世界初、魚の最深生態撮影に成功 学説、大きく翻す [2008年10月14日(Tue)]
水深7700bで撮影された魚の映像 東大海洋研究所が英国のアバディーン大学と共同で茨城県沖・日本海溝で行った調査で、水深7700bの超深海で活発に活動する17匹の「シンカイクサウオ」(和名)の撮影に成功した。このような超深海で魚類の生態が撮影された例はなく、「深海は魚の密度も低く活動も鈍い」とされてきた従来の学説を覆す画期的なデータとなる。 |
調査は2006年度に5年計画でスタートした日本財団の助成事業「新世紀を拓く深海科学リーダーシッププログラム」。世界の海溝の多くが集中する日本近海の太平洋の水深6000bから1万1000bの超深海をターゲットにしており、3年目の今年は9月24日から10月6日まで学術研究船「白鳳丸」により調査を実施。調査機器(ランダー)を海底に設置し映像を撮影した。(写真:白鳳丸)
撮影された映像には、餌として使われたサバに無数のヨコエビ類が群がり、さらにヨコエビを活発に摂食するシンカイクサウオが鮮明に映っているのが確認された。カサゴの一種で全部で17匹、最も大きいクサウオは35aほどあり、動きも極めて活発だった。これまで超深海は生物にとって「超高圧、超低温、超貧栄養」の極限的環境とされ、魚の数は少なく、動きも少ないとされており、全く異なる生態映像となっている。(写真:水深7700bで活発に活動するシンカイクサウオ) 超深海魚に関してはこれまでプエルトリコ沖8370b、千島海溝7230bなどの確認例が報告されているが、いずれもトロールによる採集例で、博物館標本にとどまる。今回のように生きた姿が鮮明に撮影された例はない。乗船研究代表者を務めた松本亜沙子・東大海洋研究所特任研究員は「シンカイクサウオの大きさだけを見ても、これまでは最大で20a程度と考えられてきた。35aもの大型魚の存在が確認されたことで寿命ひとつとっても従来の学説は見直しが必要となる。今後の深海研究に大きな影響を与えるのは間違いない」と話している。(写真:船上での研究作業の様子)(宮崎正) |