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全国キャラバン in 鹿児島 [2008年03月07日(Fri)]
報告者:藤本


 鹿児島としてはこの冬一番の肌寒い気候の中、『自殺対策全国キャラバン 鹿児島大会』が2008年2月9日(土)に開催されました。

◇◇


 会場となったのは鹿児島県鹿児島市にある谷山サザンホールで、参加者は約270名でした。



◇◇


 初めに、開会の挨拶として3名の方からのお話がありました。

 まず、伊藤祐一郎さん(鹿児島県知事)の言葉が副知事によって読まれ、その主旨は「国内の自殺者数は9年連続で3万人を超えている。平成18年には鹿児島県内の自殺者数は507人で、その自殺率は全国で9番目の高さであり、鹿児島県内でも自殺対策は極めて重要な課題である。」というものでした。





 次に、吉牟田直さん(鹿児島県精神保健福祉協議会会長)は、「自殺予防は従来は精神医療の領域内のものと思われがちであったが、実際には多重債務などの様々な社会的要因が関係している場合が多い。」ということを強調されていました。



 さらに、森博幸さん(鹿児島市長)の言葉が読まれ、その主旨は「自殺に追い込まれる要因は一つではない場合が多いため、自殺を防ぐことはこれまで難しいと言われてきた。しかし、まずは自分たちに何ができるかを議論していくことが自殺対策の第一歩であると思う。」というものでした。

◇◇


 その後、『自死遺族からのメッセージ』と題して、DVDの上映と自死遺族の体験発表が行われました。



自死遺族からのメッセージ

 上映されたDVDでは、遺族の思いなどが凝縮された、大変密度の濃いDVDでした。そのDVDの中で特に印象的だった言葉は、「仲間の存在が立ち直っていくきっかけになる。過去は変えられないけれど、堂々と生きていきたいという思いが今の僕にはある。」というものでした。



 DVDの上映後、自死遺族の体験発表を、私、藤本がやらせていただきました。



 私の母が今から8年前にうつ病で自殺したこと。次男が重度の知的障害であることを母親として苦悩する日々だったこと。
 そのせいでうつ状態に陥って仕事を休むようになり、「死にたい」と口にするようになったこと。職場への復帰に失敗したため急速にうつ状態が進行し、それから間もなくして亡くなったこと。
 母の死後に私が抱えてきた怒り、自責の念、後悔、落ち込みといったものも、できるだけ具体的に語らせていただきました。
 どん底の時期に『あしなが育英会』の活動を始め、そこでたくさんの仲間と出会い、自分の中に変化が生まれたこと。遺族同士ではなくても、一緒に泣きながら受け止めてくれた友人の存在が、いかにありがたかったかということ。そういった内容を中心にお話をしました。



 体験発表の後、休憩時間を挟んで、シンポジウム「自殺対策 いま、わたしたちにできること」に移りました。

◇◇


シンポジウム 「自殺対策 いま、わたしたちにできること」

【コーディネーター】
 宇田英典さん(大隈地域振興局保健福祉環境部長)

【シンポジスト】
 川原芳子さん(さつま町健康増進課健康増進係長)
 禧久孝一さん(奄美市市民課主幹兼市民生活係長)
 平川忠敏さん(鹿児島いのちの電話協会常務理事)
 山口和浩さん(自死遺族支援ネットワーク『Re』代表)

【助言者】
 佐野輝さん(鹿児島大学大学院医歯学総合研究科教授)
 清水康之さん(自殺対策支援センター『ライフリンク』代表)





川原さん 
 はじめに、川原芳子さんは「私が勤務しているさつま町は、鹿児島県内でも自殺率が高い」と述べられた上で、さつま町が取り組み始めている自殺対策について説明されました。大きく分けると、それは以下の3つでした。
・こころの健康の普及啓発事業
・うつのスクリーニング
・自死遺族への家庭訪問
 1番目の普及啓発事業については、さつま町の広報誌に、こころの健康に関する記事を掲載しているそうです。
 2番目のスクリーニングについては、基本検診や介護予防検診の時に町民に『こころの健康調査票』を記入してもらい、該当者には2次スクリーニングとして、さらなる検査を行っているそうです。
 3番目の遺族支援について川原さんは、「以前までは『自死遺族の方々は、そっとしておいてあげたほうがいいのではないだろうか』と私は思っていた。しかし、やはり遺族支援は必要であると私たちは考えるようになり、さつま町では自死遺族への家庭訪問を始めた。」と述べられました。



禧久さん
 次にお話をされた禧久孝一さんは、18年間にわたって奄美市役所内で多重債務者の相談業務に従事されている方です。
 禧久さんはこれまでに6千件あまりの相談に乗り、相談後に借金苦で自殺をした人は一人もおらず、禧久さんを頼って奄美市以外の全国からも相談が寄せられているそうです。
 全国の弁護士や司法書士とも連携を取りながら、相談内容の解決に日々尽力されています。
 禧久さんは、「私の経験上、多重債務の状態が5年以上続くと、自殺を考えてしまう人が珍しくない。」と説明され、さらに、「私は、相談者の借金の問題のみならず、その人の家族構成や健康状況にも目を配るようにしている。債務者の中には、保険証すら持てない人や、子供を病院に連れて行くことすらできない人もいる。債務整理のお手伝いをするだけではなく、生活再建の支援をするつもりで私は相談業務をやっている。」と述べられました。
 そして、「自殺で遺された家族の苦しみは大きい。債務者1人を救うことは、その家族全体を救うことにもなる。」と力説されました。



平川さん
 3人目のシンポジストは平川忠敏さんで、『いのちの電話』による24時間・年中無休の相談業務の視点からお話を聞くことができました。
 平川さんはまず、「『いのちの電話』は、追いつめられた場合でもいつでもつながるという、安心感を与えられる相談窓口でありたい。そのためにも、今後とも広報・宣伝をしていきたい。」と述べられました。
 その上で、「追いつめられた個人だけではなく、個人を取りまく地域社会全体へのアプローチが必要だと思う。その信念のもと、『鹿児島いのちの電話』では、公開講演会や、相談の電話を受ける市民ボランティアの養成などを行っている。」と、その取り組みの模様を紹介されました。
 今後の課題として、「高齢者は年齢別で見ると自殺率が高いのに、『いのちの電話』にかけてくる人が少ない。高齢者には、電話での相談を待つよりも、面と向かっての対応をしたほうがいい場合が多いのではないか。一つの方法にこだわるのではなく、年齢などを考慮したアプローチの使い分けが必要なのではないか。」ということを挙げられていました。



山口さん
 最後のシンポジスト・山口和浩さんからは、ご自身が父親を自殺で亡くされた遺族としての経験と、自死遺族支援ネットワーク『Re(アール・イー)』の代表としての立場から、遺族支援についての貴重なコメントが多数述べられました。
 山口さんはまず、「自殺に対しての周囲からの安易な慰めや批判は、遺族が回復をしていく邪魔になる。」と述べられました。
 さらに、「弱いから自殺したんだ」「自殺するなんて勝手なやつだ」というような偏見のみならず、例えば「自己破産すれば死ななくてすんだのにね」というような一見悪気のない言葉でも遺族は傷つくことがある、と山口さんは話されました。
 その他、「おいしいものを食べたり、テレビを観て笑ったりといった本来は楽しいことでさえも、自分自身が楽しむことを否定的に捉える遺族も多い。」という山口さんの洞察は、遺族の自責の念を鋭く突いていると思いました。
 山口さんは、「語りの相手は遺族だけではない。」ということも強調されました。その言葉は山口さんご自身の経験に基づいており、その経験とは「あしなが育英会で活動していた頃から現在に致るまで、遺族ではない人たちの前でもたくさん体験談を話した。その人たちが私の話を真剣に聞いてくれている様子や、シンポジウムで私の一つ一つの言葉に頷いてくれるというような反応が私は嬉しかったし、それが自信になった。」というものです。
 山口さんは最後に、「相談窓口や制度があっても、それが使いづらければ、作る側の腕が悪いと言うしかない。使えるようにするのが腕の見せ所。」「私が生まれ育った長崎県も、この鹿児島県も島が多い。自殺対策が島に切り込んでいくためにも、行政との連携がますます必要。」と述べられて今後の課題を提示されました。





宇田さん
 この山口さんのお話と、遺族の体験談が映されたDVDの内容を踏まえた上で、コーディネーターの宇田英典さんは、「自死遺族であることを知られる不安を抱えていた山口さんがその後、分かち合いの場を経て、今日はここで素晴らしいお話をしてくださった。私たち行政側の人間にも重要なサジェスチョンをいただいた。」とコメントされました。



佐野さん
 4人のシンポジストのお話の後、鹿児島大学教授の佐野輝さんは、「私は医師として、自死遺族がうつ状態に陥りやすいのを肌で感じている。鹿児島県は自死遺族のサポートが遅れている。」と現状を述べられた上で、「鹿児島県の自殺対策の今後の課題を、ライフリンクの清水代表にアドバイス願いたい。」と、清水康之さんの方を向かれました。



清水さん
 清水康之さんはまず、「自殺対策をしていく時に問われるのは『そこに人を感じることができるかどうか』であると思う。」と述べられました。
 自殺を身近な自分自身の問題として捉えなければ、心が密に通った対策は行えないということを伝えるために、清水さんは論理的に、心に訴えかけるように話されました。
 「国内の自殺者数は10年連続で3万人を超える見通しです。例えば今年自殺してしまった人の中に、10年前の時点で自分が10年後に自殺をすると予想していた人が果たしてどれぐらいいたでしょうか。あるいは、自分が遺族になると予想していた人がどれだけいたでしょうか。」という清水さんの問いかけには説得力があり、「特別な人たちが特別な理由で自殺をしているわけではない」ということが強く伝わったのではないかと思います。
 最後に清水さんは、鹿児島県内でも遺族の会を作ろうという動きがあることを受けて、「単に遺族のために分かち合いの場を作るのではなくて、自分たち自身のためにも作るんだという気持ちでやってほしい。いつ誰が遺族になるのか分からないということを忘れないでほしい。」と述べられました。

◇◇


 閉会の挨拶として、吉田紀子さん(鹿児島県保健福祉部長)からお話があり、「私たち一人一人が自殺を身近な社会問題として受け止めることが必要不可欠だと感じました。」と感想を述べられました。

◇◇


 今回のキャラバンに参加して私が感じたのは、自死遺族支援と自殺防止をともにバランス良く進めていくのは難しいことだけれど、このような意見交換の場を今後も大切にしていけば、少しずつでも『そこに人を感じられる自殺対策』に近づいていくはずだということです。

◇◇


 鹿児島県でのキャラバン・キーワードは、『できることから 寄り添い合う』 となりました。