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全国キャラバン in 愛知 [2008年02月18日(Mon)]
報告者:藤澤 克己(ライフリンク事務局長)


2月3日(日)愛知県自殺対策シンポジウムが開催されました。


「気づきと見守りによる 生きやすい社会の実現を目指して」
というテーマが設定され、会場となった「ウィルあいち」には
約600名の方が集まりました。

開会の挨拶は、西村眞副知事が知事のメッセージを代読。
愛知県では、現状約1500名の方が毎年自殺で亡くなっている
のですが、平成28年までに年間自殺者数を1000名以下とする
「あいち自殺対策総合計画」を策定したことが伝えられました。

◇◇

まず、精神科医の香山リカ氏より「自殺への気づきと見守り 
〜精神科医の立場から〜」と題した基調講演がありました。


精神科医として仕事をしてきた中で、つくづく「生きるって大変な
ことだな」と感じていると話をしてくれました。
「生きる」ということが当たり前だと思っているかもしれないが、
それを続けられないこともあって、自死を選ぶこと自体は、特殊な
こと、異常なことではないと感じると、現場で感じる「私の意見」
として教えてくれました。

◇◇
パネルディスカッションは、2部構成で行われました。
前半が「自死遺族からのメッセージ〜自死遺族支援に向けて〜」、
後半は「働き盛りの自殺予防から相談窓口のネットワーク〜」を
それぞれテーマに掲げました。

前半の「自死遺族からのメッセージ〜自死遺族支援に向けて〜」の
パネリストの方々は次の通りです。
 野々山 尚志 氏(リメンバー名古屋自死遺族の会運営委員)
 清水 康之 氏(ライフリンク代表)
 花井 幸二 氏(愛知県自殺対策推進協議会委員)
コーディネーターは
 大重 ョ三郎 氏(愛知県精神保健福祉センター所長)
が務めました。


◇◇

コーディネータの大重氏が、まず「自殺総合対策大綱」の概要を
説明し、続いてパネリストを紹介しました。

野々山氏は、1999年高校3年生の時に父親を自殺で亡くされた
ご自身の体験を語ってくれました。
必死にサインを出していたにもかかわらず、父親の苦しみに気づけ
なかったと、自分を責め、苦しんだそうです。当時は「世界で一番
不幸だと思っていた」とのこと。
転機が訪れたのは、あしなが育英会の奨学生となって「つどい」に
参加し、そこで初めて父親の死が自殺であったことを人前で言えた
ことだったそうです。やがて『自殺って言えなかった』という本に
手記を寄稿し、名鉄東岡崎駅前で体験談を話す機会を得、「本気で
向き合えば人の心は動かせる」と気がついたそうです。
また、リメンバー名古屋自死遺族の会の運営委員として活動する中
で気づいたことも教えてくれました。
ご遺族にはそれそれの想いがあり、共感できる人できない人がいる
し、自死を語れない遺族もいることなどから、固定化された遺族像
を取り払ってもらいたいと訴えました。
自殺予防のために自死遺族会があるのではなく、自死遺族会は遺族
のため、自分自身のためにある、「分からない。でも分かりたい」
という人の力を嬉しく感じる、とのことでした。
「まずは、自死遺族のことを知って下さい。みなさんが出来ること
にそれぞれ取り組んでほしい。」と結ばれました。

清水氏は、「体験談を聞くと、いつもハッとさせられる。悲しみの
連鎖がとめどなく広がっている。」と、野々山氏の体験談を受けて
の感想を述べました。
どの自死遺族も感じる「まさか」という言葉に、どれだけ共感する
ことができるかが問われているとした上で、遺族の声から学ぶ必要
があると話を続けました。
遺族の声は、しばしば「サイレントグリーフ」と言われているが、
それは遺族が語らないのではなく、語らせない語ることができない
社会であることを指摘しました。
自殺対策は2006年の自殺対策基本法から始まったものの、国は
自殺を個人の問題としてきたから取り組むのが遅れたのであって、
自死遺族の方々がサイレントを打ち破ってくれたことがなければ、
このような動きになっていなかったのではないかと、当事者の声の
重要性を教えてくれました。
自分たちと同じような人を増やしたくない、自分たちと同じように
孤立した人を支えたい、そういう遺族の想いをみんなで引き継いで
いくことが重要だと教えてくれました。

花井氏は、自殺対策は社会の偏見との戦いだと切り出しました。
自殺対策の活動には、自殺予防と自死遺族支援とがあって、それは
両輪としてきちんと分けて考えるべきだと話されました。
よく自殺予防のために自死遺族支援があると話をする人がいるが、
それは間違っていて、「あいち自殺対策総合計画」を策定する中で
遺族支援をしっかりと位置づけなければ目標は達成できない、と
述べられました。
愛知県は、交通事故者数が全国ワースト1だそうです。そのための
対策ももちろん重要ですが、そのワースト1の死亡者数の実に5倍
もの自死者がいることに対し、「自分たちは十分に取り組んできた
のか、猛省すべきだ」と訴えました。



一通りの発言に続いてパネラー同士の意見交換があり、様々な想い
が語られました。以下はその一部です。
・語れない自死遺族が下を向いて固まっていたが、語れる「場」を
 与えられたとき、確実に回復していくことを見てきた
・自死遺族支援は責務だけでなく、人としての温かみを育てられる
・目線を遺族に合わせていくべき
・デリカシーをもって、支援に取り組んでいきたい
・生きづらい社会を変えていかなければならない     など。

限られた時間でしたが、自死遺族を支援するというのは、いかに
遺族をエンパワーする(力づける)ことができるかということ、と
コーディネータの大重氏が纏められました。

◇◇

後半の「働き盛りの自殺予防から相談窓口のネットワーク〜」の
パネリストの方々は次の通りです。
 杉本 日出子 氏(産業保健師)
 瀧 康暢 氏(弁護士)
 香山 リカ 氏(精神科医)
コーディネーターは
 吉田 京 氏(愛知県健康福祉部技監)
が務めました。

◇◇

杉本氏からは、働きざかりの自殺予防として職場におけるメンタル
ヘルス対策の重要性の話がありました。

瀧氏からは、多重債務問題と自殺対策の連携の話がありました。

香山氏は基調講演を補足して、自死遺族の置かれた状況があらゆる
社会問題を集約していると指摘し、支援する側がそれぞれの立場で
関わり連携していく必要性があると述べられました。

一通りの発言に続いて意見交換があり、自死には関係ないと思って
いる人であっても必ず関係している問題だということを相互に認識
することができました。

愛知県におけるキャラバンメッセージ(キーワードリレー)は
やさしさと思いやりのあふれた社会を」に決まりました。

◇◇

シンポジウムとして盛り沢山でしたが、充実した内容の話を聞く
ことができたと思います。
会場ロビーに設置された「遺族語る」のメッセージパネルの前には、
多くの人が立ち止まり、メッセージに見入っている姿がありました。