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全国キャラバン in 富山 [2008年03月17日(Mon)]
報告者:福山なおみ(NPO法人ライフリンク)


 平成20年2月16日(土)、「富山キャラバン」が、北陸の地、富山県県民会館で開催されました。全国キャラバン34番目の開催地となります。



 はじめに、河村幹治さん(富山県厚生部健康課課長)から主催者挨拶がありました。

 「富山県の平成18年の自殺者は293人で、本人だけでなく遺族の支援も重要となる。富山県では、平成18年より自殺対策協議会を設置し、医療・保健・官・民等が一丸となり、一人でも自死者が少なくなるよう対策を考えてきた。この度、NPOライフリンク全国キャラバンの一環として『自死遺族支援』が自殺総合対策大綱に基づき、富山に根ざしていくよう努力していきたい」と話されました。

 キャラバンは、三部構成で行われました。

◇◇


<第一部>DVDによる遺族支援の実際(リメンバー福岡の「分かち合う声」) 

 第一部では、リメンバー福岡でのわかち合いの様子が上映されました。

 上映にあたり、代表の井上久美子さんから、「4年前より自死遺族支援を始め、2か月に1回『分かち合い』という集いを行っています。どのような気持ちで、何のために、分かち合いをしているのかを見ていただきたい」とお話があった後、4人の方の体験がDVDにて紹介されました。

◇◇


<第二部>自死遺族の語り



 第二部の自死遺族の語りでは、大野絵美さん(埼玉県)の体験談が語られました。

 保健師である大野さんは、このような場で、《自死体験を語る》のは初めてであるということでしたが、時折胸を詰まらせながらも最後まで冷静に語られました。(以下要約)



 家族を亡くした後に、誰かがそばにいて一緒に泣いてくれました。特別何かしてくれたのではないですが、それが今の支えになっています。それが、勇気になる。受診するとか、薬を飲むとか、カウンセリングとか・・・それは何かちがう・・・。

 何かがあったら、死ななかったのかもしれない。家族も、そのようなところ(わかち合いの会)に行けていたら、死ななかったかもしれない。

 埼玉には、わかち合いの会はなかった。そこで、仲間に出会い、遺族支援活動(あんだんて)を立ち上げました。

 悲しい話をしに来たのではないです。私のような人を一人でも減らして欲しい。隠さなくても良い世の中になったらよいと、自分にできることをやっていきたいと思います。(自死された方は、)『特別な人ではない』ということです。



 そして、大野さんは語りの最後に、次のようなメッセージを私たちに届けてくださいました。
 「大切な人に、《あなたのことを大好きだから、死なないでね》と言って欲しい」と。

 その瞬間、大野さんと心を寄せて聴き入る参加者との間に、優しい、温かな時間・空間が共有できたように思えました。大野さんの提言を含む真摯で勇気あるスピーチに会場から感謝の拍手が響きました。

◇◇


<第三部>パネルディスカッション「自死遺族の支援のために」

コーディネーター:
 西田 正弘 氏 (NPO 法人ライフリンク)
パネリスト:
 井上 久美子氏 (リメンバー福岡)
 豊原 則子 氏 (富山・生と死を考える会)
 高野 利明 氏 (富山県臨床心理士会)
 角田 雅彦 氏 (富山県精神科医会)
 數川  悟 氏 (富山県心の健康センター)




 まず、NPO 法人ライフリンクの西田さんが、今自死遺児総数は9万人と推計しており、遺族支援が重要であることを話されました。

 そして、「自死遺族支援全国キャラバン」の趣旨説明として次の3つを述べられました。
 一つ目は「自殺対策のつなぎ役」として、二つ目は「自殺対策の理念を根付かせる」ために、三つ目は「自死遺族支援」をすることです。その全国キャラバンは、3月30日大阪での開催が最後になることを紹介されました。

 次に、パネリストの方が、それぞれの立場での取り組み、遺族支援の課題、支援者の課題について、またDVDや体験者の語りを聞いた上での感想を踏まえて語られました。



數川さん
 はじめに心の健康センターで活動されている數川さんは、「他の相談にはのれるが、自死遺族の相談は難しく、その重大さを感じた。
 取り組んでいることは、ライフステージ別の観察(家族・学校・現場)。
 
 平成18年からは富山大学精神科での『リスク相談』思春期・青年期におけるうつ病や統合失調症の早期発見に努めている。また、月に2回の『グリーフケア相談』を行っているので《分かち合い》につなげていきたい。

 大事なことは、県民全体で取り組むことである。研修や広報は、実行委員会形式にして知恵を結集し、一人でも自死者が減るようにする。課題は、警察や葬儀に関わる人たちにいかに届けるかである。」と述べられました。

                  

高野さん
 カウンセラーをしておられる高野さんは、「DVDを拝見し、話す相手がいなかったということがいえる。話すことは、気持ちの整理をつけていくこと。そのためには、聴くのがポイントである。」とお話になられました。

 そして、臨床心理士の立場から、【3つのなぜ?】について話されました。1つ目は『なぜ、自死したのか?』(自殺の理由や動機、原因)、2つ目は、『なぜ、追いつめられたのか?』(自死の際の心理は、楽になりたかった、自己価値がない)、3つ目は、『なぜ、打ち明けてくれなかったのか?』(相談相手は誰なのか)。

 また、3つのTについて述べられました。Tear(泣く)、Talk(話す)、Time(時間)、これらも遺族支援には重要であるということ、さらに、感情を整理すること、事実を語ること、体験を共有することが大切である、ということをお話されました。
                     


豊原さん
 「生と死を考える会」の豊原さんは、「ビハーラの理念のもとで、自死遺族の声を電話相談を通して聞かせてもらってきた。その活動は、平成元年から始めて大学ノート1冊にもなった。男女比は11対6である。『風聞』を食い止めることの必要性、事例を通して、かかわりをもった人たちや話を聴いてくれる人を求めて電話をすることが大切である。」と述べられました。

 また、親鸞聖人の言葉『できること/できないこと』の整理、が大事であろうと話されました。
                      


角田さん
 精神科医の角田さんは、「大野さんの心の叫びを聞いて、医療だけでは不十分で、わかち合いが大切かなと思った」と話されました。

 そして、「できるだけ早い段階でのケアの重要性と、直後の感情を素直に表す機会が大切である。」と話されました。「しかし、強要してはならない。分かち合いは、悪者探しをするのではなく、自分のことを語る場である。」と、《ありのままの率直な感情を表現することの重要性》を伝えられました。遺族の感情は『自責感』が強いことを承知した啓発活動が重要であるとご指摘されました。

 最後に、『富山うつプロジェクト』が目指しているキャッチフレーズ@うつは皆で治すもの、Aうつは特別な病気ではないこと、B一人ひとりが自殺予防の主役である、とまとめられました。
                     


井上さん
 井上さんは、リメンバー福岡立ち上げの経緯や、わかち合いの会の紹介をお話しされました。

 最近では、大切な人を亡くされて早い時期での紹介者が増えてきたことと、会を運営する
際の大切なルールについて話されました。

 その内容は、守秘義務があること、批判しない、評価しない、励まさない、パスあり、話を聞くだけでも構わない、トーキング・スティックを持っている人だけが話すことができること、メモをとらないこと、などです。

 さらに、自死遺族だけになると、うつになるほど社会や自責感に追いつめられることがあるということをお話になられました。そして、社会的偏見の問題で、「自殺」「うつ」に対する理解のなさがまだまだあり、「逃げ」、「弱い人間」、「死ぬ勇気があるのなら・・・」というような偏見に対しての啓発も重要である、とお話されました。

                 

西田さん
 西田さんは、「心理的問題のひとつに、遺族に残された借金から引き起こされる経済・生活困難がある。このような状況で、誰が、どこで、どのような手助けができるのだろうか。『孤立』させるものは何か。周囲の目(偏見)にどう対応したらよいのか。必要性をどのように届けるのか。気持ちの整理をするための「わかち合いの場」があるのか。」など、課題を投げかけられました。

 その後、パネリストお一人ずつが、提言も含めて述べられました。              



 數川さんは、「必要な方に、必要な情報が伝われば、何らかの解決策があるはずだ。利用する情報は、近づいていけるか。自死遺族が《安心》して話せることが、重要なことである。」とお話されました。

 角田さんは、「偏見については、CMやゲストスピーカーの語りなどメンバー構成し、複合的に行ってみてはどうか。」と提言されました。

 高野さんは、「カウンセリングについて、さきほど(大野さんの語りの中で)何か違う、と言われたが、それは一方向であるからであって、何かの時には、『ここに』が大切かと思う、と話されました。

 豊原さんは、「泣いてもいい、忘れなくてもいい、忘れても薄情ではない」ことが大事である、と伝えられました。

 井上さんは、「当事者の方に話を聞かせてもらわないとわからないことがある」とお話されました。「どんなふうに、何が辛いのか」を語れる死になるよう、ご遺族の感情をステレオタイプ化しないことも重要であるとお話されました。ご遺族は辛い立場に置かれるので、つながりを持つことで解決の糸口を見つけていけるということと、追い込まれていった死をていねいに見ていく必要があること、そして自殺をどのような言葉で語っていくかについてお話されました。

◇◇


【会場からの発言】
 私は1年前に自殺で夫を亡くした。「『うつプロジェクト』の中に、<うつは夫婦で治すもの>とあった。私はこの言葉を聴いて、お前が殺したんだ、と思った。マスコミでも自殺はいけない、という。一生懸命に生きたいい人だった。『うつプロジェクト』が、役所仕事としてではなく、もっと関心を持って参加して欲しい」と、力説されました。

 井上さんは、「法律ができて何をしてくれるのか?ということはあるが、教育、精神科、行政、市町村等が連携し、これから何かが始まるような気がする」、と述べられました。

 西田さんは、「ご遺族と接する中で、私の気持ちがわかりますか?と問われることがある。だからこそ、考え、行動するために、考えるだけでは始まらない、行動を具体的に起こすことである。この声を届ける場所を作ること、自分の意見を届けること、また、一生懸命に遺族支援に携わる人のケアも考える必要がある」、と話されました。

 そして、一人ひとりに、「何かできるか。ここから何かを始める、その思いを持って…」と締めくくられました。

◇◇


 会場入り口に設置された『遺族語る』のパネルの前には、開始前から参加者が集まり、沈黙のまま、声なき声にじっと耳を傾けて下さっていました。





 なお、富山のキャラバン・キーワードは、「ひとりで悩まないで あなたは大切な人」となりました。