4カ国の聴覚障害学生が合同研修 英国でリーダーシップを学ぶ [2008年09月24日(Wed)]
研修の様子 日本、アメリカ、中国、ロシアの聴覚障害大学生たちのリーダーシップ国際研修が8月9日から1週間にわたって英国・ロンドン郊外で開催された。日本財団が米国ロチェスター国立ろう工科大学(NTID)や筑波技術大学と進めている聴覚障害者のための国際大学ネットワーク事業(PEN‐International)の一環で、4カ国の大学による聴覚障害学生を対象とした合同研修は世界的に前例のない取り組み。 研修の参加者は4カ国の聴覚障害学生が計18人のほか、各国の手話通訳者や英語‐各国語通訳、さらに講師など合わせ約50人。日本からは筑波技術大学の学生3人と愛媛大学の学生1人、日英通訳2人、手話通訳2人、同行教員1人、合計9人が参加した。研修が開催されたのはロンドンから南に車で約2時間のイースト・サセックスにあるハーストモンソー城。カナダの大学が所有し、宿泊研修施設、結婚式場として使われている。まるで中世に迷い込んだような環境で、学生たちは他国の聴覚障害学生たちと共に1週間を過ごした。(写真下・研修が行われたハーストモンソー城) 講師はほとんどがアメリカNTIDの教授たちで、筑波技術大学教授も一コマを受け持った。講義は「聴覚障害者リーダーとは」「ろう文化」「健聴者の聴覚障害者に対するイメージ」「成功した聴覚障害者の特徴」「就職と良好な人間関係作り」「目標設定と達成」など、今後学生たちが各国や世界の聴覚障害者リーダーになるために必要なテーマに焦点が絞られていた。(写真右・熱心に講義するNTIDの教授) 米国以外では「リーダーシップ」を大学の講義として教えることは珍しく、同行した教員たちも講義や発表に熱心に聞き入っていた。日本人学生の一人は「普段友人と『リーダーシップ』について話すことはないが、今回色々と語り合う事が出来て大変良かった。 また、多様な人脈を持つことの大切さを学んだので、これからは一つ一つの出会いを大切にしていきたい。時間をかけて自分の目指すものを見つめ直したい」と、研修を受けた感想を話した。 研修の特徴は通訳体制が徹底されていたことだ。講義の大部分はアメリカ手話(ASL)または英語で行われたが、例えばASLの場合はまず英語(音声)に通訳、次に英語を各国語(音声)へ通訳し、さらに各国の手話に通訳するという、3段階の通訳を経て日本、中国、ロシアの学生へ伝えられる体制で進められた。また、火災など不慮の出来事に対する連絡網の徹底(非常ベルが聞こえないので、緊急時はマスターキーで各部屋を開けて回る)など、NTIDのチームによる運営にも聴覚障害者教育に対する長年の実績・経験を見ることができた。(写真・参加者の記念撮影)(石井靖乃) 動画はこちらをご覧ください。 |