インドネシアの視覚障害学生支援 [2007年07月09日(Mon)]
視覚障害学生支援センター 1万7、500の島々からなり世界で4番目に人口の多いインドネシア。約2億2千万人の人口のうち1%(200万人)が視覚障害者だ。しかし大学に通う視覚障害者はわずか250人しかいない。入学の機会を与えている反面、障害者用の支援施設など大学側の受け入れ態勢が整備されていないからだ。入学しても授業についていくには家族や友達など周囲の協力がなくては難しく、視覚障害を持つ学生の中には大学への進学を断念する人も少なくないのが現状だ。日本財団はこうした視覚障害学生を支援するため、2006年から情報システムを提供する新しい事業をジャカルタ(国立図書館など2ヵ所)とバンドン(バンドン教育大学)の2地域の計4ヵ所で始めた。事業開始から1年、支援を受ける学生たち(96人)の生活はどう変わっただろうか。 2つの地域には「視覚障害学生支援センター」が設置されている。センター内にはスクリーン・リーダー(画面の字を音声で読み上げるソフト)などを組み込んだコンピューターがあり、カウンセリングや授業の補修など学生のニーズに応えたサービスも提供されている。バンドン教育大学に通うズルフィカさんは「これまでは友人や家族の助けを借りて勉強していたが、今は必要な資料をインターネットで調べたり、点字の教科書等を読んだり自分一人で勉強できるようになり自信がついた」と嬉しそうに語った。(写真:スクリーン・リーダーなどを組み込んだコンピューター) 家族や友人の態度も大幅に変わった。ジャカルタの国立図書館内にある支援センターを利用するトリアナさんの母親は「以前はすべての教科書を娘に読み上げてやらなければならなかったが、センターで点字教科書をプリントして娘が一人で勉強ができるようになり、家族の負担も大きく減った」と喜んでいた。同センターの学生利用者のリーダー的存在であるヤユさんは「ほかの学生と同じテンポで授業を受けられるように配布資料や試験用紙を点字で提供してくれる教員も増えている」と大学側の協力的な姿勢を評価している。 国立図書館はこの事業に協力的で近く増築する予定で、新しい施設には障害者対象の図書専門コーナーを設ける計画だという。さらにインドネシア各地の図書館とのネットワークを強化させ、他の地域でも障害者が図書館を利用できるよう施設の改善を呼び掛けている。この事業が視覚障害者に与える影響は計り知れない。視覚障害学生の支援がインドネシアの教育制度の一つとして確立し、全土に浸透することが期待されている。 |