CANPAN ブログ検索
Loading
  • もっと見る
«全国キャラバン in 福岡 | Main | 全国キャラバン in 鹿児島»
全国キャラバン in 沖縄 [2008年03月05日(Wed)]
報告者:桂城


 1月26日(土)、沖縄県那覇市にある沖縄産業支援センターで、平成19年度沖縄自殺予防キャンペーン“自殺対策シンポジウム”が開催されました。



 シンポジウムには、会場を埋め尽くすかのように200人以上もの方が参加されました。
 会場内では『遺族語る』のパネルの展示が行われ、垂れ幕には沖縄らしい鮮やかな青色の文字で“自死遺族支援 今、わたしたちができること”と掲げられました。とても温かな雰囲気が場内に流れていました。



◇◇


 シンポジウムは、総合司会の田盛広三さん(沖縄県福祉保健部障害保健福祉課精神保健福祉班長)の柔らかな沖縄弁の進行のもと、まずは主催者挨拶として、沖縄県知事代理の方が「沖縄県の自殺者数は過去最高の400人を超え、今や交通事故の6倍といわれている。社会の誤解が遺族をどんどん狭い世界へ追いやり、悲しみの渦が連鎖している。1人1人が自殺対策の主役であり、県もできる限りのことを協力します。」と宣言されました。

 続いて自死遺族からのメッセージとして、福岡キャラバンでも共感を呼んだDVDが上映されました。奥様を自死によって亡くされた男性は、奥様を亡くした痛みに加え、警察の尋問のやり方や周りの方からの偏見に苦しめられたこと、自分の力ではどうすることもできないもどかしさについて打ち明け、また、息子さんを失った女性は「息子は苦しんで亡くなったのに、私は笑って生活したら息子に申し訳ない。息子以上の苦しみを私は背負って生きていかなければならない」と悲しみの心を打ち明けてくださいました。



 DVDを見ながら私自身も涙が止まらず、自殺対策のために悲しみの心を解き放って下さった遺族の方々に感謝の気持ちでいっぱいになりました。

 そんな気持ちの中、ついに私に役目が回ってきました。今回で、人前で自分の体験を話すのは8回を超えることになりますが、何回話しても緊張は消えません。「ただ何か力になりたい」その一心で壇上に立ちました。



 私は、4年前の高校3年生の夏に、会社の経営不振による多額の借金が原因で父親を自死という形で失いました。強かったはずの父の突然の自死。そのことで気づかされた様々なこと。

 特別なことではない、誰にでも起こりうることなんだということ。

 “自死”によって大切な人を亡くした遺族が感じる偏見。「長女だから・・・」「高校生なんだから・・・」直接的じゃなくても簡単に発せられた周りからの言葉が、知らず知らずのうちに沈黙せざるおえない状況に追いやり、「生きたくても生きられない人もいる世の中で自らを殺すなんて許されない」という社会の風がそれに追い討ちをかけるようにして、襲いかかってくる。

 「自分があの時優しい言葉をかけていれば・・・」「自分が父の異変に気づいていれば・・・」自責の念は今でも消えることはなく、今でも父の死については向き合えないこともたくさんあること。

 私が出会った幼い頃に父親が首を吊った現場を目撃した後輩たちは、今でもフラッシュバックに悩まされ、いつか自分も自殺してしまうのではないかという不安に眠れない日々を過ごしている。そんな気持ちを抱えている子ども達がたくさんいること。



 途中であふれてくる涙に頭が真っ白になりながらも、ただありのままに自分が感じたことを父に対する想いを精一杯伝えました。

 「自死問題を他人事としてではなく、自分のこととして感じてほしい。1人1人が遺族や遺児達に寄り添い、一緒に歩んでいく。それが、遺族の励みになり、その中で自分のことを打ち明けることが、故人の死と向き合う第一歩、自立への第一歩につながるんだ。」ということを最後に伝えて壇上を降りました。


 話し終わった後の会場の空気は始めの方よりも数倍も温かく、涙を流しながら話を聞いて下さった方々の拍手がまた、私に新たな勇気を与えてくれました。話すことで、また一歩、成長させてもらった瞬間でした。


◇◇


 遺族の体験談の枠を終え、一度休憩を取った後、パネルディスカッションに移ります。

今回のコーディネーターは
 清水康之氏(NPO法人自殺対策支援センターライフリンク代表)

シンポジストとして
 山口和浩氏(NPO法人自死遺族支援ネットワークRe代表)
 井村弘子氏(沖縄県臨床心理士会会長)
 上里とも子氏(沖縄県福祉保健部障害保健福祉課精神保健福祉班主任技師)

の4人が登壇されました。



 まず、清水さんが、年間3万人の自殺者、去年の3万2000人から今年の3万人という数字になったのは決して自殺者が減ったわけではなく、また去年から3万人も増えたんだと認識すべきと指摘し、自死遺族のサイレントグリーフ(沈黙の悲しみ)に目を向けて、皆さんも当事者として自殺対策に参加してほしいと促しました。



 これを受け、上里さんは、沖縄県における自殺の現状を指摘。平成10年度は350人だった自殺者数が平成18年には409人にも増加しており、これは全国で12位を示しており、男女の比率で見ると、男8:女2と男性の自殺率は全国で8位という極めて高い数字になっていると話しました。

 また、沖縄県は自己破産数も全国1位、失業者率も全国1位と就職難などで行き場を無くした若者の、追い込まれたうえでの死や50代60代男性の死も少なくないと述べました。




 続いて、井村さんは臨床心理士という立場から沖縄の自殺の傾向について指摘しました。臨床心理士として別の相談を受けていくうちに「実は・・・」から身内を自死で亡くしたという相談を受けることが多いこと。楽しいことは表にどんどん出すが、悲しいこと、暗いことはなかなか人に話さない、また周りも聞かないという沖縄ならではの風流が遺族をどんどんサイレントグリーフに追いやっているんではないかと指摘しました。



 これを受け、山口さんは自らの体験を踏まえながら、遺児の支援を続けているあしなが育英会の存在、体験を話すことの重要性を指摘した上で、一番の支えは遺族でない人が理解してくれた時であると述べました。“わからない。でもわかりたい”この気持ちが遺族にとっての多くの励みになるという言葉には私も強く共感しました。

 また、実際に遺族支援を始めてきてからの成果やその中で気づかされたこと、実際の遺族会がどういう風な雰囲気でどんな約束のもとに開催しているのかを簡単に説明されました。



 最後に、清水さんは自死対策に対しては“自分と故人との関係性”が重要だということを指摘し、それをもとに、これから沖縄県ではどのように自殺対策に取り組んでいくのかという問いに、上里さんが情報の発信方法の改善や沖縄での遺族会の開催について提言、井村さんは、臨床心理士として産業の場面や子ども達の教育の面から支援することを提言し、パネルディスカッションは幕を閉じました。


◇◇


 自殺対策関係機関紹介では、「いのちの電話」代表、「県多重債務改善プログラム」代表、「日本産業カウンセラー協会」代表、「沖縄クレ・サラ会」代表、「法テラス」代表の方が登壇し、各機関全力をあげて自殺対策に取り組むことを熱く宣言されシンポジウムは無事終了しました。



 人も土地も、暖かくゆったりとした時間が流れる南の島“沖縄”。
 
 だからこそ見えない命がある。
 だからこそ救うことのできる命がある。

 
 沖縄でのキャラバン・キーワード『「実はね…」が安心して言える地域へ』を大切に、1人1人が協力して自死対策に取り組んでいきたいと改めて感じたシンポジウムでした。