【人】ステージは越後魚沼 地域おこし「伝習館」で第2の人生 [2009年11月02日(月)]
![]() 復活した耕作放棄田でコシヒカリを初収穫(魚沼市福山新田で=魚沼伝習館提供) サラリーマン生活を50歳で切り上げ、釣りや山歩きなど、好きなアウトドアライフを満喫するはずだったのだけれど、どうしたことか気がつけばすっかり地域に融け込んで、山間地の生活をサポートする活動にのめり込んでいるではないか。「当初の人生設計とはずいぶん違っています」と戸惑ったように笑うのは、NPO法人「野外教育学修センター魚沼伝習館」の坂本恭一理事長(62)だ。しかし坂本さん、この多忙な日々の手応えがまんざらでもなさそうなのである。 |
![]() 大好きなアウトドアで、地域活動の手応えを楽しむ坂本さん 新潟県南東部の山間地に広がる「魚沼」地方。尾瀬へと続く群馬・福島県境の山並みが美しい地域で、5年前に中越地震の激震に襲われた土地でもある。東京で生まれ育ち、外資系企業を職場として都会生活を続けていた坂本さんが、魚沼にやって来たのは12年前。移住先として全国の候補地から絞り込んだのは京都府美山町と越後魚沼だった。そして「やはり慣れ親しんだ東日本の文化圏が暮らしやすそうだ」と家族の賛同を得て、魚沼に「終の住処」を定めたのだ。 ![]() 廃校となった旧守門村福山小学校は、子ども合宿のベースキャンプだ 思い描いた通りのアウトドアライフを2年間ほど楽しんでいたら、地元の教育委員会から「あなたは暇そうだから、子どもたちの野外学習を手伝っていただきたい」と声がかかった。坂本さんはボーイスカウト出身でもあり、子どもたちの野外活動は手慣れた世界。しばらくはそれなりに引き受けて、現代っ子が自然を知らないことに驚いたりしていたのだが、「やるからにはきちんとした体制をとって」と覚悟を固め、2005年にNPOを立ち上げた。 ![]() 作業車の導入で、山林管理も本格化する計画だ 「魚沼伝習館」は青少年育成事業と地域づくり事業を活動目的に掲げるNPO。スタッフ6人はいずれも若く、子どもたちの冒険体験キャンプなどを精力的に開催している。今年は過疎が進む集落の耕作放棄田を復活させ、日本一うまい「魚沼産コシヒカリ」の初収穫も実現した。さらに周辺の里山や山林管理を請け負い、作業道の開削やブナ林の間伐などに取り組んでいる。人力では困難な「林業」には、日本財団の助成で導入した間伐材搬出作業車が大活躍している。 活動が地域の信頼を得るようになると、地元の期待は大きくなる。事務所に南魚沼市の公民館の一部を、活動拠点には魚沼市(旧守門村)の廃校となった小学校を使わせてもらうのはありがたいが、「限界集落の復活に取り組んでいただけないか」「介護を含めた高齢者事業を考えて欲しい」と、難題が降り掛かっても来る。それでも坂本さんは「高度成長期に社会経験を積んだわれわれ団塊の世代が、その知恵を社会にお返しする時期なのでしょう」と、向き合っていく考えだ。 ![]() 伝習館は「よそ者」のアイディアと「若者」のパワーがいっぱい というのも都会生活で身に付けたネットワークを活用すると、地域には思いのほか効果的な「宝」が眠っていたりする。そうしたアイディアが刺激となって、中山間地の後継者たちがやる気を起こしたら、地方はむしろ魅力満載なのだと坂本さんは考える。かつて国の担当者から「そういうことができるのは、よそ者・若者・馬鹿者だ」と言われたことがある。坂本さんは「その通りかもしれません。私もそのうちの二つに当てはまる」と笑った。【加藤春樹】 |











