見事に群落を形成したヨシ苗の移植地(滋賀県守山市付近)
琵琶湖を、地域に与えられた貴重な生活環境フィールドであるととらえる滋賀県は、県民の総力を挙げてその湖沼環境保全モデルを確立し、世界の環境問題に貢献しようという壮大な目標を掲げている(
マザーレイク21計画)。その具体的事業の一つが、
財団法人・淡海環境保全財団が取り組んでいる「ヨシ植栽モデル事業」だ。湖畔に群生する「ヨシ」が持つ、天然の力によって琵琶湖の水質を浄化させようという試みである。
湖畔や河川敷に群落を形成する「ヨシ」は、水辺に生育するイネ科の植物で、水中の窒素やリンを養分とすることで水質の悪化を防ぎ、さらに茎につく微生物によって水の汚れを分解する働きがある。5メートル近くにまで成長するその茎を活用し、「葦簀(ヨシズ)」など多くの生活用具が生産され、日本人の暮らしに関わりの深い植物だったが、需要の減少や護岸工事の進展などにより琵琶湖畔でも次第に姿を消し、それに伴い湖の水質も悪化していった。(写真:「浜欠け」などにより消滅しつつある琵琶湖のヨシ群落(滋賀県近江八幡市付近))
淡海環境保全財団は、琵琶湖を中心とした滋賀県全域の豊かな生活環境実現のため、県と全市町村が出資して1993年に設立された。湖畔のヨシ群落復活のために、まずヨシの苗づくりに着手、地下茎を採取してポットで発芽させ、ヤシの繊維で作った床に移植して生育させる栽培方法を確立した。草津市と長浜市の湖岸にヨシ苗のほ場を確保、1メートル四方のマットに4株を40センチ程度にまで育て、出荷している。(写真:ヨシ苗発芽用のポット)
いまのところ県の水産課や土木部がお得意様で、年間4000枚近いヤシマットが湖岸整備に 活用されている。植栽を終えた地域では、新しいヨシが元気に育っており、あちこちで群落が復活しつつある。財団はこのヨシ苗の生産方式で特許を取得しており、これからも積極的に生産を拡大していく方針だ。ただ全周が235キロある広大な琵琶湖が相手だけに時間が必要で、マット1枚が1万円を超える生産コストなど、研究課題も残されている。(写真:収穫されたヨシ。ヨシ原の維持には「ヨシ刈り」が必要だ)
財団は新たなヨシの活用策として、降雨時に道路から琵琶湖に流れ込む汚濁物質を排除する研究にも着手している。降雨初期には、油脂や粉塵など湖岸道路に付着した汚れが流れ出す。こうした汚水が琵琶湖に流入しないよう誘導し、ヨシの水質復元力で浄化する「ファーストフラッシュ浄化施設」を整備していこうという考えだ。今年度は草津市のヨシ苗ほ場の湖岸道路脇に処理水両60立方メートルのビオトープを設置、実験を始める。
また同所にヨシ群落と魚や鳥の共生関係などを学べる体験学習施設も整備する計画で、
日本財団はこれら一連の
琵琶湖保全事業を支援している。淡海環境保全財団の山本道広総括専門員は「私が子供のころは、遊んで喉が渇くと琵琶湖の水を飲んでいました。水質の目標を、あの昭和30年代ころの琵琶湖に置いて浄化策に取り組んでいます」と話している。(写真:淡海環境保全財団の草津市ヨシ苗ほ場で、琵琶湖浄化の夢を語る山本さん)