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「陸軍」いよいよ公開! [2013年06月21日(Fri)]
 映画「はじまりのみち」公開記念特別企画・原恵一が選ぶ木下惠介ベストセレクションの最終バッターは「はじまりのみち」の元ネタとなった「陸軍」が登場!
『麦と兵隊』は大きな評判をよび、『土と兵隊』、『花と兵隊』とあわせた「兵隊3部作」の火野葦平の原作を基に、当時の軍隊が、戦意高揚のためのプロパガンダ作品として福岡、北九州・小倉で一大ロケを敢行した作品。
 幕末から日清・日露の両戦争を経て満州事変に至る60年あまりを、ある家族の三代にわたる姿を通して描いた作品。当時敗戦の色が濃くなりつつある時期的に考えても、当然、国策に沿った戦意高揚・銃後の意識を鼓舞するという目的が、映画製作を依頼した軍隊側にはあったはず。
 ストーリー展開もキャラクター設定も、そういう意図から外れてはいない。しかし、細部の描写、特に最後のシークエンスで大きく違う方向へと展開する。このラスト10分にわたるシークエンスをカットせよとの話が軍からあがったが、当時の担当官が映画好きで木下作品を見ており、このラストがなければこの映画は成立しないと上層部を説き伏せたという逸話も残っている。
 結果として映画は公開されたものの、木下は情報局からにらまれ終戦時まで仕事が出来なくなったと言われている。このために木下は松竹に辞表を提出しており、その前後の出来事を基に作られた映画『はじまりのみち』のオープニングに繋がる。
rikugun02.jpg

最後のシークエンスでの、田中絹代を追い続ける撮影は凄い。ラスト10分で国策映画から木下恵介映画に切り替わった途端に、カメラは尋常でない程躍動する。そこに木下の作家性が見えるのは勿論だが、本当に身震いするのは、「勝利」への希望も入っている点である。後世の我々が軽々しく「反戦」などとは言えない。作家としての苦悩の結果、生まれた名作。「天井桟敷の人々」よりも早く撮影されていた作品で、これだけモブシーンを上手く撮れたのはグリフィスくらいか…「陸軍:は22日〜28日まで宮崎キネマ館で上映。「はじまりのみち」と併せて観れば、面白さも倍増です!

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