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全国キャラバン in 兵庫 [2007年11月05日(Mon)]
報告者:森山(ライフリンク)


 去る10月14日、窓からおだやかな海の見える兵庫県こころのケアセンターにて、「自死について考えるシンポジウム 自死遺族とともに」が開催されました。



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 まずはじめに、井戸敏三兵庫県知事によるご挨拶がありました。知事は、現在の兵庫県における自殺者数の推移や、遺族の方々の現在置かれている立場などについてお話になられました。



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 その後、永守研吾氏(兵庫県健康生活部障害福祉局障害福祉課長)より、兵庫県における自殺対策の取り組みなどが話されました。

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 基調講演では、「社会問題として自死を考える」〜遺族支援の必要性〜という題で、清水新二氏(奈良女子大学教授)がお話されました。
 清水氏は、まず、自殺が単一の背景によって発生しているものではなく、複数の要因が含まれているということ、そして自殺は個人だけの問題ではなく社会の問題であるということをお話されました。これまで日本も自殺対策は行ってきたものの、残されたご遺族に対するケアが見過ごされてきたというご指摘をされ、そして、うつ対策に加えて、再発防止(ポストベンション)が必要であるとお話されました。自死遺族が体験する感情的苦悩には、いろいろなものがあるということ、そして、非難やうわさ話・タブー視によってご遺族が二次被害にあってしまっているということ、自死遺族の方々の悲嘆は、個人で乗り切るには困難が大きすぎるために、自死遺族支援グループなどの民間団体だけではなく、行政も連携して係っていく必要があるということをお話されました。

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 休憩時間には、フルートとピアノの演奏がなされました。

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 自死遺族の体験談・手記の発表では、尾角光美氏、K氏、そして青森のご遺族の方の手記の代読がありました。



 尾角氏は、お母さんがお亡くなりになるまでの家庭の状況をお話され、お母さんが亡くなったときやその後のご自分の経験をお話になりました。辛いとき、支えになったのは、そばにいてくれた人の存在、メールでいつも気遣ってくれた友達の存在だったといいます。また、自死遺族である尾角氏のお友達が、「私、死因を聞かれたときに、自殺で亡くなったってすんなり言いたい」とおっしゃっていたということをお話されました。今の現状では、まだまだそのように言える状況ではないこと、そして今は誰だって死にたいと思うことはあるのに、そのときどうしたら良いか教えてもらえない、大人が語れないと子どもはどうしたら良いのでしょうか?とお話され、遺族としての痛みや悲しみは一生消えるものではないけれど、その気持ちに向き合っていきたいとお話されました。

 K氏は、奥様を亡くされた経験をお話になられました。本人が亡くなったことはとても悲しく辛いことだけれど、死の選択自体は認めたいという思いと、自分自身は助けられなかったという思いを背負っていかなければならないと思っていらっしゃること、そしてご自身のお気持ちについてお話されました。自死遺族は自分が悪いと思っている方もいるために、声を出せず、社会に対し何も言えない場合もあるということと、苦しんでいる方々はいつもぎりぎりの状態にいるために、私たちは苦しんでいる人を引き上げようとするのではなく、背中をいかに支えていけるかが大切だということをお話されました。

 手記の代読では、ご遺族の方のお話が代読されました。ご主人が亡くなった後、子ども達を育てていくうえで経済的辛さがあったこと、借金がふくらみ返済に困るようになってもどうして良いかわからなかったこと、そして大学に子どもを進学させるにも、経済的に困難であるにもかかわらず授業料の補助が受けられなかったことなど、感情の面だけではなく現実的に苦しいものがあるということがお話されました。この方は、民間団体へかけた一本の電話から、取るべき手続きがわかり、救われたということがお話されました。

 会場は、シーンと静まりかえり、来場者の方々はご遺族のお話に涙ぐみながらじっと聞き入っていました。

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 自死遺族の体験談の後は、「遺族支援の視点から」ということで、パネルディスカッションが行われました。



 座長には、清水新二氏(奈良女子大学教授)、コメンテーターに藤澤克己氏(NPO法人ライフリンク)、パネラーに高木慶子氏(兵庫・生と死を考える会)、藤本啓子氏(わかちあいの会 風舎)、弘中照美氏(多重債務による自死をなくす会)、そして渭川雄基氏(リメンバー神戸)が参加されました。
 
 まず、藤澤氏より、今回の「全国キャラバン」の趣旨説明がありました。現在、「全国キャラバン」もこの兵庫で17番目になるということ、自死遺族支援は自殺対策の大きな柱であるにもかかわらず全国的に見て遅れているということ、これまでは民間のグループが頑張ってきたがこれからは官民一体でやっていくことが必要だと思うということが話されました。これがゴールではなくスタートであるということを強調され、パネリストの方々には、「どんなことを問題として抱えているのか、率直に意見を出してほしい」ということが投げかけられました。

 それを踏まえ、まず「わかちあいの会 風舎」の藤本氏は、分かち合いの会の現状をお話されました。倫理的に配慮し、会では実名ではなくニックネームでの参加を認めている点、「自殺予防」という言葉は会としては連呼することを控えるということをお話になりました。「力には限界があり、全ての方に満足してもらえるのは難しいけれど、これからも大切な方を失った悲しみをもつご遺族の方々にとって、一人でも多くの同じ悲しみを持った方々がつどえる場所にしたい」とお話されました。
 
 「多重債務による自死をなくす会」の弘中氏からは、2007年3月に設立した会でこれまで1200件ものご相談があったというお話があり、弘中氏が実際に相談を受けてきた中で感じられてきたこと、そして経済的な面からも苦しんでおられるご遺族の実態について、お話がありました。これまで、多くの自死遺族の方とマンツーマンでお話してきた中で、相続の問題で悩まれている方もおり、手続きを知らないがために苦しんでいるという方がいらっしゃるというお話があり、そして、一人でも多くの自殺者を減らして行ければということがお話されました。

 「リメンバー神戸」の渭川氏からは、「ケアや支援では、県民の皆さんと一緒に何ができるのでしょうか」という会場への問いかけがありました。その中で、「私たちに出来ることは何なのでしょうか?」という問いかけがあり、そもそも、遺族ケアのグループやつどいはなぜ必要なのか、遺族の方がなぜ来るのか、来なくてはいけないのか、考える必要があるということをお話されました。「自死」について私たちが打ち明けてもらったとき、何と返せば良いか。ご遺族にとっては、こちらがぽろっといってしまった言葉が孤独にさせてしまったりすることさえあるといことをお話されました。遺族ではない立場として出来ることは何なのでしょうかという問いかけがあり、遺族ケアに求められるものは、専門家だけが出来るものでもなければ誰かがしてくれるものでもなく、一緒に考える姿勢こそが大切であり、大切な人の自死について向き合っていく姿勢が大切ではないでしょうかというお話をされました。

 「兵庫・生と死を考える会」の高木氏は、これまで長く遺族支援に関わってこられたご自身の経験についてお話されました。20年前は、「生と死」という言葉を使うだけで、失礼では?と言われたが、20年間続けてきて、今がありますということをお話されました。これまで兵庫は大震災や福知山線の事故も経験してきており、ご遺族の方々が多くいるはずであるということもお話されました。

 以上のパネリストの方々のお話を踏まえて、いろいろな立場でグリーフケアが行われているということ、兵庫県ではご遺族の方々がそれぞれの会に通うことができ、選択できる状況であるということ、今後兵庫県でも支援をしていただき、連携ができればというお話がされました。

 パネルディスカッションの後半、会場に駆けつけてくださっていた兵庫県司法書士会会長、島田雄三氏よりご挨拶がありました。「司法書士会としても以前からやれることはやらねばと思ってきましたが、今後相談窓口を設けることになりました」というご報告がありました。「そのため、今後はさらに責任も重大であり、兵庫県の人も力を振り絞って頑張っていきましょう」という力強いお言葉がありました。

 清水氏は、今回のシンポジウムで生の声を聞き、学ぶことが多くあったということ、自死遺族対策を自殺予防の中に入れるあやうさや、社会支援として自殺対策を考えていくことが必要であるということをお話されました。法律ができ、自治体には責務ができた、根拠がないとこれまで行政は動けなかったが、今はもうやらなければならない状態ではなく「やることができる」状態であるということ、官よりも民の方が先行しているが、うまく手をつなぎあって官民連携の対策をすすめていければとお話になられました。
 最後に、私たちが日々の生活の中でどういうことができるのか、ご遺族と寄り添って向かい合っていく、私たちにもできることをしていきたいと締めくくられました。

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 山口氏(兵庫県精神保健福祉協会副会長)より閉会の挨拶があり、「最近なんでもうつ病にしてしまう傾向があるが、自殺対策もおくが深いので、もう少し仕組みなどを考えていきたい」とお話があり、シンポジウムは閉会をむかえました。

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 兵庫県でのキャラバン・キーワードは、「ひとりじゃないよ」となりました。

 時間いっぱいまで様々な立場の方々が色々な視点からお話を交わした兵庫キャラバンですが、会場の外でもブースが設けられ、多重債務の問題への相談や心のケアの相談が行われておりました。

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 入り口近くでは、「遺族語る」や「自殺対策基本法について」などの展示もなされ、
「大切な人をなくしたあなたへ」というモニター画面にうつるメッセージもありました。