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いのちを繋ぐ営みとしての子育てー歴史に学ぶ」講座の案内 [2015年10月30日(Fri)]
生み育てる人の心と体に寄り添うための
  子育て支援者「15のまなび」の第11回は

日時:11月7日(土)10:15〜12:15 講義
      12:30〜14:00  食事をともにしながら、講師を囲んでの語り合い

会場:つどいの広場りぼん (宇治市広野町西裏100 平和堂100BAN店)
    近鉄大久保 JR新田が最寄駅です。

保育:500円 3日前を締切とします。
    電話でのお問い合わせ 090-2703-5207(迫)

申し込み:iinfo★kosodate-bunka.jp
       (★印を@マークに変えてメールをお送りください)


「いのちを繋ぐ営みとしての”子育て” ー歴史に学ぶ」
沢山美果子先生 岡山大学大学院客員研究員

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近代の母性の研究を出発点に、
近代の出産や身体、さらに女性、子どもの
いのちをめぐる研究をすすめている研究者です。

江戸時代の男、女、子どもの関係は
どのようなものだったか?
母親一人に子育ての責任を負わされる状況は、
近代社会の中で、どのように生まれてきたのか、

過去と現代の対話の中で、今の子育て、
子育て支援の在り方を考えてみる
貴重な機会になると思います。

わかりやすい語り口で、
そうだったの!といった目からうろこがぽろりと
いった発見も多い講座です。

皆様のご参加をおまちしています。
前年度の講座の紹介です。

乳からみた江戸時代の子育て 
http://ameblo.jp/color-star-58/entry-11979109934.html

「近代家族と子育てー男と女の関係からみた」
http://ameblo.jp/color-star-58/entry-11979137698.html
アタッチメントの実践で大切なこと [2015年10月20日(Tue)]
10月18日(日)10:15〜12:15

「アタッチメントの実践と応用」
北川恵 甲南大学教授
P1060179.jpg

最初に、北川先生ご自身の学んできた道筋の中で、
安心感の輪プログラムに出会われ、
2013年には、日本語版も作成し、
1年に1回のペースで研修も開催されてきた経緯を
最初にお話されました。

安心感の輪プログラムを考案されたのは、
アメリカの小さな田舎町の、臨床実践家の方々で、
10代のシングルマザーに伝わるような、
わかりやすい表現のしかたをしているのが特徴。
今や、各国の言葉に翻訳されて
安心感の輪のモデルの図をダウンロードできる
ようになっているそうです。

日本では、愛着(アタッチメント)が
愛情と混同して理解されていたり、
愛着=スキンシップととらえられがち。

子どもが小さいときは、
スキンシップは大事ですが、
安心感をもたらすのにさらに大切なことは、
子どもの気もちや欲求を推測した言葉かけ。

 泣いている子どもに、
 悲しかったね、くやしかったんだねとか
 その時々の気持ちを言葉にして
 大人から言ってもらうと、
 子どもはすとんと気持ちがおさまるのだとか。

アタッチメントとは、
不安なときにくっついて安心したい本能
(生涯にわたる本能的欲求で、大人にもある)

 知らない場所や知らない人に出会う
 養育者の姿が見えないといった不安な状態に
 なると、大きくて強い存在に守ってもらい安心したい。

子どもは十分に安心できると、
探索(いろんなことを自分でやってもようとする)
していく。

愛着と探索の2つが発達を支えていく。

 30年にわたるミネソタ縦断研究から、
 健全なアタッチメントが形成できた子どもは、
 自分の感情を整える力が育ち、
 回りの人とのつながりが感じられ、
 自分や他人にプラスの期待をもてる 
 といったことがわかってきているのだとか。

実際の子育ての中では、
子どもがいろんなサインをだしていても、
それに適した対応がとれる割合は、3割くらい。
完璧を求めずに、子どもの気持ちに
関心をむけることが大切。

子育て支援のさいに、大切な見方として
「構造化した観察」を、実際のビデオを
見ながら、体験してみました。

 まず子どもはどんな行動をしたか?
 それに対しての親の行動
 そのあとの子どもの行動
 といったふうに、親子の相互作用を
 実況中継する感じでとらえる。

次に、この行動は、
 安心した探索(安心感の輪の上)か
 安全な避難場所にむかう(安心感の輪の下)
 どちらにあてはまるか?

さらに、子どもの欲求は何か?

といった具合に、順番に見て、考えていくことが
(構造化した振り返り)
子どもの欲求の理解の助けになるのだとか。

子育てママは、
ぐずって泣いてる子を抱き上げた瞬間、
早く泣き止ませそうと、
違うものを指さしたりといった、
気をそらすかかわりを
ついやってしまいがち。
そんなときでも、
子どもの不安な気もちに寄り添う言葉を
かけることが、気もちが落ち着くための近道になることも。

子育ての中で、自分がどんなくせ(苦手、得意)が
あるかを意識していくことで、
今までのパターンとはちょっと違ったかかわりが
できる1歩になるのではとのことでした。

子育てには後悔がつきものですが、
何事も遅すぎることはないという言葉を
よりどころにかかわっていきたいものです。




15のまなび 北川 恵さん アタッチメントの視点を親子の絆をはぐくむ実践に応用するために [2015年10月20日(Tue)]
第10回 10月18日(日)「アタッチメントの実践と応用」
10:15〜12:15 講演・質疑応答
     13:00〜14:00 講師を囲んでの座談会

講師:甲南大学 教授 北川 恵 先生

 第10回を迎える今回は甲南大学教授の北川恵先生をお招きしました。北川先生には昨年度の15のまなびにもお越しいただき、乳幼児期のアタッチメントの重要性についてお話を伺いました。(詳細は昨年度の事業報告書をご覧ください。)それに続き今年は、このアタッチメントの視点を親子の絆をはぐくむ実践に応用するにあたってお話してくださいました。

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 先生の活動は全国各地で行われ、先生のお話をお聞きしたいと言う熱意から、遠方からたくさんの方が参加されました。午前中はスライドショーと動画を交えながらわかりやすい説明をしてくださいました。百聞は一見に如かず。動画を見ると説明が更にわかりやすく入ってきました。

 そもそも北川先生がアタッチメントに関心を持たれるようになった転機は高校生の時にアメリカでホームステイを経験されたところから始まったとのことでした。ホームステイ先での環境は今まで北川先生が“当たり前”だと思っていたことが違っており、そこで初めて「家族が違ったら“当たり前”も違う」ということを知ったそうです。それには良い面も悪い面もあるそうですが、家族の違いから人間の性格にどう違いがでるのか関心を持たれたそうです。その思いを持ちながら臨床心理の分野に進まれました。最初は精神科に勤務されカウンセリングを行っておられましたが、その中で親子関係の繋がりについて、もっと小さい頃から何かできなかったのだろうか、という思いを強められました。
 ある学会で親子関係についての研究に触れる機会があったそうです。そこでの「親子関係」とは、しつけ、遊び等親と子どもの関わりの中に安心、安全を与え、アタッチメントを高めることを臨床の目標にし、そういったプログラムがアメリカで研究されている事をお知りになりました。先生は、その研究プログラムをアメリカで2週間受講され、子どもにも親にも安心と安全が必要だと感じられました。ご存じの方も居られるかもしれませんが、そのプログラムは「安心感の輪(circle of security)」と言われています。先生は子どもにも親にも安心と安全が必要だと感じ、日本で広めていきたいという思いから現在の活動に繋がっています。「安心感の輪」と各地の親子に届けるためにも年に一回、認定ファシリテーター養成講座も行われています。
 「安心感の輪」は、養育がしんどい親子だけでなく、発達障害児や施設入所児などプラスαのサポートが必要な方達、親子たちにも役立ち、たくさんの人達に届いて欲しいと願いを仰っていました。

 まず、最初に先生は「子どもに望む事を次から3つ選ぶなら?」という質問を参加者に投げかけられました。
「親に相談できるようになって欲しい」
「きょうだい仲良くして欲しい」
「大切な友人を作って欲しい」
「自分で問題が解決できるようになって欲しい」などなど、いくつかありましたが、そのいずれも親、きょうだい、友人との関わりと自分への自信に繋がるものでした。そして、それらは幼いころのアタッチメント関係から繋がってくるとお話されました。

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 ここまで何度か「アタッチメント」という言葉を出してきましたが、皆さんはどう解釈されているでしょうか。親子同士が見つめあって子どもをかわいいと思うような愛情的なことを想像されるかもしれません、しかしアタッチメントとは「attachment=くっつく」と言うことから「愛情」という意味は含まれません。愛情的な事は減密にはアタッチメントではなく、先生は「アタッチメントは本能」と言葉にされていました。それは、生命の危機や不安を感じる時に欲求が高まると感じるものであり、生きるための力、不安な時にくっついて安心したい本能だそうです。幼い子どもは自分に降りかかった危機や不安を自分で何とか出来る力が無いので危機回避のため、強くて大きな存在のくっつき安心を得る、と説明されました。例えば、赤ちゃんが何か不安や不快を感じると、泣いて抱っこしてもらう事で強くて大きな存在にくっつこうとするそうです。子どもにとって危機・不安を感じる状態とは、見知らぬ人の接近、知らない場所、養育者が居ないなどの外的要因と、飢え、乾き、不衛生、病気など内的要因がありますが、そのようなネガティブな情動状態になると強くて大きな存在にくっつこうとします。これが子どものアタッチメント本能であり、それによって危機や不安が取り除かれると安心を得るそうです。養育者とそのような関わりを繰り返すことで健全なアタッチメント関係が築かれるそうです。そして、健全なアタッチメントが形成出来た子どもはその先の人生において次の三点を獲得できるそうです。
@周りの人間との繋がりを感じられる。(例:振り向いた時に親が見ていてくれた など)
A自分や他人にプラスの期待を持てる。
 人は皆、主観的に物事や事態を予測し、シュミレーションするそうです。しかし虐待を受けてきた子どもは自分に否定的であるため、予測、シミュレーションすることも否定的になるとのことです。
B自分の感情を整える力が育つ。
 発達的に獲得していく力とのこと。例えば、子どもが自分で手に負えない感情の気持ちを養育者が縁どると腑に落ちるそうです。その上で対策を一緒に考えたり手に負えない気持ちに名前が付けられるようになり落ち着くと仰っていました。そのような関わりをくり返すことで子どもは自分の感情を整える力を獲得すると説明して下さいました。
 また、子どもが持つ本能としてもう一つが「探索」だそうです。安心感があればもともとあった好奇心を発揮していろんなことを自分でできるようになるそうです。これら二つの本能が子どもの発達を進めていくのだと仰っていました。この「アタッチメント」と「探索」の様子は「安心感の輪」で例えられています。

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 「安心感の輪」の図を見た上で、子どもの安心基地になるためには、ということについてお話を頂きました。まずは、子どもが安心しているか不安になっているかを見ると仰いました。安心しているのであれば探索を応援しますが、不安であれば安心感を与えますが、これが一番大事で且つ、難しいと仰っていました。なぜなら、不安そうな気持ちを養育者は早く気持ちを持ちあげようとして気をそらしてしまうことが多いからだとお話し下さいました。しかし、その対応は子どもにとっては自分の不安な気持ちを分かってもらえなかった、否定された、と感じ、その気持ちを隠すようになることもあるそうです。まずは不安な気持ちに寄り添う事が大切だそうですが、その時に抱っこするなどスキンシップも大切ですが、いつも抱っこなどスキンシップ出来るわけではないので子どもの気持ちを汲み取り言葉を掛けることも大切とのことでした。
 先述しましたが、子どもが不安そうならば安心感を与えることはわかっていても難しいそうです。子どもが助けを求めてくる事や探索の為離れていくことが苦手だと子どもは本当の欲求を隠し、自分で頑張り過ぎたり人に頼り過ぎたりするようになると仰っていました。また、人を頼り過ぎると自分の世界に入りにくく、常に見捨てられたら・・・という不安も付きまとっているそうです。
その際、子どもの欲求に対して自分の得意な欲求、不得意な欲求を分かっておくと良いそうです。自分の苦手を知っておく事で対応も変えられるとのこと。本当の欲求を隠したり出しにくくなっている子どもに対しては修正体験が必要なようです。転んだ子どもが平気そうにしていても「痛かったね」と声を掛ける、最初は無理をして「平気」と言って本当の気持ちを出さないこともあるそうですが、養育者が本当の欲求や気持ちを推測して返すことを何度も繰り返すことで徐々に子どもは本当の気持ちや欲求を訴えても大丈夫なのだと思えるようになるそうです。人の気持ちは百発百中でわかる事は無いので3割ほど、程よく分かれば良く、誤解があっても伝え合って軌道修正していけばいいのだと仰っていました。何事も遅すぎる事は無く、気付いたところから修正体験の始まりなようです。まずは関心を向けるところから始めると子どもの欲求が見えてくるそうです。

最後に、虐待ケースなど深刻なアタッチメントの問題がある親子のお話をして下さいました。深刻なアタッチメントとは「安全と安心の拠り所」である養育者が「恐怖の源」になる場合だそうです。怖い体験をして養育者にくっついて安心を得たいが、その養育者が恐怖の源だと養育者から離れたいという相反した気持ちが混ざり合い解決不能なジレンマに陥るそうです。そうした子どもは「親子の役割逆転」になることもあり、自分の不安を差し置いて親の不安を取る子どもになることもあると仰っていました。
子どもには欲求に応えてくれる養育者が必要ですが、子どもを支える養育者にも支えが必要とお話し下さいました。また子どもに適切な養育者が居ない場合は確保するところから始めることになるそうです。場合によっては学校の先生も対象になるそうです。また養育者の支えはパートナーであったり、地域の人、子育て支援者になることもあるそうです。このことから、先生は、アタッチメント対象は血縁とは関係がなく、継続的に世話をしてくれる人だと仰っていました。それにより自分の人生に真剣に関わってくれる人が居る、という安心感を得るようです。

先生のお話が終わった後は質疑応答と、昼食をはさんで感想や参加者自身のフィールドに照らし合わせて色々な話、相談が飛び交いました。

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今回の講演で、先生は何度も「大きくて強い存在」という言葉を繰り返されました。子どもにも大きくて強い存在が必要、養育者にも大きくて強い存在が必要、その一部になれる可能性があるのが支援者として関わる私たちなのかもしれないと思いました。それと同時に、その私達にも大きくて強い存在が必要なのだと感じ、改めて15のまなびのありがたさを感じました。

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「アタッチメントの実践と応用」講座の案内 [2015年10月12日(Mon)]
生み育てる人の心と体に寄り添うための
子育て支援者「15のまなび」の第10回は

10月18日(日)10:15〜12:15
          12:30〜14:00
 (食事をともにしながら、講師を囲んでの語り合い)

 参加費 2000円 

  会場:宇治 つどいのひろば りぼん
 ◆近鉄京都線 大久保駅より徒歩3分
 ◆JR奈良線 新田駅より徒歩3分

「アタッチメントの実践と応用」

北川恵先生 甲南大学教授

親子にかかわる支援者の方には、
アタッチメントの視点はとても役にたつとのこと。

今回は、このアタッチメントの視点を
親子の絆をはぐくむ実践に応用するためのヒントを
一緒に考えていきたいとのことです。

参考図書 
(事前に読んでからの参加をおすすめします。)

「アタッチメントの実践と応用」
 数井 みゆき編著(2012年 誠信書房)
     この第1章と第2章を参照

2014年には、
「アタッチメント(愛着)理論と
  安心感の輪子育てプログラム」
お話しくださいました。

乳幼児期に親子の間で形成される絆=
愛着(アタッチメント)研究の若手第一人者です。

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子育て支援にかかわる皆様と学びをさらに
深める機会になると思います。





15のまなび 馬見塚珠生さん「児童虐待と愛着障害 その予防」 [2015年10月02日(Fri)]
第9回  9月26日(土)「児童虐待と愛着障害 その予防」
     10:15〜12:30 講座・質疑応答
     13:00〜14:15 講師を囲んでの座談会

講師:親と子のこころのエンパワメント研究所 代表 馬見塚珠生さん

 15のまなびも、もう後半に差し掛かりました。第9回になる今回は子育ての文化研究所の仲間でもあり、親と子のこころのエンパワメント研究所代表を務められている馬見塚珠生さんをお招きしました。馬見塚さんは、臨床心理士として長年京都市のスクールカウンセラーをされてきました。現在は京都府内で、複数の保育園幼稚園でのカウンセラー、児童デイサービスの心理職として子ども支援、親支援をされています。また、子ども虐待防止をめざし、親向けの心理教育プログラムを各地で実施されています。最近は虐待予防だけでなく、起きてしまった虐待によるトラウマの治療ができるように、トラウマ治療者としても活躍なさっています。

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 今回は子育て支援者として虐待予防の目を養うため「児童虐待と愛着障害 その予防」というテーマでお話を頂きました。参加者の中には、現場で気になる親子が居るが、どのように声を掛けて良いのかわからない支援者や、教育、行政など多様なフィールドの方の参加があり活発な質疑応答や意見が飛び交いました。

 全国の児童相談所に寄せられる虐待相談件数は2012年度の時点で66,807件の相談が寄せられ、京都府は全国12位であり首都圏が上位を占めています。年々右肩上がりになっていますが、これは徐々に虐待という意識が浸透し、地域で気に会ったら通報しているという現状の反映でもあります。また、相談件数1位の大阪府は虐待予防の活動が活発だからこそ相談件数も1位ということになります。

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そのことを踏まえ、今回の講座の目標として4つのテーマが挙げられました。
1つ目 子どもの虐待対応の枠組み(フレームワーク)を知る。
2つ目 子どもの虐待が及ぼす問題と後遺症を知る。
3つ目 健全なアタッチメントを育む重要性を知る。
4つ目 私達に出来ることを知る。
この4つのテーマを順序立てて分かりやすく説明して下さいました。

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 まず、1つ目の子どもの虐待対応の枠組み=フレームワークを知る、ですが、一言で虐待と言ってもその捉え方は様々です。今回は森田ゆり氏の著書『新・子どもの虐待』(岩波ブックレット)で扱われている虐待問題に取り組むための3つの柱と1つの基盤をもとに進められました。まず、大きな基盤として子どもの人権がベースにあります。子どもの権利条約などでもうたわれていますが、子どもを1人の人間としてみていくことです。これは柱の1つである「子ども観」にも繋がってきます。他の2つの柱は「公衆衛生」と「エンパワメント」でした。「公衆衛生」という視点は新たな視点でした。
 実は7日に1人の割合で子どもが虐待で亡くなっています。これはすぐにでも対策と予防をしていかなければいけない数字です。このことから「公衆衛生」が重要になる3つの理由として
@ 健康医療上深刻な問題である事
A 予防教育の徹底によって発生件数を減らせる事
B 伝染性ゆえに緊急性が高いが、世代に引き継がれて伝染している
が挙げられるとのことでした。Bに伝染性が挙げられていますが、感染症のようにすぐに派生する伝染ではなく、世代間、家庭の文化として引き継がれるため、この部分をどのように変えていくかが重要な取り組みになるのだと仰っていました。これから現状に対する緊急性、地域ぐるみの予防、地域社会を巻きこんだ地域社会環境の整備の3つの認識が必要になってくるとのことでした。

 ここで少し、虐待の5次予防図と馬見塚先生が現在トラウマ治療でも活用しておられる親教育プログラムの対応についてお話がありました。虐待の5次予防図は、

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D虐待
C疑い
Bハイリスク
A養育問題
@ 健全育成
@→Dに向けて下からピラミット状に図式化されていました。@、Aが一次予防、B、Cが二次予防、Dが三次予防であり、一次予防に対する親教育プログラムは「安心感の輪」(COSP)、二次予防に対する親教育プログラムは「トリプルP」、三次予防に対する親教育プログラムは「MY TREE」でした。一次予防の層は、子育て家庭には誰にでもある悩みやしんどさであり、それはひろばなどで解消できるものとのことでした。しかし、ここに例えば夫の非協力やDV、知的なものが加わるとハイリスクになり、二次予防の層はしんどさの要因が一つではなくいくつかの要因が複合的に存在しているとのことでした。そのため、少しでもハイリスクの可能性がある場合は保健士等に繋ぎ、大変な事になる前の介入が重要になってくるとのことでした。お話をお聞きし、二次予防になる要因は外からは見えにくく、二次予防の層への支援はなかなか行き届きづらいように感じました。

 続いて「子ども観」(子どもをどう見るか)ということについてお話がありました。『子どもが繰り返し嘘をつくことについてどう考えるか』という例えを出されました。参加者の皆さんからは「嘘をつかないといけない状況だった」など、子どもの視点に立った意見が出されました。嘘はいけないこと、ということを子どもに伝えることは養育者として必要なことですが、伝える際にいつも子どもの視点に立って伝えられるかと言われると自信の無い雰囲気が漂いました。保育士や支援者としてであれば子どもの視点に立って冷静に伝えられるかもしれません。しかし、「親」となると、どうしても強く叱ってしまうこともあるでしょう。時には手を挙げる方も居られるかもしれません。そのようなことは誰にでもある可能性であり、それは子どもと距離が近いあまりに「親」としての責任や子どもを思い通りにしたいという思いが強くあるからだと仰っていました。同じように友達が自分に対して嘘をついたとしても叩くまでする状況は少ないと例えて下さいました。それは友達との信頼関係が壊れてしまう、つまりその人を大切にしたいという思いからだと仰っていました。その思いは友達を「私とは別の人」「同じではない」「対等」だと思っているからだと説明されました。
 ここで改めて「子ども観」について考えると2つの「子ども観」が考えられるとのことでした。1つ目は「子どもを1人の個人として尊重されるべき人格としてみる」という考え方で、子どもの人権を尊重する考え方です。二つ目は「親、家庭、国家による指導と育ちの対象としてみる」という考え方です。これは子どもの人権を尊重しない子ども観ですが、逆にこのような子ども観をベースにした社会は虐待が存在しません。とても二極化した子ども観ですが、どのような子ども観を持つかによって虐待へのアプローチが変わってくるとのことでした。一つ目の子ども観をベースに虐待へのアプローチを考えていく必要がありますが、子どもの人権を尊重するには前もって子どもとの間にルールを作ると良いと教えて下さいました。子どもが駄々を捏ねても、子どもとの間にお互い同意したルールが存在するとそれに沿って対応でき、それは子どもの人権を尊重することに繋がるとのことでした。

 次に「エンパワメント」ですが、これは、人はもともと素晴らしい力を持っていることを前提とし、その力を引き出し、高める事だそうです。これは虐待問題に取り組む上で発生予防策として重要な位置を占めるとのことでした。少し疑いのある家庭やハイリスク家庭に支援をする際、親の関わりや考え方を増やせるような支援をすることがありますが、それによって子どもが変わると、親も変わったことになります。その際、親が変わったからこそ子どもも変わったのだと親自身の変化を褒め、力をあげるような支援が必要になってくるとのことでした。

 続いて、脳研究から見た虐待がもたらす子どもの発達について発達障害と絡めてお話下さいました。虐待は身体的虐待、心理的虐待、ネグレクト、性的虐待と4つに分類されますが、虐待の種別によって脳へ与えるダメージと子どもへの影響は変わってきます。身体的虐待は直接の痛みや、いつ叩かれるかわからないという怖さが常にあるため、頭の中は常に危険に備えている状態だそうです。これは情動コントロールを司る大脳前頭葉が刺激され続けているため、落ち着きが無くADHDのような多動性が見られたり、少しの事で逆切れしやすいなどの様子が見られたりするとのことでした。心理的虐待は、無視や親のDVを見せられることも当てはまります。これは子どもの存在に応えてもらえないことで起こり、聴覚野を司る大脳側頭葉が阻害されている状態だそうです。また性的虐待は視覚野を阻害されるため、そのような虐待を受けている子ども達は視覚、聴覚からの情報が整理できないことが多いそうです。ネグレクトは養育をしてもらえない虐待です。右脳と左脳を繋ぐ脳樑という部分が阻害され、普通右脳から左脳へは言葉にして繋がっているそうですが、子どもへの声かけが無いと右脳と左脳を繋ぐ言葉が無く、脳のネットワーク不全や発語が遅い症状が現れます。それによって他者とのコミュニケーション不全という影響が出てくるとのことでした。このように脳研究から虐待を見ると、虐待によって発達障害のように見られることと、もともと発達障害を持っており育てづらさから虐待に陥るケースと2パターン見られます。二つの相互作用により脳の発達阻害が増えているのが現状のようです。

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 以上のようなお話があり、まずは小さい時に健全なアタッチメントを育むことが大切だとお話し下さいました。(その方法の一つとして安心感の輪が紹介されました、が詳しくは次回の北川先生の回でお話をお聞きします)。
 必ずしも健全なアタッチメントが育まれず、アタッチメント障害になることもあります。自分の存在を軽視し、何事にも無気力になる反応性愛着障害と、誰かれ構わずくっつき愛情をくれる人を求める脱抑制的対人交流症とがあるとのことでした。もともとアタッチメント(「愛着」と訳されることが多いです)とは、不安な時に慰めて欲しい、大きな存在にくっつきたい(守られたい)という欲求ですが、アタッチメント障害になると必要な時に頼れなかったり、親が頼りなかったりする状況に陥ります。そのような状況を見逃さずにキャッチすることが虐待の早期発見になるためこれからの支援者の課題になると感じました。

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 最後のテーマとして私達支援者ができることですが、今までお話をして下さったように、まずは何より発生予防が一番とのことでした。今は以前よりも社会で虐待の認識が高まったからこそ、今まで隠れていた部分が見え始め、虐待件数も増えてきたのかもしれませんが、いずれにせよ虐待を未然に予防できるに越したことはなく、そのためには私達子育て支援者の働きかけが重要になってくると感じました。

 最後に参加者からの質疑応答や感想が述べられました。皆さんご自分のフィールドを想定されながら虐待予防のための実際の声かけや対応を質問されました。それに対し、親の視点を変えることが必要だが、子育て支援は親の価値観を否定するものではない、とお話し下さいました。どう伝えるかはとても難しいですが、親自身の価値観を大切にしつつ支援者が伝える方法も一つの方法であり、「その方法も良い」と思ってもらえるような関わりが大切になってくるようでした。そのためにも普段から子どものことをよく見て、その様子を親と共有する事、必要な時には機関に繋げられるように、信頼できる機関と繋がっておくことが必要だと仰いました。

 午後は馬見塚さんとお昼を一緒にしながら参加者同士、ご自分のフィールドで経験された事、難しい対応などを話され、時間も忘れるほど活発な意見交換の場になりました。
 虐待に至るまでの心のもやもやは何気ないおしゃべりで解消できることもあります。そういった小さな虐待予防はひろばなど地域だからこそできる事なのではないかと感じました。

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