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全国キャラバン in 福岡 [2008年03月03日(Mon)]
報告者:小早川(リメンバ−福岡自死遺族の集い)


ふくおか自殺対策シンポジウム〜心と心をつなぐために〜

日時:平成20年1月25日(金)13:00〜 
場所:ソラリアステ−ジ6F西鉄ホ−ル 参加人数:約400人

 司会進行は、佐々恭子さん(「表現塾」主催)の優しい言葉遣いとおだやかな声のもと、会は進行していきました。はじめに、福岡県の海老井副知事よりご挨拶がありました。



第1部 基調講演「地域の自殺対策を考える」



神庭重信先生(九州大学大学院 医学研究院精神病態医学分野教授) 
 神庭さんは、「毎日、日本では80人の方々が自殺で亡くなっている」ということをまずお話しになりました。そして、福岡県の特徴として以下の点を挙げられました。

@男性の自殺者数は全国平均より多い
A女性の自殺者数は全国平均よりも少ない
B自殺された方々の総数は、全体として全国平均をやや上回り、全国で19番目である
C特に北九州地方が問題
Dどの年齢層においても増加傾向があるものの、45〜64歳の働き盛りの中高年が群を抜いて多い

 また、遺族支援の要点として、自死遺族の多くは、自殺の連鎖や自殺のリスクを考えることになる」ことを挙げられ、「社会全体が偏見を取り除く正しい知識を身につける必要がある」と述べられました。
 そして、自殺の3つの基本認識として、@追い込まれた死であることA防ぐことができることB自殺を考えている人は悩みながらもサインを発している → 周りの方が気づきをもつことが大切であることを示されました。

 最後に、かかりつけ医と専門医の”連携”を強化する必要があることについてご指摘されました。


第2部 わかち合う声〜自死遺族のメッセ−ジ〜



 第2部では、井上久美子さん(「リメンバ−福岡自死遺族の集い」代表) が登壇された上で、自死遺族の方が体験談を話されました。

 最初に井上さんは、ご自身がなぜこの活動に携わっているのかをお話くださいました。そして、その後、【リメンバー福岡 わかち合う声】という映像でわかち合いの様子が映し出され、4名の遺族の方の体験とこころの内をお話されている状況が克明に映し出されました。
 リメンバー福岡では、それぞれの遺族が抱えた問題をひとつの声としてキャラバンで届けたい、そんな思いから、わかち合いの様子を映像で届ける企画が持ち上がり、【リメンバー福岡 わかち合う声】を製作。映像の中では4人の遺族がそれぞれに抱えた自責と不安、孤立と絶望感を語りました。

 過労、うつ、精神医療、行政、司法の問題、介護うつの苦悩、地域の偏見。全身から血が噴き出しているような痛みの中でも痛いと言えず、ひとり苦しんでいた頃の痛みを、リメンバー福岡のわかち合いで語られる様子が映し出されました。

 その後、映像の中のお1人が登壇され、撮影に協力した理由を、「私の大切な人がこの世に存在した印を残したかった、うつで苦しんだその人の経験が今後の医療に生かされて行くことを望みます」とお話されました。
 遺族のメッセージは、第3部のシンポジスト6名へ大きな投げかけとなりました。(本来のリメンバー福岡の「わかち合い」の内容は、絶対に外部に漏洩することはなく、守られた安全な空間であることをお約束いたします)

 最後に、井上さんは、こうお話になられました。「この自死という問題は、自分の家族や親戚の誰かがなくならない限りは、一生縁のない話であるかもしれません。けれども、1人の自死された方の周りには、父母がいて祖父母がいて叔父叔母がいて子どもがいて、従兄弟がいて友達がいて同僚がいて…多くのすべての方々が自責と孤立と身の置きどころがない、そういう経験をなされています。職場や学校で、昨日自殺した有名人の話をテレビの報道といっしょに『死ぬくらいなら、がんばって生きておれたろうに。死ぬ勇気があるのなら。』そうやって話していませんか…?一緒に話している仲間の中にに自死遺族がいらっしゃるかもしれません。追い詰められ心の病で亡くなっていく人は、どんな思いで亡くなっていくのか、どう追い詰められて亡くなっていくのか、そのことをきちんと理解していることで、私たちの自殺対策は固まっていくのではないかと思います。」


第3部 パネルディスカッション「いのちを支える現場から」



清水康之さん(NPO法人ライフリンク代表・自死遺族支援全国キャラバン実行委員長) 
 清水さんは、「年間3万人という自殺者数はただごとではない。年間は3万人でも、毎年増え続けているのが現状。この3万人という数に、ひとの存在を感じられるか、私たちの想像力が問われている」とお話されました。「特別な人だけが特別な亡くなり方をするのではなく、日常生活の中で追い込まれていく。私たちの日常に潜む身近な社会問題なのだ」と。

 また、自殺で残された方たちの悲しみというのは、『サイレントグリ−フ(沈黙の悲しみ)』といわれ、語れる場所がないということ、そして一昨年成立した『自殺対策基本法』をはじめ、日本の自殺対策というのは、この『沈黙の悲しみ』を打ち破って自分の体験を社会に対して表してくれた遺児たち、子供たちがいたからということをお話されました。

 なお、この全国キャラバンの目的について、こうお話されました。「全国キャラバンは、この法律の理念や遺族支援など、こうした“実務を根付かせるための土壌を耕す”ことを目的としたものです。遺族の方々にとって安心して悲しむ場所がない、地域の中で安心して悲しめない、そうした人が大勢いる。地域の中で悲しみ・苦しみを抱えた人をどう支援していくか?社会としてどう支えていくのか?これが自殺対策なのです。」

 さらに、福岡県に次の2つを提案されました。
@横浜の救急医療の例では、精神科医とケ−スワ−カ−が入っており、ケ−スワ−カ−が中心となり、患者から要因を聞きだすことに取り組んでいる。「心と外傷」双方の治療に当たっている。福岡でも取り組んでみてはどうか?
A福岡でワ−キンググル−ブを作ってもらいたい。現場の声(保健士、NPOなどの声)を吸い上げ→自殺対策協議会→政策に反映させてはどうか?


小野亨雄(みちお)さん(社会福祉法人「北九州いのちの電話」理事長)
 1977年に発足した北九州いのちの電話の活動紹介と歴史、これからの課題についてお話いただきました。

 「30年近く自殺防止を目的にいのちの電話は設立されました。現在、自殺予防フリ−ダイヤルが厚生労働省の予算支援を受け、2001年から開始されることになりました。北九州では、3台が365日24時間対応し、現在約200名の相談員がおります。今後も今日のような機会があれば、啓発活動にも力を入れて、みなさんといっしょに自殺防止の一翼を担えればと思っております。」


宇都宮健児さん(「日弁連多重債務対策本部」本部長代行「内閣府多重債務対策本部有識者会議」委員) 
 多重債務問題への取り組みと貧困の問題をお話いただきました。自殺の4人に1人が経済・生活苦であり、その根底に多重債務(サラ金・借金)があるということ。昨年12/10〜16に日弁連・日司連が行った『無料相談会』では、450箇所1,400人の相談員に、6,000件を超える相談があったことをお話されました。

 そして、こうお話になりました。「今まで、自殺対策と多重債務問題は別々だった感があります。多重債務問題の対策は、予算が全くないのが現状です。予算的な面でも連携していければと思います。こうした多重債務問題の前に、貧困・収入格差の問題に取り組むことが重要と考えます。2007年北九州で『おにぎりが食べたい』と日記を残し、生活保護申請を断られて男性が亡くなったことが報道されたのは、みなさんの記憶に新しいと思います。これは『行政による殺人だ』と思います。福岡県から北九州へきちんと物申していただきたい。『弱い立場の人たちを孤立させない。それができないと自殺対策は進まないのではないか』と思います。」


植田清一郎さん(福岡県医師会常任理事)
  「うつ病、自殺念慮は『助けを求めていい』ということを知っていただきたい。助けを求めるということは、適応力が高いという反応であるということです。うつ病は「こころのかぜ」ともいわれ、高い有病率があります。女性に多いが、自殺の70%が男性である(女性の2.5倍)という実態があり、この要因は良く分かっていない。研究していかなければならない今後の課題であります。」

 そして、福岡県自殺対策協議会の中間とりまとめの内容として以下のことをお話しになりました。@悩んでおられる方は、電話帳をめくって電話をしません。一つの窓口、総合窓口を設けることが必要であること。A一般医のドクタ−にうつ病のことを知っていただくこと。うつ病診療をもっと充実させていくこと。引き続き力を入れていきます。B遺族の問題に関しては、リメンバ−福岡の井上さんと連携していきたい。C一定の町をスクリ−ニング調査し、男性の自殺率が高い地域を抽出、実態を把握したい。

 最後に、こうお話になりました。「一般救急医療との連携はまだ取れていないのが現状です。また、医療の問題は多重債務問題と結びついていない。本当に自殺を減らすなら、連携して取り組むことが重要であると思います。今後、医師会としても自殺問題に関することをホ−ムペ−ジに掲載するなどして取り組んで行きたい。」

井上久美子さん(「リメンバー福岡自死遺族の集い」)代表)
 オブザーバーとして、次の要望・提案をされました。
@教育関係の方へ、自死遺児への心のケア研修会の継続的な取り組みをお願いしたいと思います。
A福岡県内では、自死遺族の集いはリメンバ−福岡しかありません。民間だけでのというのは難しいのが現状です。各地区で行政が主体となって、集いが数多く開催されることを願います。行政として、支援者として主導権を握るのではなく、あくまでも遺族の方へ主導権を預けて、安心して語れる時間・場を提供するなどしていただきたい。
B私たちは、すべての問題を解決することはできません。すべて遺族のことを背負うことはできません。そっと支えていくだけです。
Cカミングアウトして声を上げた遺族は、何の為に何を伝えたくて何を訴えているのか、考えて頂きたい。温かく見守ってほしい。


村上文男さん(福岡県保健福祉部障害者福祉課長) 
 感想と今後の課題についてお話をいただきました。キーワードとして残った言葉として、@ 数字に人を感じるA地域の中で安心して悲しめる社会を、というふたつを挙げられました。「行政に携わる者として、きちんと頭に入れて取り組んで行きたい。行政に対して厳しい意見をいただきました。ありがとうございました。

 また、ワ−キンググル−ブを立ち上げる件は、ライフリンク清水さんに、改めてアドバイスをいただきたいと思います。多重債務問題は、福岡県として連携して取り組み、リメンバー福岡のような民間ボランティア団体へも支援をして行きたい。また北九州の問題に関しては、しっかり承っております。『誰のために働いて給与をもらっているのか?』を職員共々、周知徹底していきたい。」

◇◇


 なお、福岡県でのキャラバン・キ−ワ−ドは、『つながる手、わかち合う声』になりました。




◇自死者のメッセ−ジ展「遺族語る」パネル展示
◇リメンバ−福岡「大切なあなたへ 自死遺族のメッセ−ジ」パネル展示
 リメンバ−神戸・名古屋・福岡が共同して小冊子も作成し、ご来場のみなさんに届けられました。魂が揺さぶられるようなメッセ−ジ集です。
◇北九州いのちの電話・福岡いのちの電話 活動紹介