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ヒトらしい心が成り立つ道すじをたどる 赤ちゃんの脳の研究から [2015年09月02日(Wed)]
8月29日(土)10:15〜12:15
         12:30〜14:00
   (食事をともにしながら、講師を囲んでの語り合い)

「ヒトらしい心が成り立つ道すじをたどる」
明和政子先生 
  京都大学大学院教育学研究科 教授
P8291034mini.jpg

今回は、プロジェクターを使用して、
大きな図や写真を見ながら説明していただきました。

ヒトの心のなりたちを科学的に明らかにするため、

チンパンジーとの比較(比較認知科学)して、
どういった差異があるのかを研究されてきました。

産まれたばかりの赤ちゃんの研究もすすんできて、

女性の写真を見せても、
 目をそらした顔より、
 自分のほうを見てる顔をよく見るとか、

ランダムに動くいくつかの点の画像を見せると、
動物の足の動きにそった動き方の点のほうを
より注視するということがわかってきたのだそう。

赤ちゃんむけの研究のために開発された
NIRS(近赤外分光法)の器具によって研究が
すすめられてきています。

それによって、視覚刺激では後頭葉と側頭葉が
動くことがわかり、
胎児から新生児期は、触覚刺激によって
赤ちゃんの脳全体が強く動くことが わかったのだそう。
触覚刺激によって、シナプスが作られ、脳の発達が
促されるといえます。

エコー画像も鮮明に見えるようになったことで、
胎児の口の動きから、おなかの中で、
お母さんの声を聞き分けているのが明らかになったとか。

チンパンジーは、9か月で生まれてきて、
産まれるまで脳はゆるやかに発達するのに対し、
ヒトの脳は妊娠8か月から
急激に脳の容積が増大するのだとか。

さらに胎児期から生後2か月までが
脳の細胞が最大の時期。

この時期に脳の中では
「シナプスの過剰形成と刈り込み」が行われる。

刈り込みとは、
よく使う情報を効率的に使えるように、
脳の中の配線のネットワークを
必要なものだけ残すということ。

生後7か月でおちつくところと、
脳の中でも、高次機能領域ほど、ゆっくりと進み、
14歳まで刈り込み現象が続くそうです。

こういったことからも
生後初期の脳の発達に環境が与える影響は
大きいと言えます。

ヒトとチンパンジーでは、他者の行為をどのように
見ているかという研究で、視線の動きを見る、
バイオロジカルモーションで
注視パターンを調べた映像を紹介されました。

P8291051mini.jpg

ヒトの赤ちゃんは、ヒトの顔や表情に視線がむくのに対し、
 (表情のシグナルを解釈する心の働きがある)
チンパンジーは、物のほうに視線がいく。

自閉症のお子さんの場合、ヒトの顔や目を見ることが
少なくなり、 物のほうに視線がいきやすいという
こともわかってきています。

じつは、現在世界的に、発達障害が急増していて
遺伝だけでなく環境要因が影響しているのではないかと
言われています。

日本では、早産で生まれる割合が加速的に増えていること、
早産の場合、発達障害となるリスクが高まることなどから、

早産児への定期的はケアや支援が必要なのではないかと
いうことで、
京大病院プロジェクトとして、
新しい発達評価の試み「デジタル健診」が
実施され、4年目にはいっているのだそうです。

視線の動き、注視パターンを計測する方法で、
ヒトと幾何学図形、どちらに視線をよりむけるかで、
60%以上を幾何学図形にむけたお子さんは、
自閉症の割合が高いというなどがわかってきているとか。

明和先生は、脳の専門的なことを、
一般の方にもわかりやすく、
正しく伝えていきたいという思いから、
いろいろなところで講演されたり、
2015年1月号「ひよこクラブ」の
「人見知り赤ちゃんとのつきあい方」の特集記事の
監修もされています。

午後も、お話の続きと質問へのお答えという形で
保育現場での自閉症のお子さんの様子なども交えた
質問などもあり、中身の濃いお話でした。

科学的な研究の成果を、子育ての現場に
活かしていきたいという明和先生の姿勢に感銘をうけました。

お忙しい中、わかりやすいお話ありがとうございました。

(子育てママむけに書いているブログからの転載です。)






15のまなび 明和政子さん「ヒトらしい心が成り立つ道すじをたどる」 [2015年09月02日(Wed)]
京都大学大学院教育学研究科 教授 明和政子先生

P1040448.JPG

地球上には多くの生き物が存在しています。その中で人間とはなにか。何が他の生き物と違うのか。ヒトが「人」らしくなるために必要なことはなにか。それが「心」であるならば、「心」とはなにか。子どもの時にふと思ったそうした疑問を、大人となったいま、研究者として解き明かそうとしているのが、私が社会人入学した大学院の恩師である京都大学大学院教育学研究科教授の明和政子先生です。8月29日(土)の子育ての文化研究所の15のまなびでは、その長年のご研究の成果を分かりやすい言葉で紹介して下さいました。
講座は3つのテーマに分かれていました。
@ ヒトとは?ヒトに特有の心のはたらきとは?
A それは、どのように、なぜ進化してきたのか?
B それは、いつ、どのように獲得されてきたのか?

P1040576.JPG

まず、ヒトとは?ヒトに特有の心のはたらきとは?
先生は学生時代から、犬山にある京都大学の霊長類研究所で研究をはじめ、研究員時代をふくめ15年以上にわたってヒトに特有の心のはたらきについて研究をされてきました。ここでは、同じヒト科で、ヒトにもっとも近いといわれるチンパンジーと、その行動の違いを比較し、「人らしさ」を研究します。例えばチンパンジーは見た物を瞬時にそのまま記憶することができます。けれども人間はそうした能力はチンパンジーに劣ります。どんなにかしこいチンパンジーでも人間の子どもなら1歳半で簡単にできるような「サル真似」が実はとてもむつかしい。チンパンジーの赤ちゃんも人間の赤ちゃんと同じように「新生児模倣」をするなど、多くの研究成果をあげられました。「人間は他の動物にはない特別の能力がある」という研究者もいますが、あるとするならば、それは他人の心の状態を、自分の中に映し出し、自分も同じ心の状態になる、『共感』の能力こそがヒトが人らしくあるための特別の能力だと先生はいいます。

では、その能力はどのように進化して来たのか。
生後1年間、ヒトの赤ちゃんは目覚ましい勢いで発達をしていきます。その過程はあたかもヒトが人らしくなる進化の過程を見るようです.科学技術が進歩し、もの言わぬ赤ちゃんの優れた能力が次々に明らかにされてきました。例えば、モニター画面をみるだけで、見ている人の視線の先を追う事が出来る装置では、赤ちゃんが産まれて間もない時から、幾何学図形の動きよりも生物らしい動きのものを見ることを明らかにしました。また鏡で自分の姿もみたこともなく、まだ話す事もままならない生まれたての赤ちゃんも、“ア、ア、ア”や“ム、ム、ム”といった言葉をきいてその発音の形に口を動かすこともできるそうです。明和先生は、ニルス(NIRS)といわれるヒトの脳活動を調べる機械の新生児用サイズを開発されました。京大付属病院との共同研究では、新生児がすでに大人と同じように外の音をきいていること、また触覚によってより広い範囲で脳が活動していることがわかったのだそうです。「触れる」という触覚経験が赤ちゃんの時期の脳の発達にいかに重要かということが考えさせられました。

こうした数々の赤ちゃんの能力は、いつ、どのように獲得されてきたのか。
先生は、胎児期からの赤ちゃんの感覚経験に注目されました.産まれる前から赤ちゃんはお腹の中ですでに様々な感覚経験をしているそうです。例えば、聴覚。骨伝導により、赤ちゃんは毎日お母さんの声を聞いています.心拍を計測した研究によると、赤ちゃんは自分のお母さんと他の女の人との声を聞き分ける事ができるそうです。お母さんの声を聞いた胎児は、心拍をはやめ、口をぱくぱくと明ける動作をはじめるそうです。また、胎児は羊水の中で指吸いをすることは知られていますが、これも偶然口にはいるのではなく、ちゃあんと指がくるまえに口があいて、指か来るのを待ち構えている、予期的に自分の身体を動かしているということも分かりました.暗−い、お母さんのお腹の中で赤ちゃんは、赤ちゃんなりに身体を使って学習をしているんですね。目には見えないけれど、もうお腹の中から親子のコミュニケーションは始まっていると明和先生はいいます。


P1040575.JPG

講義の前半で、心に残ったことは、
@ 『共感』の能力こそがヒトが人らしくあるための特別の能力だということ
A 生後まもなくから多くの優れた能力を持つが、「触れる」という触覚経験が赤ちゃんの時期の脳の発達に非常に重要であるということ
B お腹の中ですでに赤ちゃんは身体を使って学習をし、目には見えないけれど、親子のコミュニケーションはすでに始まっているということ


ヒトらしさの特徴、胎児•乳児期の触覚経験の大切さについて理解した上で「発達しょうがい」について、再考したいというのが明和先生の最近のご研究テーマ。後半はこの内容についてのご紹介でした。

日本は先進国の中でも早産の出生率が、他の国に比べて加速的に増えているそうです。そして、そうした早産のお子さんの中には、学齢期になって何かしら社会の中での「生きにくさ」を感じているお子さんの出てくる確率が高い。先生はその「生きにくさ」の要因が何からきているのか、どういった生育環境が影響しているのか明らかにし、そうした子ども達をなるべく早い時期からフォローするような環境を整えるべきだと考えてらっしゃいます。

まず、いつからその「生きにくさ」の特徴があらわれでるのかについて、いま京大付属病院の小児科外来の先生の協力をえて、調査が進められています。今年で4年目にはいるこの調査では生後半年から半年ごとに検査を行い早産のお子さんの発達的な特徴を明らかにしようとしています。検査の内容は、いままでの他の研究者による成果から、自閉症の子どもにあらわれる「物を見る特徴」をチェックするシステムになっています。例えば、彼らは人や生物の動きよりも、幾何学図形の動きを好んで見るなどです。チンパンジーとの比較による研究成果から、ヒトとチンパンジーでは物の見方が大きく異なる事を見いだしてきた先生の意見では、自閉症等と診断され、社会での生きにくさを持っているお子さんは、世界の物の見方や、感じ方など様々な感覚経験自体が、いわゆる「定型発達」といわれる大多数の子ども達と違うのではないか、いろいろな意見もあるけども、先生としては、そうした彼らの生きにくさの要因を早くに見つけてあげ、理解し必要なフォローをしてあげることが必要だと感じられているそうです。

「ひよこクラブ」など赤ちゃんをお持ちの保護者向けの雑誌の監修もされている明和先生。最新の赤ちゃん研究について、赤ちゃんを育てているお母さん達にわかりやすい言葉で伝えて行く講演活動も活発にされています。そうして、いわゆる基礎研究(ある事柄がおきている状態を明らかにする研究。それがどうすれば違う状態になるのかと行った事は応用研究)と保育や子育て支援などの現場をつなげて行く活動をされたいそうです。
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