地震でひびが入った闘牛場脇の大岩
新潟県小千谷市や長岡市(旧山古志村)に伝わる国の重要無形民俗文化財「牛の角突き」が7月6日、小千谷闘牛場で行われた。2004年の
中越地震で一時、中断を余儀なくされたが、再開後は震災前に比べ県内外からの観光客も増えつつある。8月には震災後初のお盆興行も行われる予定で、村おこしの中心文化となりつつある。
角突きは江戸時代からこの地区で行われている闘牛の一種。700`から1d近くもある大型の和牛が角と角を合わせて激しくぶつかり合う。賭け事の色彩が強い沖縄や鹿児島の闘牛と違い「神事」の伝統が強く、勝負がつく寸前に勢子長の合図で引き分けにするのが特徴。負けることで牛が闘争心を失くすこともないという。(写真:学校牛を出場させた東山小の児童たち)
雪解けの5月に始まり、今年3回目となる6日は小千谷地区で飼育される約50頭の牛のうち34頭が出場、計17番の熱戦を展開し、会場を埋めた800人を超す観客の喝采を浴びた。30度を超す猛暑の中、テニスコートよりやや大きめの長円形の闘牛場を勢子が酒と塩で清め本番開始。2頭の牛が相撲の横綱に相当する面綱を付け入場、牛引き担当の勢子が呼吸を合わせ同時に鼻綱を外すと鉄砲突き、角打ち、横打ちなどと呼ばれる技を駆使して激突した。(写真:巨体がぶつかりあう角突き)
勝負がつくかつかないかの瞬間に勢子が飛び掛かり、後ろ足に綱をかけで引き離す。なおも勢子を引きずるように闘争心をむき出しにする牛も鼻に綱を通されると、途端に従順に。若い勢子の一連の技も角突き以上に見もので観客からも大きな歓声が飛ぶ。デビューしたてのせいか、「ヨシター」の勢子の掛け声もむなしく、最初から角合わせを避け逃げに回る3歳牛も。
大相撲と同様、次第に上位の取り組みに進み、闘牛場脇の“力士だまり”と呼ばれる広場では3役や大関、横綱級の牛が出番を待つ。本番を前にした闘争心の高まりか、それとも暑さのせいか、時に「ブウォー」と全身を絞って雄たけびを上げる体に触ると、驚くほどの熱さが伝わった。
小千谷闘牛振興協議会などによると、現在中越地区で飼育されている牛は小千谷地区が約50頭、山古志地区が80頭。若い勢子による「
北斗会」のメンバーも増え、震災後、
日本財団などが支援した仮設の闘牛場で開催されていたが、遅れていた山古志地区も昨年から本場での開催となった。牛舎は母屋にくっつく形で建てられ、家族同様の暮らし。この日、横綱と紹介された「竹沢号」を育てる塩谷集落の星野卯三郎さんは、熱戦を終えた愛牛に飼葉を与えながら「わが子と一緒です」と目を細めた。(写真:緑豊かな小千谷の山並み)(宮崎正)