CANPAN ブログ検索
Loading
  • もっと見る
«全国キャラバン in 長崎 | Main | キャラバンMAP»
全国キャラバン in 新潟 [2007年08月23日(Thu)]
報告:松枝(事務局スタッフ)


夏晴れに恵まれた8月19日(日)、
「新潟県自殺対策シンポジウム」が、新潟県生涯学習推進センターにて開催されました。



開会に際し、新潟県保健福祉センター所長の安倍俊幸さんによるあいさつの中で「〜悲しみを分かちあい、支えあう地域づくりをめざして〜」という本シンポジウムのテーマの詳細が明示されたことに、新潟県における自殺対策への取り組みの実績と展望が垣間見られました。


シンポジウムに先立ち、先日の7月1日に行われたシンポジウムで「遺族の声」として自らの体験を語ってくれた自死遺児の映像が上映されました。

ダイジェスト版ではありましたが、会場全体が「遺族の声」に真摯に耳を傾けていることが実感でき、そのことば一つひとつが自死遺族に対する理解を紡ぎだしている手ごたえがある濃密な時間でした。


シンポジウムは、ライフリンク代表の清水がコーディネーターを務める形で、自死遺族語り合いの会「虹の会」の世話人の関さんと石橋さん、「新潟いのちの電話」理事長の真壁さん、新潟県精神保健福祉センター専門相談員の櫛谷さん、「自殺遺族支援ネットワークRe」代表で「全国キャラバン」スタッフの山口さんが、シンポジストとしてご登壇されました。

まず新潟県内初の自死遺族支援グループである「虹の会」の立ち上げまでの経緯について、世話人のお二人がご自身の体験などを交えながらお話しました。



お二人のお話に共通していたのは、自死遺族として実感されて来た社会の「生きづらさ」です。自死遺族であるがゆえに普通の遺族のように死を悼むことすら出来ず、心無い人の何気ない一言に大きく傷つけられる。そうした経験を幾度となく重ねるうちに、傷つくことを恐れ、周囲の人を避け、悲しみを打ち明ける場を失ってしまう自死遺族。
そうした現状を理解したうえで、自死遺族が安心して「気持ちの分かち合い」が出来る場を作るべく「虹の会」を設立したこと、そして自死遺族の自主性を尊重することを第一義としていることなどが強調されました。



  
櫛谷さんからは、ご遺族のお話を受けて、新潟県における自殺対策の歴史と問題点、今後の自死遺族支援の課題についてのご説明がありました。

新潟県における自殺対策の取り組みには長い歴史があるものの、総合対策が敷かれたのは昨年の「ワースト10脱出プロジェクト」からとのことでした。
遅ればせながら始まった自死遺族支援についても、行政側からのアプローチの限界を日々感じている一方で、民間団体との協力体制の中から勉強会の企画運営など、支援のための土台作りの形でのバックアップを試みているとのことでした。






続いて、「新潟いのちの電話」理事長の真壁さんから、ご自身の活動を通して長年見つめてきた自死遺族たちと、その悲しみに寄り添うことの意義についてのお話がありました。

特に印象的だったのは、自死遺族支援のあるべき姿勢を示すべく引用された、英国の詩人ロバート・ブラウンニングの詩『ラビ・ベン・エズラ』の一節です。

「Grow old along with me ! The best is yet to be,」
(老いゆけよ、我と共に!最善はこれからだ)

何か特別な言葉をかけたり、道を諭したりするのではなくして、一緒に悲しみ、一緒に生きる希望を探し、一緒に生きて行こうというメッセージでした。



実際に自死遺族支援を行っている現場からの声として、「自死遺族支援ネットワークRe」代表の山口さんから長崎県で実際に行われている先進的な支援についての詳しい報告がありました。



特筆すべき点として、Reが実施している行政との連携が挙げられました。
これは会場や設備の用意などの「ハード面」を行政が担当し、遺族会の企画運営などの「ソフト面」をReが担当することで出張遺族会を実現したという事例で、官民のタイアップによる自死遺族支援という実務的な展望の可能性を示唆するものでした。

また、Reにおける活動から見えてきた今後の課題についても言及されていました。具体的には、1)子供たちのための分かち合いの場の必要性、2)自死遺族体験の社会化の必要性、3)相談機関の充実、4)「分かち合い」以外の遺族支援の形の構築、などが挙げられました。


ここで15分間の休憩を挟み、シンポジスト間における意見交換が行われました。
本シンポジウムのテーマである「支えあう地域づくり」実現のためには、行政と民間の連携は言うまでもなく、「虹の会」のような自死遺族支援団体への地域社会による協力が不可欠であることが再確認されました。

閉会を前にキャラバンを通してリレーされて行くキーワードの選定が行われました。

ライフリンク代表の清水が読み上げた二つの候補の中から、真壁さんが引用された「私と一緒に年をとっていきましょう」という言葉が、会場から自然と湧き上がった拍手によって選ばれました。

最後に、新潟県障害福祉課課長の武井さんから閉会のあいさつと、新潟県自殺対策推進月間の説明がなされ、予定時間を若干オーバーはしたものの「新潟県自殺対策シンポジウム」は無事閉会となりました。

この後、別室にて希望者の方に限り出会いの場の提供も実施されました。
「虹の会」をはじめとした自死遺族支援団体や相談機関に関する情報提供も同時に行われ、「新潟の自死遺族支援を実務的に前進させる」という本シンポジウムの目標も達成することが出来ました。

シンポジウム終了後も会場周辺に残って話し込まれる熱心な方々を多々お見受けし、新潟県における自殺対策に対する意識の高さを改めて感じさせられました。民間団体や行政ばかりでなく、地域による支援の必要性が明確にされましたが、本シンポジウムにご足労いただいた皆様が新潟にいらっしゃるという事実が何より心強く感じます。

新潟で生まれたばかりの自死遺族支援のつながりを、是非とも大切に育てていただきたく思います。

 以上、新潟からのリポートでした。