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全国キャラバン in 埼玉 [2008年01月28日(Mon)]
報告者:藤澤 克己(ライフリンク事務局長)

1月20日(日)に埼玉自殺対策シンポジウムが開催されました。
会場となったのは桶川市民ホール響の森。


開演前にホールの席はほぼ埋め尽くされ、参加者は約380人でした。


まず、主催者を代表して岡島敦子埼玉県副知事から挨拶がありました。
「このシンポジウムを契機に、自殺対策が進んでいくことを願います。
 埼玉県では、昨年、自殺対策連絡協議会を立ち上げ、すでに提言を
 もらっていますので、それを受けて今後検討を重ねていきます。」と
述べられました。

続いて、「こころの健康と自殺対策」というテーマで講演がありました。
埼玉県自殺対策連絡協議会の会長である野村総一郎氏(防衛医科大学校精神科学講座教授)は、医師の立場から自殺問題について説明をして下さいました。

◇◇


自死遺族の体験談は、埼玉県に住む藤本佳史さん。


19歳のときにお母さまが自殺で亡くなったそうです。その想いの丈を
諄々と語ってくれました。
お母さまが亡くなった当日のこと、どん底を感じ自暴自虐になったこと、
やがて一緒に泣いてくれる仲間に出会えたこと、理解しようとしてくれる
人の存在のありがたいこと等を、ゆっくりと語ってくれました。
「我が家を襲ったような自殺を少なくしたい。また、もしも自死遺族に
 なってしまっても立て直っていけるような社会にしたい、そのことを
 みなさんにも是非考えてもらうきっかけにして欲しい」と、その想い
を会場に向けて投げかけてくれました。
とても心に響くメッセージで、会場には一体感が広がり、この話を聞いた
一人ひとりが自分の問題として受け止めたのではないかと思いました。

◇◇


休憩を挟んで、パネルディスカッションに移りました。
テーマは「いのちの尊さを考える〜今、私達にできること」。
登壇者は次の通りです。
<コーディネーター>
   清水 康之 氏 (NPO法人ライフリンク代表)
<パネリスト>
   大野 絵美 氏(分かちあいの会あんだんて)
   堀川 直史 氏(埼玉医科大学総合医療センター)
   裄V 秀明 氏(埼玉県保健医療部疾病対策課長)
   菊池 礼子 氏(埼玉県精神保健福祉センター主幹)
   山口 和浩 氏 (NPO法人自死遺族支援ネットワークRe代表)


コーディネーターの清水氏から、
「ご遺族の声を聴くたびに、お一人おひとりに人生があり、遺された
 者にとってもかけがいのない人生がある、という当たり前ことを
 思わずにはいられません。
 どこか遠くの特別な人の話ではないということ、当事者である遺族
 が声をあげてくれたことでやっと始まったということを、忘れては
 ならないと思います。
 聴くだけでなく、参加するという意識で、是非一緒に考えてほしい」
というメッセージが伝えられました。

分かちあいの会「あんだんて」代表の大野氏からは、
「勇気をもった体験談だったと思います。心に残りました」という感想
がまず述べられました。
「あんだんて」を立ち上げようと思ったきっかけを教えてくれました。
以前、病院やカウンセリングに通っていたときに「ここじゃ、分かって
くれないし、通じない」と感じたからだそうです。
「あんだんて」という会の様子や運営についての紹介がありました。
会への出席を重ねるごとに参加するご遺族の表情が変わっていくこと、
遺族といっても特別違う人じゃないということ、を教えてくれました。

埼玉医科大の堀川氏は、
ご遺族を支える一員として「自死遺族のケア:精神科医ができること」
というお話しをしてくださいました。
患者の立場に立つということは、違いを認めながらも主体的に関わって
いくことであり、遺族ケアは「喪の仕事」の支援だという主張は、現場
の経験に基づくものだけに、説得力がありました。

行政・政策担当者の立場として裄V氏からは、
総合的に自殺対策に取り組もうとする中で、自死遺族支援も柱の1つと
認識していること、埼玉県自殺対策連絡協議会から提言を受け取り、今後
その具体的な検討を進めていくこと、の説明がありました。

行政・現場担当として菊池氏からは、
分かち合いの会「あんだんて」の設立に関する経緯の紹介がありました。
自死遺族支援がご自身の仕事のテーマだとは考えていなかった当時、
現在「あんだんて」の代表を務めている大野さんの訪問を受け、
「正直、どうしていいか分からず混乱した」と振り返っていました。
その後、精保センターとしてできることから支援し始め、当事者の
声を聞いては気づかされることに対応してきているそうです。
「小さな声であってもそれを行政として受け止める」との思いから、
自死遺族の方向けの相談窓口をここで開設したそうです。
体験談の感想を最後におっしゃりました。
「心から声をあげれば、受け止めてくれる人がいることが分かった」
という藤本さんの言葉が印象的でした、と。

先進的な自死遺族支援を行っている「Re」代表の山口氏からは、
自死遺族支援に関するこれまでの経験に基づいた話がありました。
・どうやって分かち合いの集いを立ち上げて周知していくのか
・勝手に遺族像を作り上げることで語らせない雰囲気にしている
・遺族支援として分かち合いの集い以外にもやるべきことがある
などといった具体的で実践的な話がありました。

◇◇


そして、コーディネーターに促されてパネラー同士の意見交換。
自死遺族はいったん孤立してしまうと二度と繋がることができず、
いかに早いタイミングで情報を渡すことができるかが重要、という
問題提起がなされました。
埼玉県ではこれからということであっても、長崎県や北東北3県
では行政出先機関や警察の協力によって幅広く情報伝達がなされ
つつあることなどが紹介され、先進事例がとても参考になるとの
感想がパネラーからも発せられました。

最後に各パネラーが感じたことを述べ、パネルディスカッション
は終了しました。
・自死遺族の方から教えてもらったことが出発点
・使える情報が整理されて届けられることも重要な自死遺族支援
・関わる人それぞれが自分で出来ることを考える
・自死遺族と支援者とが、気持ちのキャッチボールをしながら
 続けられればいいなぁ
・誰にとっても生き心地の良い社会を作っていくために
など。

ステージの上だけで終始するのでなく、会場に足を運んだ人も一緒
になって考えることのできたシンポジウムになったと思いました。

なお、埼玉県におけるキャラバンキーワードは
「孤立を防ぐ、こころのキャッチボール」 に決まりました。

◇◇


埼玉キャラバンの会場にも「遺族語る」のメッセージパネルが展示され、
多くの方が立ち止まり、ゆっくりと見入っていました。

「遺族語る」のパネル展示の様子