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15のまなび 谷口英子さん  「地域を知り地域をサポートする」 [2016年01月14日(Thu)]
1月11日(月・祝) 10:15〜12:15 講座
           午後:講師を囲んでのワークショップ

「地域を知り地域をサポートする」
 講師:谷口英子さん 
     NPO法人まちづくりサポートクラブ副代表理事

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 早いもので年が明けてからもう半月近くなりますが、遅ればせながらあけましておめでとうございます。
2016年、最初の15のまなびは、京都の北部に位置する「海の京都」と言われる舞鶴から谷口英子さんを講師としてお招きしました。谷口さんは今までの15のまなびにも参加者として何度も参加していただきました。小学生から高校生まで5人のお子さんの子育てをされている中、大変行動力のある方でしたが、今回のお話で行動力の高さもさることながら、積極性の高さと軸の強さも感じられ、参加者は谷口さんのお話にどっぷり浸かり感化されているようでした。
谷口さんは舞鶴で舞鶴市西市民プラザでの地域子育て支援拠点事業での子育て支援の他、介護予防事業の運営などにも携わっており、「舞鶴」という地域全体としてのサポートを考えて活動されています。まずは自分の活動するフィールドでもあり、生活する場でもある舞鶴の紹介をして下さいました。舞鶴市は年々人口と出生数が減少し、高齢化が上がっているまさに少子高齢化の状態とのこと。また、舞鶴は東西で地域性が分かれており、二つの歴史が一つになった街だとお話し下さいました。そのような舞鶴に地域子育て支援拠点は東西のバランスを考えながら6つ拠点があるそうです。
次に、ご自身のこと、「人となり」を語って下さいました。谷口さんは、もともと障害児や視覚障害の分野に関心がある方でした。大学では社会福祉士学科で社会福祉学を学ばれました。谷口さんはご自分の人となりを、いろんな人生の「教訓」からできていると仰り、話す事も聞く事も好きだと仰っていました。その教訓の中で、大学で学んだ3つの事が今でも残っているそうです。
@子どもの成長はらせん状
 子育ては下に向いているように見えるが実際は上がっている、ということを意味しているそうです。
A「言語」「非言語」のコミュニケーションがある
 障害児や障害者との関わりの中で、「言葉」以外の表現の仕方、言葉に頼らずに思いが通じた時の素晴らしさを実感されたようです。
B物事には段取りがあり見通しをもつこと
 物事を捉えるにはどこか一部分を特化するのではなく全体像、見通しを持つ事が大切とのことです。
このようなキーワードと軸を持つ事で、その都度、立ち戻れるようになるそうです。そのため、谷口さんは「自己覚知」で自分を知り、知った自分の中でダメだなと思うところも“良し”とできるかどうかの「自己肯定感」を持つ事、全部ひっくるめた自分を知ってもらう「自己紹介」を大事にされていました。自己紹介は聞いてもらう人に「えっ、それ何?」と引きつけることがコツだそうです。
それは自分の事だけではなく、自分の活動している事を紹介する時も同様なようです。例えば、まちづくりサポートクラブの活動を紹介する時3つのキーワードがあり、まずは「当事者主体の子育て支援です」と言っているそうです。ただ、それだけだと相手は「当事者主体ってどんなことですか?」と聞き返してくれるそうです。谷口さんはご自分のお子さんが小さい時から子どもを連れて子育て支援をされてきた経緯から、子育ての親は支援の受け手にもなるし担い手にもなる、と感じられたそうです。子育て支援は子どもをどうするか、親をどう支援するかなどアプローチの方法が多様ですが、「親の自立支援とは、親が前向きに子育てできること」と、思ってもらえるアプローチが必要とのことです。
2つ目のキーワードは「居心地の良い居場所作り」。
自分にとって居心地が良いと感じる場所で自分にも何かが出来る、と自分の中の力に気付ける事、その力を更に発揮できるようなエンパワメントを大切にされていました。
3つ目のキーワードは「子育てをキーワードにしたまちづくり」。
子育て支援、は何も子育てをしている親だけを対象にしているのではなく、いろんな立場の人がそれぞれの立場なりに子育てに関われると言うことのようです。それは○○だけのスタッフ、○○だけの支援者ではなく、全員が支えてもらいながら支えることのようです。実際の活動として、商店街の立地やバス会社との連携を例にお話し下さいました。

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そのように、まきこめる、まきこまれるひとたちとの繋がりを大切にするために「拠点会議」と「ひろば会」を設けているそうです。拠点会議は公的なもので、毎月一回、市内の子育て支援拠点を持ち回りで行っているそうです。メンバーは拠点スタッフと市の子ども支援課になるそうですが、内容は各拠点のスケジュール調整、事業報告、育児相談状況などです。初期の会議では毎月のスケジュール調整をするにあたり、各拠点でイベントや行事が重ならないようにしていたようです。それは色々な拠点を巡ってもらいたい、という思いがあったようですが、谷口さんは重なっていても回ればいいのではないか、自分で選択すれば良いのではないか、自分で選択すれば主体的になれる、と感じたそうです。また、事業報告も最初はどのイベントに何人来たか、という人数報告がメインだったようですが、大切なのは人数ではなく、どのような人達が来て、どのような様子だったのか、ということを6つの拠点が共有、把握する事だとお話し下さいました。それは育児相談でも同じことが言え、そのような支援者側の情報共有と把握は虐待予防にも繋がると仰っていました。
ひろば会は、親子に何かしら関わっている人との勉強会とのこと。内容は発足したメンバーが順々に幹事を回し、幹事主導で決めているそうです。ここでは、子育てに関わる方、行政、保育士など他分野の関わりがあり、今年度は保護者の寄り添いや支援者の資質向上に向けて行われました。そのため毎年、年度初めに機関同士の自己紹介を大切にしているのだとお話し下さいました。他分野の関係機関が集まると言う事は、一つの事柄を多角的に見られるとのこと。そのことを、モザイクを重ねる、と言葉にされていました。更に、自己紹介をする事で、自分の得意分野、知っている事、を知り合えます。それは「顔の見える繋がり」でありその繋がりから生まれた支援が地域の親子に返していけるのだとお話されていました。

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最後に、地域を出るともっと地域を知ることが出来る、という事についてお話し下さいました。それは、外からの風を受け、風に乗ることで更に自分達の地域を知れたり見つめ直すきっかけになるそうです。その風を受けるためにも、繋がり合うこと、知る事、が大切だと仰っていました。地域に限らず、自分の活動するフィールドに居るだけでは、一つの側面、偏った視点と先入観に捉われてしまい、そのフィールドの本質がわからないと感じました。そのフィールドで当たり前な事が、他のフィールドでは当たり前ではないと気付く事で今まで見えていた、わかっていたと思っていたフィールドが全く違うものに見え、新たに知れるのだと思いました。谷口さんは、外から見て初めて知る地域性、と仰っていました。“そういうものだ”と思っていることや、刷り込みにより不便だと気付かない事もあるそうです。それに気付く事が地域的な自己覚知であり、自分達が馴染んでいけることこそ自分達の地域になり、それが地域に対する自己肯定感になると仰っていました。
外から見る事で“知る”のは、物事の全般に言えることで、子育ても同じく、自分の育った環境が当たり前だと思って育つことが多いですが、たくさんの人と関わる事で自分が思っていた当たり前がそうではないことを知ると新たな視点、価値観に気付くと思います。それをどう取捨選択するかは、その人なりによりますが、一つの環境、視点に留まらず外からの風を受ける事は幅を広げる事になります。その意味でも子育てをまちづくりに繋げる谷口さんの活動はとても勉強になり、心に残るお話がたくさんありました。

午後は、自己紹介シートを使っての、自己紹介ワークショップを行いました。シートの種類はいくつかありましたが、今回はどの自己紹介でも使う基本的なもの(自分の名前、好きな○○、○○の事なら役に立てます、今年の私のNEWなこと)で行いました。これは「自分」にどんなタグ付けをするかを考え、タグ付けした自分を人に伝える事で、別の機会に声をかけてもらったり新たな繋がりが生まれるそうです。他には自分の過去、現在、未来を考えて自己紹介するシートがあり、これは自分のやりたい事を伝えられるので他者から応援してもらいたい時に使うのだと教えて下さいました。
ワークショップではシートを基に1人1人自己紹介(自分自身の人となり、仕事、趣味)していきました。抱っこやおんぶ、母乳育児、絵本、支援センター、助産師、子育て支援者、キャリアカウンセラーなど今回も多分野の方が参加されました。今回の自己紹介を聞き、改めてこのような多分野に渡る人達の共通のタグは「子育てとは 子育て支援とは」だと、感じました。

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次回は今年度最後のまなびとなります。講師は子育て文化研究所の代表、朱まり子さんです。朱さんの考えや現状の子育ての思いをお聴きできると思います。また、今までのまなびに参加され参加者はどのように感じたのかお聞きできたり、自分の変化は何か、と見つめ直す機会になると思います。
15のまなび 灘 祐介さん「子育てに活かす作業療法視点」 [2016年01月04日(Mon)]
12月13日(日) 10:15〜12:30 講座
          12:50〜14:00 ランチしながら講師を囲んで話しあい

「子育てに活かす作業療法視点」

講師:灘 祐介さん (有)あーと・ねっと 作業療法士

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2015年、最後の15のまなびとなる今回は作業療法士・灘祐介先生を初めてお招きしました。先生は9年間、重症心身障害児・者施設に勤務されている中で、医療の中に作業療法士が居るのではなく、もっと気軽に必要としている方、困っている方と繋がれた方が良いと感じられ、現在はあーと・ねっとでフリーランスの作業療法士としてご活躍されています。また、外部でも活動され、支援学校や保育園、または検診の場でも活躍の場を広げられています。最初は就学前の子どもを見て来られ、その次は学童期の子ども達を見て来られました。そして今、最先端なのは乳児期だと考えておられます。乳児期を充実させていくのがとても大切だと仰っていました。乳児期は感覚が大切と言う視点もありますが、認知、という視点も大切だと考えておられます。

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作業療法士、という言葉は聞いた事があっても、まだ馴染みが無い方も居られるかと思います。作業療法とは練習ではなく、子どもの場合、遊びを通して日常の中での困り感や苦手な事象の理由を分析し、解決に繋げるもの、と説明して下さいました。その支援は、「ボトムアップ」と「トップダウン」だそうです。「ボトムアップ」とはどこに行き詰まりを感じているのか見極め力の調節を学ぶ事、能力を伸ばす事であり、「トップダウン」は道具や環境を工夫し出来る幅を広げると説明して下さいました。例えば、「ハサミが苦手」という事象に対して、ハサミの使い方を教えるのではなく、ハサミが何で使えないのか見極めて教えていく、という事だそうです。日常のそういった事を一つ一つ解決していく事は子どもの安定に繋がるのだと仰っていました。苦手な事、困っている事には何かしら理由があり、それは誰に対しても存在するので特別な事ではないとお話されました。しかし、困っていても病院に行くのは垣根があったり気が引けたりされ、相談に繋がらない方が多いようです。だからこそ、たくさんの親御さんがもっと気軽に相談に来てもらいたいと思っておられ、メールなどでも相談にのっておられるそうです。

ここから、超最先端である乳児を月齢に沿って見ていきました。
新生児期
この時期の赤ちゃんが横になっているのは当たり前のように思いますが、仰向けで姿勢を維持できるのはヒトのみだそうです。それまで羊水の中に居たため、産まれたばかりの赤ちゃんは重力のかかる世界で視覚、聴覚、触覚など様々な刺激を爆発的に受けるようになるとのことです。この時期の「遊び」というのは、主に「自己身体の確認」だそうです。赤ちゃんがもぞもぞ動いている様子も実は、この自己身体の確認のためだそうです。赤ちゃんが動いたり自分の手を口に当てたりするのは、自分の輪郭を知るためとのことです。この、ばたばた、という動きにも実は規則性があり、その規則性から外れる事は脳障害だという研究もあるそうです。また、自分の体を床にこすりつけたり、抱っこしてもらったりする事でも自分の体を知る手がかりにするのだと仰っていました。

2か月ごろ
2カ月革命と言われる時期です。この時期の遊び(体の動き)は全身をくねらせたり、ねじらせたりすることでダブルタッチをします。ダブルタッチとは、腕を動かして何かに触った、触られた、という刺激であり、体性感覚系(皮膚、筋肉、間接)を通して自分の体に気付いていくそうです。発達障害はダブルタッチに繋がらないそうなので、この時期から発見し介入すると、その後の発達がだいぶ違うと言います。また、この時期から行動が予測的になり自己の確立が始まるそうです。予測的な例えとして、自分で動かした足がおもちゃにあたり、おもちゃが動くという事を理解して、おもちゃを動かすために足でおもちゃを蹴る、という動画を見せて頂きました。そうすることで徐々に外部対象へ興味が高まり目に頼って外部を捉えようとし、首の筋肉が発達していくそうです。つまり、視覚は運動の開始であり、この時期にお母さんと目を合わせること、行動に意味付けすることは大切だと仰っていました。

3〜5カ月
この頃に入ると首もすわるようになります。今まで皮膚などを通して自分の体を知っていましたが、この時期から自分の手をまじまじと見る(ハンドリガード)ようなり、イメージだけではなく見て自分の体を認識するようになるとのことです。また、この時期の赤ちゃんは視覚的にも聴覚的にも優れ過ぎており他者の区別はもちろん、例えば2匹のチンパンジーの顔の違いもわかるそうです。(後に、この能力は必要無くなるため、能力としては下がるそうです)。これほど視覚的に発達していると外界への興味は高く、意図的に腕を伸ばす姿も見られると仰っていました。そのため、首がすわったら外界の広がりを広げていくことが大切だと説明して下さいました。

6〜9か月
寝返り、ずり這いが始まり運動機能面が劇的に変化します。寝返りには段階があるとのことでした。最初は、バタンと場所の移動ですが、上達すると、その場で腕をすべり込ませて体を巻き込み移動を伴わない寝返りになるそうです。また、仰向けでも腕がどんどん上がるため、この時期に興味の持つ物を持たせてあげる事が良いと教えてくれました。そして、視点も高くなるので平面の探索から空間探索へ移行する初期段階になると説明されていました。

10か月
四つ這いの獲得時期ですが、灘先生は最近のお子さんは四つ這いの前に立つ子や、四つ這いでも四肢の使い方に左右差があるお子さんが多い事が気になっているそうです。その一つの要因として考えられる事が、畳文化からフローリング文化に変わった事だと指摘される方が居られるそうです。フローリング文化になった事で、床に物を置く習慣が少なくなり視線も床から上へ上がって、子どももそれに伴う環境になったのではないか、という考えだそうです。四つ這いの前に立つと背中を反る事になります。私達も先生に言われ体験しましたが、背中を反ると胸の前で手と手が合いません。つまり両手の動作がしにくくなってしまうのです。
また、この時期はまだお座りは出来ませんが、中にはお座りを固定させるものもあります。しかしこの時期に座らせてしまうと筋活動をしなくなり後々、椅子に座る姿勢維持ができにくくなってしまうとのことでした。このような道具の良い悪いではなく、一概に便利とは誰にとっての便利か、ということを考えて欲しいと仰っていました。

10〜12カ月
伝い歩きや1人歩きができるようになります。移動面の発達も顕著ですが、実は手指の操作性も向上し、道具で道具に関われるようになるそうです。例えば、スプーンで食器を叩く、ということを仰っていました。また、手づかみ食べは、親にとっては少し困る事かもしれませんが、子どもにとって大事な経験とのことです。色々な触感のものを掴む事で五本指の発達が促されたり、掴んだ時に指の間から食べ物が出ることで五本指に分かれている事に気付くそうです。さらに、手で触ると、口に入れた時にどのような感じなのか見通しがもてるようになると仰っていました。

そして、産まれてきて一年の節目、12か月には歩き機能を獲得します。それにより両手がフリーに使えたり視野が変化し空間理解が広がったりするとのことでした。この状態が、人として本来の特性をようやく持てるじきになるため、人は12カ月早く産まれてくる、ということも仰っていました。
この人として本来の特性を獲得する1歳までに大切にしたい事として、灘先生は3つ挙げられました1つ目は身体を知覚する(身体図式の確立)ため生後2カ月ぐらいまでは意図的にアイコンタクトを取る事。2つ目は触る、握る、手指示など手先の機能を意識する事。四つ這いは手の感覚も広げるそうです。3つ目がコミュニケーションの土台となる他者との愛着形成。コミュニケーションは感情を伝播することから始まるそうで、親が子どもを遊ばせようとするのではなく、親が楽しむ事で、子どもにも楽しんでもらいたい、という気持ちだと仰っていました。午後の座談会でも出た話ですが、親が子ども役をする、という事はコミュニケーション形成の一つの切り口なのかもしれないと感じました。

ここまで、「身体」は運動機能の発達においての説明でしたが、「身体は」知的機能にも発揮されるそうです。そのことを、いくつか簡単なワークを入れて説明して下さいました。例えば、言葉は操作に伴う擬音語を使う事で覚えていく、何か説明する時に自分の体験談を踏まえて説明する、物を覚えるにも手を使って覚える(記憶する)、などがありました。また、「身体」は対人スキルにも繋がるとのことでした。例えば、身体の触れ合いは安心感を育む事、動きの中で相手に合わせられるようになること、自分の運動経験が相手の立場に置き換えて考えられる事、などがありました。これは他者理解にも繋がり非言語コミュニケーションだと仰っていました。
これらの事から、「身体」は様々な事の土台になるようです。その「身体」を育てるには、良く食べ、良く寝て、良く遊ぶ事、だと仰っていました。身体を使って遊んだことは脳の発達を促しますが、脳と身体を繋ぐ機関が「感覚」だそうです。だからこそ、子どもの時に感覚を通した遊びは大切であり、特に触覚(触れる)、前庭感(揺れたり)、固有受容感(筋肉を動かしたり)する感覚は身体を作るコアになると説明して下さいました。固有受容感という言葉は聞きなれませんが、腕の曲げ伸ばしのように関節の感覚を捉えることだそうです。この感覚は体を動かすのに大切であり、個人の運動神経と同じようなものと仰っていました。
これらをしっかりと感じ取り、統合される事で身体図式=体の中の身体の地図を確立させるとの事でした。この三つの感覚は生活や遊びの中で感じることが大切とのことで、例えば揺さぶりや高い高いは、この感覚を刺激するそうです。揺さぶりや高い高いは、コアを作るだけでなく、筋肉の張りを整え姿勢維持に役立つと教えて下さいました。最近は立て膝をする子や、足を組む子が居るそうですが、この姿勢は骨盤をロックさせてしまうと仰っていました。また、筋肉の張りと強さは違う事だそうです。張りとは弓が緩んでいる低緊張の状態だそうですがこれを発達させるのが揺さぶりだと仰っていました。大人の低緊張も増えており、特に女性は子宮も緩むため子どもも低緊張になりやすいのだと教えて下さいました。更に、遊びや生活の中で目を動かす事、目のブレは補正維持にも関わるそうです。しかし目を動かす事が苦手な子は後々、本読みや指差しが苦手になるため目を意識して動かせるような関わりが必要とのことでした。固有受容感を感じさせる遊びはマッサージやバランスボールなどが挙げられましたが、口を使った遊びも効果的だそうです。口を動かす事は鎮静作用と集中力を高める効果があるとのこと。そのため赤ちゃんは指吸いをしたり、スポーツ選手はガムを噛んだりしているそうです。生活の中で取り入れるならストローが効果的とのこと。吸う、吐く力は背中とお腹の筋肉も同時に使います。
このように生活の中でたくさん取り入れられる遊びがありますが、今の子どものたちは知育玩具に代表されるように、決まった使い方しかできないおもちゃに囲まれており、遊びを限定されていると仰っていました。おもちゃの変化や環境の変化は便利さを与えてくれたかもしれませんが、ここで再度「誰の為の便利さか」という投げかけをして下さいました。私達も便利さを選ぶ時にこの視点とメリットデメリットの視点をきちんと考える必要があると感じました。
子どもの環境だけでなく、親を取り巻く環境、社会そのものも変化しつつあることを指摘されました。少子高齢化がとまらない現代で親は高齢化と低年齢化の二極化しており、情報が安易に手に入る社会になったようです。困ったらすぐに検索するところは私達も思い当たる節があります。しかし、ネットはたくさんの情報があふれておりどれを信じたら良いのかわからず逆に不安になる親御さんも居られるとのこと。また、3K(きつい、汚い、危険)を避ける方も増えてきているようです。しかし、これらを避けるのではなく、正しい学びをする機会を作ることが大切だと教えて下さいました。最後に、大切なのは環境や人間関係が変わっていく社会の中で、本質として何が良いのか選択できるようになる事だと仰いました。

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作業療法、という世界に初めて関わった方にもわかりやすくユーモアを取り入れながらお話し下さいました。今までのまなびと繋がるところも多く、所々で参加者の皆さんは納得されたり目からうろこ、というような様子も見られました。

今回は参加者も多く、昼食後の質問会は多くの意見、質問が飛び交いました。中には北海道から来られた方も居られました。灘先生が最初に仰っていた、作業療法士と繋がるには病院と言う垣根がある、垣根を無くし気軽に来て欲しい、という思いが今回のまなびの場に繋がったと思います。そして今回が垣根を超える一つの発信源になれば良いなと感じさせてくれる回でした。

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15のまなび 迫きよみさん 「抱っことおんぶのサポート実践を通して見えてきたこと」 [2015年11月26日(Thu)]
第12回 11月23日(月・祝)
「抱っことおんぶのサポート実践を通して見えてきたこと」
  10:15〜12:15 講演・意見交換会
  12:45〜14:00 講師を囲んで座談会
講師:NPO法人子育てを楽しむ会 代表理事
  京都キッズプロジェクト 代表 迫 きよみさん

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 残すところ少なくなってきた15のまなび、第12回は「抱っことおんぶのサポート実践を通して見えてきたこと」というテーマで行われました。講師は、ご存知の方も多く、この子育ての文化研究所の事務局長でもある、迫きよみさんでした。迫さんは、福祉現場での経験やそこから感じた事、ご自身の出産、育児を通して受けた思いを子育て支援に繋げ、精力的に活躍されています。活躍の場は多く、それと同時に様々な立場で子育て支援に関わる方達と繋がりを作り、時には、その方たち同士の繋ぎ役も担っておられます。そして現在は、10年前から関心の持たれた「だっこ」と「おんぶ」を切り口に活動されています。今回は、なぜ迫さんが今の活動に至ったのか、どのような思いで活動しているのか、そして今後どういうこうとを目標に活動していきたいかを、年表や図を使いながらお話下さいました。参加者も定着しつつ、また、新しいお顔や新生児さんを連れて来て下さった方など今回もたくさんの方が来られました。

 迫さんは19歳の時から、保育士資格を通信で勉強しながら滋賀県の障害児施設で12年間住み込みで勤務され、この12年があったから今に繋がっていると仰っていました。その施設は夜勤もあり、大変忙しく、職員もなかなかまわらない状況だったそうです。他の女性職員も居られ、妊娠された方も居られたそうですが、職場の状況から妊娠を言えず就労を続けた結果、死産や流産となる方も居られたようです。迫さんはそのような現場を見て、自分は仕事をしながらの出産や子育てはせず、仕事とプライベートは分けたいと感じられたそうです。

 1995年、結婚を機に宇治に転居、現在は19歳と17歳になるお子さんが居られます。1人目のお子さんの時はつわりが大変酷かったようで、その時に産前産後のケアの大切さを知ったと話されました。また、2人目のお子さんの時に、バセドウ病にかかり体重もかなり落ちたそうです。闘病生活を乗り越えての子育て時、マタニティースイミングで出会ったお母さん方の相談に乗っておられる中で、出産する前から離婚する、など口にされる不安定な方も居られ、親身にサポートしたり、お話を聞いたりしている間に人数も増え、定期的なお茶会や同窓会のようになったと仰っていました。そこでは、色々な思いを抱えながら子育てをされるお母さん方が集まり、様々なお話が飛び交いました。中には、病気の時に医師からスポーツ飲料をたくさん飲ませた方が良い、と言われたからと、病気以外でも常時スポーツ飲料ばかり飲ませているお母さんや、産婦人科で授乳前後に体重を計るように言われたため、生後6カ月になっても授乳前後で毎回きちんと体重を測り、忙しいと口にされるお母さんも居られたようです。そのようなお母さん達は、お茶会や同窓会の場で初めて、そうではない、そこまでしなくて良い、ということを知ったようです。迫さんは、「始まりの指導はあっても、終わりを教えてくれない」と言葉にされていました。そのような場を目の当たりにして、サークルの大切さと、その場所の少なさを感じ、それが今の活動に繋がるきっかけになったそうです。
 しかし、当時はサークルを行うにしても公共施設の理解が無く、なかなか活動場所が確保できなかったので、その時に京都子育てサークルと共同し宇治で子育てしやすくなるために活動を立ちあげられました。当時で子育てサークルは他に30ほどあったのですが、迫さんはサークルだけ繋がっていても良くはならないと感じられたようです。なぜなら、サークルは子育て中のお母さんが自分の足で一歩踏み出さないと生かされません。でも、出て来られない人は、出て来られないままです。特に1歳までのお子さんを抱えておられるお母さん方はなかなか外出が難しく、サークルだけでは完全ではないと感じ、ご自身のお子さんも幼稚園に上がったこともあり、再出発されることになりました。

 だっこ紐との関わりは、少し前から流行っていた、だっこ紐を手作りでされていた方との出会いがきっかけで、だっこ紐をお母さんが手作りする教室として始まりました。手作り教室は、お子さんを保育する体制でしたが、参加者の中には、自分の時間の為に子どもを預ける(保育する)という事は気がひけて出来ない、という方も居られました。しかし、だっこ紐の制作は子どもの為なので、そう考えると預けられた、預けても良いのだと思った、と仰ったそうです。最初のだっこ紐はM、Lなどでしたが、徐々にお母さん方の体のサイズに合わせ、細分化させていったそうです。
 この教室、目的は子どもの為のだっこ紐を作る事ですが、その作業時間の間だけはお母さんは一つの事に夢中になれ、普段は相談できない事も相談出来る時間になりました。当時の子育て支援の主体は保育園が担っており、内容は親子遊びがほとんどであったため、親だけの時間を持つことは難しかったようです。しかし、迫さんは女性としての、ひとりの時間を持てる事、相談に乗れる事を目指し、その後、京都キッズプロジェクトを立ち上げ、子育て支援の輪を広げて行かれました。

 ここで、2005年にご自身が作られた三角ピラミットの説明がありました。
一番下の層は「特別支援の必要を感じない」、
次に「適切なサポート」、
そして「虐待のリスク」、一番上が「虐待」となっています。
この図を作られた当時、リスクの感じない部分は8割ぐらいだと感じられたようですが、2012年には逆転、子育ての情報が無いとすぐに上の段階に行くと感じるようになったと仰っていました。

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 だっこ紐との出会いを通して、だっことおんぶに関心が移り、2010年からはだっこ紐を沢山集め出します。当時はまだ子育て支援とだっこ紐、おんぶ紐を繋げて調べる人はいなかったとのことでした。沢山あるだっこ紐を集めることで、何かが見えると思ったそうです。それと同時に、おんぶの人がいないことも気付かれたそうです。おんぶを提案してみても、中々受け入れられず、中には、子どもの姿が見られないので怖い、後ろから刺された時に守れないので怖い、と話された方も居られ、迫さん自身衝撃を受けたそうです。
 同じ頃、輸入物の抱っこ紐とイクメンのブームがやってきました。それまでのだっこ紐は小ぶりで色もカラフルで女性向きが多かったようですが、それは海外では男性がつけている事でも話題になり、基本的にサイズが大きく、色もモノクロ調のものもあり、そのような斬新さ、イクメンの流行に乗ってSNSや口コミを頼りに、日本の女性には大きい商品がそのまま入り、定着していきました。日本には、子どもにとって良いかどうかを判断する機関が無く、育児用品が無選別で入ってくると迫さんは指摘されていました。
 たくさんの育児用品であふれる情勢の中で、ひろばに来られるお母さん方や赤ちゃん達を見ていると、赤ちゃんに語りかける事がなかったり、表情が乏しかったり、寝返りが出来ないなどの相談をされる方が多くなりました。迫さんは、これらの事に対し、子育ての文化が伝承されていないと気付かれたそうです。新たな抱っこ紐は、その使い方を人から教わらなくても良い物、取扱説明書があれば使用できる物で、これらの普及が、昔ながらの抱っこ紐を廃れさせたと思われます。抱っこ紐の形が大きく変わったことと同時に、子育ての文化が受け継がれ無くなったと感じたそうです。また、そのような抱っこ紐が普及すると、赤ちゃんを素手で抱けない人が多くなり、サロンに来られた2時間、赤ちゃんを置いたら泣いてしまうからと、ずっと赤ちゃんを抱っこ紐から出さない方も居られ、とても疑問に思うようになったと仰っていました。

 迫さんは2006年に、ハグモミの手島渚先生と出会われたそうです。手島先生は東北支援でベビーヨガソシエイトの高橋由紀先生と出会われ、迫さんに高橋先生を紹介されました。手島先生・高橋先生との出会いは、今の子育ては、赤ちゃんへの思いや気持ち、時間、お金をかけているのに赤ちゃんにとって心地良いものになっていない、また、今の子育て中の方達の特徴として、体で感じるよりも頭で判断する人が多いことなどを気づく契機になったそうです。例えば、おへその下の方で抱っこ紐を付けて何か変だな、と感じても、その位置で着けている方が多いから、説明書通りにしているから、これで良いと頭が判断してしまい、自分にあっただっこ紐や、適切な位置を感じられないなど、赤ちゃんとのやり取り、抱っこの仕方などが、ここ5年で低下していると仰っていました。

 続いて、ミクロ(個人・家庭)、メゾ(地域・企業・コミュニティー)、マクロ(国・自治体)の図について説明がありました。今の子育て情勢を考えるとメゾの部分は連携する必要があるとのことで、その相談窓口は沢山あった方が良く、その窓口は必ずしも行政に繋がっているわけではないので、行政に繋がっていないからこそ相談に来る方も居ると仰っていました。だからこそ、メゾの中で1人だけ居るのではなく、手を繋ぎ、色んな切り口を作る必要があるとお話し下さいました。そして、その繋がりと支援を通して国としての仕組みづくりのための実績を作りたいと仰っていました。
ご自分達の世代は育児本を何冊もそろえた「マニュアル世代」、今の子育て世代はキーワードを入力すれば必要な知識だけ得られる「ネット世代」と表現されていました。その違いとして、育児本には知りたい部分だけではなく、その前後の子どもの発達が載っているが、キーワードでは、その知識に関して色々な意見が得られる一方、その前後の発達に関する知識が得られない、文化が繋がらない、と指摘されました。

 このような状況から考えると、サポートが増えればリスクも減るだろうが、今すぐに国の制度としてサポートを取り入れる事は難しく、そのためにメゾのような繋がり、支援を「京都モデル」として作り上げ、それにより「育児不安が減った」ということを示したい。先ずは、新たなプログラムを作成し、もう一度子育ての文化を家族や地域に返し、さらなる目標として、子育ての文化を家族や地域に戻せたら、新しいプログラムや制度をなくす、というところまで目指していると、話して下さいました。
 最後に、ご自身の経験や抱っこやおんぶで見えてきたものを通して自分達に出来る支援を地域に返す事で、ピラミットの下の部分の人達を増やしていきたいこと、そのためにはみんなで手を繋いでやっていきたいと、今後の展望と思いをまとめられました。
自分がどういう思いで今の活動と今後の活動を行っていきたいのかを少しでも知ってもらえたら、と迫さんは仰っていましたが、講演中、参加者の皆さんは何度も頷かれており、その思いは強く伝わったのではないかと感じました。

 午前中の講演後、参加者からの講演を聞いた感想や意見交換をし、午後は参加者の自己紹介と質疑応答が行われたのち、講演で紹介された「むぎゅっと」や一本紐を、参加者がお子さんを抱っこやおんぶされる実演タイムがありました。体験された方は「あっ」という表情になり「こっちの方が楽」と感想を述べておられました。迫さんは、「今はこの『あっ』という感覚を持つ方が少なくなってきている」と話されました。見ている側としても、「むぎゅっと」や一本紐は、お母さんの体とお子さんにフィットしているようでした。今の子育てをしている方達が、「あっ」という感覚が持てるように、子どもが「心地良い」と感じられる機会が増えるように、それぞれの立場でできることを出し合っていきたいと思える今回のまなびでした。
15のまなび 沢山美果子さん いのちを繋ぐ営みとしての”子育て”ー歴史に学ぶ [2015年11月08日(Sun)]
第11回 11月7日(土)「いのちを繋ぐ営みとしての”子育て”―歴史に学ぶー」
      10:15〜12:15 講座
      12:45〜14:00 講師を囲んで座談会・質疑応答
     講師:岡山大学大学院客員研究員 沢山美果子先生

 昨日行われた11回目になる15のまなびは岡山大学で大学院客員研究員としてご活躍の沢山美果子先生をお招きしました。沢山先生は、江戸から現代までの子育ての歴史を紐解き、ご自分の子育てとも重ね合わせながらいのちをめぐる研究をすすめておられる研究者です。また、先生はもともと福島のご出身であり、東日本大震災によって原発被害が未来の子ども達にツケとして回ってしまった事にも心を痛めておられる事も冒頭でお話して下さいました。そのこともあり、「いのちを繋ぐ」ということに責任を感じ、このテーマで研究を進められています。沢山先生には3年連続で来ていただきました。前回、前々回のお話も参加された方にとって新たな気付きになったことがわかるぐらい、今回も大勢が参加されました。

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 まずは、「子育て」と「育児」のイメージの違いを切り口にお話を始められました。参加された方数人にマイクを回しイメージの違いをお聞きしましたが、皆さんはいかがでしょうか? 
参加された方達は「子育て」と聞くと、友人知人や地域全体で長期的に取り組む事、やわらかい、広いイメージ、という声が挙がりました。一方「育児」については、家庭内の事、子どものお世話というイメージ、専門用語であり狭いイメージと答えられていました。先生はこの二つの言葉は江戸から現代までの歴史と重なり、江戸は子育て、現代は育児に重ねられるとお話されました。それは、歴史が現代に近づくにつれ、母親が1人で学んで詰め込み、自分の子どものみに焦点を合わせ家庭に閉ざされてしまったことを表している、とのことでした。この反省を生かし、地域に目を向けていくのが今の子育てに繋がるのではないかと提起して下さいました。
 また、内在的に大人が子どもをどのように捉えているのか、日本と外国の様子を比較して教えて下さいました。韓国やチリでは親子連れの方に出会い、子どもがぐずったり子どもに話しかける際には、親を通さずすぐに抱き上げてあやしたり、子どもにダイレクトに声をかけるそうです。日本でいきなりそのようにされたら、親御さんは驚かれるのではないでしょうか。日本は親と子をペアに考えているところがあり、子どもに関わるにはまず親を通してからになる。つまりこの事は、子どもは親の所有物と言う意識が強い表れだと指摘されました。逆に韓国やチリは子どもを対等に見ていることになるのだと仰いました。

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 次に、富山大学の学生が江戸と現代の子育てを比較して男女のジェンダー論について学んだ際のレポートを紹介して下さいました。沢山先生も学生たちの視点の鋭さに驚かれ、いかに今の子育てが不自由かわかり、歴史を学ぶと言うことは「過去と現在を対話して未来を考えていく事」であるか、と仰いました。学生たちの指摘から江戸の子育ては基本的に子どもを「家の子」であると同時に「村の子」として捉えていたため、たくさんの人が1人の子どもに関わり、育てるため責任が分散されていたと説明して下さいました。一方、現代の育児は母親1人のプレッシャーが強く、子どもの数も減り、子どもを持て余し、このことが虐待の歪みを生んだと仰いました。実際、現代の教科書に「親は女性」と書かれていたそうです。このことや、子どもを取り巻く環境の変化からも、先述した「子育て」と「江戸」、「育児」と「現代」が重なるとの意味がよくわかりました。

 続いて、先生は「捨て子」に焦点を当ててお話して下さいました。捨て子の歴史的記録については岡山県津山市の記録からたくさん出てきたそうですが、先生は、もし今それほど多くの捨て子が居たら貰い手はあるのか、なぜこの時代に捨て子が多く、また貰い手も多いのか疑問に思われたそうです。さらに歴史を深めると犬将軍と言われた徳川綱吉が「捨てられた子(動物)を見つけたら、見つけた人、またはその村が育てるように」という旨の法令を出し、そのため、江戸時代には「捨てたら必ず拾われる」→「自分達で育てられなくなったら捨てれば確実に命が繋がれる」という構図が出来上がっていたそうです。
 また配布資料として江戸の「捨て子」の様子を描いた資料がありました。その絵を見てどう思うか参加者の感想も聞きました。その資料には捨て子を見つけ囲むお役所らしき人物とその様子を蔭から見守る親らしき人物が描かれていました。先生は、この絵から親はあえて裕福な家庭の前や、人が通りそうな時間帯に子どもを捨てて、無事拾われるまで見守っている事が読み取れると説明して下さいました。先生のお話を聞き、「捨て子」の持つ少しマイナスなイメージが、江戸の親は決して愛情が無いから子どもを捨てるのではないのではなく、逆に、愛しいわが子の命を確実に繋ぐために「捨てる」ことを選んだ親の気持ちを感じました。先生はこの事を「生き延びるための捨て子」と表現されていました。
 また、名付けについても江戸と現代とは子どもを思う気持ちの違いが表われているとお話し下さいました。例えば江戸時代では、幸せの象徴である「鳩」と、人から助けられる「助」を合わせて「鳩助」という名前を付けられたり、末広がりの八十八を組み合わせて「米」と「吉」を合わせて「米吉」と名付けられ、そのどちらもその子の幸せを祈っている事がわかると説明されました。しかし明治時代になると、警察が捨てられていた場所にちなんで機械的に名前を付けたために、明らかに捨て子だとわかったそうです。先生は、「名前は一番短い物語」と言葉にされましたが、本当にその通りだと感じました。これらのことからも江戸は地域の人々が子どもを育てる社会だった事がわかるそうです。
 ところが、近代になると親子心中が増え、心中場所は家の中など人目につかないところで見つかり、特に母子心中が多くなります。父子心中も無くは無いのですが、母子心中とは理由が異なるそうです。母子心中に至る理由の多くは家庭不和が原因だそうですが、父子心中に至る理由は貧困が挙げられ、ここにもジェンダーの違いがあると仰っていました。
 なぜ、近代になるにつれ親子(母子)心中が増加したのか。それは、子どもを育てることに対し、親だけに責任があり地域でも育ててくれない社会になったこと、核家族の増加により「家」の在り方(後継ぎなどの意識の低下)の変貌により我が子の結びつきが強くなり道連れという選択肢になったのだと説明されました。また、親子心中とは、子殺しと自殺が合わさったものだが、子どもを残して自殺できない親の愛情を称賛した社会があり、このことは、子どもを「社会の子ども」として見ていない、と指摘されました。

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 次に、「3歳児神話」の疑問についてお話を頂きました。この言葉が普及したのはいわゆる団塊世代の頃で、この言葉には3歳までは確実に生き延びている事、母親が家事・育児に専念できている事が裏付けされているとお話して下さいました。また、この時期に「一姫二太郎」の意味が変わってきたそうです。江戸時代は家を存続させるために後継ぎを確実に残すために女の子は1人、男の子は2人(長男に何かあった時のために)計3人という意味だったのですが、この時代になり最初は育てやすい女の子、次は男の子の計2人で良いという意味に変わったようです。
 このように子どもの数が減り、子どもを育てるという行為が閉ざされていく中で子どものいろいろな問題が起こるようになってきたとのことです。(その問題に関しては昨年お話をいただきました)。そのため「子育て支援」と「育児ノイローゼ」という言葉が増えてきたようですが、先生は、子育て支援が母親に対して「頑張れ」という支援になってしまっている事を懸念されていました。忘れてはいけない事は、子どもは親が伸び伸びした分、伸び伸びできるとのことなので、子育て支援は親を支援する事でもあるが、一番は子どもを中心に支援する事であると仰いました。また、「助けて」と言える力を持つ事が大切だと教えて下さいました。人に助けを求めない人は、自分で何でも出来ると思いあがっているとも言え、助けを求められる人間関係が出来ていないことを表していると仰いました。

 最後に2冊の絵本を紹介して下さいました。1冊目は「おおかみと七ひきのこやぎ」(グリム童話/フェリス・ホフマン:え/せた ていじ:やく)です。この絵本は使われている色が少ないため、子どもに読み聞かせをすると色々なところを敏感に感じ取り、気付くそうです。例えば、母親の目線からわかる愛情、作中には出てこない父親の存在、歴史、時間・・・そのような文章では語られない大切な気付き、子どもに伝えたいものが詰まっていました。先生は子どもに「良い文化を与える=良い文化を食べる」と、良く育つため大人がいかに良い文化を持ち、伝えられるかが大切になってくるとお話し下さいました。

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 2冊目は「サンタクロースってほんとにいるの?」(てるおか いつこ:文/すぎうら はんも:絵)です。この絵本から先生はご自分のお子さんに対してクリスマスをどのように過ごされたか、いつの時点でどのようにサンタクロースの存在をカミングアウトしたのかをお話し下さいました。先生の経験談に大きく頷かれる参加者も多く、ご自身のクリスマス時期の子育てを反芻されているようでした。
 この絵本の題名通り、子どもに「サンタクロースを信じさせる意味」については、サンタクロースを信じていると心の中にサンタクロースのお部屋が出来、それが何かの拍子にサンタクロースは居ないのだと言うカミングアウトを受け、サンタクロースがお部屋から出て行ってしまっても、サンタクロースを信じていたものに代わるものを入れることができ、このことが他人(サンタクロース)を信頼する空間になるとのことでした。そして、人を信頼すれば助けを求める力に繋がり、自分のことも信頼出来るようになる。つまり、自分のことを愛せる人は他人の事を愛する力になるのだとお話し下さいました。

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 歴史の勉強とは、自分を振り返るチャンスで、自分を相対化できる事であり、他人に対する思いに繋がること。そして、幸せな事に、自分を育てる事と子どもを育てる事は一致するので、子ども達に文化を与え、いのちを繋いでいくことの繰り返しが文化になり、歴史を紡いでいくのだと仰いました。それは普通でありながら奇跡にも近いこと、とも。
 先生は最後に、それぞれが課題を持って今回のような場に聞きに来ている事、問いを持ち続ける事が大事だと仰いました。そして、15のまなびを出会いの場とし、常に学び続け、人と人との繋がりを大切にすることが自分も他人も支えることに繋がるのだとお話し下さいました。子ども達が良い文化を食べる機会を増やせるよう、一つ一つのまなび、人との出会いを大切にしていきたいと感じる学びとなりました。

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 午後は参加者一人一人が自己紹介と午前中の感想、質問を述べました。今回も多様な職種の方が参加されましたが、皆さん先生のお話の中でサンタクロースのお話が印象に残っておられるようでした。ご自分のお子さんに対してクリスマスプレゼントをどのように渡されていたのか、いつサンタクロースの存在をカミングアウトしたのかという話をして下さり、笑える「親の心子知らず」な経験談が多く出て、和やかな雰囲気でした。
15のまなび 北川 恵さん アタッチメントの視点を親子の絆をはぐくむ実践に応用するために [2015年10月20日(Tue)]
第10回 10月18日(日)「アタッチメントの実践と応用」
10:15〜12:15 講演・質疑応答
     13:00〜14:00 講師を囲んでの座談会

講師:甲南大学 教授 北川 恵 先生

 第10回を迎える今回は甲南大学教授の北川恵先生をお招きしました。北川先生には昨年度の15のまなびにもお越しいただき、乳幼児期のアタッチメントの重要性についてお話を伺いました。(詳細は昨年度の事業報告書をご覧ください。)それに続き今年は、このアタッチメントの視点を親子の絆をはぐくむ実践に応用するにあたってお話してくださいました。

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 先生の活動は全国各地で行われ、先生のお話をお聞きしたいと言う熱意から、遠方からたくさんの方が参加されました。午前中はスライドショーと動画を交えながらわかりやすい説明をしてくださいました。百聞は一見に如かず。動画を見ると説明が更にわかりやすく入ってきました。

 そもそも北川先生がアタッチメントに関心を持たれるようになった転機は高校生の時にアメリカでホームステイを経験されたところから始まったとのことでした。ホームステイ先での環境は今まで北川先生が“当たり前”だと思っていたことが違っており、そこで初めて「家族が違ったら“当たり前”も違う」ということを知ったそうです。それには良い面も悪い面もあるそうですが、家族の違いから人間の性格にどう違いがでるのか関心を持たれたそうです。その思いを持ちながら臨床心理の分野に進まれました。最初は精神科に勤務されカウンセリングを行っておられましたが、その中で親子関係の繋がりについて、もっと小さい頃から何かできなかったのだろうか、という思いを強められました。
 ある学会で親子関係についての研究に触れる機会があったそうです。そこでの「親子関係」とは、しつけ、遊び等親と子どもの関わりの中に安心、安全を与え、アタッチメントを高めることを臨床の目標にし、そういったプログラムがアメリカで研究されている事をお知りになりました。先生は、その研究プログラムをアメリカで2週間受講され、子どもにも親にも安心と安全が必要だと感じられました。ご存じの方も居られるかもしれませんが、そのプログラムは「安心感の輪(circle of security)」と言われています。先生は子どもにも親にも安心と安全が必要だと感じ、日本で広めていきたいという思いから現在の活動に繋がっています。「安心感の輪」と各地の親子に届けるためにも年に一回、認定ファシリテーター養成講座も行われています。
 「安心感の輪」は、養育がしんどい親子だけでなく、発達障害児や施設入所児などプラスαのサポートが必要な方達、親子たちにも役立ち、たくさんの人達に届いて欲しいと願いを仰っていました。

 まず、最初に先生は「子どもに望む事を次から3つ選ぶなら?」という質問を参加者に投げかけられました。
「親に相談できるようになって欲しい」
「きょうだい仲良くして欲しい」
「大切な友人を作って欲しい」
「自分で問題が解決できるようになって欲しい」などなど、いくつかありましたが、そのいずれも親、きょうだい、友人との関わりと自分への自信に繋がるものでした。そして、それらは幼いころのアタッチメント関係から繋がってくるとお話されました。

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 ここまで何度か「アタッチメント」という言葉を出してきましたが、皆さんはどう解釈されているでしょうか。親子同士が見つめあって子どもをかわいいと思うような愛情的なことを想像されるかもしれません、しかしアタッチメントとは「attachment=くっつく」と言うことから「愛情」という意味は含まれません。愛情的な事は減密にはアタッチメントではなく、先生は「アタッチメントは本能」と言葉にされていました。それは、生命の危機や不安を感じる時に欲求が高まると感じるものであり、生きるための力、不安な時にくっついて安心したい本能だそうです。幼い子どもは自分に降りかかった危機や不安を自分で何とか出来る力が無いので危機回避のため、強くて大きな存在のくっつき安心を得る、と説明されました。例えば、赤ちゃんが何か不安や不快を感じると、泣いて抱っこしてもらう事で強くて大きな存在にくっつこうとするそうです。子どもにとって危機・不安を感じる状態とは、見知らぬ人の接近、知らない場所、養育者が居ないなどの外的要因と、飢え、乾き、不衛生、病気など内的要因がありますが、そのようなネガティブな情動状態になると強くて大きな存在にくっつこうとします。これが子どものアタッチメント本能であり、それによって危機や不安が取り除かれると安心を得るそうです。養育者とそのような関わりを繰り返すことで健全なアタッチメント関係が築かれるそうです。そして、健全なアタッチメントが形成出来た子どもはその先の人生において次の三点を獲得できるそうです。
@周りの人間との繋がりを感じられる。(例:振り向いた時に親が見ていてくれた など)
A自分や他人にプラスの期待を持てる。
 人は皆、主観的に物事や事態を予測し、シュミレーションするそうです。しかし虐待を受けてきた子どもは自分に否定的であるため、予測、シミュレーションすることも否定的になるとのことです。
B自分の感情を整える力が育つ。
 発達的に獲得していく力とのこと。例えば、子どもが自分で手に負えない感情の気持ちを養育者が縁どると腑に落ちるそうです。その上で対策を一緒に考えたり手に負えない気持ちに名前が付けられるようになり落ち着くと仰っていました。そのような関わりをくり返すことで子どもは自分の感情を整える力を獲得すると説明して下さいました。
 また、子どもが持つ本能としてもう一つが「探索」だそうです。安心感があればもともとあった好奇心を発揮していろんなことを自分でできるようになるそうです。これら二つの本能が子どもの発達を進めていくのだと仰っていました。この「アタッチメント」と「探索」の様子は「安心感の輪」で例えられています。

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 「安心感の輪」の図を見た上で、子どもの安心基地になるためには、ということについてお話を頂きました。まずは、子どもが安心しているか不安になっているかを見ると仰いました。安心しているのであれば探索を応援しますが、不安であれば安心感を与えますが、これが一番大事で且つ、難しいと仰っていました。なぜなら、不安そうな気持ちを養育者は早く気持ちを持ちあげようとして気をそらしてしまうことが多いからだとお話し下さいました。しかし、その対応は子どもにとっては自分の不安な気持ちを分かってもらえなかった、否定された、と感じ、その気持ちを隠すようになることもあるそうです。まずは不安な気持ちに寄り添う事が大切だそうですが、その時に抱っこするなどスキンシップも大切ですが、いつも抱っこなどスキンシップ出来るわけではないので子どもの気持ちを汲み取り言葉を掛けることも大切とのことでした。
 先述しましたが、子どもが不安そうならば安心感を与えることはわかっていても難しいそうです。子どもが助けを求めてくる事や探索の為離れていくことが苦手だと子どもは本当の欲求を隠し、自分で頑張り過ぎたり人に頼り過ぎたりするようになると仰っていました。また、人を頼り過ぎると自分の世界に入りにくく、常に見捨てられたら・・・という不安も付きまとっているそうです。
その際、子どもの欲求に対して自分の得意な欲求、不得意な欲求を分かっておくと良いそうです。自分の苦手を知っておく事で対応も変えられるとのこと。本当の欲求を隠したり出しにくくなっている子どもに対しては修正体験が必要なようです。転んだ子どもが平気そうにしていても「痛かったね」と声を掛ける、最初は無理をして「平気」と言って本当の気持ちを出さないこともあるそうですが、養育者が本当の欲求や気持ちを推測して返すことを何度も繰り返すことで徐々に子どもは本当の気持ちや欲求を訴えても大丈夫なのだと思えるようになるそうです。人の気持ちは百発百中でわかる事は無いので3割ほど、程よく分かれば良く、誤解があっても伝え合って軌道修正していけばいいのだと仰っていました。何事も遅すぎる事は無く、気付いたところから修正体験の始まりなようです。まずは関心を向けるところから始めると子どもの欲求が見えてくるそうです。

最後に、虐待ケースなど深刻なアタッチメントの問題がある親子のお話をして下さいました。深刻なアタッチメントとは「安全と安心の拠り所」である養育者が「恐怖の源」になる場合だそうです。怖い体験をして養育者にくっついて安心を得たいが、その養育者が恐怖の源だと養育者から離れたいという相反した気持ちが混ざり合い解決不能なジレンマに陥るそうです。そうした子どもは「親子の役割逆転」になることもあり、自分の不安を差し置いて親の不安を取る子どもになることもあると仰っていました。
子どもには欲求に応えてくれる養育者が必要ですが、子どもを支える養育者にも支えが必要とお話し下さいました。また子どもに適切な養育者が居ない場合は確保するところから始めることになるそうです。場合によっては学校の先生も対象になるそうです。また養育者の支えはパートナーであったり、地域の人、子育て支援者になることもあるそうです。このことから、先生は、アタッチメント対象は血縁とは関係がなく、継続的に世話をしてくれる人だと仰っていました。それにより自分の人生に真剣に関わってくれる人が居る、という安心感を得るようです。

先生のお話が終わった後は質疑応答と、昼食をはさんで感想や参加者自身のフィールドに照らし合わせて色々な話、相談が飛び交いました。

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今回の講演で、先生は何度も「大きくて強い存在」という言葉を繰り返されました。子どもにも大きくて強い存在が必要、養育者にも大きくて強い存在が必要、その一部になれる可能性があるのが支援者として関わる私たちなのかもしれないと思いました。それと同時に、その私達にも大きくて強い存在が必要なのだと感じ、改めて15のまなびのありがたさを感じました。

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15のまなび 馬見塚珠生さん「児童虐待と愛着障害 その予防」 [2015年10月02日(Fri)]
第9回  9月26日(土)「児童虐待と愛着障害 その予防」
     10:15〜12:30 講座・質疑応答
     13:00〜14:15 講師を囲んでの座談会

講師:親と子のこころのエンパワメント研究所 代表 馬見塚珠生さん

 15のまなびも、もう後半に差し掛かりました。第9回になる今回は子育ての文化研究所の仲間でもあり、親と子のこころのエンパワメント研究所代表を務められている馬見塚珠生さんをお招きしました。馬見塚さんは、臨床心理士として長年京都市のスクールカウンセラーをされてきました。現在は京都府内で、複数の保育園幼稚園でのカウンセラー、児童デイサービスの心理職として子ども支援、親支援をされています。また、子ども虐待防止をめざし、親向けの心理教育プログラムを各地で実施されています。最近は虐待予防だけでなく、起きてしまった虐待によるトラウマの治療ができるように、トラウマ治療者としても活躍なさっています。

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 今回は子育て支援者として虐待予防の目を養うため「児童虐待と愛着障害 その予防」というテーマでお話を頂きました。参加者の中には、現場で気になる親子が居るが、どのように声を掛けて良いのかわからない支援者や、教育、行政など多様なフィールドの方の参加があり活発な質疑応答や意見が飛び交いました。

 全国の児童相談所に寄せられる虐待相談件数は2012年度の時点で66,807件の相談が寄せられ、京都府は全国12位であり首都圏が上位を占めています。年々右肩上がりになっていますが、これは徐々に虐待という意識が浸透し、地域で気に会ったら通報しているという現状の反映でもあります。また、相談件数1位の大阪府は虐待予防の活動が活発だからこそ相談件数も1位ということになります。

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そのことを踏まえ、今回の講座の目標として4つのテーマが挙げられました。
1つ目 子どもの虐待対応の枠組み(フレームワーク)を知る。
2つ目 子どもの虐待が及ぼす問題と後遺症を知る。
3つ目 健全なアタッチメントを育む重要性を知る。
4つ目 私達に出来ることを知る。
この4つのテーマを順序立てて分かりやすく説明して下さいました。

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 まず、1つ目の子どもの虐待対応の枠組み=フレームワークを知る、ですが、一言で虐待と言ってもその捉え方は様々です。今回は森田ゆり氏の著書『新・子どもの虐待』(岩波ブックレット)で扱われている虐待問題に取り組むための3つの柱と1つの基盤をもとに進められました。まず、大きな基盤として子どもの人権がベースにあります。子どもの権利条約などでもうたわれていますが、子どもを1人の人間としてみていくことです。これは柱の1つである「子ども観」にも繋がってきます。他の2つの柱は「公衆衛生」と「エンパワメント」でした。「公衆衛生」という視点は新たな視点でした。
 実は7日に1人の割合で子どもが虐待で亡くなっています。これはすぐにでも対策と予防をしていかなければいけない数字です。このことから「公衆衛生」が重要になる3つの理由として
@ 健康医療上深刻な問題である事
A 予防教育の徹底によって発生件数を減らせる事
B 伝染性ゆえに緊急性が高いが、世代に引き継がれて伝染している
が挙げられるとのことでした。Bに伝染性が挙げられていますが、感染症のようにすぐに派生する伝染ではなく、世代間、家庭の文化として引き継がれるため、この部分をどのように変えていくかが重要な取り組みになるのだと仰っていました。これから現状に対する緊急性、地域ぐるみの予防、地域社会を巻きこんだ地域社会環境の整備の3つの認識が必要になってくるとのことでした。

 ここで少し、虐待の5次予防図と馬見塚先生が現在トラウマ治療でも活用しておられる親教育プログラムの対応についてお話がありました。虐待の5次予防図は、

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D虐待
C疑い
Bハイリスク
A養育問題
@ 健全育成
@→Dに向けて下からピラミット状に図式化されていました。@、Aが一次予防、B、Cが二次予防、Dが三次予防であり、一次予防に対する親教育プログラムは「安心感の輪」(COSP)、二次予防に対する親教育プログラムは「トリプルP」、三次予防に対する親教育プログラムは「MY TREE」でした。一次予防の層は、子育て家庭には誰にでもある悩みやしんどさであり、それはひろばなどで解消できるものとのことでした。しかし、ここに例えば夫の非協力やDV、知的なものが加わるとハイリスクになり、二次予防の層はしんどさの要因が一つではなくいくつかの要因が複合的に存在しているとのことでした。そのため、少しでもハイリスクの可能性がある場合は保健士等に繋ぎ、大変な事になる前の介入が重要になってくるとのことでした。お話をお聞きし、二次予防になる要因は外からは見えにくく、二次予防の層への支援はなかなか行き届きづらいように感じました。

 続いて「子ども観」(子どもをどう見るか)ということについてお話がありました。『子どもが繰り返し嘘をつくことについてどう考えるか』という例えを出されました。参加者の皆さんからは「嘘をつかないといけない状況だった」など、子どもの視点に立った意見が出されました。嘘はいけないこと、ということを子どもに伝えることは養育者として必要なことですが、伝える際にいつも子どもの視点に立って伝えられるかと言われると自信の無い雰囲気が漂いました。保育士や支援者としてであれば子どもの視点に立って冷静に伝えられるかもしれません。しかし、「親」となると、どうしても強く叱ってしまうこともあるでしょう。時には手を挙げる方も居られるかもしれません。そのようなことは誰にでもある可能性であり、それは子どもと距離が近いあまりに「親」としての責任や子どもを思い通りにしたいという思いが強くあるからだと仰っていました。同じように友達が自分に対して嘘をついたとしても叩くまでする状況は少ないと例えて下さいました。それは友達との信頼関係が壊れてしまう、つまりその人を大切にしたいという思いからだと仰っていました。その思いは友達を「私とは別の人」「同じではない」「対等」だと思っているからだと説明されました。
 ここで改めて「子ども観」について考えると2つの「子ども観」が考えられるとのことでした。1つ目は「子どもを1人の個人として尊重されるべき人格としてみる」という考え方で、子どもの人権を尊重する考え方です。二つ目は「親、家庭、国家による指導と育ちの対象としてみる」という考え方です。これは子どもの人権を尊重しない子ども観ですが、逆にこのような子ども観をベースにした社会は虐待が存在しません。とても二極化した子ども観ですが、どのような子ども観を持つかによって虐待へのアプローチが変わってくるとのことでした。一つ目の子ども観をベースに虐待へのアプローチを考えていく必要がありますが、子どもの人権を尊重するには前もって子どもとの間にルールを作ると良いと教えて下さいました。子どもが駄々を捏ねても、子どもとの間にお互い同意したルールが存在するとそれに沿って対応でき、それは子どもの人権を尊重することに繋がるとのことでした。

 次に「エンパワメント」ですが、これは、人はもともと素晴らしい力を持っていることを前提とし、その力を引き出し、高める事だそうです。これは虐待問題に取り組む上で発生予防策として重要な位置を占めるとのことでした。少し疑いのある家庭やハイリスク家庭に支援をする際、親の関わりや考え方を増やせるような支援をすることがありますが、それによって子どもが変わると、親も変わったことになります。その際、親が変わったからこそ子どもも変わったのだと親自身の変化を褒め、力をあげるような支援が必要になってくるとのことでした。

 続いて、脳研究から見た虐待がもたらす子どもの発達について発達障害と絡めてお話下さいました。虐待は身体的虐待、心理的虐待、ネグレクト、性的虐待と4つに分類されますが、虐待の種別によって脳へ与えるダメージと子どもへの影響は変わってきます。身体的虐待は直接の痛みや、いつ叩かれるかわからないという怖さが常にあるため、頭の中は常に危険に備えている状態だそうです。これは情動コントロールを司る大脳前頭葉が刺激され続けているため、落ち着きが無くADHDのような多動性が見られたり、少しの事で逆切れしやすいなどの様子が見られたりするとのことでした。心理的虐待は、無視や親のDVを見せられることも当てはまります。これは子どもの存在に応えてもらえないことで起こり、聴覚野を司る大脳側頭葉が阻害されている状態だそうです。また性的虐待は視覚野を阻害されるため、そのような虐待を受けている子ども達は視覚、聴覚からの情報が整理できないことが多いそうです。ネグレクトは養育をしてもらえない虐待です。右脳と左脳を繋ぐ脳樑という部分が阻害され、普通右脳から左脳へは言葉にして繋がっているそうですが、子どもへの声かけが無いと右脳と左脳を繋ぐ言葉が無く、脳のネットワーク不全や発語が遅い症状が現れます。それによって他者とのコミュニケーション不全という影響が出てくるとのことでした。このように脳研究から虐待を見ると、虐待によって発達障害のように見られることと、もともと発達障害を持っており育てづらさから虐待に陥るケースと2パターン見られます。二つの相互作用により脳の発達阻害が増えているのが現状のようです。

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 以上のようなお話があり、まずは小さい時に健全なアタッチメントを育むことが大切だとお話し下さいました。(その方法の一つとして安心感の輪が紹介されました、が詳しくは次回の北川先生の回でお話をお聞きします)。
 必ずしも健全なアタッチメントが育まれず、アタッチメント障害になることもあります。自分の存在を軽視し、何事にも無気力になる反応性愛着障害と、誰かれ構わずくっつき愛情をくれる人を求める脱抑制的対人交流症とがあるとのことでした。もともとアタッチメント(「愛着」と訳されることが多いです)とは、不安な時に慰めて欲しい、大きな存在にくっつきたい(守られたい)という欲求ですが、アタッチメント障害になると必要な時に頼れなかったり、親が頼りなかったりする状況に陥ります。そのような状況を見逃さずにキャッチすることが虐待の早期発見になるためこれからの支援者の課題になると感じました。

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 最後のテーマとして私達支援者ができることですが、今までお話をして下さったように、まずは何より発生予防が一番とのことでした。今は以前よりも社会で虐待の認識が高まったからこそ、今まで隠れていた部分が見え始め、虐待件数も増えてきたのかもしれませんが、いずれにせよ虐待を未然に予防できるに越したことはなく、そのためには私達子育て支援者の働きかけが重要になってくると感じました。

 最後に参加者からの質疑応答や感想が述べられました。皆さんご自分のフィールドを想定されながら虐待予防のための実際の声かけや対応を質問されました。それに対し、親の視点を変えることが必要だが、子育て支援は親の価値観を否定するものではない、とお話し下さいました。どう伝えるかはとても難しいですが、親自身の価値観を大切にしつつ支援者が伝える方法も一つの方法であり、「その方法も良い」と思ってもらえるような関わりが大切になってくるようでした。そのためにも普段から子どものことをよく見て、その様子を親と共有する事、必要な時には機関に繋げられるように、信頼できる機関と繋がっておくことが必要だと仰いました。

 午後は馬見塚さんとお昼を一緒にしながら参加者同士、ご自分のフィールドで経験された事、難しい対応などを話され、時間も忘れるほど活発な意見交換の場になりました。
 虐待に至るまでの心のもやもやは何気ないおしゃべりで解消できることもあります。そういった小さな虐待予防はひろばなど地域だからこそできる事なのではないかと感じました。

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15のまなび 前田綾子さん「緊張と弛緩について」 [2015年09月13日(Sun)]
第8回  9月12日(土)「緊張と弛緩について」
10:15〜12:25 講座・ワークショップ
     13:00〜14:30 質疑応答

講師:くさぶえ保育園 園長 前田綾子先生

 15のまなび、第8回になる今回は第4回にもお越しいただき、「赤ちゃんは生まれてからどう重力に対応しているかを考えてみよう」というテーマで赤ちゃんモデルと一緒にお話と実践ワークを行ってくださった前田綾子先生をお招きしました。(前回の詳細は7月26日のブログを参照下さい)。今回も前回に参加していただいた親子さんも何組かご参加いただき、実際の赤ちゃんモデルと実践ワークを中心に行っていただきました。前回から2カ月近く経っていたため、前回と比べ赤ちゃんの変化と発達状況も良くわかる回となりました。

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赤ちゃんは体も柔らかく、とても柔軟だと言う感覚をお持ちの方も多いのではないでしょうか。しかし最近は、赤ちゃんの体にもこわばりがあったり、緊張がほぐれてないこともあったり、柔らかいが筋力が少ない赤ちゃんもいます。そしてそのことを知らず問題意識を持っておられない方も多いと言うことが現状です。そのため、今回はその問題点に焦点を当てて「緊張と弛緩について」お話を頂きました。今回も月齢別の赤ちゃんモデルをお招きし、すぐに使える実践ワークが多く、親子さん、支援者ともにすぐに使えるものばかりでした。

 始めに行ったのは、大人の「金魚運動」です。固まった赤ちゃんの緊張を「ほぐす」ことは大切ですが、一言で「ほぐし」と言っても実は実際に行ってみるととても難しいのです。ほぐそうと意識するあまりほぐし手が緊張してしまい硬くなってしまいます。そのためまずは大人の私達がほぐされる側、ほぐす側の両方を体験し、ほぐされる赤ちゃんはどう感じるのか、また、ほぐす練習をしました。大人の金魚運動は大人の背骨を脱力するために行います。

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 まずは靴下を脱いで二人一組になります。順番としては出来れば年上の方が先にほぐす側になった方がいいということでした。次にほぐされる人は仰向けに横になります。そして、両腕を肩より上の位置で自分の自然な姿勢をとってもらいます。ほぐす側の人はほぐす人の足元に正座し、ほぐす人のかかとを両手でつつむように持ち、自分の膝の上に乗せます。後は自分の膝を横に振動させます。この運動は、お互いが脱力できるように行うため、先生は何時間行っても疲れないと仰っていました。実際歌いながら行われる先生の金魚運動によってほぐされた方はとても気持ちよさそうにされていました。しかし、言うは易し、やるは難し。参加者の皆さんも二人一組で行ってみると、先生とは何かが違う様子でした。やはりどうしても「ほぐそう」という意識が先に出てきてしまいほぐす側が固まっている様子でした。この運動のコツとしては方で揺らすのではなく腰で揺らす事、相手の背骨までほぐれるように意識する事、揺らす人は力を入れず、地球の中心に自分をストンと落とすイメージで行う事とのこと。しばらく行っていると皆さん徐々にコツや実際にほぐされるとはどういうことが掴めてきた様子でした。先生が仰ったようにこの運動に限らず人の手でほぐす、揉む、ということは何時間でもできます。しかしマッサージ機のような機械で受けるほぐしは15分が限界です。ここが人の手と機械の違いだそうです。金魚運動を行っても揺れにくい方はおられます。そのような人にはうつ伏せになってもらい、かかとを固定しおへその後ろを揺らす運動と、背骨を支えながら足を交差させて寝返りを誘導する運動をした方が良いとのことでした。この運動はもちろん赤ちゃんにも使えます。

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 では、実際に赤ちゃんに金魚運動を行ってみました。まずは2カ月の赤ちゃんです。まだ首が据わっていませんでしたが、金魚運動は首が据わっていなくても行える運動です。この際、赤ちゃんの服が繋ぎの場合は股の所を外してもらいお腹も全部出るようにします。最初に大人が膝を伸ばして座り、赤ちゃんを自分の膝のところに赤ちゃんのおへそが来るように仰向けに寝かせます。赤ちゃんの下にはバスタオルを敷き、頭の下には少し厚めに敷きます。初めての体勢に驚き泣いてしまう赤ちゃんも居るでしょうが、あわてなくて大丈夫とのことです。泣いて緊張すると赤ちゃんは顎が上がります。その際には頭の下のタオルを多めに敷きます。まずは赤ちゃんのお腹や足、腕をさするようにマッサージします。腕の部分はわきのところから手を入れ、肘までずっと伸ばすようにマッサージします。前田先生が仰るには皮膚マッサージは赤ちゃん、特に生後1か月〜3か月の赤ちゃんの脳をとても刺激するため効果的とのことです。この際、冷たい手で触っては赤ちゃんがかわいそう、と思われる方も居られるかもしれませんが、逆に冷たい手で触ることで脳への刺激が多くなり、風邪もひきにくくなるとのことでした。向き癖のついている赤ちゃんや泣いている赤ちゃんは顔を横に向けることがあるかもしれませんが、この運動は顔をまっすぐに向けないと効果は無いそうです。そして、お腹や腕をなでながら大人のひざを揺らします。歌を歌いながら行うと気持ちも楽しくリラックスしやすそうです。振動に慣れてきたら赤ちゃんの太ももを支えながら大人の膝をあげてストンと落とします。この運動を教わったから毎日時間を掛けて行わなければいけない、というわけではなく、赤ちゃんが嫌がらない程度に毎日ちょっとずつ行ってあげるのが良いとのこと。赤ちゃんと触れ合う事も大切ですが、お母さんは家の事や他の事などやることはたくさんあります。そのため空いた時間にちょこっとやって親子でリラックスする、という意識の方が親子共に楽しめそうでした。

 赤ちゃんは最初、筋力はほとんどありません。産まれてから徐々に筋力を付けていきますが、それに伴って体も硬くなります。どの部位もバランス良く動かしているというわけではなく、普段よく動かす部位が出てきます。その部位の方が筋力も付くため筋肉の付き方、体の硬さにばらつきが出ます。そのばらつきのまま放っておくとゆくゆくは体の歪みに繋がります。そのため、どの部位もバランス良く動かせるのが理想ですが、既にいつも動かす足が決まっている、顔を向ける方向が決まっていると気付いた時はよく動かす方を止めてみるとのことでした。実際、2カ月の赤ちゃんは仰向けにすると泣きながら片方の足ばかり宙を蹴っていました。しかし、蹴っている足を手で押さえると面白い事に、すぐにもう片方の足を動かし始めました。赤ちゃんは動きたいという衝動が大きく、動かせないとわかると直ぐに動かせる方に切り替えるようです。暫く、いつも動かす方の足を止め、手を離すと両方の足を動かすようになりました。これには参加者の皆さんも驚いておられました。これで治ったわけではなく、少ししたらまた片方の足だけ動かすようになったため、普段から気付いた時にバランスを整えられるよう足をとめていけたら良いとのことでした。これもさきほどの金魚運動と同じく、毎日ちょっとずつ、なようです。
 赤ちゃんの背骨が硬いと、寝付きにくかったり、また横に寝かせてもすぐに抱っこと泣いたりするなど育てにくさを感じます。すぐに抱っこと泣くのは、縦抱きの方が重力の抵抗が少ないからだそうです。本当は筋力をつけてからが良いのですが、ハイハイをしっかりせずにすぐに立ってしまいます。そうすると筋力を付けた事そうでない子は歩き方が変わってくるそうです。首が埋まっている赤ちゃんは首が硬くなっているので肩甲骨のところを開くようにほぐすことが良いとのことでした。

 次は3カ月のお子さんです。今回のモデルさんは首が据わっており、体をしならせようと抱っこしても体を預けてこなかったため違う方法でほぐしを行ってもらいました。うつ伏せの状態で胸の下にタオルを敷きます。おもちゃで興味をそらしているうちに赤ちゃんの足を見てみるときちんと両方の足の指が床についていました。バランス良く動かしているようです。

 4か月のお子さんは寝返りとずり這いができていました。前田先生が仰るには赤ちゃんの硬さを見るにはまずは股関節、次に背骨を見るのが良いとのことでした。ずり這いからハイハイは、良い姿勢で歩くための大切な過程です。ご家庭内でずり這いやハイハイを行うとフローリングで滑ったりします。驚かれるかもしれませんが野外、芝生のようなところでハイハイを行うのが良いとのことでした。その際には膝の出るズボンで行う事が必要です。そうすると芝生がちくちくと刺激し、赤ちゃんの危機管理能力が備わったり自分を守る術を学びます。大人はそう言った事をわかって子育てをしていくのが良いと仰っていました。
また、9か月のお子さんの時にも前田先生から子育ての秘訣が出ました。子どもは思い通りにならないと泣いて訴えます。その際、すぐに対応する事も大切ですが、なんでも思い通りになると子どもが思ってしまい、親を召使のように思う事があるそうです。子育てはあくまでも対等な関係であること、折り合いを付けていく事が必要になってくるとのことでした。もう一つの秘訣が、子育てにはユーモアが大切、という事です。子どもの事に真摯に向き合う事は大切ですが、煮詰まってしまっては余裕が無くなってしまいます。ある程度のユーモアを持って接した方が親子共に良い関係が作れるとのことでした。
運動面のケアで、四つ這いが出来にくかったり、バランスがあまり良くなくハイハイするお子さんには腕の運動で筋力を付けるためにも前回教えていたパラシュートや滑り台などの斜面に乗せるのが良いとのことでした。斜面だといつもと同じようには進めず、両方の手足を動かす必要が出てきます。その際、大人は子どもがひっくりかえらないように支える必要があります。

1歳のお子さんの親御さんには前回りを勧めたいと相談に答えておられました。前回りをするには首をぐっと前に倒す必要があり、その感覚を養うためにも大人が片膝立ちになりその膝の上に子どもをうつ伏せで寝かせます。しっかり支え前回りをします。また、両足を開いて股のぞきの体制も効果的とのことでした。

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発達上、教えなくても出来ることが出来にくいのは体に硬さがあるからだそうです。この硬さをほぐすのに躍起になってしまっては親子共にしんどくなります。そのため先ほどの股のぞきにしても遊びの中、楽しい時間の中で「ほぐし」を取り入れていけるのが良いと仰っていました。
しかし、親は一日中子どもと遊んでいれば良いわけではありません。家の中に居たら家事もしなければなりません。お客さんが来られたら対応しなければなりません。しかし、一歩外に出たらどうでしょう。例えばひろばのようなところに来たら、家事や来客など気にせずに子どもと過ごせます。前田先生は親が自分で育てる力をつけることが一番だと仰いました。その力を付けるためにも、家ではできないひろばのような場や、この15のまなびのような場を活用していけるのが良いとお話して下さいました。

午後は前田先生を取り囲みながら質疑応答の時間となりました。皆さん、支援者という立場もあるせいか、今回学んだ内容をどのように利用者に伝えていくか、育てる力を支えるため、どのように関わっていくか、という質問が多く出ました。継続的に利用者と関われる関係、一時的な関わりになる関係など状況は様々ですが、どちらにしても目の前の親御さんがお子さんを育てていかなければなりません。だからこそ、まずは親御さんを励まし、良いところを伝える事、そこにはお子さんの良いところも伝える、そして「もう少し頑張れるなら・・・」と一言付け加えていく、と教えて下さいました。それにより親に変化が見られるならば、子どもにとっても、とても大事な事です。実際はなかなかうまくいかなかったりすることもありますが、それでめげてはいけない、励ませるのは専門の人であり、そのための15のまなびが本当の姿なのではないか、と鼓舞する言葉を下さいました。司会者の言葉を借りるなら私達が励まされる回となりました。

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15のまなび 竹本久美子さん「産前産後の子育ての現状と展望」 [2015年08月11日(Tue)]
第6回  8月9日(日)「産前産後の子育ての現状と展望」
     10:15〜12:00 講座
      「産前産後の子育ての現状と展望」
     13:00〜14:30 講師を囲んでの語り合い

講師:竹本久美子さん(足立病院子育て支援部 部長)

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 6回目の講座になる今回は足立病院の子育て支援部部長を担っておられる竹本久美子さんを講師としてお招きししました。今回は、足立病院で行われているマミーズスクエア(通称マミスク)を通して産前産後の子育ての現状と病院だからこそ出来る今後の展望についてお話をお聞きしました。

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 竹本さんは幼稚園教諭・保育士を経て結婚、専業主婦で3人のお子さんを育てられ、色々な縁の中2005年に足立病院に入職され子育て支援に携わっておられますが、子育て中のお母さんが元気であってほしい、悩める母親をどう支援するか、という思いを持ちながら日々病院内でたくさんのお母さん方と接しておられます。
 その中で感じられる問題点は、子育てが伝承されにくい核家族化、子育てモデルが無いと言う事。自分の子どもが初めて抱く、というお母さんも少なくないと言います。だからこそ、産まれてきた赤ちゃんにどう接して良いかわからない、赤ちゃんに何かしなければと追い込まれて自分に対し罪悪感を持つお母さんも居られるそうです。思い通りにいかないからこそ親など身近な人に相談して欲しいですが、「今と昔は違う」という思いから親からの助言も入りにくかったりします。また、親の側からも「子育てに口を出しては・・・」という思いがあり子育てを伝承しなくなっている状況もあるようです。逆に子育て支援者のような第三者や、ネットや友人、テレビなどの情報を積極的に捉えている姿が多いとのことです。しかし、ネットやテレビなどは流行や商売に振り回されやすく、なぜそれが良いのか自分で考えることをしなくなると仰いました。

 もともと「井戸端会議が出来るところを作りたい」という思いが発端だったマミスクですが、立ちあがり10年を経過、その歴史の中で本当に多くの取り組みをされていました。今日はその一端をわかりやすい写真を見せて頂きながらお話をして下さいました。月齢別の親子教室、つどいの広場事業、パパ向けの子育て教室(パパスク)、子どもが居るって幸せと思えるイベント、食育講座、助産師相談会、市内児童館へ出張マミスク、一時保育や託児保育・・・。
 パパスクはお母さん立ち入り禁止なので、間接的にお母さんの時間を作る支援にも繋がっています。食育講座は何を食べさせるかではなく、食べさせ方を教えたり、病院だからこそできる助産師と連携を取った相談会など、病院ならではの取り組みです。また、一時保育は、例えば妊婦検診や不妊治療中、下のお子さんの検診や診察の際、上のお子さんを預かるなど診察補助として行われています。そこで竹本さんが大切にされていることは、預ける時には子どもに「帰ってくるから、待っててね」ときちんとお別れをしてもらうことです。色々な状況から必ずしもそれが出来るわけではないようですが、子どもが安心して待てるような声かけは必要ではないでしょうか。
 そのような現場の中で色々なお母さん達が居られました。
子どもが思い通りにならず子育てがしんどくなり産まなければ良かったと言っていたのにマミスクに来て変わり3人目まで出産されたお母さん、子育ては未知でわからないことばかりなのにうまく人に相談できないお母さん、相談する前に自分の答えが決まっているお母さん、子どもの思いを感じることが難しいお母さん・・・。色々なお母さんが居られる中で、時には苦情を受ける時や関わりの難しさを感じられる時もあるそうですが、それでも竹本さんは色々な母親の色々な思いを受け止めたい、という熱い思いを持っておられました。少しでも1人1人を丁寧に関われるように、講座やクラスが始まる前には1人1人に声を掛け、変化や成長を返しておられるそうです。
 10年間のマミスクの歩みを、事例を織り交ぜながら今の子育て中のお母さんの姿をお話し下さいました。そして、竹本さんはご自身が持っておられる抱っこマイスターの資格から外来待ちの患者に抱っこの仕方のお手伝いをしたいこと(竹本さんはご自身で「おせっかいおばちゃん」と表現されていました)、助産師と連携し産前産後のケアを考えたいと今後の展望を語って下さいました。

 講演内容は分かりやすい事例が多く、参加された支援者もそれぞれの立場や現場を思い出しながら時には同調したり、時には驚いたりする姿が見られました。

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午後からは竹本さんも交え参加者で机を囲み、午前中の講演から派生しご自身の活動や体験をそれぞれがざっくばらんに話し合いました。今回はなかなか知ることのできない産前産後の現場を知れただけでなく、多くの情報交換ができたと思います。色々な現場で色々な子育て中の方が居られ、そのたびに支援者は悩んだり困ったりすることもあるかと思いますが、だからこそ、この15のまなびのように話を持ちよって支援者のための勉強の場、「支援者の井戸端会議」のような場が必要になってくるのだと感じた第6回でした。

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15のまなび 高橋由紀さん「赤ちゃんの発達に合わせたセルフケア:幼児期編」 [2015年08月02日(Sun)]
「遊ぼう!赤ちゃんの発達に合わせたセルフケア:幼児期編」
   10:15〜12:30 講座・ワークショップ
   13:10〜14:20 講座・質疑応答
講師:高橋由紀さん(ベビーヨガアソシエイト 代表)

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今回は6月21日に行われた講座の幼児期編ということでベビーヨガアソシエイトの高橋さんに再度来ていただきお話をお聞きしました。前回の反響からか、とても多くの方達が参加して下さいました。幼児期編ということでしたが、幼児期に留まらず学童期、大人に通ずる内容でした。今回も参加型ワークショップが豊富で皆さんいかに常日頃自分の体にゆがみや不調を溜めているか感じられたかと思います。

先生は、ご自身が椎間板ヘルニアで悩まれていた経験からボディーワークを学ばれていました。子どもと遊ぶボランティアをされていた時に子どもの動きが気になったそうです。遊びの中で子どもの動きのサポートをしていたら児童館の先生に講座を開いてみんなに広めて欲しいと言われたことが今の活動に繋がっているそうです。
当時は赤ちゃんの体はそれほど気にならず、成長するにつれて精神面などの影響からからだにゆがみが生じやすくなるためキッズヨガを広められていました。それは子どもに伝えるだけではなく、その親にも伝える必要があります。しかし大きい問題を抱えている親子ほど伝えるのが難しく親自体、子どもがどう感じるのか知らない、わからないという親が多いことに気付いたそうです。そのため先生は「どうやったら子ども達が気持ちよく感じられるか」且つ「そのことを親も獲得しやすいか」ということを意識して講座をするようになり、今日の講座も、大人にも子どもにも通じる内容となりました。

まず、前回の振り返りから始まりました。(詳しくは第二回の記事をご参照ください)。人は誰しも重力を感じるため、首が据わる時には首を支える必要があるから首が詰まります。しかし、その事を知らずにその時に不調をその時にケアせず次の発達に進むとゆがみの原因になります。つまり、その時の不調をその時にケアすると発達が「促される」そうです。先生は講座をする時に「促す」という言葉をあえて使うそうですが、実際は適切なケアをすることで発達を「損ねない」「阻害しない」ということになるそうですが、そのままの言葉を使うと場合によってはしんどい思いをされることもあるので多くの方達にベビーヨガの大切さを知ってもらうためにも「促す」という言葉を選んでいるそうです。そういった細やかな心配りからも先生の活動に対する熱い思いが感じられました。
誰しもが適切な時期に適切なケアを出来ればいいのでしょうが、それは難しいです。しかし、適切な時期を逃したからと言って取り返しがつかないわけではなく、乳幼児期に得られなかった事を、成長してからより丁寧にケアをすること、また、完璧なケアの方法、時期を考えるのではなく、その子がその子らしく生きられるケアをすることが大切だとお話し下さいました。

幼児期に移行するための導入体験としてうつ伏せや仰向け、パンサーウォーカーと言われる四つん這い歩行をみなさん体験されました。パンサーウォーカーはつま先でハイハイをし、膝は床から少し浮かせて進む歩行です。みなさん実際行ってみるといろいろな歩行がありました。手を外に向かせて歩く方、手を握って歩く方、手足をどのように出して良いか困る方。しかしそれは先生に指摘されるまで自分では気付かない事でした。この体験から四足歩行を経て二足歩行になった時、使う筋肉の違いを感じることが出来ました。四足歩行は脚の後ろの筋肉を使いますが、この筋肉が十分に養えていないと二足歩行になったとき、前に進む力に繋がりません。ハイハイ、つかまり立ち、二足歩行、と何気なく子どもは発達しているようですが、何もせずスムーズに歩けるようになるわけではないと指摘して下さいました。
よく、ハイハイの時期が長い方が良いなど耳にすることがありますが、注目するところは期間の長さではありません。見て欲しいのは一日の内にどれだけハイハイをする時間があるかというところです。いくらハイハイの期間が長くても一日の内にハイハイをする時間が短ければ話は別になってしまいます。その子がその時にどういう風に過ごしてきたが大切であり、そこに至るまでの運動を十分に楽しめたか、その時に必要な動きを十分にするのが良いと教えて下さいました。それを知るだけでもどれくらい自分の子どものことを見ているか、ということを考えさせられました。

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次に背中の緊張をほぐしたり足の付け根を刺激したりする体験をしました。足の付け根を刺激する事は腰を悪くせず、軸がありしなやかになるために大切なことです。軸は乳幼児期に獲得すると仰っていました。軸、体がしっかりしていると言う事は体幹がしっかりしているという事であり、その後の枝葉もしっかり伸びやすくなります。また、ただ単純に悪いところをケアすれば良いと言うわけではなく、悪くなった原因を考え根本的にケアをしなければ意味がありません。それには子どもがどこに不調を感じているのかよく見る必要があります。抱っこをするときは首の後ろとおしりの下を支えることが大切です。それはその部分を支えられると安心すると言う他に、人に触れられることで癒されることも含まれています。そうでないとロボットに育てられていることと一緒です。人間の子育ては触れて声を掛けてぬくもりを感じるもの、心に働きかけるものです。だからこそ触れて、自分も体験して、子どもがどう感じているのか、また、触れている方の感性も育まれると仰っていました。
ここで、声を掛けながら、という話が出ましたがマッサージに限らず日常生活でも「歌」、特に「童謡」は子どもにも親にも良いリズムを与えてくれるものだとお話し下さいました。日々忙しくしているペースは子どもにとっては適切ではないからです。歌を歌う事は会話よりもコミュニケーションになり、先生のご自宅ではミュージカルのような世界だとお話されていました。ただ単純に子どもを急がせる時に、眉間にしわを寄せて「急いで」と声を荒げるよりもすぐに動きたくなるような歌を歌うなど動きや遊びの中にその時の調子に合わせた歌を取り入れているそうです。子どもは好きな音楽に耳をすませるところから言葉を獲得します。そして子どもはお母さんの声が好きです。お母さんの声、歌に耳をすませることでコミュニケーションや言葉の発達が促されるそうです。

午前中の最後のワークとしておしり歩きと、体幹を強くするためのマッサージを行いました。骨盤やおしり、背中を緩めるのですが振動が伝わりにくい方も多く、緊張がつもっているせいだと教えて下さいました。また、大切なのはゆるめてあげる、気持ちよくさせてあげる、という気持ちを相手に伝えることだと仰いました。

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午後は先生を囲んで体のゆがみの原因についてお話をお聞きしました。体のゆがみの原因は固定姿勢であり同じ姿勢を続けることで緊張がつもりゆがみになるそうです。赤ちゃんをずっと同じ姿勢で寝かせておくことも一緒です。子ども達の姿勢について親が気にするようになる、それを家庭で出来るよう支援者として伝えられるようになることが必要になってきます。そして、支援者だけが意識するのではなく支援者が伝えていくことで子どもの体を見た時にみんなが気にするようになることが子どもの発達をより多く促すことに繋がります。
また、固定姿勢をほぐすことは体に良いだけでなく、適切な刺激を受け取れるので脳の発達にも良いそうです。ほぐす側もほぐす前と後では何が変わったのかわかるように見て、ほぐして、変わったかどうかの確認をする・・・その繰り返しが子育ててであり細かいケアは親だけが出来ることだとお話されました。

操体法の医師 橋本敬三は「正体に病なし」という言葉を残しています。これは「整った体は病気にならない」という意味だそうですが、ゆがみや病気は自分が作っているという事だそうです。もしゆがみや病気がある時、その原因は自分でいつ作ったのか振り返る必要があります。もちろん原因は体、精神的な物様々です。しかし、原因を作ったから、見逃してしまったから失敗、で終わりではありません。失敗することは悪いことではなく大切なのはそこから原因を探り適切なケアをするか、その繰り返しだと教えて下さいました。そして、親の諦めない姿勢、私達支援者のサポートで子どもの可能性が広がると伝えて下さいました。
(Aoyagi)
「赤ちゃんの発達に合わせたセルフケア」高橋由紀さんの講座より [2015年06月21日(Sun)]
15のまなび第2回 6月21日(日)
講師に高橋由紀さんをお迎えして「赤ちゃんの発達に合わせたセルフケア」が行われました。
講師:高橋由紀さん(ベビーヨガアソシエイト 代表)

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今年度は、この日と8月の2回、ベビーヨガアソシエイトの高橋さんをお呼びします。
今回の内容はとても納得のいくお話ばかりでしたが、お話だけではなく、参加型のワークショップが豊富で途中参加者のみなさんは息を切らす場面も見られました。

まず、そもそもの「子どもの発達の基本的な成り立ち」を考えるにあたり、平屋と高層マンションを作る工程に例え参加者に出てきてもらい、実際にホワイトボードに作る工程を描いてもらいました。平屋と高層マンションを作るならどの点を大切にするか、ということについて出て来ていただいた参加者にお聞きすると、みなさん共通して「土台をしっかり作る」という点を挙げられました。
高橋さんは平屋よりも高く積み上げる高層マンションの方が土台をしっかり作った方が良いとお話されました。そして、それは赤ちゃんや子どもの発達も同じだと言うこと、土台がしっかりしていないと発達に限界がきてしまうことをお話されました。

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子育て支援者、子育てをしている親は乳幼児期の発達がどれだけ大切か、ということはよく耳にするお話でしょうし、心ではわかっている方も多くおられると思います。
それでは、その時期に適切な関わりや土台作りとは何でしょうか。乳幼児期の英才教育など、学習的要素を始められる場合がありますが、今日はもっと根本的な基礎的な要素とはどういったものか、本当に乳幼児期の発達に合ったケアとは何なのかということについて教えて頂きました。

子どもの乳幼児期で、次を見通して今、何が大事か、ということを高橋さんはボディケアを行うことで振り返って確認されていました。高橋さんの行っておられるボディケアは赤ちゃんと楽しく語りかけながら遊ぶ、という様子に近く語りかけられることで赤ちゃんも脳から心、体の発達に繋がっていました。

ここで参加者のみなさんに子どもの発達段階の具体的な様子を書き込んでもらいました。

高橋さんは子どもの発達を海外などでも学ばれましたが自分の子育ては全く違っていたそうです。そこで高橋さんはどれが正解か、正しい発達とは何か、ということではなく「その子の発達はその子なりの意味がある」と考えられました。そのため高橋さんは自分の子育てで「これは子どもが楽しむんじゃないか」ということを常に考えておられたそうです。

高橋さんは、拍子抜けするぐらいご自分のお子さんは良く寝ていたそうで愚図られて大変だと言うことがなかったそうです。ある時、同じぐらいの月齢のお子さんを預かった時にご自分のお子さんと他のお子さんの体に決定的な違いを感じたそうです。それは体の柔らかさでした。子どもの抱き方、頻度によって子どもへの負担や緊張が変わってくるそうです。
しかし、抱き方や抱く回数が少ない、と親だけの責任ではありません。
また、本や学校で発達を知ることが大切なのではなく、どう触れられたら赤ちゃんはどういう顔で、どう感じるのか、ということを実際に知ることが大切であり意識することが大切と仰いました。それは、赤ちゃんの気持ちをいちばん身近な大人が感じ取ることですし、赤ちゃんにとって一番必要な事だとお話してくださいました。

子育て支援者として、もっと身近な子どもを観察していろいろな子育て現場で伝えていく、それを少しずつ進めていけば子育てに悩む人が居なくなるのではないか、逆に、本で学ぶしか子どものことがわからない社会にしてはいけない、と熱く語ってくださいました。
みんな1人1人違いますが、実際に目の前に居る子どもたちです。それはいろんな正解がある、ということを表しています。
高橋さんは、今ここに居る赤ちゃんがどんな気持ちなのか感じ取ることの大切さを伝えて下さいました。

言葉で、いくら「赤ちゃんがどんな気持ちなのか感じ取ることの大切」と言ってもわからないので実際に赤ちゃんのポーズになってみました!

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新生児〜首座り、首が座る頃、寝返りの頃、ずりばい、おすわり、膝をついてのハイハイ、膝をあげてのハイハイ、つかまり立ち、一人立ち

それぞれの時期に合わせてポーズをとってみて初めてどういうところが疲れるのかがわかりました。
また、発達を動物の進化に例えわかりやすく説明して下さいました。脳の発達は四つ足が使えるようになるまでがメインになってくるそうです。土台をしっかりするボディケアを考えるため、今、赤ちゃんがどんな気持ちかわからないと適切なケアが出来ないことを体感しました。

高橋さんは全国で講演会を開かれる中で抱っこを嫌がるお母さんに何人か相談されたこともお話し下さいました。しかし、高橋さんが抱っこをすると嫌がらないそうです。それは赤ちゃんの要求に合わせ、気持ちをくみ取りコミュニケーションをとりながら抱っこをしているからだそうです。気持ちをくみ取ってもらえない子に変なハイハイが多いと仰っていました。変なハイハイは放っておくとゆがんでしまいそのまま育ってしまうため、まずは現実を見つめて赤ちゃんのコリをほぐしてあげることが必要になってきます。しかしそれはお母さん一人では限界があるため周りのサポートが不可欠です。

現在、姿勢の悪い子の姿が多く居る中、遡って修正が必要なのではないかと考えられたそうです。基本的なところからどう立て直すか考えられた時に高橋さん1人では限界があるため、今回の講演のようなことを通して子育て支援者の底上げ、サポーターを増やすことで母親が感じ取りきれない赤ちゃんの気持ちをくみ取ることで母親、赤ちゃんのケアをしていければと考えられた結果、今の姿があるそうです。

最後に、参加者が輪になって隣の人の背中を温かい気持ちで触る「手当て」を行いました。手を当てているところに気持ちを置いてくると、話しても温かさが残っていました。
それは赤ちゃんを寝かしつける時に行っておられるそうです。気持ちを置いてくることで例え離れても赤ちゃんはお母さんに包まれたような、いつも抱っこされているような気持ちになり安心するのだと思いました。

前回の講演にも共通したことではありますが、子どもの発達、子育てに正解は無い。
だからこそ難しく
親だけではなく
子育て支援者も含め
子育てに関わる人たちが
日々悩んでいるのだと思います。
しかし、目の前の子ども、赤ちゃんの立場に実際なってみることで
どうして欲しいのか気持ちをくみ取る
どうなったら良いのか環境を考えられる
その子1人1人の子育てを
たくさんの視点から考えられるのだと実感しました。
いかに、その子の気持ちに寄り添えるか、考えられるか
それは、その子がゆくゆく大きくなって社会に出た時に人と関わる時に必要な力になってくるかもしれません。
未来を担う子ども達の土台づくりをどうしていくか
今後もたくさんの支援者、子育てに関わる方と考えていければと思います。(aoyagi)

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