 親を亡くした子供の場合、楽しいはずの遠足でも、そのひとつによってとても苦しいものになってしまう可能性があるということ・・・。

 もしかしたら、そのアトラクションに乗り、ショックを受けても、それを誰にも言えずに苦しんでいる子供たちも、いるかもしれないということ・・・。

 大切な方が電車に飛び込んで亡くなられた場合、その後電車に乗ることがお辛いご遺族もいらっしゃるそうです。

 声をあげられないでいるご遺族が、まだまだたくさんいらっしゃることを、お伝えになられました。

 最後に、「大切なのは、これまでよりも、これからです。“私たちひとりひとりは微力ではありますが、無力ではない”ので、山梨県もこれから自殺対策を皆で進めていけると思います」、とお話になられました。

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 それぞれのパネリストの発言後、会場からは、「福山さんからうつの人の自殺の話があったが、精神障害のある人にとり、ライフリンクの「自死遺族支援」だけでは、自殺対策にならないのではないか。」という発言がありました。

 藤澤さんは、「これまでの自殺対策においては、うつ対策が中心でした。そのため、今回、これまで取り組まれてこなかった<自死遺族支援>を全国的に展開しております。おっしゃるとおり、必要なのは、自殺“総合”対策で、遺族支援も必要ですし、もちろんそれだけでは足りないと思っております。」とお応えになられました。

 福山さんは、頂いた貴重なご意見に敬意を払われながら、「精神障害と自殺の問題、自殺企図者の再度の自殺防止は、現在進められている自殺総合対策における制度の検討の中に活かし、対策につなげていきたい」とお答えされました。


「遺族語る」パネル展示の様子
 

 山梨県でのキャラバン・メッセージは、 『私たち自身の生き方が問われている、いまできることから』となりました。

 青空がすがすがしい、山梨県のキャラバンシンポジウムでした。