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全国キャラバン in 千葉 [2008年01月14日(Mon)]
報告者:ライフリンク事務局長 藤澤 克己


1月12日(土)に、「ちば自殺対策県民フォーラム 『いのちとこころを考えるちば』」が開催され、220名を超える参加者が集まりました。

◇◇

まず、堂本暁子千葉県知事が挨拶に立ちました。

このフォーラム開催に先立ち、自死遺児に関するノンフィクション本『ぼくの父さんは、自殺した』を読んだそうです。そしてこの本を読んでみて、自殺対策というと、これまで医療的見地からの取り組みだけだったけど、自死遺族支援という対策が必要だったことを改めて教えられたと仰いました。

自死遺児たちが勇気を出して顔も名前も隠さず自分の言葉で語ったことが自殺対策の運動の始まりだったと知ったとき、この運動が日本における差別感をなくしていく大きな力となるはずだと感じたそうです。「今日の時間を共有し大事にして”響きあい”につなげていきたい」と仰ってくださいました。

◇◇


フォーラムの前半は、講演。
大熊由紀子さん(千葉県参与)を座長に迎え、弘中照美さん(自死遺族)と陶山嘉代さん(弁護士)のお二人が講演をしてくださいました。

まず自死遺族としての体験談を、弘中照美さん(多重債務による自死をなくす会 代表幹事)が語ってくださいました。

弘中さんと言えばいつも笑顔を絶やさない明るい印象を持っているのですが、お母さまが自殺で亡くなった平成16年8月末のその日から時間がストップし、3ヶ月間は「飲まず食わず」という生活が続き、1年間は泣いて暮らして過ごしたそうです。当時は「幸せになったらいけない、幸せに思ったらいけない」と心に蓋をしていたようだと教えて下さいました。

立ち直るきっかけは、お母さまを追い込んだ貸金業者を相手に裁判を起こしたこと、そして、街頭募金をする自死遺児たちの勇気ある姿を知ったこと、だったそうです。
それからは周囲の人に支えられ、お母さまと同じような借金で追い詰められる人を救いたいと「多重債務による自死をなくす会」を設立し、今では「申し訳ないけど、とても幸せ」と感じられるようにまでなったと教えて下さいました。

最後に「私はお母さんの子どもに生まれてよかったと思っています」というメッセージが読み上げられ、胸にジーンときました。


続いて、多重債務問題に詳しい千葉県弁護士会の陶山嘉代さんからも「多重債務の解決に向けて」と題した講演がありました。「借金問題は必ず解決できる。悩んでいる人にそのことを伝えたい」という内容は、分かりやすく説得力のある話で、とても心強く思いました。

◇◇

フォーラム後半はパネルディスカッション。
テーマは「生きやすい社会へ向けて―今私たちにできること−」。

   [コーディネーター]
      亀井 雄一 氏 (国立精神・神経センター国府台病院)
   [パネラー]
      橋 広幸 氏 (内閣府自殺対策推進室参事官)
      清水 康之 氏 (NPO法人ライフリンク代表)
      西田 正弘 氏 (分かち合いの会あんだんて顧問)
      宮本 俊明 氏 (新日本製鐵(株)君津製鐵所産業医)
      陶山 嘉代 氏 (千葉県弁護士会)

橋広幸氏は、「自殺総合対策大綱」の概要を説明してくださいました。「多くの自殺は様々な要因が複雑に関係して追い込まれた末の死」であり「自殺は防ぐことができる」という基本認識を示し、「生きやすい社会の実現を目指す」ことが基本的な考え方であること等。
また、昨年11月に初めて「自殺対策白書」が発行され、各地の民間団体の取り組みが紹介されていることを教えてくださいました。

清水康之氏は、同日同時間に大阪で行われている山本孝史さんの告別式のことに言及し、「人には優しく仕事には厳しい山本さんだから、お前には(告別式に出るよりも)他に仕事があるだろうと言われている気がする」と、山本さんが寄せてくださった期待・信頼を裏切らないためにも、「(いのちを守る)自殺対策基本法」の理念を根付かせ実務につなげることに邁進したい、と改めて決意を表明しました。
自死遺族支援に関しては、NHKディレクター時代の取材を通し自死遺児たちから教えられた大切なポイントを2つ指摘しました。人はどれだけ辛い体験をしようとも、その体験について繰り返し語り人生という物語を紡ぎ直していくことで、やがて社会に対する信頼を回復することのできる「回復力」を誰もが持っているということ、そして、安心して語れる「場」がそれぞれの地域に必要だということ。

西田正弘氏は、安心して自死遺族が語ることのできる「場」としての「分かち合いのつどい」のことを分かり易く説明してくれました。「分かち合い」というのは、自死遺族を孤立させない力になること、あなたの声を聞きますよという安心・安定の「場」であること、ゴールはもうそこに来なくてもいい状態になること、などを教えてくれました。ただし、まだ「分かち合い」の場が不足しており、例えば千葉県でも千葉市だけでは不十分であり、いろいろな場所で開催されることが望まれるとの指摘がありました。

宮本俊明氏は、職域におけるメンタルヘルスの必要性と効用を説明してくださいました。

前半の講演をしてくれた陶山嘉代氏からは、パネラーの発言を聞いた上での感想が述べられ、「これまで自死遺族をどう支えればいいかを正直考えてこなかったが、当事者の苦しみや悲しみを知った今、決して他人事ではなく、弁護士としてもできることがあると気づいた」と纏められました。

その後、いろいろな意見交換のあと清水康之氏からは、「自殺対策がこれまでうつ対策の流れできているため、自死遺族支援も心のケアが中心だった。しかし、もっと実務的な支援、例えば、借金の相続にどう対処するのか、あるいは損害賠償を請求されたときに誰に相談するのか、といった実務も含めて総合的に支援する仕組みが必要ということが、全国キャラバンを通して分かってきた」と付け加えられました。
 ※1/14に『全国自死遺族総合支援センター』が設立されました。

最後に、コーディネーターの亀井雄一氏が、このフォーラムを機会に自分にできることを考え、取り組むことが肝要だと纏められました。

◇◇

フォーラムの最後まで一緒に参加された堂本暁子千葉県知事からは、千葉県のフォーラムが「山本孝史さんへの追悼フォーラム」となったことを大切に感じており、「重要なな課題を沢山教えてもらいました」との感想を聞かせてもらいました。

◇◇


千葉県の会場にも、「遺族語る」というメッセージパネルが展示され、多くの来場者が自死遺族の想いの書かれたメッセージに見入っていらっしゃいました。


なお、千葉県におけるキャラバンキーワードは「いのちとこころが響き合う社会をめざして」に決まりました。