こんぶ養殖で海の森づくり 海との共生をテーマにシンポ開催へ [2009年09月25日(Fri)]
海の森こんぶの状況(潜水士 渋谷正信氏提供) 「日本近海の海は病み、沿岸資源は枯渇し、多くの漁村では過疎化が進行している。こうした現状を脱皮する必要がある」と、力説するのは、鹿児島大名誉教授でNPO海の森づくり推進協会の松田恵明代表理事だ。同推進協会は、全国の漁業協同組合と連携し、大型海藻(こんぶ)を栽培し、藻場の改善を進める「海の森づくり」運動を進めている。今月26、27の両日には、日本財団の支援で「第3回こんぶサミット」の一環として東京海洋大学でシンポジウムを開催する。 |
海の森づくりを進める松田さん この運動を推進している松田さんは、鹿児島大学水産学部教授時代に長崎県壱岐・東部漁協とこんぶの沖合養殖の研究を行い、鹿児島県の錦江湾以北では大規模な人工養殖が可能であることが実証されたため、沿岸の環境保全や水産資源倍増、地域の活性化を目的に海の森づくり運動を始めた。2002年には同協会を設立、この運動は、鹿児島県から宮崎、熊本、静岡、神奈川、千葉、石川、広島、島根、愛媛、長崎、富山、福井、三重、スリランカへと広がった。05年には長崎県を中心に「第1回こんぶサミット」を開いた。同サミットはその後2年おきの開催で、ことしは3回目となる。 海女さんの素潜り(潜水士 渋谷正信氏提供) 松田さんは、衰退する漁村を活性化させるためには沿岸漁業の再生が必要として1、山・川・海の健康を取り戻そう2、海の森づくり運動を全国に広めよう3、海藻・海草は地球と人を救うお医者さん−の3つをスローガンに、活動を展開しており、シンポジウムでは初日の26日には「海との共生を目指した環境と食育と里村づくり」、27日には「海との共生を目指した東京湾の環境修復と海の森づくり」をテーマに講演やパネル討論を行う。このうち、渋谷正信氏は潜水士として日本の海を調査しており「磯焼け現象で日本の海は砂漠化が進行している」と注意を喚起している。 アワビ・ウニのボックス養殖/コツネの種苗ロープのこんぶ (潜水士 渋谷正信氏提供) 松田さんは、日本の漁村の実情について語ったアジアからの留学生の言葉を紹介する。日本の大学には留学生がやってきて、漁村のインフラは素晴らしいという。しかし、若い人の姿が少ない。これでは自分の国に帰って日本のやり方をまねすることはできないというのが多くの留学生の感想なのだそうだ。松田さんは「日本の海洋資源は限りなく可能性があるのに、それをうまく使っていない。いまこそ、過去の経験を生かし、英知を集めて海の再生に取り組むべきだ」と、語っている。(石井克則) |